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聖女と世界一かっこいいゴリラ  作者: 毒アリクイ先生
13/17

【14】

 またも御世話係の老修道女マーヤ・ヤーマにだまされて――、


 私たちは、お金が無くて困っていた。


(マーヤ・ヤーマのやつ、手のこんだ真似を……。

 こんなの、手間を考えたら、金貨を払った方が簡単だったんじゃないの?)


 だとすれば目的は嫌がらせだ。


 森ではお金がいらないので平気だが、その後、森を抜けてお金が必要になったあたりで絶体絶命の危機になるよう、地球の言葉でいうところの『時限爆弾』を仕掛けたのだ。


 コイン型のゴーレムたちは、相変わらず、



「――ジャラ、ジャラ、ジャラ、ジャラ」



 と鳴き声をあげていた。


「この子たち、宿代のかわりにならないでしょうか?

 にぎやかで、ペットのかわりになると思うのですが」


「無理だな。こんな気味の悪いもの、家には置いておきたくないだろう。

 ――だが、不必要なものを代金のかわりにする、というのはいい考えだ」


 とはいっても、ローランドはゴリラだから全裸で、持ち物は剣くらい。


 私は着の身着のままで大聖堂から脱出したし……。


「あっ、そうだ! いらないもの、ありました!」




◆          ◆          ◆




「――というわけで、おじさま。このドレスと冠を宿代のかわりにできないでしょうか?」


「おンや、まあ! こんな高そうな服を……!」


 私が差し出したのは、森の中でずっと着ていた式典用のドレスと冠。


 おじさんは驚いていた。

 たしかに3ココズ(日本円にして約3万円)のかわりとしては高価だろうが――、


 でも、どうせ私にとっては、もう必要のないものだ。


「追いはぎに遭ったのに、お服を持っておられただかね?」


 あ、驚いていたのはその理由か。

 そういえば、そんな設定だった。


「なんと言いますか、私たちにもいろいろ事情があるのです」


「事情はええだが……

 これって、神聖教会の聖女さまのお召し物では?

 あんた、まさか聖女さま……!」


 いけない。さすがに気づかれた!


「大聖堂が帝国軍に攻められたと噂で聞いておっただが――

 もしかして、大聖堂は陥落して、ひそかに聖女さまだけ逃げ延びなすっただか?

 だとしたら、今までおそれ多いことを――!!」


 いい勘をしている。

 農村のおじさんだからと思って甘くみていた。


「違います! 私は聖女じゃありません!

 この服は、その……拾ったのです! そのへんで!」


 我ながら、しらじらしい言い訳だ。


 もはやごまかしきれないかと覚悟していたが――、


「なるほど……そういうことなら宿代のかわりに受け取るだァよ」


 さすがは純朴な村のおじさん。

 強く言い張ったら信じてくれた。




◆          ◆          ◆




 やがて、日が暮れる。


 夕食は、昼と同じメニューに、さらに匂いの強い山鳥の肉を焼いたものと、水で薄めたビールがついた。


 シチューは味付けを変えてあるのか、昼食べたときより、ほんのりとした甘みがあった。


「食事が済んだら寝るとええ。

 ところで、あんたら夫婦じゃねえだな?」


「はい、違います」


「じゃ、寝室は別々だァ。

 このへんは教会さまも近くて信心深い土地だァでな、ウチの家で夫婦でもねえ男女がいっしょの部屋で寝るなんてバチあたりは許さねえ」




 こうして、私とローランドは別々の部屋で寝ることにした。


 森の中ではずっといっしょだったので、ひさしぶりのひとりきりの時間となる。


 妙な感じだ。

 ひとりになったせいで、逆に今までずっといっしょだったことを強く意識させられた。


 あの毛布の匂いのするゴリラが近くにいないと落ち着かない。


(『夫婦でもねえ男女がいっしょの部屋で寝るなんて』か――)


 逆に言えば、ここしばらくは夫婦も同然の夜を過ごしてきたということになる。


 はしたない限りだ。もう聖女じゃない。


(ローランドも、私がいなくて寂しいかな……?)


 夜が長く感じる。

 私は隣の寝室に遊びに行こうか迷っていたが、おじさんに見つかればまた何を言われるかわからない。


(いっそ、ローランドの方から来てくれれば助かるのに……)


 と、そんなとき。



 ――こん、こん



 部屋のドアがノックで鳴った。


「どなたです?」


「私だ」


 開けると、ローランドが立っていた!!


「あの……

 ローランド、どうしたのです?」


 やはり寂しくて、私の部屋に来たのだろうか?

 それとも、まさか――


(『夫婦でもねえ男女がいっしょの部屋で寝る』ようなことをしたくて……?)


 だとしても、不思議と嫌とは思わなかった。


 彼は、例のイケボの声をひそめて、私に訊ねた。


「エウァ、腹は痛くないかね?」


「お腹……?

 え、ええ、少々……。

 恥ずかしながら、意地汚く食べすぎましたので……」


「ならば痛みが軽いうちに、このドングリの渋皮を10個分食べたまえ。胃の薬になる。

 きみの腹痛は食べすぎではない。

 シチューに赤い実が混ぜてあったからだ。味でわかった」


「赤い実? 森で食べた、お腹を壊す赤い実ですか?

 どうして?」


「体の具合が悪くなれば、ここに長居することになるからな。

 この家の主人め、そうやって何日か足留めする気だ」


「宿代を多く欲しいから?」


「いいや――。

 帝国軍に我々を売る気なのだ」



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