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藤井政人の異世界戦記 ~勇者と共に召喚された青年は王国の統治者となる~  作者: へびうさ
第一章 望まぬ召喚、決意の旅立ち

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15.ペットは飼い主に似る

 タロウを連れて公園にやってきた。


「俺はフジイ・マサト、おまえの飼い主だ。こっちは友達のルーチェ」

「よろしくな!」


「はい……よろしく……お願いします」

「声ちっちぇーなあ、もっと腹から声出せよ」


 政人は「いいから」とルーチェを手で制した。


「まずは遊ぶか。なにをして遊びたい?」


 遊んで緊張をほぐしてやろうと考えた政人は、タロウに聞いてみた。


 タロウは言おうかどうしようか迷っている様子だったが、


「これを……」


 と言って、政人にボールを差し出してきた。


 テニスボールくらいの大きさで、さっきはこれを一人で壁に投げつけて遊んでいた。


「投げてください……オレが取ってきますから」


 政人は怪訝(けげん)な顔でボールを受け取り、軽く放りなげた。


 ボールは十メートルぐらい転がっていったが、タロウは意外な瞬発力で駆け出し、ボールを拾うと戻ってきた。


「どうぞ」とボールを差し出して言った。「もっと遠くまで投げてください」


 政人は今度は大きく振りかぶって投げた。

 五十メートルぐらい飛んでいき、それをタロウがすぐに追いかけ始めた。

 政人が投げたボールを、タロウが取ってくるというだけの遊びである。


「それ、楽しいのか?」


 ルーチェが意味が分からん、という顔で言った。

 だが、ボールを持って戻ってくるタロウの表情は、楽しそうだった。軽く笑顔が浮かんでいる。


(笑うと可愛げがあるな)


 政人も何が楽しいのかわからなったが、二十分ほどその遊びを続けた。タロウは満足そうだった。


「楽しかったか?」

「はい……楽しかった、です……」


 はにかむようにボソッと答える様子を見て、政人はやはりそうだ、と思った。


(こいつは、俺に似ている)


 感情が無いのではない、感情を外に出すのが苦手なのだ。


 政人は最近はマシになったが、小さい頃は周囲に馴染(なじ)めず、一人で本を読んでいることが多かった。

 目付きが悪く、にらんでいるように見えるために近寄りがたく、周りの子供たちは政人を避けた。


 教師たちも、政人に対してどう接したらいいかわからず、戸惑っているようだった。

 なんとか彼とコミュニケーションをとり、他の子と同じように接しようとしてくれる教師もいたが、教師とて人間だ。どうしても好き嫌いはある。


 テストの成績はいいものの、表情に乏しく何を考えているかわからない政人よりも、元気で人懐っこい子供を好んだ。

 そういう感情はどうしても態度に出る。


 政人は「自分は独りが好きなんだ」と無理に思い込もうとした。

 そして、――いつしか本当にそうなった。


 タロウの場合は、同年代の子供がどんどん飼い主を見つけていなくなり、周りには小さな子しかいなくなった。店員も彼を扱いかねているようだった。


(一人で壁にボールをぶつけて……さびしかったよな)


「じゃ、次は何する?」


 ルーチェがそう言うと、タロウは政人を見た。


「御主人様……何か命令……してください」


(命令か……イヌビトには命令を与える必要があるんだったな)


「子供は勉強するのが仕事だ」


 政人はそう言った。「読み書きはできるか?」


 タロウは恥ずかしそうに「……できません」と答えた。


(誰も教えてくれなかったのか)


「そうか、ついてこい」


 政人はそう言って歩き出した。そして本屋に行き、小さい子が字を覚えるための教本を買って、宿舎に戻った。


 ルーチェと別れ、自分の部屋にタロウを入れると、机の上に筆記用具を用意した。


「俺が教えてやる。読み書きの勉強をするんだ」

「え……でも……」

「命令だ」

「わかりました」


 命令と言われてやる気になったようだ。


「まず自分の名前を書けるようになれ」


 そう言って政人は紙に「フジイ タロウ」と、書いた。


(ペットは家族だということだから、俺と同じ姓でいいだろう)


「これが、おまえの名前だ。真似して書いてみろ。ゆっくりでいい」

「はい」


 タロウはたどたどしいペンの持ち方で、手本の通りに書いていく。


「あの……書けました」


 タロウが紙を差し出し、不安そうに見上げてくる。

 見ると、ぎこちない字ではあるものの、「フジイ タロウ」と書かれている。


(たしか褒めてやるんだったな)


「よくできた、偉いぞ」


 そう言って頭をなでてやると、照れくさそうにうつむいていたが、大きな尻尾がブンブン揺れていた。

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