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Phantom Busters  作者: spica
2/7

シリアルキラー

「竜司、お前はきっと将来立派な霊能者になれるぞ!」


「あなたは私達の誇りよ!」


これは…俺の記憶…?

この2人に見覚えはない、でも懐かしい感じがする…

もしかして、この2人が両親なのか…?


    ◇◇


まどろみの中、意識が覚醒していく。

目を開くと視界に映るのはいつもの見慣れたボロ家の天井。


「家…?俺、いつのまに帰ってきたんだ…?」


確か俺は昨日、おかしなゾンビ野郎に襲われて、それで虎太朗とかいう胡散臭い奴に会って、精神世界?だかでゾンビ野郎を倒して……って駄目だ!全く頭が追いつかない…


「…それにさっきの夢」


あれは本当に俺の記憶なのか…?

今まで昔の記憶なんて夢にさえ出てこなかったっていうのに…何で、今更…


「…今は考えてても仕方ないか、さっさと学校へ行こう」


身支度を整え、学校に行く準備を終えた俺は家を出ていつものように通学路を歩く。

普段通りの日常…に思えたが、道中に決定的にいつもとは違う異質な光景を見ることになる。


「……これは昨日の」


粉々に砕かれているアスファルト。

それが昨日の一件は夢でもなんでもないんだと嘲笑っているかのように思えた。


「いや、昨日の一件でPhantomは消失した。通り魔事件だってこれで解決したはず…」


逸る気持ちを抑えつけ、半ば自分に言い聞かせるように呟き俺は学校への道を急ぎ歩いた


    ◇


教室に着くと名前も知らないようなクラスメイト達があちらこちらで会話をしている。

いつもと同じ代わり映えしない光景だ。

俺はクラスの連中には目もくれず自分の席に向かう。


「ふぅ…」


椅子に座りひと息つくと張りつめていた緊張が解けていくのを感じる。

しかしそこである事に気がつく、手首の数珠がない…?

確かに学校に着くまでは付けていたとハッキリ覚えている。

教室に着くまでの道で落としたのか…?

面倒だが大事な物だ、探しに行かないと…


「おい笠置、そろそろHR始まるぞ?どこ行くんだ?」


声をかけてきたクラスメイトを無視し、俺は教室の外に出る。

今はお前らに構っている暇はないんだよ。

この教室は3階…なら階段か昇降口か、どちらかで落とした可能性が高い。


    ◇


廊下、階段の踊り場、各階それぞれ隈なく探したが影も形も見当たらない…。

なら昇降口か、これでもし見つからなかったら学校の外まで出るしかないな…。


「………」


昇降口まで出ていくと、そこに妙な雰囲気の女の子が壁に背を預けて佇んでいた。

見た目は美人だがどうにも冷たい印象を受ける。

まぁそんなことはどうでも良い、探し物の方が優先だ


「ねぇ、探し物はこれ?」


「へ?」


声をかけられるとは全く予想していなかったからかなり間抜けな声が出た。

だがそれ以上驚く事に彼女の手には俺が落とした数珠が握られている。


「あ、あぁ…そうだけど…でも何で?」


「…あなたのことはずっと観察していたから」


「はぁ?観察…?」


いきなり何言ってんだこの女は…。

観察ってなんだ、ストーカーか?危ない奴じゃないだろうな…


「…いらないの?」


「いるよ、どうも…」


彼女から数珠を受け取り手首に付けようとして気づく。

紐が切れている…。

それだけならまだいいが、切れ方が少し妙だ。

まるで誰かが意図的に切ったような…。


「………」


「…なんだ?」


彼女はまだ俺をじっと見つめてくる。

…やっぱり危ない奴なのかもしれない。


「…やっぱり大したことはなさそう、鷲也が執着する理由が分からない」


そう言うと彼女は興味を失ったかのように俺に一瞥もくれず校舎の外へと出て行く。

一体なんだったんだ…?


「シュウヤ?いやまさかな…」


その名前には覚えがある、九条鷲也…。

そういえば昨日の九条先生はいつもと様子が違ったように見えた。

一体なんだって言うんだ…頭がおかしくなりそうだ…。

混乱する俺を他所目に始業チャイムの音か虚しく鳴り響いていた。


    ◇◇


結局、HR開始の時間に間に合わなかった俺はまたしても放課後に九条先生から呼び出しを食らい、お叱りを受ける羽目になった。


「笠置、先生は悲しいぞ?授業を真面目に聞かないどころか、まさかHRをサボるなんて…」


「いや、別にサボったわけじゃ…」


「あれがサボりじゃなかったらなんだって言うんだ!」


まぁ確かにあの後、妙に気が乗らなくてそのまま適当な場所で時間潰してから一限目を受けたからサボりと言えばサボりである。


「その後授業はキチンと受けたんだから問題はないでしょ?」


「それは詭弁だぞ笠置。しかもまともに話を聞いてないんだから授業をキチンと受けたっていうのも間違ってるぞ」


「…ハイハイ、分かりましたよ」


ハイは一回だ!…それで笠置、今日こそは進路希望調査票書いてきたんだろうな?」


「………あ」


「昨日家で書いてこいって言っただろ!?」


やばい、すっかり忘れてた…。

というか昨日はPhantomとやり合ってから記憶ないし、気が付いたら家で寝てましたと馬鹿正直に言ったところでふざけてると火に油を注いで余計怒られるのがオチだ。


「まったく…。わかった、明日こそは書いて持ってこいよ?今日は早めに帰れ。また通り魔が事件起こしたみたいだからな」


「……え?」


通り魔だって…?通り魔は昨日のPhantomじゃないのか?

だったら本物の通り魔犯は一体…。


「どうかしたのか?」


「…いえ別に」


クソ!情報が足りなさすぎる…。

通り魔は複数犯なのか…?だとしたら全員がPhantom?

あんなのが何体も居るってのかよ…


「お、おい笠置、どうした?顔色が悪いぞ…?」


「…大丈夫です、今日はもう帰ります」


「あぁ、気をつけてな」


本当に体調が悪くなったのか、少しフラついた足取りで俺は職員室の戸を開け家路を急いだ。


「………」


    ◇


何とか無事に家に辿り着き、畳の上に倒れ込む。

幸いにも今回はPhantomと遭遇しなかったがまた遭遇してしまったら今度こそ殺されてしまう。

どうにかして対処法を…。


「そうだ…アイツ…!」


高蔵虎太朗だ!アイツはどうもPhantomに詳しい様子だった。

でもどうやって奴に会えばいい?

精神の中なんてどうやって行けば…。


「カハハハッ!俺が必要みたいやな、竜司」


「!?」


虎太朗の声…!?どこだ…どこにいる…?


「でもまあ悪いけど竜司の出番はここまでや、大人しく寝とけ。こういう事は汚れ仕事担当の俺に任しとき」


「それはどういう、意味……」


ダメだ…?…意識が…朦朧としていく…


ーーー




月明かりに照らされた夜の校庭、本来であれば人の気配などあるはずもない場所に向かい合う2人。

1人は教師である九条鷲也、そしてもう1人は生徒である笠置竜司だ。


「…どういうつもりだ?笠置。こんな時間に俺を呼び出すなんて…」


「いやなに、ちょっと気になる情報を小耳に挟みましてね…。何でも例の通り魔事件の現場に九条先生らしき人物の人影を見たとかなんとか…」


「なんだそれは、馬鹿馬鹿しい…。そんな下らない用で呼び出したのなら帰るぞ」


「あー、じゃあ単刀直入に…」


竜司は飄々とした態度を崩さないまま、しかし鋭い眼光で九条を睨み付ける。


「いい加減猿芝居はやめろよ九条鷲也。アンタがPhantomを使って引き起こした連続通り魔事件の黒幕だってことは分かってんだぜ?」


「そこまで分かってるなら仕方ない…。だけど俺もこれだけは言わせて貰おう」


「なんだ?」


「猿芝居というなら君もだろ?いい加減に笠置竜司の振りはやめたらどうだ?」


九条のその台詞を機に竜司ーーいや、高蔵虎太朗は凶暴な本性を露わにするかのように狂気的な笑みを浮かべる。


「…いつから気付いてた?」


「当然最初からだよ。考えを改めて引き返すのなら見逃してやろうと思ったが…」


「ハッ、抜かせや。こっちはハナっからお前の首取ることしか考えてへんわ」


「おお怖い怖い。ならせいぜい抵抗させてもらうとしようか」


九条が両手を広げたその瞬間地面が割れ、中から複数の人間が這い出てくる。

否、それはもはや人間と呼べる存在ではない、Phantomに憑かれ正気を失った生ける屍そのものだ。


「おーおー、思った通り基本戦術はPhantom使っての遠距離戦か。数はざっと十匹ほど…と」


「どうだ?これだけの数のPhantom、果たして君に対処出来るか?」


「アホ抜かせ、Phantomと力勝負なんぞ出来るかい。そもそも俺は殴り合いはからっきしやしな」


あっけらかんと言う虎太朗に対し九条は失望の表情を浮かべる。


「…ならば大人しく死ぬといい」


そう冷たく言い放つと指揮者のように指先を動かし、Phantomを操り虎太朗へと襲いかからせる。

状況は絶対絶命ーーしかし、対する虎太朗は余裕の表情を崩さない。


「そう慌てんなって、これでも俺は霊能者の端くれやぞ?大人しく見てろや!」


虎太朗は手首に付けている数珠を取り外すとメリケンサックのように拳に巻きつけ、襲いかかるPhantomをそのまま殴りつけた。

素人丸出しの大振りで隙の多い一撃、しかしその一撃はPhantomの魂を破壊するには充分だった。


「ほう…」


核を破壊されたPhantomは消滅し、取り憑かれた体はそのまま倒れた。

肉体はPhantomによる長時間の汚染に耐え切れず、物言わぬ肉片と化した。


「ま、この通り。低級のPhantom如きなら、このありがた〜い数珠を巻きつけて殴れば瞬殺ってな!」


「(いくら強力な霊器を使っているとはいえ、Phantomを一瞬で消滅させることは至難の業…。こいつ相当な霊能者だな)」


「オラどうした!まさかこの程度で終わりとちゃうやろ?」


「(上級のPhantomを使うには流石に時間がない…だが)」


「へいへい、かかってこいや!もっと俺を楽しませ…へぶっ!」


挑発を繰り返す虎太朗の顔面に九条の拳が突き刺さる。

予備動作のほとんど無い牽制じみた攻撃だったが、虎太朗を怯ませるに申し分のない一撃であった。


「…殴り合いがからっきしというのはどうやら本当みたいだな」


「いだだだ!!は、鼻がっ!鼻が折れる!」


鼻血を出しながら大袈裟に痛がる虎太朗。

先程までの余裕から一転、無様とも言える醜態を晒す。


「こう見えても武術の心得があるんでね、俺の美学には反するがこっちでやらせてもらう」


こうなってしまえば完全なワンサイドゲーム。

虎太朗は九条の攻撃に全く反応できず、ただ殴られ続けるしか出来ない。


「…あ゛…かはっ…!ぁぁ…!」


3分はたっただろうか、殴られ続け変わり果てた姿になって地面に転がる虎太朗。

息も絶え絶えに何とか動こうと呻き声を上げ続ける。


「…他愛もない。期待外れだな」


冷め切った表情のまま倒れている虎太朗に近づく九条。

トドメを刺すため右手を貫手にして構える、

心臓を貫くためだ。


「せめて最期は苦しまないように殺してやろう。さらばだ、名も知らぬ霊能者よ」


「…ヒヒッ…」


「…?なにがおかしい…」


満身創痍の状態にも関わらず、虎太朗は不気味な笑い声を上げる。

今更奥の手を隠し持っているとは思えない、しかし何だ?この得体の知れなさは…


「…この時を待ってたんや。お前が油断して無防備に近づいてくんのをな…!」


「…なんのつもりだ?まさか、近づくことが出来れば俺を倒せるとでも?」


舐められたものだ、そう九条は心の中で吐き捨てた。

あれだけ痛めつけられておきながらまだ勝ちを狙うその根性だけは称賛ものだ。


「おおその通りや。まったく…遠慮なしにどつきおって…」


「馬鹿もここまで来れば大物だな。お前に一体なにが出来る?」


「ならこう言や分かるか?Unconscious(アンコンシャス)…」


「なんだと…?」


九条が動揺を感じた僅かな瞬間ーー全ての力を振り絞り立ち上がった虎太朗が手を伸ばし、九条の体に触れる。


「来い!俺の世界へ!」


    ◇


それは一瞬の出来事。

気づいた時には九条は異空間の中で立ち尽くしていた。

混乱に次ぐ混乱、自らの理解を超えた現象に彼はなす術もなく取り乱すだけ。


「そんな…!ありえない…!」


「驚いとんなー。ま、無理もないか。本来、精神世界内であるUnconsciousにPhantom以外は引き摺り込めんからな」


対する虎太朗は悪戯が成功した子供のように笑う。

その時九条は過去に読んだ書物の中で人間の魂を自らに憑依させ、食らい尽くす鬼のような霊能者一族の話を思い出す。


「こんな芸当が出来るのは、貴様…!まさか…!」


「ご名答!退魔師の生き残りや」


「退魔師…!本当に実在していたのか…!」


退魔師ーー人が持つ原罪である『魔』を視ることの出来る一族。

霊能者にとっては古い文献でしか知ることのない都市伝説のような集団だ。


「さて、お前をぶっ潰す手段は何通りもあるが。ん〜どうやって料理したろか…」


狂気的な表情を浮かべる虎太朗。

これにより形勢は逆転、獲物を追い詰めたつもりの殺人鬼は更なる鬼の掌の上で転がされていたことにようやく気づかされた。、


ーーー




あれ…?ここは…?確か前にも来たことがあるような…。

そうだ、ここは…!精神世界の中!


「何や、起きてもうたか竜司」


「虎太朗!なんで俺、精神世界の中に…って九条、先生…?」


「か、笠置…?なぜお前がここに…いや、そうか。そういうことか…!」


何故俺の精神世界に九条先生がいるんだ…?

しかも様子がおかしい、まるで別人みたいだ。


「退魔師をその身に宿す霊能者…!これはとんだ掘り出し物だなぁ…!アーハッハッハッ!!!」


「九条先生…?」


「おい竜司、アイツが例の通り魔事件の犯人や。Phantomを操ってあちこちで一般人を虐殺しとる」


「は…!?そんな嘘だろ…!?先生が…!」


「あの狂気に染まったツラを見てみろ。あれがシリアルキラー以外の何に見える?」


…確かに、目の前で狂ったように笑い続ける先生は俺がよく知る九条鷲也ではなかった。じゃあやっぱり本当に、先生が…。


「先生!なんで通り魔なんか…!いやそもそもなんで先生がPhantomなんか使って…!」


「あぁ……?はははっ!もうそんなことはどうでもいい…。俺の標的は笠置ィ…!お前一人だ、お前さえ殺せれば後はどうでもいいっ…!!」


コイツは何を言っている?まるで会話が通じない…。

感じるのは明確な殺意…!一体どうすれば…!


「安心せえ竜司。イメージやイメージ。お前の武器、武装(エゴ)っていうんやけどな。それを取り出して戦えばいい」


「エゴ…」


ここは俺の精神世界、だったらそこで襲ってくる外敵は俺自身の手で倒さなきゃいけない。

ーー他ならない俺のエゴで…!


「ーー武装、展開!」


深呼吸、イメージするのは最強の武器。

物騒な形なんていらない、悪霊を祓うにはこれで充分。


「ーーっっ!」


俺の手に現れたのは巨大な数珠。

武器と呼ぶには余りに非力な代物かもしれない。

だが、俺からすればこれ程までに手に馴染む得物は他にない!


「おおおおぉぉ!!!」


ーー数珠刀・大車輪


喉が張り裂けそうなほど叫びながら全身全霊を込めて数珠を投げつけた。

俺の手を離れた数珠は光り輝くチャクラムの様に真っ直ぐ外敵へと向かう。


「ぐぉぉ…!!ぉぉぉ!!!」


九条先生の体は俺の投げた数珠刀によって深い刀傷を負った。

しかし、致命傷には至らなかったのか消滅する様子はない。


「…流石だよ笠置、やはりお前は最高だ…!だが俺はまだ消えるわけにはいかないのでね、ここは退かせてもらおうか…」


「は?逃すと思ってんのか?ここは俺らの世界やぞ、簡単に出られるとでも…」


「残念ながら可能なんだよ、俺の技術を持ってすればね」


先生は噛みつく虎太朗をあしらいながら指を鳴らす、すると先生の体が透け始めた。

これはこの前のPhantomのような消え方じゃない、消滅ではなく逃走か!


「クソっ!どういうカラクリや!?」


どうやら虎太朗もこれは流石に予想外だったらしく、珍しく狼狽した様子を見せている。


「笠置、明日持ってこいって言ってた進路希望調査票だが、提出の締め切りは未定でいいぞ」


「は…?」


この緊迫した状況とはあまりに不釣り合いな言葉に耳を疑う。

この状況で何故いきなりそんなことを…?


「俺はしばらく姿をくらますことにするよ。だが、いずれ俺とお前は再び出会うことになるだろう。その時にでも持ってきてくれ。それはお前の遺品、コレクションとして大事に持っておくことにするよ」


「はぁ!?何やねんこいつ!マジでキショいわ!」


鳥肌を立たせながら嫌悪感を露わにする虎太朗。

確かにこれは気持ち悪い…、この人は骨の髄まで狂ってるようだ。


「ではさらばだ笠置、そして笠置の中に宿る特異点よ。…そうだ、代わりと言っては何だが置き土産を残しておくことにした。扱いづらい奴だが、まぁ仲良くしてやってくれ」


言いたいことだけ言ってそのまま九条先生は消えた。

…結局謎は謎のまま更に深まっただけだったが何とか脅威は去ったな。


「…あれ?」


俺の意識も限界なのかまた朦朧としてきた。虎太朗の奴にまだまだ聞きたいことがあるっていうのに…。


「ま、嫌でもこの先また会うことになるやろ。とりあえず今は寝てろ、ゆっくり休め」


本当に、勝手な奴…

視界がゆっくりと白に塗りつぶされていき、俺の意識はそこで完全に途切れた。





学校に登校すると校内は2つの話題で持ちきりだった。

まず一つ目は九条先生の転勤だ、姿をくらますと言っていたのはどうやら本当だったらしい。

少なくとも表向きは人気者だった先生の急な転勤に学校内は騒然としている。

そしてもう一つの話題だが、それはうちのクラスに転入生が入ってくるという話だった。


「(確かにこの時期に珍しいな。ま、俺には関係ない話だが…)」


始業ベルが鳴り、教室に代理の担任となる教師が入ってくる。

未だにざわつく生徒を手を叩きながら制する。


「あーお前ら静かに!このクラスに今日から一人新しく仲間が増えることになる!入ってきなさい!」


開かれたドアの方を見ると、そこにいたのは昨日昇降口で俺の数珠を拾った例の頭のイカれた女だった。

…こんな偶然あるか?しかしこの後、俺は更にもっと度肝を抜かれる発言を聞くことになる


「…九条恋(くじょうれん)です、よろしく」


「彼女は転勤した九条鷲也先生の娘さんだそうだ!みんな、仲良くするんだぞ!」


九条先生の娘…!?

あのサイコ野郎、置き土産ってこういうことかよ!

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