【11】
同時刻――。
メデテラ連合帝国、ル・ウース大聖堂討伐軍、本陣。
「報告!
聖女を追っていた斥候ですが――」
「どうした?」
“斬首姫”ことメルウ・グルゼ軍事伯は、報告をしに来た副官の足音で、すでに眉をひそめていた。
この副官、一見冷静沈着な男であるが、その実、叱られるのに臆病であるため、悪い報せの際は足音がすくむ。
(……どうやら、かなり悪い報告と見た)
「言ってみよ」
「は……。
聖女と“大剣”ローランドを追っていた斥候隊20名、全滅いたしました」
「20名、全員か?
死んだのか」
「は。少なくとも19名は。
遅れて森に入った兵たちが、死体を確認いたしました」
死体のひとつが、死ぬ間際まで状況を紙に記録していた。
なんでも深夜、聖女エウァンシェリルが寝静まったのち、潜んでいた斥候たちをひとりずつ見つけ出しては、順に狩っていったのだという。
猟師出身者や獣人、山岳の異民族などで構成された、森に強い斥候隊であったはずなのだが……。
(しかし、あの男なら、そのくらいして不思議はないか。
甘く見ていた)
「頭の痛いことだ。
ときに……まだ死体の見つかっていない一名だが」
「“赤い実”チュカという名の『|野伏{のぶせ}』です」
“|赤い実{チュカ}”は、大陸全土で取れる、食べると腹を壊す果実のことだ。
名前からして、女の野伏であったのだろう。
(やはり女か……。
では、生きているかもしれんな)
ローランドは、女に対して、あるいは女の目のあるところでは、やたらと紳士を気取りたがる。
あの無敵の傭兵の、ほぼ唯一の隙であった。
「もし“赤い実”チュカとやらがまだ生きていれば、褒美は十倍出す。そのまま聖女とローランドを追わせるのだ。
面白い一手となるかもしれん」




