急接近!!
あれから数ヶ月たった
みっちゃんは相変わらずイジメを受けているが、俺は見て見ぬフリをしていた
………本当に情けないな、俺は……
一方で成宮さんとの文通は続いている
はっきり言って、ここまで続くとは思っておらず、自分でも驚くほどだ!!
文通はメールとは違って、相手の書いた字から温もりを感じることができ、まるでその場で話しているような感じがした
今では履歴書の趣味の欄に堂々と"文通"って書ける
そんなこんなで、ついに期末テストの日がやって来た
………何!?色々飛ばし過ぎだって!?
まぁ……ね………
そこには……まぁ……
大人の事情が…………
……………すみません↓↓
今日は期末テスト………
この日ほどイヤな日はない!!
というのは、俺は全く勉強が出来ないからだ(笑)
しかし、今回は違う!!
なんたって優に勉強を教えてもらったからな
答えが間違っていると、優は容赦なく俺を殴ってくる
その恐怖から驚異的なスピードで知識を吸収していった
かわりに次の日、アザだらけになったが………
とにかく、今回の俺は違うのさ!!
俺の妄想によれば、俺は全教科で80点を取れる!!
見える、見えるぞぉぉぉぉ!!
テストで高得点を取っている俺が!!
「それでは、テスト始め!!」
………いくぜぇ!!
……………………………
………………………
……………
………
…
妄想ではテストは乗り切れません、ご注意ください
テストが終わり放心状態になっていると一人の女子が話し掛けてきた
「ねぇ!!」
………?
誰だこの人?
名前が思い出せないな
なんだっけ……
確か…何とかロビンソンだっけ?
少し不安ではあったが聞いてみた
「……ロビンソン…だっけ?」
「誰よそれ!!私は吉井理沙だよ、覚えてないの?」
「あぁ……やっぱロビンソンじゃん」
「???」
………そういえばそんな人いたなぁ
てか話したことないから名前覚えてるわけないじゃん
「まぁいいや、アンタさぁ栞に変なことしてない?」
「変なこと?成宮さんに?してないし!!」
「最近栞が何か変なのよ!!アンタが変なことしたんでしょ?」
「してないって言ってんじゃん!!したとしても、それはもう……」
そこまで言いかけると
「ちょ……ちょっと待っったぁ!!」
と言いながら優が割り込んできた
「あ、秋山さん……」
「理沙!!ちょっっと来てーー」
そう言うと優はロビンソンを連れて何処かへ行ってしまった
………なんだ、今の?
「……ちょ…ちょっと秋山さん、どうしたの?」
私、秋山優は理沙を引っ張って女子トイレまで連れていった
理由は当然、あのバカ幸弘だ!!
「あ、あのねぇ理沙
幸弘は……バカだけど、女の子に変なことするような奴じゃないよ
だから、アイツのこと信用してあげて」
「え!?秋山さんがそこまで言うなら、そうするけど……
まさか、秋山さんって…」
「違うって!!アイツはただの友達だよ!!」
そこまで言うと、理沙は少し納得いかないような顔をしながら、トイレから出ていった
「………はぁ」
……何であのバカをフォローしなきゃいけないんだか
そう言いながらトイレの鏡に映った自分を見た
………いや、いいのよ
これが私の"義務"なんだから
私がアイツにしてやれることは、これくらいしかないから………
私は鏡に映る自分に言い聞かせた
テスト返却日がやってきた
結果は………
当然、保健以外は赤点だった
この日の放課後、俺、優、順次、成宮さんでテスト結果を見せあった
俺のテストを見るなり優のパンチが俺の脇腹にクリーンヒットした
いつもなら、何か言うとこだが今回は何も言えなかった
順次と成宮さんは俺のテストを見て、爆笑していた
そんなこんなで、一学期は終了し、夏休みに突入した
テスト結果が散々だったので夏休みの宿題を大量に出された
しかも、お母さんが珍しくキレて、宿題が終わるまで遊ばせないと言われる始末………
半ば半泣き状態で宿題をやっている俺の元に救いの手を差し出してくれる一通の手紙が届いた
差出人は当然、成宮さんだ
手紙の内容は、風邪は引いてないか、宿題ははかどっているか、など色々と俺を気遣っているようだった
………成宮さん優しいのぉ
優なんて
「宿題に埋もれて死ね!!」
とか言うし、順次はワイハでエンジョイ中だし
今の俺にとっての癒しは成宮さんだけだな……
そう思いながら手紙を読んでいると
「………そうだ!!
今度、私の家の近くで夏祭りがあるんですけど、良かったら一緒に行きませんか?
お返事待ってます!!」
………一緒に夏祭りだと!?
夏祭りということは、成宮さんは浴衣を着てくるだろう
そして、人気のない道に入り………
※※あまりにも卑猥過ぎる妄想なので自粛します※※
この日は何度も手紙を読み返しては一人、妄想を楽しんでいた
8月の終わりに差し迫ったころ
宿題もなんとか終わらせた俺は今、桜彩神社の前にいる
この地域は昔から桜が有名だったらしく、通りや、建物の名前には必ずと言っていいほど"桜"がはいっている
そして、今日この桜彩神社で行われる祭り"桜寿祭"にも"桜"が入っている
今の時刻は19時半
成宮さんとの待ち合わせ時間は19時だが、まだ成宮さんは来ていない
………ま、まさかフラれた?
そう思っていると一人の浴衣美人が現れた
「ど……どうかな、田山くん?
変じゃないかな?」
その浴衣美人は成宮さんだった
あまりの美しさに俺は口を開けたまま見ていた
「す、すごく………キレイ……だよ」
「ありがとう………」
………なな何を言っちゃってるんだ俺はーーー!!
俺と成宮さんは何だか恥ずかしくなり、俯きながらその場で立ち尽くしていた
すると成宮さんが話し掛けてきた
「………行こっか」
「うん………」
桜彩神社の中に入ると、そこは広場になっていてたくさんの出店があり、その周りでは多くの人がひしめき合っていた
………迷子になったら大変だな
そう思いながら、俺と成宮さんは人だかりの中に入っていった
「あ、綿あめだ!!食べよーー!!」
そう言うと成宮さんは綿あめを売っている出店へ突撃しようと人だかりの中へ入ろうとした
俺は
はぐれちゃうといけないと思って
おもわず
成宮さんの手を掴んだ
「あ………」
手を掴むと成宮さんは立ち止まって俺を見た
成宮さんと見つめ合う
まるで俺達の間だけ一瞬時間が止まったように感じた
その後、すぐに手を離して綿あめを買いに行った
その間、特に会話はなかったが嫌な沈黙ではなく、むしろ心地よかった
綿あめを買うと成宮さんは美味しそうにそれを頬張った
俺も負けじと口一杯に綿あめを詰め込んだ
久しぶりに食べた綿あめはすごく甘くて一瞬で溶けてなくなってしまった
綿あめを食べ終わった後、たこ焼き、焼きそばを食べて、金魚すくいをすることになった
結果は…………
5回挑戦して一匹も取れず、無駄に時間を使っただけだった
まぁそんなに金魚が欲しかった訳ではなかったが………
最後の一回は成宮さんも少し苦笑いしていたかな
金魚すくいが終わると時間が21時になったので帰ることになった
成宮さんと一緒にいると時間が過ぎるのはあっという間だった
……時間が止まればいいのになぁ
そんなふうに思ったのは初めてだった
誰かと一緒にいて、こんなに心が安らぐことは今まで経験したことがなかった