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聖女と世界一かっこいいゴリラ  作者: 毒アリクイ先生
10/17

【11】


 同時刻――。


 メデテラ連合帝国、ル・ウース大聖堂討伐軍、本陣。


「報告!

 聖女を追っていた斥候ですが――」


「どうした?」


“斬首姫”ことメルウ・グルゼ軍事伯は、報告をしに来た副官の足音で、すでに眉をひそめていた。


 この副官、一見冷静沈着な男であるが、その実、叱られるのに臆病であるため、悪い報せの際は足音がすくむ。


(……どうやら、かなり悪い報告と見た)


「言ってみよ」


「は……。

 聖女と“大剣”ローランドを追っていた斥候隊20名、全滅いたしました」


「20名、全員か?

 死んだのか」


「は。少なくとも19名は。

 遅れて森に入った兵たちが、死体を確認いたしました」


 死体のひとつが、死ぬ間際まで状況を紙に記録していた。

 なんでも深夜、聖女エウァンシェリルが寝静まったのち、潜んでいた斥候たちをひとりずつ見つけ出しては、順に狩っていったのだという。


 猟師出身者や獣人、山岳の異民族などで構成された、森に強い斥候隊であったはずなのだが……。


(しかし、あの男なら、そのくらいして不思議はないか。

 甘く見ていた)


「頭の痛いことだ。

 ときに……まだ死体の見つかっていない一名だが」


「“赤い実”チュカという名の『|野伏{のぶせ}』です」


“|赤い実{チュカ}”は、大陸全土で取れる、食べると腹を壊す果実のことだ。


 名前からして、女の野伏であったのだろう。


(やはり女か……。

 では、生きているかもしれんな)


 ローランドは、女に対して、あるいは女の目のあるところでは、やたらと紳士を気取りたがる。


 あの無敵の傭兵の、ほぼ唯一の隙であった。


「もし“赤い実”チュカとやらがまだ生きていれば、褒美は十倍出す。そのまま聖女とローランドを追わせるのだ。

 面白い一手となるかもしれん」



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