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藤井政人の異世界戦記 ~勇者と共に召喚された青年は王国の統治者となる~  作者: へびうさ
第三章 玉座への道

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51.政人の成長

 政人、タロウ、ハナコの三人は、タンメリー女公領の宿場町ピンロイへ向かって、山道を歩いている。

 旅人が通る正規の街道であるため、整備されていて歩きやすい。


「御主人様、よかったのであるか?」

「なにがだ?」


「あの万年筆は聖司教から貰った大切なものなのであろう」

「まあな。でも仕方ない、子供を助けるためなら、きっと聖司教も許してくれるさ」


「御主人様は優しすぎます。アイツは牢から出たら、また悪さをしますよ」


 タロウはポンチャに対して、かなり腹を立てているようだ。


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」


 政人はタロウの頭を()でて言った。「でも、あのまま逃がしていたら、間違いなく盗みを続けていたはずだ。タロウ、よく気付いて捕まえたな」


「あ、はい」


 タロウは政人に褒められ、嬉しそうに尻尾を振った。



 三人はそのまま、特に危険な目に()うこともなくピンロイの町に到着し、ルーチェたちと合流した。

 五人の男たちもそろっていた。


「全員無事だったようだな」

「マサトたちはどうだった、タヌキのガキは連れてこなかったのか?」


 政人はルーチェたちに事情を説明した。


「バカなガキだなあ。マサトを信用してれば、また牢に入れられることもなかったのに」

「子供がバカなことをするのは仕方ない。その都度、大人が導いてやればいいんだよ」


 政人はそう言った後、自分の言葉に驚いていた。


(いつから俺は、こんな立派なことを言うようになった? 俺も大人に保護されて生きていた人間だったはずだが)



 日本にいた頃の政人なら、そうだったろう。


 彼は社会に出た経験のない高校生であり、大人に導いてもらう側の人間だった。勉強さえしていれば、進学そして就職まで進むことのできる、社会のレールに乗せてもらっていた。


 社会に問題があった場合、それをなんとかするのは大人の仕事であり、彼は自分の事だけを考えていればよかった。


 だが、この世界には彼を導いてくれる大人はいない。よって、レールは自分で敷かねばならない。


 そして、自分でレールを敷こうとすると、嫌でも社会の理不尽さが目に入ってくるのである。


 上に立つ者が貧しい民から財産を奪い取り、自分は贅沢をしている。これは政治の問題だ。


 五神派が六神派を迫害している。これは宗教の問題。


 ケモノビトは人間に差別され、子供であっても死刑になる。これは人種差別の問題。


 そして一番問題なのは、それらの問題を誰も正すことができないことだ。

 既に社会の体制としてできあがってしまっていて、誰もがそれを当たり前のことと思っている。


 当たり前だと考えないのは、政人のような異世界人ぐらいであろう。そんな彼ならば、ひょっとすると社会を変えることができるのかもしれない。


 だが、政人にはまだそんなつもりはない。彼が今考えているのは、金策である。


「それじゃ、一休みしたらポルテン村へ向かおう」

「一体、ポルテン村とやらに何があるんすか? 俺たちは畑仕事をするっちゅう話だが」


 男たちの一人が聞いてきたので、政人は答えた。


「おまえたちには、『チャバコ草』の栽培をしてもらう」




―――




 政人たちはポルテン村へと向かっている。ポルテン村には馬を預けてあるので、どのみち訪れる必要はあった。


「御主人様、よいかの」

「なんだ?」

「御主人様は、あの(くさ)い植物を栽培して、売るつもりであるか?」


 以前、ポルテン村でチャバコ草に火をつけて吸った時、ハナコはその(にお)いに顔をしかめていた。


「そうだ。あれは流行(はや)ると思っている。依存性(いそんせい)もあるようだし、病みつきになる人間もいるだろう」


(タバコのようにな)


「でも、チャバコ草を栽培したことのある者はいないのであろう? 人の手でちゃんと育てられる保証はないのである。それに栽培できたとしても、収穫がいつになるかはわからぬ。さらに、収穫した後は乾燥させて加工せねばならん。収益はかなり後にならんと入ってこないのではないか? 傭兵を雇う資金は、すぐに必要なのであろう?」


「ああ、その通りだ。収益はかなり後になるな。栽培については、植物の専門家を雇おうと思っているが」


「専門家を雇うにしても、元手がないであろう。あの男たちを食わせなくてはならんし、販売するための店舗や人員はどうやって確保するのであるか」


(さすがハナコだな。ちゃんと自分の頭で考えてくれている)


「よく気が付いた。偉いぞ、ハナコ」

「と、当然なのである。もっと我を褒めたたえよ」


 ハナコは得意そうに尻尾を振っている。


「まあ、元手については当てがある」

「なんであるか?」

「銀行から融資(ゆうし)を受けるんだ」


 政人がそう言うと、ハナコは考え込んだ。


「ひょっとして、チャバコ草の将来の収益を(えさ)にして借りた金で、傭兵を雇うのであるか?」


「そうだ。チャバコ草の利益は相当出るはずだからな」


「そんなに貸してもらえるかのう」

「ん?」


「チャバコ草に火をつけて煙を吸うなど、あの村以外では誰もやったことはないのである。前例がなく、回収に時間がかかる事業に大金を貸してもらえるであろうか」


 政人は地球にいたので、タバコ産業がいかに儲かるものであるかを知っているが、この世界の人間はそれを知らないのである。


「それは……確かにそうだな。銀行の融資担当者に、試しにチャバコ草を吸わせてみれば上手くいくと考えていたが――」


 政人は自信が無さそうに言った。「甘かったかもしれないな。銀行は信用がない相手に、そう簡単には金を貸さない」


(日本ではそうだったな)


「御主人様は、時々抜けておるのう」

「むむむ」

「何がむむむであるか」


 それから政人は、どうしようか悩む様子を見せた後、言った。


「仕方ない……第二案でいくか」

「おう、どんな案であるか?」


「『融資』ではなく、『投資』を受けるんだ」

「投資?」


「資金を得るまでに多少時間がかかるだろうし、レンガルドには今まで無かった方法なので、上手くいくか自信がないんだが――」


 政人は迷った末に言った。


「『株式会社』を作るんだ」

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