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第二十二話 仲裁

「新人虐めか何か知らないけど、やめなさいよ!」


 私は声を張り上げて、大男たちの前に立ちはだかった。

 女の子を捻っている大男を睨みつける。 


「ん? なんだオメェ……」


 脇で笑いながら見ていた大男の一人が、姿勢を低くして私の顔を覗き込む。

 そして、別の男が私に言った。


「新人虐めとかじゃねえよ。俺たちはこの(アマ)のパーティメンバーだ」


 パーティ――確か、女神様や受付のお姉さんが言っていた、冒険者が数人で集まった仲間の事を指す言葉。


 つまり、『戦隊』みたいなもの。


 ……という事は、この四人は戦隊……じゃなかった、パーティなんだ。

 ちょっと羨ましい。私もいつかは、パーティを組んでみたい。


 でも、なんで仲間を虐げるような事をしていたんだろう?

 仲間っていうのは、結束とか信頼とかそういうので繋がっているはずなのに。


「なんで、仲間の腕を捻ってるよの?」


「それはこの(アマ)が使えねえから、お仕置きしてたんだよ」


「結局虐めじゃない」


「だから違うっつってんだろ!」


「問答無用! 《剣創世(ソード・ジェネシス)・刃引きの剣》!」


 こんな、虐めか喧嘩かを止めるのに大怪我をさせても不味いから、刃引きの剣を創り出す。


「ここからは、私のヒーロータイムの始まりよ!」


 まずは、捻っている男の右腕を打って手を離れさせ、その後は三人まとめて滅多打ち。他の冒険者の邪魔にならないように、壁の隅へと放り投げた。


 経緯を見ていた他の冒険者たちは、私を見て小声でざわめき出す。


「なんだあの女、一人でBランクパーティ『黄色い砂塵』を伸しちまったぞ」


「一体、何者なんだ……」


「見た目はあんな小娘なのに、中身は化けものか?」


「実は有名な高ランク冒険者なのでは……?」


 好き放題言ってくれている。

 とりあえず外野は無視して、私は三人に詰め寄った。


「……で、なんでこんなか弱い女の子を虐めてたのよ?」


「どう考えても、俺たちを虐めてんのはオメェだろうがよ……」


「まだ口答えする元気があるようね」


 脅し文句を言って魔法剣をちらつかせると、ヒィと唸って彼らは素直になる。

 とりあえず、その場に正座をさせて説明するように促した。


 説明を要約すると、捻られていた女の子……モモさんというらしいけれど、そのモモさんがパーティの中で唯一役に立っていないという話。それなのに報酬が毎回均等だから、納得がいかなくて制裁をしていた……という事らしい。


「役に立たないって言っても、最初に納得済みで戦隊……じゃなくて、パーティに入れたんでしょ?」


「そ……それは……」


「本当に役に立たないか、ちゃんと思い返してみなさいよ」


「この(アマ)……ひ弱すぎて、戦闘では剣の一本も振るえねえんだよ」


 腕を捻っていたベギーという男が言う。

 しかし、モモさんはローブに杖という出で立ち。どう見ても魔法使いだ。


「魔法使いだから当然じゃない。魔法での支援とかなかったの?」


「あっ……」


「ほらね」


「他に彼女がしてた事は?」


 三人は腕を組んで唸る。

 今度は笑ってい見ていた男の一人、マッツが手をぽんと叩いて思い出す。


「荷物持ちをさせてました。荷物持ちなんて誰でも……」


「荷物持ちって大事な仕事じゃない。あなたたち、大きな荷物背負ったまま全力で剣が振れる? 無理でしょ?」


「ああー……」


「他には?」


 最後の一人、ヤーマンが答える。


「戦闘で使えねえから、ギルドで依頼受けさせたり、報酬を受け取らせたりしてたっす……。でもよぉ……そんなの戦闘出来ねえなら、当然だろう?」 


「当然じゃないでしょ。依頼の確認に、報酬の交渉。冒険者として重要な仕事よ。私だって明らかに内容と報酬がつり合わない仕事をした事があるから。そういうのを未然に防ぐのって、とても大切な事じゃない?」


「そう言われてみれば……そうっすね」


「……で? そんな彼女をどうしようとしてたの?」


 私は怒気を込めて、ちょっと強めに訪ねた。

 三人は怯えながら答える。


「役立たずを軽くいたぶって、装備を全部ぶん捕った後、パーティから追い出そうとしてました」


「右に同じ」


「俺もっす」


 三連続で、剣の腹を使って頭を叩いていく。

 あでっ、いてっ、うぐっ、と次々と三人からみっともない声が上がる。


 私は魔法剣を消し、両腕を組んで仁王立ちすると、三人にきつく申し渡した。


「役に立つか、立たないかなんて……こうしてちゃんと考えてみないと分からないんだから、これからは仲間を大事にしなさい!」


「「「はいぃー! すみませーんっ!!」」」


 三人が扉を乱暴に押し開けて、逃げ去っていく。

 モモさんは、私の両手を握って感謝の言葉を言ってくる。


「ありがとうございます、ありがとうございます!」


 そして……。 


「ありがとうございます……お姉様!」


 ええっ!? また、ここでも『お姉様』って呼ばれる展開?

 お願いだから、頬を赤らめないで。


「私を……お姉様のパーティに入れて下さい!」


「あの……その……えーと、さよならっ!」


 今度は私が、脱兎のごとくギルドから逃げ出した。


 ――とんだ諍いに巻き込まれて、時間を使い過ぎてしまった。

 依頼をこなそうかなと思った頃には、聖女様がこの時間に落ちあいましょうと言っていた待ちあわせの時間だった。

 資金稼ぎは明日にしよう。


 ……でも、聖女様の『用事』ってなんだったんだろう?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに脇役独自の編章が長過ぎると別作品に成るですから、偶に1話2話くらいなら大丈夫だと思います。 結局大男達は虐めをしているでした。なのでアリサさんが成敗してくれるのは良くやったです〜
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