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第三話 等級

 受付のお姉さんが、魔物ランクの説明を始めた。


「尚、魔物ランクは一番弱いものがF、最強の魔物でA、伝説級や天災級の、滅多に見かけない魔物がSとなっております」


「Fは?」


「野良犬とか野犬、それにコボルトですね」


 コボルトというのは犬の姿をした人型の魔物で、体が小さく、大の大人なら誰でも退治できる程に弱い魔物だ。


 強盗まがいの事をして人に害をなす悪のコボルトと、人間社会に溶けこんで、行商なんかで生計を立てている善のコボルトがいると、子供の頃に教わった事がある。


 野犬。実は野犬というのは厄介で、前の世界でも一対一なら日本刀を持たないと大人の男でも敵わないと言われていた意外に凶暴な動物だ。魔物ではなく普通の動物。


 どちらも『赤の森(レッドヴァルト)』にはいない生き物だ。実はコボルトも野犬も『赤の森(レッドヴァルト)』では生き残れない程に弱い。最下層の角ウサギでさえも、あれは、見た目に反してゴブリンよりも強かったりするらしい。


「野犬ね……Eはどうなんですか?」


「Eランクなら、オオカミです。犬よりも乱暴で体も大きく、力も強いのでご注意下さい」


「Dは?」


「Dランクは、角オオカミです。普通のオオカミよりも数段強い、『赤の森(レッドヴァルト)』が主な生息地のとても危険な生き物です。非常に危険ですので、一人で戦ってはいけませんよ?」


 え……また犬科?

 犬科、やたら多くない?


「じゃ、じゃあ……Cは?」


「ライカンスロープですね」


「ライカンスロープ?」


「はい。別名ワーウルフとも呼ばれる魔物で、普段は人の姿をしていますが、戦いになると狼に変身するという凶悪無比な魔物です。いわゆる狼男という奴ですね」


 また犬科?


「Bランクはオルトロス。魔族領に住むと言われる、巨大な二つ首の魔犬。危険です」


「あ、あの……え、Aは……」


「Aランクはケルベロス。魔族領の門番とされている、三つ首の……」


 流石にケルベロスは有名だから、私でも知っている。戦隊にも出てきたしね。

 そして、また犬……。


「あの、犬ばっかりなんですけど……」


「そうですか?」


 何を聞かれたのか分からないとでも言うような、きょとんとした顔で私を見つめるお姉さん。ここまで来て、流石にSランクは犬じゃないでしょ……おそるおそるお姉さんに聞いてみた。


「じゃあ、Sランクは……」


「はい、フェンリルです! 神獣とも呼ばれる、吹雪を操る巨大な狼ですよ!」


 犬……! 最後まで犬……!!


 あまりの事に、私はカウンターの下までずり落ちた。


 かろうじて突いていた手でカウンターの端を掴んで留まっている。

 その状態から、なんとか腕でカウンターをよじ登るようにして起き上がり、話を続きを聞き始めた。


「だ、大体分かりました……」


「ご理解戴けたようで何よりです。他に何かご不明な点はございますか?」


「あの……犬、以外で分かりやすい魔物の指針……とかないんですか?」


 私がそう聞くとお姉さんは腕を組んで、ええと……と唸りながら記憶を絞り出した。数秒間考えた後、手をぽんと叩いて口を開く。


「あ、例えば真竜……ドラゴンなんかはSランクですね。誰も見た事がないですけど!」


 最初からそれを言ってよ……。

 全部犬じゃ、分からないよ。


「えーと……じゃあ、Aランクは……」


「ワイバーンですね! Bなら地竜(アースドラゴン)です」


 今度はトカゲ……! 私はまたカウンターから崩れ落ちた。


「……では、登録を始めてもよろしいでしょうか?」


「お……お願いします……」


 どっと疲れた。早く登録を済ませて貰おう。

 私の中から、ギルドの建物に入ろうとした時の高揚感は完全に消えていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、ランク分けの基準を同じ種類の魔物で比べるの方が理解り易いじゃんwww ちょっと良く考えたら、冗談抜きで本当に説明が巧いかも!
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