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第9話 逢瀬(3)新しい発見をしたい!

6月中旬の週の半ばになって昼過ぎに直美からメールが入った。[次回は7月9日(金)10日(土)11日(日)]。


すぐに仕事のスケジュールを確認した。8日(木)と9日(金)は岡山支店での打ち合わせの仕事が入っていた。9日(金)の午後の打ち合わせを終えたら直接、大阪経由で金沢へ向かえばよい。廸にも旅費の節約になるから実家に寄って行くと言えば体裁がつく。すぐに[了解]の返信を送った。


同窓会からもう1か月が経とうとしていた。2か月毎だから1か月前にはそろそろ次の帰省の日程を決めなければならない時期だった。どうしようか、こちらから予定を知らせようか考えていたところだった。メールを受け取って、気が合うというか気持ちが通じ合っているそんな気がした。


◆ ◆ ◆ 

7月9日(金)岡山支店での午後の会議は3時には終わった。その後にも簡単な打ち合わせが入って予定よりも遅れてしまったが、午後4時には岡山を立つことができた。これだと金沢には8時過ぎには着ける。それでメールで[到着は8時過ぎ]と入れた。すぐに[了解]の返信が入った。


ホテルにチェックインしたのは8時30分だった。まず、実家の母親に金沢に着いてホテルにいるから明朝9時過ぎに訪ねる旨の連絡を入れておいた。それから、直美に[無事到着1240]と知らせた。すぐに部屋の電話が鳴った。


「お疲れ様、お元気ですか?」


「岡山に出張していて、今ちょうど着いたところです。遅れてご免」


「お食事は?」


「新幹線の中で済ませた。君は?」


「母と実家で済ませました」


「これから行くけど何号室?」


「となりの1241号室です」


「隣同士になることもあるんだ。お土産にお菓子を買ってきたから持っていこう」


「今日は私の方で飲み物とおつまみを用意しました。お待ちしています」


シャワーを浴びてからとも考えたが、遅くなったのですぐにでも会いたかった。部屋のドアをそっと開けて、周りに誰もいないことを確認して、隣のドアをそっとノックする。


すぐにドアが開いて、微笑んだ直美がいた。すぐに中に入って、ドアの音がしないように注意する。直美が抱きついてくる。抱き合うとすぐにでも愛し合いたいそんな気持ちがこみ上げてくる。でも今日はとても暑かった。


「すぐに会いたくて来てしまったけど、今日は汗をいっぱいかいたからシャワーを使わせてもらっていい?」


「今日は暑かったから私も汗をかきました。もうシャワーを一回浴びましたので、ゆっくり使ってください。そのあと飲みもので喉を潤してください」


ここにいれば、もう人の目も気にしなくてもよいし、誰にも邪魔されないことが分かっている。徐々に気持ちが落ち着いてくる。ゆっくりでいい。熱いシャワーが心地よい。


身体を拭いて部屋に戻ると、テーブルにレモンサワーの缶が2本置かれていた。


「レモンサワーが好きなの?」


「さっぱりしているので時々いただきます」


「再会を祝して乾杯」


飲み終えると、手を伸ばして引き寄せて抱きしめる。直美も力一杯抱きついてくるので、すぐに気持ちが昂る。そのままベッドで愛し始める。時間は十分ある。


◆ ◆ ◆

直美は僕の腕の中で余韻を楽しみながら、うっとりしたまなざしで僕の回復を静かに待っている。


直美は何度も昇り詰めていた。そのたびに押し殺したような声を出していた。大声を出したいのかもしれないが、外へ漏れるリスクはある。でもこれは部屋の外で確かめないと分からない。


僕は直美には廸にいまさら遠慮があってできそうもないことをしたかった。彼女は当然のことのようにそれを受け入れてくれた。それが嬉しかったし、僕を鼓舞してくれた。


「すごくよかったわ。こんなに気持ち良かったことは初めて」


「いつもはしないことをしてみたかっただけだけど、悦んでもらえてよかった」


「まだ、お互いのことを十分に分かっていないから、恥ずかしがらずに何でも試せるのかもしれないわね」


「お互いに知りすぎていると恥ずかしくていまさらできないし、頼めないこともある」


「お互いに知り過ぎていないから、こういうふうだという思い込みがなく、抵抗なく受けいれられるのだと思います」


「確かに、まるで恋人とHをはじめたばかりで、お互いに慣れていなくて、何でもこれが当たり前として受け入れられるのだと思う」


「慣れてくると、かえって新しいことにはチャレンジしにくくなるのかもしれませんね」


「何事も初めが肝心だとはよく聞く話だけど」


「私たちはこれからも何も遠慮しないことにしましょう。また、遠慮する間柄にはなりたくないわ」


「お互いにしたいことをする、してもらいたいことを素直に伝えることにしよう」


「毎回、新しい発見をしたいわ」


「それは結構『努力』がいるかもしれない。君も協力してくれないと」


「もちろんです。『努力』って辛いけど頑張ることでしょう。でもあなたは私もHも『好き』でしょう。私も『大好き』です。『努力』が大切と言われるけど『努力』と『好き』では『好き』の方が絶対に勝っていると思います。『好き』だから『努力』なしで寝食を忘れても続けられると思うの」


「寝食を忘れても続けられるは極端だけど、確かに『好き』だとできないことなどないと思う。その君の新しい発見をしたいという思いを大切にしたい」


「それを忘れないで下さい」


直美が抱きついてきた。僕はもうすっかり回復していた。


◆ ◆ ◆

次の晩も僕たちは新しい発見を求めて愛し合った。確かに四十八手も体位があることが知られている。僕が今まで試したものはほんの一部に過ぎないと思う。


「好き」という気持ちさえあれば、新しい発見とその奥深さを無限に探究し続けることができるかもしれない。そう思った。直美もそう思っているに違いない。二人にしかできないことをしてみたい。

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