83話「現代①-起床」
440年後・・・2000年、日本の愛知県山中にて重機が山を掘っていた。
ガガガガガガガッ
ガララッ
『本当にあったね』
『この方が僕達のご先祖様』
20歳程の似た顔立ちを持つ従兄弟が山中に埋もれていたカプセル型の機械を掘り出していた。
『さっそく、安置所に』
『うん』
10t程のカプセルは布に包まれてトラックで運ばれていった。
ゴゴゴゴゴッ
ゴォン
ハイパースリープカプセルは大邸宅の地下室へと安置された。
『お姉ちゃんの千里眼のお陰だよ』
『ふふっ。古い文献があったからよ』
『この人が柊家初代なのね』
『この文献によればそうだね』
柊家と言えば家系を辿ると戦国時代までに繋がっている歴史ある家系だ。
幾つもの逸話が残っている柊家の始祖は南蛮人(外国人)だと言われていた。
その根拠に子孫達にも何世代毎に先祖返りで目か髪の色が変わっていた。
昔はそれだけでも差別の目を向けられているが近年の外国人の永住等によって日本人と外人のハーフが生まれ認知されてからは和らいでいた。
姉はブロンドヘアーに黒目、弟は黒髪に蒼い瞳を持っていた。
ピッピッピッピッ
『この数字は西暦かな?』
『そうね、2050年という事は私達が70歳頃の事ね』
『だったら僕達の子供達に託そうか』
『えぇ』
・・・
・・・・・・
柊家の邸宅に安置される事50年後・・・
ビィビィビィ
指定された時間が来たことによってハイパースリープ状態が解除される音が地下室に響き渡った。
プシュウウウウ
密閉されたカプセル内に酸素が入り込む。
ドクンッ、ドグンッ
約450年間、生命活動が止まっていた体が鼓動を脈打たせ始める。
時間が経つにつれて青白い皮膚の下の血液が循環され赤みを帯びていく。
スゥ
「・・・」
知らない壁だな・・・
目を覚ましたら知らない天井ではなく、壁が視界に入った。
カプセルで寝ると立っているから当たり前だ。
四方をシミ一つ無い白く光る壁がカプセルを囲んでいた。
ペタッ
カプセルを出るとヒンヤリとした床に立つ。
「上手く、目覚めたようだ」
ハイパースリープ時における危険性は寝ている間に問題が発生して、そのまま死んでしまう事だ。
《お・・・早う・ざい・・す、マ・・ター》
「さすがに劣化しているか」
腕の通信機からマザーの機械音声が聞こえてくる。
キィン
何も無い所から腕輪が落ちる。
《お早うございます、マスター。通信機が壊れている筈なのでコチラをお使いください》
「久しぶりだな。調子はどうだ?」
《機械に調子がございませんよ》
「そうだったな」
《誰かが来ます。ではまた》
「あぁ」
ウィイイン
この部屋唯一の出入り口が開き女が姿を表す。
『お目覚めになられましたか。この時を心よりお待ちしておりました。柊家の祖先であり柊家初代アオイ様。お早うございます』
スッ
外見上、日本人にしか見えない女が俺に恭しく一礼する。
「柊家?初代だと?」
『私は柊真琴。柊リン様の子孫です』
リンの子孫か・・・結婚はしたんだな。
「柊家というのは?」
「そうですね。その前に場所を移動して座って話しましょう」
「あぁ」
・・・
真琴に着いていくと真新しい木と畳の匂いがする和室へと通された。
ドサッ
「それで、先程の答えなんだが?」
「柊家というのは初代アオイ様の功績が認められ、かの有名な織田信長から家名を賜ったものだと伝えられています」
「あの信長からか・・・徒大将が最後の報酬だと聞いていたんだがな」
「その事も書かれておりました。代々から伝わる古文書によれば柊家初代アオイ様は織田信長に雇われた日本初の南蛮人でだったとか」
スッ
当時の事が記された文献を見せられる。
この時はリンだな・・・
「あの桶狭間の戦いにて初代アオイ様は討ち死にとされた事で織田信長から功績として柊の家名を頂いた事が書かれています」
「その後、柊ツヨシ様の遺言によってこの時代に目覚めるであろう初代様について言い伝えられてきました。私達の親達が20年前に山に埋まっていました初代様の眠っておられるカプセルを掘り起こしたのですが、この代まではと半信半疑でしたが、発見された時は驚いたそうです」
『『『失礼します』』』
そこで襖が開かれて70歳程の男女と40歳程の男が入ってきた。
リンとツヨシ・・・ではないな。
一瞬、子供達に似ていると思ってしまった。
三人目は2人の子供か?
『お初にお目にかかります。柊桜と申します。柊リン様の子孫であり、この柊真琴の母でございます』
『お初にお目にかかります。柊良一と申します。柊ツヨシ様の子孫であり、この子は』
『柊飛鳥です』
「あぁ。柊家初代、柊アオイだ・・・その髪と目は?」
「先祖返りでございます。私はリン様の異能を発現しまして千里眼なる力を持っています」
「僕はこの時代では重宝となりました誘導です」
ツヨシが受け継いだのは俺のスキル誘導だったな。
「重宝とは?」
「この力は何も無機物ではなくても誘導できるのですよ」
「なるほどな・・・人の心も誘導できるという事か」
「えぇ。政界では重宝しますよ」
「政治家なのか?」
「数代前から柊家は政治家です。といっても国ではなく、初代様が愛した豊穣市を護る政治家ですがね」
「豊穣市?」
「初代様達が立ち上げたといわれる豊穣の村、戦国時代から発展に発展を遂げて市になるまで人口は増えました」
「そうか・・・たった20世帯もなかった村がな」
「では、私達はこの辺でお暇いたします。この役目は娘に引きついでおりますから」
「失礼しました」
サッ
3人は部屋を出て行く。
「改めまして説明を致しますね」
この後、色々と質問をして柊家の歴史を教えてもらった。
・・・
「最後に質問だ・・・なぜ、俺が研究施設とかに居ない? 少なからずあのカプセルを調べたんだろう?」
「はい、地球上には存在しない素材で出来たカプセルと数百年も人間をスリープ状態にする技術。本来なら研究所に行くのでしょうが柊家で秘匿としています」
「ほぅ」
「これは他家である、天城家、陸奥家、真部家総意によるものです」
「天城と陸奥か・・・ハルヒコやアキヒサの子孫も居るのか」
「おります。後日、お目通り願います」
「真部と言うのは?」
「ロイド様とフェリス様の家名でございます」
「そうか・・・柊家を中心にその三家が此処を守護しているという事か」
「はい、その通りでございます」
「俺がこの時代まで眠っていた理由は伝わっているのか?」
「この時代を見るとまで」
「そうか、邪魔したな」
スッ
俺は立ち上がる。
「どこへ?」
「俺はこの時代の者じゃないしな。お前たちの邪魔はしたくない」
「邪魔などとは思っていません。いつまでもゆっくりしていって下さい。柊家をここまで大きくしたのはアオイ様の存在あったからです」
「俺の存在?」
「アオイ様が目を覚まされる時、子孫である我々が支えるくらいには力を蓄える為なのです」
「・・・そうか。迷惑を掛ける」
「アオイ様、子孫代表としてお聞きしますが・・・初代達は地球の者だったのですか?」
「答えはでているのだろう?」
「本人から聞きたいのです」
「俺、リリィ、キャメリア、ロイド、フェリスの5人は地球人ではない」
「天城家は日本人なのですか?」
「ハルヒコ、アキヒサ、ウミの3人は地球人だ」
「なぜ、アオイ様達は地球に来られたのですか?」
「それはだな」
俺達がアンドロメダ銀河から来た元日本人の転生者だった事をマコトに話す。
・・・
「なるほど・・・では、アオイ様がこの時代まで眠っていた理由とは」
「俺の死因を探る為だ」
「分かりました。アオイ様の願いは柊家ならびに天城、陸奥、真部の四家で支援いたします」
「しばらく厄介になる」
この時代の戸籍も金も持っていないからな。
俺は柊家所有のマンション一角を間借りして住む事となった。
柊家本邸に住むように勧められたが1人になりたいと申し出たら引き下がってくれた。




