第1夜:あの子とわたし
「おはよう、マイ」
朝学校にいけば、たくさんの人に声をかけられる。
わたし 園崎 舞は学校では有名な方だろう。
「おはよう、サツキ」
サツキは高校に入ってからの友達で、2年間同じクラス。
わたしは明るめに染めた髪を揺らしながら、サツキの方をむいた。
「サツキちゃん、おっはよぉ!」
サツキは金髪で目立つせいか、注目を浴びやすい。 そして、変なウワサが多いことも事実だ。
正直いって 性格が良いとはお世辞にも言えないくらい。 むしろ、『悪い』といったほうが合ってるんじゃないかな…。
わたしは別に サツキが好きだというわけではない。できれば、関わりたくない。 でも、自分のために一緒にいるんだ。
これは、女の子だったらみんなが経験すること。
あなたの周りにもいない?
そういう人が。
今日も 同じ朝。
繰り返しの毎日が今日も始まる――。
キーンコーン…
「せぇっふッッ!」
いつもギリギリで教室に飛び込むわたしとサツキに、怒ったりする人は誰もいない。見つめるだけ。 みんなサツキが怖のだろう。
HRが終わると、チャラチャラした女子と一部の男子が集ってくるのが習慣。いつも中心にいるのはわたしとサツキ。
周りから見たら、どんなカンジなんだろう。
「なぁ、今日カラオケいこうぜ!」
「いいねぇ♪いこいこ!」
誘うのはいつも男子。そして、それに乗る女子達…。カラオケなんて、ほとんど毎日通ってるから飽きた。けど、断るなんてできない。
だってわたしはサツキのおかげで輝いてるんだもん。離れるのが怖い。
離れたらわたしなんて、ただの女子。 そんなの嫌だ。
みんなの輪のなかにいなきゃ…。
「マイも行くよね?」
「あ…、あったり前じゃぁん!」
サツキの問いかけに、わたしはテンションアゲメに答えた。
顔ひきつってたかな。
自分を押し殺すのなんて、もうなれちゃった。
『自分らしさ』は、どっかに置き忘れたもん…。
サツキとわたしの関係は、今おもえば作り上げたウソの絆で、できていたんだね。