81話「戦国時代⑤-村づくり」
いよいよ、村づくりの始まりだ。
「はぁ!」
「うりゃぁ!」
村を作る前に廃屋を崩す作業から始まった。
バキバキバキ
長年放置されていた廃屋は経年劣化もあるが、ハルヒコ達の攻撃でたちまちに崩れ去っていった。
『これは使えんのぉ』
信光の要請で派遣された大工頭が廃墟跡に出た木材を見て呟く。
「じゃ、燃やすか」
一応は木だが、そのままにしていても無駄で、広い場所で燃やし始める。
僅か2時間程で廃村は真っ平らに整地された。
『一から家を作るぞい。木はあの山から採ってきて良いと信光様から許可は出ておる』
織田領側、俺達が隠れすんでいた洞穴のある山を指差す。
『あの山の天辺から向こう側が武田領じゃから、気をつける様にな』
俺達は移動を開始して山の麓に広がる森へとやって来る。
「ここら辺から伐採して行くか」
『木こりの手配をした方がいいんじゃないか?』
大工頭についてきた大工見習いの若者が問う。
「俺達にはいらん。始めるぞ」
「「「「おぉ!」」」」
主戦力である、俺、フェリス、ハルヒコ、ウミ、アキヒサの5人は斧を担いでやってきていた。
家を立てる道具等は一式揃えてくれている。
他のメンバーは村で俺達が切り倒した木材を加工するために待機している所だ。
「倒れるぞ!」
「こっちもっすよ」
バキバキバキバキ
バキバキバキ
木こり開始して数秒も経たずに木は倒れ始めた。
殆ど、全員が一本目の木を切り倒して村へ運び始める。
『おかしいな・・・俺の感覚じゃ木はこんな早く倒せないんだよな?』
ポン
「俺達がおかしいだけだ」
数十キロもある枝葉が付いている木を肩に担ぎ、空いた手で呆然としている若い大工職人に慰めの言葉をかける。
普通に歩く様な速度で5人が10m級の成木を村へと運び入れる。
もちろん、こっちでも大工職人達が驚いていた。
ガランガラン
「これを大工頭の言うとおりに加工してくれ」
「わかったわ」
「子供達は大丈夫そうだな」
キャメリアが俺達全員の子供を預かって構ってくれている。
木材加工班はリリィ、ロイドの2人だが大丈夫だろう。
ズババババッ
さっそく、ロイドが枝葉を木から切り離して皮を鉈で綺麗に剥がしている。
「初めての作業であるが、これはこれで楽しいな」
木の皮を剥がすのが気に入ったようだ。
「じゃ、頼んだ」
時間が立つにつれて村にある木置き場は大量となり加工の方が追いつかなくなった。
ギコギコギコ
バリバリバリ
「こっちは終わったっすよ」
「じゃぁ、そこに置いて頂戴」
「んっせ、んっせ」
7人で木の加工をし始める。
木工師のスキルでも発動しているのか、俺は異様に飲み込みが早かったな。
おそらく、全員が木工師の職業に付けていると思われる。
加工スピードが時間経過につれて上がってきているからな。
ガンガンと作られる加工品を前に大工達は呆然としていたが、動き始めた。
『大黒柱はここじゃ』
「分かった」
大黒柱となる太い木を大工頭の指示の元立てる。
力仕事はできるが、大工としての仕事は出来ない。
カンカンカンッ
今でも若い大工達は木材に対してミノとハンマーで穴や凹凸をつけている。
初めて見るがやはり本職は違うな。
「あなたが作ったログハウスより細かい細工をしているのね」
「そうだな」
『あんちゃん、家を作ったことあるんかい?』
「こんな立派なものじゃないがな」
『立派って普通の事だぜ』
「俺が建てたのは丸太に窪みを造って組んだだけの強度が弱い家だ」
『ふぅん。親方』
『なんじゃ!』
『このあんちゃん、昔家を作ったみたいなんだ。向こうの技術かも』
『おう、ちょっと話ちくれ』
俺はログハウスを作ったときの事を大工頭に話してみた。
『ガハハハハッ!石で木に細工を施したんか!!』
「あの時は仕方が無かった、加工するものがなにも無かったんだからな」
『それじゃ全然技術とは言えねぇわい。素人がつくった掘っ立て小屋程度じゃな』
「むっ」
隣で聞いていたリリィがムッとしている。
怒ってくれるのはありがたいが抑えてくれ。
「さすがに本職には叶わんよ」
『いや、あんちゃん達は筋が良いぞ。皆、いう事をちゃんと聞くからな。力もべらぼぉにありやがるしな』
大工達の指示に皆は従って、木のハンマーで細工を施された木同士を組み上げている。
息を合わせて、両端から同時に衝撃を与えてはめ込む難しい作業も難なくこなしていく。
『これなら予定以上に早く出来そうじゃ』
・・・
・・・・・・
1ヶ月が経ち、俺達一家、ハルヒコ一家、アキヒサ一家の家が建った。
もちろん、こんな早くは1軒は建てられない。
「あとは、ロイドとフェリスの家か」
「その事なんだが」
「なんだ?」
「私とフェリスの家は1軒で良い」
「ん?」
「報告が遅れてしまったが、フェリスと結婚する事に決めたんだ」
「は?」
「フェリスおめでとう!」
「ついに告白したっすか?」
「なかなか遅かったわね」
「やっと結ばれたのね。おめでとう」
リリィ達は既に知っていたような口ぶりだ。
話を聞くと、ロイドとフェリスは前々から俺達家族とは一歩線を引いて接してきていた。
離れて接している者通しという事で徐々に仲が良くなり始めていた。
地球降下後を境に爆発的に2人の距離が縮まって、この機会に結婚を決めた。
精神年齢は親子ほどの差だが肉体年齢的には近いから問題なさそうだ。
マザーからの太鼓判を貰っているし祝福を送る事となった。
全員から祝福の言葉をもらいフェリスは涙を流して、ロイドは照れていた。
「じゃぁ、2人の愛の巣でも作るっすかね」
「少し、家を放しておきますか?」
「そうね、あっちの方も私達より激しいと思うし」
「となりに気兼ねない方がいいわね」
「お母さん、なんの話?」
「あなたにはまだ早いわ」
俺達三家は割と近い位置に集めているがロイド達の家は少し放して作ることとなった。
・・・
更に1ヶ月の月日が経ち、必要最低限の家屋と物置小屋が建てられた。
『んじゃ、ワシ達はこれで』
「あぁ。これまでありがとうな」
『信光さまに言えば、他の職人の斡旋はさせてもらえるぞい。これは預かってものじゃ』
大工頭から信光の家紋が入った木札を渡される。
『信光様の城に入るときの通行手形じゃ。これは無くさぬようにな』
「あぁ」
大工達は自分達の住む町へと帰っていった。
「とりあえず、村を囲む柵でも作るか・・・その後は畑でも耕すか」
「大工道具はあるけど、畑道具は無いわよ?」
「ハルヒコ、手配を頼めるか?」
「構いませんよ。少し出ていきます」
さっそく貰った手形をハルヒコに渡し、畑道具の手配を信光に頼むこととなった。
廃村から普通の村まで戻ったとはいえ俺達は収入源になりそうな物は生産していない。
税についてはコレからの発展しだいという事で5年間は無税で、その期間中は援助してくれるとの約束は受けている。
織田信長の推薦がなければ、ここまでの待遇はなかっただろう。
村の周囲を柵で囲う頃には農民一家と畑仕事用の道具を持ってやって来た。
『本日から、この村に世話になる田吾作いいます』
『妻の妙です。この子は小枝いいます』
『こんにちは』
『信光様から手紙を預かってます』
手紙を拝見するが、まだこの時代の日本語は分からない。
「田吾作一家を村に定住させる代わりに農業のイロハを受け取るとの事が書かれていますね」
「さすが、異世界翻訳持ちだな。これも翻訳できるのか」
ハルヒコが手紙を受け取り読み上げた。
「といっても、家が足りん」
『あっしらは、雨風が凌げれば場所はどこでもえぇです』
「そうはいかん。一旦、俺の家に入って貰うか。その為に少し大きく作ったんだからな」
俺達の家はハルヒコ達の家とは違い大きく作られている。3人が住んでも問題ない広さだ。
「とりあえず、もう一軒作るぞ」
「「おぉ!」」
田吾作一家が住める家を作る為に7人掛かりで動き出す。
僅か3日で一軒を立て終わる。
「ほぇ~、こんに早く家なんか建てられるんだべか」
新しく建った家は土間、囲炉裏のある居間、寝室の3部屋しかない簡素な家だ。
「立派な家をくださって有難うございますだぁ、精一杯働きますわぁ」
田吾作一家から礼を言われて、畑作りのイロハを習う。
まず、土地の何処に畑を作る所の選定から始まった。
水場が近いと作物を育てる場所に最適という事で、村から少し離れた小川近くに畑の場所が決まった。
土壌がよりいい場所を選び一枚作ってみる事となった。
ザクザクザク
田吾作の指示の元、俺達は畑を作り上げる。
「ほぇ~。ここの土壌はそんなに柔らかくないのに皆さん早いべ」
鍬を振るって、土を混ぜながら畑を耕していく。
田吾作が一列分を耕す前に俺達は五列分を耕し終わっている。
「俺達は力が常人より強いんだ。この程度なら問題ない」
「そうですかぁ。早いに越したこたぁないよぉ。ただ、準備した作物の種が足りるかねぇ」
かなり広い畑を初期段階で準備してしまったようだ。
案の定、準備した種は作った畑の広さ分を撒くことは出来なかった。
「とりあえず、これで様子を見るだ」
「あぁ」
田吾作から畑作りのイロハを教えて貰いながら、田園について質問してみた。
「田園ば作るには時間がかかるだよ。それこそ用水路を引かなきゃならんしなぁ」
「土地は幾らでもあるんだが」
「あっしの見立てだと、田園を作る場所は川から大分離れた場所でさぁ」
村から西へ行った所を指差す田吾作。
「距離にしたらどの位だ?」
「ざっと、17町分(約1.7km)だべかねぇ・・・」
「1.7分の用水路か・・・」
「僕達の力なら出来ますよ」
「たったの数日で畑を作り上げましたからな」
「やる事がないわ」
「大丈夫っすよ」
「やってみるか」
暇になったしな。
翌日から田吾作の示す土地まで用水路を掘る事にした。
「言葉がでねぇべよ」
1週間程で川から引いた用水路は完成した。
「後は田んぼを作るだけっすね」
「えぇ、まぁ。田んぼ自体は畑の逆で水を張る窪みを作るんだべ」
「掘るだけなら簡単だな」
標準的な田んぼの広さを作り出して水を張る。
「読みどおり、田んぼに最適な土だべ。種籾は信光様に貰わないと」
「ハルヒコ」
「分かりました」
たったの数週間で試し用の畑と田んぼが完成した。
「さっそく、やる事がなくなったべな」
最初は畑に水まきと観察する程度で良く俺達なら難なく終わらせてしまう。
手持ち無沙汰だ。
「狩りに行ってくるわ」
「子供達をお願いね」
フェリスが妊娠したという事でリリィ、ウミ、キャメリアが手製の狩弓で鹿狩りに向かっていった。
村作り前からロイドと逢瀬を重ねていたらしい。
残った俺達は村に必要な物を田吾作を交えて会話する。
「井戸は欲しいっすね」
「川に汲みに行くのは面倒ですからね」
「異論はないですな」
「井戸は最低でも一つは必要だべな」
「井戸は分かった。他になにか必要か?」
「今の内に収穫物を格納する小屋とか建てるのはどうであるか?」
「たしかに、あの畑と田んぼの規模から小屋は必要か?」
「育ってみねぇとわからねぇべ。豊作なら建てた方が無難だべ」
道具類を仕舞う共同倉庫は建ててあるが、食料を保管する場所は無かったな。
「あと、トイレは必要ですね」
「そうっすね」
「不便であるな」
「トイレってなんだべ?」
「厠の事だ」
「向こうではトイレって言うだべか。あっしも欲しいと思っていたべ」
「トイレの製作だな・・・個別か共同かになるんだが」
「少し離れた所でいいっすよ」
「上下水道が整っていれば各家庭にとは思いますが、共同のが無難でしょう」
「仕方が無い事だしな」
「ついで焼き窯を作ってもいいか?」
「焼き窯っすか?」
「土器で便器ぐらい作ってやりたい・・・和式は辛いだろ?」
「そうですねぇ」
「正直座ってやりたいっすね」
「とりあえず、井戸、倉庫、トイレ、焼き窯の4つに分担して作る。土器は経験から俺が担当しよう」
「倉庫は作りはロイドさんに担当して貰いましょう」
「私が?」
「穴堀りは僕とアキヒコの2人で共同でやります」
「分かったのである」
各自、分担して作業に取り掛かる。
・・・
「来たか」
真夜中、寝静まった頃合に村から離れた位置で空を見上げていた。
ピカッピカッ
星空の中に点滅する光がゆっくりと下降してきた。
《汚物分解装置を指定エリアに着陸させます》
事前にマザーへ言って、汚物分解装置を降ろすように頼んでいた。
簡単に言えば、トイレを作ったところでボットン便所が関の山だ。
そこで、排泄物を苦労なく分解する機械を下ろしてもらったという事だ。
そうすれば汚れ仕事をする者は居なくなるし感染症の確立も減る。
俺達が誰も居なくなった時に自壊し自然へ帰す様に仕掛けもされている。
・・・
・・・・・・
「なかなか出てきません」
「そうか」
共同トイレ用の穴は掘り終わり、俺の土器便器待ちとなった。
今はハルヒコとアキヒサで井戸掘りに専念して貰っているが水源に当たらない。
それほど遠くにはない川もあるから掘れば出てくると思っていたが世の中そんな甘くないようだ。
「時間は掛かるが上水道だけでも作ってみるか。粘土は川周辺で取れるしな」
「闇雲に掘るより良いかもしれませんね」
「そうっすね」
2人は交代しながら100m以上掘っていて既に水源に当たらないと感じていた頃だ。
最初は用水路と同じく、地面を掘り水を引く案をだしたが地面との接触は変な感染症を引き起こすかもしれないと反対意見があがりレンガブロックを積み上げたローマ式上水道を作る事となった。
川から村の距離は約50m、水を常に送り続ける事を考えてレンガブロックの必要個数は約15,000個となった。
さすがに膨大な量ゆえにレンガブロックではなく高さ30cm、横幅60cm、奥行き30cmのU字ブロックの案が上がってきた。
それならば大体84個程焼けば足りる。
・・・
ボロッ
「難しいな」
U字ブロックの制作に当たって強度が足りず自重で自壊してしまう。
「他にも混ぜものをして試したら?」
リリィがそう助言する。
たしかに粘土のみの土器製では限度がある。
耐火レンガブロックを作った時も色々混ぜて作り上げたしな。
「そうするか」
その日から様々な所に趣き色んな土を混ぜてU字ブロックを焼き続けた。
「一応自壊はしなくなったか」
1週間の試行錯誤でなんとか形まで作り上げた。
「作業分担、頼んだぞ」
このU字ブロックを作り出すのに原料の粘土と混ぜる土の採取、焼くための石炭掘り、U字ブロックの形作りの3つに分担だ。
『あんたが、アオイさんかい?』
俺とリリィでU字ブロック制作中に村人ではない人物が現れた。
服装は何かの職人といった感じだ。
『信光様から派遣された水車が作れる職人の権造という』
「待っていた。仮住まいはそこを使うといい」
最低限食事の用意ができる土間と居間兼寝室のみの小さな家を建てていた。
これからも一時的に職人を呼んで何かを作り出してもらう期間はそこに住んでもらうつもりだ。
「で、何処に建てるつもりだ?」
「あぁ、アキヒサ」
ちょうど通り掛かったアキヒサに声をかける。
「なんすか?」
「水車職人が来たから、予定地に案内してくれ」
「わかったっすよ」
「アキヒサに案内させる。なにかアレばコイツに言ってくれ」
「案内するっす」
「権造だ」
「アキヒサっす」
権造とアキヒサは水車設置予定地へと向かっていった。
今回の上水道計画には水車が必須と考えている。
水車の力を借りて水を上に持ち上げないと上水道として水が流れないからだ。
・・・
・・・・・・
「水量が足りない?」
「あの場所でお前さん方が考えている大きさの水車を動かすのにな。半分くらいなら辛うじて動くって所だ」
「それは誤算だったな」
「素人ならよくある事だ・・・上流ならば可能なポイントを見つけておいたが距離がな。ざっと4町(約400m)くらい離れてやがる」
俺たちの考えを伝えてあり距離について渋っている。
「しかたがない、地形を崩したくなかったが・・・水量を絞るか」
「絞る?」
「川幅を狭めて水量を上げるんだ」
「そんなこと可能か?」
「いつかは決壊するだろうがな」
予定を変更して川幅を狭くさせる作業が始まった。
最初は土で川を徐々に狭めていったが水が土を削り水量が上がる所ではなかった。
次に大きめの石やら岩なんかを積み上げるも、水が隙間を通って行き水量は上がらなかった。
U字ブロックが揃い、俺たちも川幅工事へと赴く。
水車職人の権造は予定通りの大きさの水車作りに専念して貰っている。
「これが限界か」
土や石では川の流れを抑制出来ないと分かり、木材で無理やり川幅を狭めて水位を上げた。
ガコンガコンガコン
大型の水車が水の流れを受けて回っている。
「次はブロックを上げる足場作りだ」
U字ブロックも木材の土台に乗せる事で地面から放し動物の死体が入らないように工夫を凝らす。
4人掛かりで数日掛けて村へと上水道を完成させる。
ザァアアアアア
井戸掘り後の近くに川から運ばれてきた水を貯める場所を作り、余剰水は井戸穴へと落ちるようにしている。
こうして日本初の上水道が小さな農村で生まれた事は後の歴史家達によって驚かれることになる事も知らずに・・・
大体2ヶ月程で井戸(上水道)、倉庫、共同トイレ、焼き窯所は揃った。
「またの」
水車職人の権造は村を去っていった。
月日が流れ、畑の収穫時期が近づいてきたと田吾作から報告を受ける。
この村にやってきて約半年、秋頃を迎える頃には村としての機能を備える事となった。
余った時間は来年に使えるように新たな畑と田園作りで精をだした。
「そろそろ、稲刈りの時期だべ。いい具合に育ったべ」
「そうか」
この村総出で稲刈りをする事になった。
ある程度大きくなった子供たちも鎌を持たせて稲刈りをさせる。
いつまでも俺達だけが働いても後世には残せないからな・・・
来年には子供たちも交えて畑や田植えを手伝って貰うつもりでいる。
「稲穂ぉよぉ~、ザックザクじゃぁ~」
田吾作一家の担当している所から歌のような物が聞こえてきた。
「何を歌っているんだ?」
「稲刈り時の歌だべ。田植えの時も歌っていたべ」
たしか田植え時もなにか歌っていたな。
「なんの効果があるんだ?」
「稲刈りは単純作業だべ。歌で気を紛らわすんだべ」
「なるほど」
田吾作達から歌を教えてもらい、俺たちも歌を歌いながら稲刈りを続行する。
「これで全部だべな」
ハ字に稲を組んで木材で作った稲木で天日干しにし乾燥させる。
1週間~2週間程乾燥させてから脱穀作業が始まる。
プツプツプツ
「これはダルイな」
乾燥させた稲から一粒ずつ籾を取り外す作業は結構精神的に来る。
「雑にやったら取り漏れて勿体無いべ」
村人全員で行うがかなり時間が掛かる。
「やっと終わったか」
かなりの時間を掛けて稲から籾を取り外す作業が終わる。
ザクッザクッザクッ
今度は籾状態になった米を木の箱に入れて木の棒で突いて籾殻を外すが精神的に辛い面がある。
とりあえず、田吾作の言う通りに脱穀作業を行ったが全体的に時間がかかる工程を踏む事が分かった。
「いただきます」
「「いただきます」」
初めての玄米飯であるがこの村で採れた米を全員に分けて食べてみる。
「んぇ~」
「ん~」
「むぅ」
玄米では雑味が大きく美味しくはない。
なまじ、白米の旨さを知っている俺達はより一層感じてしまう。
「マズイぃ」
「そうね」
「精米は現時点じゃ難しそうだ」
玄米を精米して白米にするにはここにある技術力ではどうにもならん。
「他所の村も玄米で食べるのが普通だべ。身分が高い人達は手間を掛けてるって聞いたべ」
後日、田吾作に精米について聞いたが普通は玄米のままで食べるらしい。
「その手間の内容ってのは分かるか?」
「すまないべ、あっしも知らないべ」
「そうか」
精米法があるなら手に入れてみるか・・・
一応、恩もある信光の所へ収穫した野菜達と米俵を一つだけ担いで那古屋城へとハルヒコを連れて向かう。
「おぉ、久しぶりであるな」
「1年振りだな」
「主の村について聞いておるぞ。たったの1年で村としての機能を復活させたらしいじゃないか。ましてや米俵一俵を持参してくるとは見事じゃの」
普通であれば村一つ作り出すのに1年では時間がたりない。
ましては畑や田んぼを作り出すまで手は回らない。
「して、アオイ殿直々に来たという事は私に何か用であるか?」
「あぁ、収穫した米なんだが食べ辛くてな。話に聞いた限りだともう一段階上があるようでな」
「白米のことじゃな・・・確かにアレは玄米に比べれば旨いのぉ」
「その含み方、何かあるのか?」
「うむ。アレは時間が掛かる物じゃ。小さな村では食べるまでの時間がもっと掛かる製法じゃな」
「そんなにか?」
「どれ。見せても良いじゃろう」
信光が席を立ち、城の隅にある小屋へと訪れた。
ガラッ
「ここじゃ」
信光は服の裾を口元に当てて小屋の扉を開いた。
ゴリゴリゴリ
中には机の上に2枚の丸い石が重ねられ、上部についた取ってを時計回りに回す男達の姿が数名いた。
『これは、信光様。この様なところに何用ですか?』
現場監督の様な男が信光の姿を見て寄ってきた。
「精米法について尋ねられてきたのでな。この者達に説明をして貰えんか?」
『はぁ、よろしいのですか?精米法はどこも門外不出ですよ』
「この者達はあの清洲の闘いで功を上げた者達じゃ」
『では、アナタ達が斬馬のアオイ殿に双剣のアマギ殿ですか。噂に違わぬ巨漢ですなぁ』
現場監督の男は俺達を見上げて言う。
「頼めるか?」
『わかりました』
「私は執務室に戻るとしよう」
「帰るときに一言挨拶に伺う」
「うむ」
信光は城の中へと帰っていった。
『よく、そんな言葉遣いで無礼にならないですな』
「南蛮人だからだろ」
『日ノ本の言葉は誰から教わったので?』
「後ろにいるアマギからだ」
『なるほど。では、説明をしますので中へ』
俺達は精米法を教わり、村へと帰っていった。
「石臼でしたね」
「そうだな」
精米する道具は石臼であった。
石の重みを使って、玄米から白米に精米する説明を受けた。
「帰ってみたら作ってみる」
土器で石臼に似たものを作ってみる事にした。
バキンッ
「割れたか」
十数回使用しただけで土器臼は割れてしまう。
「石でなければ駄目みたいですね」
「そうだな」
「一応、それらしいものは作りましたが」
ハルヒコには石臼作りを頼んでおいた。
「溝を彫るのは疲れましたけどね」
石臼の内側、玄米の表面を削る部分の溝を彫るには結構神経を使ったようだ。
ゴリゴリゴリゴリ
さすが石で出来ただけであったかなりの耐久性がある。
玄米から白米へと精米する事に成功する。
さすがに全て上手くはいかず玄米4割、白米6割の飯を食べてみたが雑味が減っていて食べられる程度にはなった。
「第四回村作り会議をする」
「今度の議題は稲作ですね。この一年を通して結構難点が見つかりました」
「そうであるな」
「まず、田植えや稲刈りで時間が結構かかったっすね」
「腰が痛くなったわ」
「中腰での田植えや稲刈りは大変だったねぇ」
「私の分も有難うございます」
「そこは気にするな」
「稲刈り後の脱穀、揉みきり、精米も時間が掛かります」
「特に脱穀は辛いっすね。もっとバッと脱穀できないんっすか?」
「櫛みたいなのがあればいいのにねぇ~」
「櫛?」
「お父さんが買ってきてくれたコレ見たいなのがあれば楽じゃないかなぁって?」
この間、那古屋城に行ったついでに土産としてリンに櫛を渡していた。
リンはその櫛を逆さにして自分の髪の毛を稲に見立て梳く。
「千歯こきじゃなかったかしら?」
顎に手を添えて考えていたウミがそう呟く。
「そういえば、昔の道具でありましたね」
「アレって江戸時代の物じゃなかったか?」
「戦国時代で作ってもいいものかしら?」
「この村限定でならいいじゃない?」
「まぁ、ものは試しってやつか・・・次は籾すりか」
「確か、アレにも専用になにかあったはずよ」
「風を送って吹き飛ばすでかいのは見たことあるっすね」
「仕組みが分からないわ?」
「手で回して、軽い籾殻と玄米を仕分けてたな」
「籾すり後の仕分け用の道具って事かしら?」
「たぶん、そうっすね」
「仕分けも面倒よね。息を吹きかけて飛ばすなんて疲れたわ」
「揉みきりも石臼でできそうか?」
「できなくはなさそうですが、玄米と籾殻が混じってしまいますね。アレは削るのが目的ですから」
「そうか」
「もっと荒い目ですれば良いんじゃない?」
「作れそうか?」
「えぇ、あれより荒い目なら新たに作ればできそうですね」
「それじゃぁ、来年に向けて。脱穀用千歯こき、籾すり用の石臼、玄米と籾柄の分別機の試作を作ってみるか。田吾作は来年も畑と田んぼの管理を頼むぞ」
「わかったべ」
こうして、村作りの基礎殆ど作り終え。
今後は生活水準向上を視野に入れつつ冬を迎えるのであった。
お疲れ様です。




