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第1話 逢瀬のはじまりー思い出の人との偶然の再会

これまでいろいろなタイプのハッピーエンドのラブストーリーを書いてきましたが、不倫をテーマにしたものは書いていませんでした。それは不倫のラブストーリーはハッピーエンドにできないので書きたくない書きようがないからでした。


でも禁断のテーマ「不倫」のラブストリーに挑戦してみたくなりした。誰も傷つかないハッピーエンドの不倫のラブストリーを書いてみたくなりました。それを4組の夫婦の間に起こる出会いから別れを、浮気と本気のはざまで揺れ動く主人公と親友とそれぞれのパートナーをとおして書いてみることにしました。


主人公と親友の二組の「不倫ごっこ」は昔、恋愛を成就できなかった相手と再会するところから始まります。思いを残していた二組のカップルの「不倫ごっこ」はそれぞれ進んでいくのですが。

3月13日(土)駅前でバスを降りると丁度雨が降りだした。もう午後9時を過ぎている。このごろは特に天候が変わりやすい。バスに乗るときは晴れていたのにと傘を忘れたことを悔やんだ。ここは「弁当を忘れても傘は忘れるな!」の土地柄だ。


ホテルまで4~5分の距離だから、ビルの軒下をたどりながら小走りに急ぐ。ホテルの入り口が見えてきたのでほっとした。駆け込んでフロントでキーを受け取り部屋へ向かう。幸い小降りだったのでほとんど濡れなかった。夕食は母親と実家で済ませたので、あとはお風呂で温まって寝るだけだ。


エレベーターに乗ったところで上階へ向かうとすると、女性が駆け込んで来るのが分かった。Open キーを押してドアを開けて待っていてあげた。「すみません」といって女性が入ってきた。


「何階ですか?」


「10階をお願いします」


女性と目が合った。見覚えのある懐かしいまなざしだった。それに髪はあの時と変わらないショートカットのままだった。すぐに誰だか分かった。


「田代さん?」


「吉田さん? お久しぶりね。何年ぶりかしら?」


「10年前の同窓会以来かな?」


「でもあの時はお話できなかったわ」


「どうしてここにいるの?」


「時々実家の母親の様子を見に来ているの」


「僕もそうだけど、こんなところで会うなんて偶然だね、驚いた。」


「もうこんな時間だけど、私は明朝大阪へ帰るので、少しお話しませんか?」


「そうだね、久しぶりに会えたのだから、ラウンジにでも行く? それとも部屋に来る?」


「ええ、差し支えなければ、私の部屋に来ませんか?」


「いいけど、何号室?」


「1025号室です」


「同じ階だね。僕は1035号室だ。荷物を置いてからすぐに行くよ」


僕は吉田よしだ(すすむ)、彼女の名前は田代たしろ直美なおみ、高校の同級生だった。この前にあったのが10年前の同窓会だった。個人的に二人だけで会ったのは13年ほど前になるが、その時が最後だった。彼女とのことは今ではもうすっかりほろ苦い思い出となっていた。


部屋に戻ると荷物を置いて彼女の部屋に向かう。なぜ彼女は僕を部屋に誘ったのだろう?僕の部屋ではいけないのか? よく分からない。


1025号室をノックする。すぐにドアが開いた。そこには微笑んでいる直美がいた。あの時から少しも変っていない。懐かしさがこみあげてくる。


部屋に入ってすぐに僕は前を歩く直美を後ろから抱き締めていた。もう気持ちが抑えられなかった。なぜだろう? シャイな僕には今までこういうことは全くできなかったし、したこともなかった。


拒絶されたら「ごめん懐かしかったから」と謝れば取り繕えるととっさに思った。でも直美は抱き締めている僕の腕を握り返してきた。その反応に僕は一瞬たじろいで抱き締めていた手をゆっくりほどいた。


直美は振り向いて僕を見た。僕はその潤んだ目を避けるようにキスをした。直美は抱きついてきた。舌が僕の中へ入ってくる。こんなことを直美はするんだ!


僕は驚いてその感触をしばらく楽しんだ。その間に直美を失ってからしばらくその大きな胸とお尻を夢想して何度も繰り返していたシミュレーションを思い出した。そしてそれを今、実行に移そうとしている自分に気づいた。


◆ ◆ ◆  

ベッドの時計を見ると午前4時だった。薄いカーテンの外はまだ真っ暗だ。僕は直美を後ろから抱きかかえるようにして寝ている。彼女はまだ眠っているみたいだ。寝息が聞こえる。


あれから二度愛し合った。華奢な身体つきの小柄な直美だったが、大きな乳房と乳輪、大きなお尻は思っていたとおりだった。また、指が吸い込まれそうな柔らかな肌をしていて身体全体がとても敏感だった。


今まで経験した女性の中で一番かもしれない。妻のみちも感じやすいが、これほどではない。何度も何度も上り詰めて、ぐったりして眠りに落ちて行った。僕にもまだ心地よい疲労が残っている。


直美は僕の突然の衝動を受け入れてくれた。拒絶の言葉もなく抵抗もしなかった。それが嬉しくて快感につながった。

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