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聖女と世界一かっこいいゴリラ  作者: 毒アリクイ先生
11/17

【12】

 私――エウァンシェリルと傭兵ローランドは、


 ついに、あの広い森を抜け、人里へとたどり着いたのだった。


 小さい、ささやかな農村だ。


「さっそく食べ物を分けてもらいましょう。

 それに、できれば泊めてもらいたいところですね。

 ひさしぶりにベッドで眠りたいです」


 森の中では、枯れ葉の上に、穴だらけの毛布一枚で眠っていた。

 ベッドとお布団とシーツが恋しい。


 もちろん文句を言ったら、自分の毛布を譲ってくれたローランドに悪いのだけど。


 ローランドは『自分はゴリラで毛皮があるから毛布は不要だ』と言ってくれていたけど、本当にいらないなら毛布は持ち歩いていないはずだ。


「行きましょう!」


「いや、その前に……。

 エウァは、その恰好で村人の前に出る気かね?」


 そうだった。


 私が着ているのは、教会の式典用ドレス。

 頭には冠までかぶっていた。


 これでは、私は聖女だと宣伝して歩いているようなものだ。


「どうしたものか。着替えなど用意していないのだし……。

 私が人間なら、自分の衣類を貸すのだが。

 今ほどゴリラであることを悔やんだことはない」


「ローランド、全裸ですものね」


 だが、どうしたものか。


 まさか、服を脱いで裸で村に行くわけには……。


「――そうだ、いい方法を思いつきました!」


 わりと、その『まさか』の手だ。



◆          ◆          ◆



 私たちは村に入ると、ちょうど野良仕事をしていた村人に声をかけた。


「あのお、そこのお方――。

 私たち、旅の者なのですが、この村に1日か2日、お世話になりたいのですが……」


 私の言葉に、|鋤{すき}を引いていた村人のおじさんは、


「お嬢さん、そのかっこう、どうしただね!?」


 ――と、私の姿に驚いていた。


「なんで、往来を下着姿で歩いとるだ?」


「これは、その……いろいろ理由があるのです。

 つまり、ええと――追いはぎにやられて」


 そう。

 私は下着姿に、上から毛布を一枚羽織った状態でここにいた。


 下着といっても、上流階級用のやつだから、モコモコのかぼちゃズロースにキャミソールだ。

 前々世の地球の日本じゃ、下手をするともっと薄着でみんな町を歩いてた。


 その上、(あちこち穴だらけとはいえ)毛布を羽織っていれば、なんとかなると思っていたのだが……。


(というか、村人のおじさん、下着を意識しすぎじゃない?

 べつにセクシーランジェリーってわけじゃないんだし!)


 野良仕事中の土だらけの顔で、思いっきり照れていた。


 ちなみにローランドは、真っ黒いゴリラの顔を苦々しくしかめていた。


「エウァ、だから言っただろう。

 いちかばちかで、はしたない姿を晒すものじゃないと」


 みたいね。

 穴だらけなのは毛布でなく、私の考えだったらしい。


「とにかく、あんたら、わしの家に来るがええ。

 女房のお古でよければ服を譲ってやるだで、そんなかっこうで歩くでねえ」


「ありがとうございます……」


 結果としては、どうやら上手くいったらしい。


 正体も気づかれずに済んだ。

『はしたない女』と思われたかもしれないが、まさか聖女だとは思われてはいないようだ。


「けンど、このへんにも追いはぎなんて出るだあな……。

 大聖堂で戦があったというし、世の中物騒になってんのかもしれねえだ。

 ――そっちの黒くてでっかい旦那も、お連れをしっかり守らにゃあ」


「そうだな、面目ない」


 ローランドは、ばつが悪そうに頭を掻く。


 しかし、おじさん、よく考えたら、私の下着よりゴリラで驚きなさいよ。

 ゴリラの方が珍しいでしょ。


(まあ、このへんは教会の中央大聖堂からそこまで遠くないし、影響強い地域だから当然か……。

 教会の教義で、異民族を差別しないように教えてたから)


 神聖ル・ウース教会は、全体的には悪徳宗教のくせに、信徒相手には立派なことを言っていた。

 それとも悪徳宗教だからこそなのだろうか。



 ともあれ私とローランドは、村人のおじさんの家へと向かう――。



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