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01話「ファスト-突破口①」

はじめまして、このシリーズが初投稿となります。




ドシュッ


「グヘッ」


俺は窮地に立たされている。


ダッダッ


「ちょっ、」


赤い目をした角の生えた兎に何度も頭突きという刺突を受けている。


ズシャッ


「グハッ」


ダッダッダッ


「くっ」


ブズッ


パリィィン


体力がゼロになって視界がグレー色に染まる。


事実上のゲームオーバーという奴だ。


視界の中では1分間のカウントが始まっておりそれまでに誰かが蘇生をしてくれないと復活はありえない。

ちなみに蘇生するアイテムは現時点では高い、魔法の中にも蘇生魔法はあるが高等魔法の部類でレベル1である俺に使ってくれる人はいない。


シュウウウウウ


≪蘇生ポイントにて復活しますか?≫


機械音声が響きYESを選択する。


≪デスペナルティが発生します。これより30分間は全ステータスが20%ダウンします≫


予め登録していた蘇生ポイントに俺の体が移動する。


『お、今日で7回目だな』

『また、死んだんか』

『懲りねぇな』


復活ポイントは街のオブジェクトとなっていて俺が復活する。

近くのカフェでお茶している別のプレイヤー達が冷やかしの声を上げる。


「うっせ」


俺はそう呟いてトボトボと町の入り口を目指す。


【フリースタイルオンライン】


これが今プレイしている最新のVRMMOでゲーマー達の虜にしている。


俺もそれの1人という訳だ。


種族はヒューマンの男を選んだ。他の種族も数種類あったがステータスが偏るので止めておいた。

このゲームに2つの職業を選ぶ事が出来る。1つ目はメインとなる戦闘職として糸使い。2つ目はサブとなる生産職として裁縫師だ。


なぜ、糸使いを選んだからって?

そこにロマンを感じたからだ。


漫画やアニメに出てくる糸使いの大半は強いイメージだ。ま、途中で更に強い連中にぶっ飛ばされる運命を辿っているが・・・

そんなイメージを超えたいと思ったから選んだ。

だが、現実はそうではなかった。糸使いが全メイン職業のなかで不遇職業としてランクインしている。


まず、糸の攻撃が弱い。後衛職に値する魔法使いや弓使いの方がまだ選ぶ価値があるといわれる程だ。

防御力が紙装甲で死亡率が高い。職業上の関係で魔法使いと同じで布系の装備しか付けられない。つまり前衛が居ないと成り立たない職業でもある。

で、後衛としてパートナーに選ぶプレイヤーがいるかといえば皆無だ。前衛職のプレイヤーが一緒に組みたくない後衛職業ランキングでも1位を飾っている。

唯一の長所といえばその射程範囲である。フリースタイルオンラインの中で随一の射程範囲として50mの敵を攻撃できる。


その俺が何回も死ぬ理由がそれだ。幾ら遠くから攻撃を仕掛けても近づかれてしまっては無理ゲーに早変りとなる。

モンスターは攻撃してきたプレイヤーへ向かって反撃してくる。何回か先制攻撃があたった所でモンスターがその程度で死ぬわけがなく俺に接近してくる。

糸使いの弱点はまだあって糸を巻き取らないといけない事だ。つまり最大射程距離50m分もの糸を巻き取る時間がネックとなる。

大体巻き取り終わる間に殆どモンスターに接近を許す事となりインファイトを仕掛けられて死亡して今に至る訳だ。


「ステータス」


ヴンッ


自分のステータスを表示してみる。


【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:1

 職業①:糸使い(Lv1)

 職業②:裁縫師(Lv1)

 SP:1

 体力:100/100

 魔力:50/50

 攻撃力:2(+2)(-20%)

 防御力:2(+3)(-20%)

 状態:健康

 称号:なし

 ランク:G-


()外が元々のステータス値で()内は装備品の合計値や逆の効果の事である。



「デスペナか」


デスペナルティ・・・つまり死んでしまった時に発生する罰のような物で別のゲームなんかだと経験値やお金、一部装備の損失が該当する場合があるがこのゲームではステータスダウンと持ち物の中から一番レア


度の高い物が1スロット毎落とす。同じ等級の物があればランダム性である。

これはデスルーラ(死んで戻る)をさせない為である。

このゲームはリアルに作りこまれており他のゲームを追随を許さないほど1つ1つが広大である。

目的地まで冒険をするのに1日の時間を要する事なんてザラと聞く。


レベル1に対してデスペナが発生した所で大した意味はあまりない。



【糸使いスキル(Lv1)】

 ・未取得

【裁縫師スキル(Lv1)】

 ・未取得

【種族スキル】

 ・なし


職業スキル一覧にはなんのスキルも入っていない。

別の職業の場合はその職業にあったスキルが初期にセットされている。剣士なら剣術スキル、魔法使いなら魔法スキルとなる。


糸使いになぜ初期スキルが無いのかというと糸術という物が現実にもないからだと開発陣コメントで返答があったという。

なぜこの職業を作ったかというとネタ職だそうだ。ただし使いこなせば有利に戦いを進められる職業でもあるという回答がなされたきりそれ以上の質問は受け付けなかった。



【装備】

 頭:なし

 体:麻の服(+1)

 腰:麻のズボン(+1)

 足:麻布の靴(+1)

 背中:なし

 右手:麻糸のリール(+2)

 左手:なし



これが今の装備だ。武器以外は共通する初期装備である。

武器の違いで俺は初心者でも狩れるホーンラビットというモンスターに尽く返り討ちにあっている。


最初の町『ファスト』を出てすぐに広がる草原地帯に生息するホーンラビットに手こずっているのは俺くらいなものだ。

今日始めたばかりの初心者ですらソロでも狩ってレベルアップをし次の段階へ進んでいるという現状だ。


装備を整えようにも所持金が足りない。初期でもっている金額は共通で1,000Gが支給されている。

絹糸のリール(+4)は1,500G。防具は絹の服(+2)絹のズボン(+2)ですら各自2,000Gと高い。

最初の金額は消耗品を買うだけの金額らしい。

最初から友達同士で組んでいるプレイヤーであれば人数分をかき集めて火力を一点に集中させる方法も取られている程だ。


ビィィン


麻の糸を伸ばして指で弾いて観察してみる。

ゴワゴワして手触りは最悪だ。麻の服も同様に肌にチクチクと痛いから常に不快感を出してくれている。

プレイヤーが最初に装備を変えるのは服だそうだ。納得もする。


糸使いの攻撃は1種類。糸を真っ直ぐに飛ばす事だ。

リールと呼ばれる攻撃武器から糸が射出されて敵にヒットする事で攻撃判定が入る。

外れれば敵対と見なされてモンスターに追い掛け回されるから初撃は大事である。

先ほど攻撃範囲が50mあるといったが実際問題弓使いや魔法使いと同じ距離での戦闘が多い。

巻き取り時間で攻撃手段が封じられるから距離は近いほうがその分の待ち時間が短縮される。

ぶっちゃけ50m先のモンスターをターゲット出来る訳が無いだけである。このゲームではノンターゲッティングシステム推奨だが後衛職はターゲッティングするのが普通。

後衛という事でホーミングする訳もない鬼しようだ。ターゲット範囲ならある程度糸はモンスターへ動いてくれるが信用できない。


「さてと」


重い腰を上げてホーンラビットのいる草原地帯へと向かう。


・・・・・・・・・・


「ぐはぁあ」


バタリッ


あーぁ、またか。


視界がグレー色に染まり蘇生待機状態に変わる。


今日で8回目の死亡だ。


ザッザッザッ


『この者を復活したまえ。リザレクション』


パァアアアア


視界の外から足音が近づいてきて魔法の詠唱が聞こえてきた。


視界がグレーから色が戻り始める。


グッ


『まぁだ、こんな所に居るのかよ。一緒に始めたのにな』


背後から聞き覚えのある声。


「うっせ」


振り返ると僧侶風の格好をした男が立っている。


『よっ!町で噂になってるぜ。不遇職「糸使い」が何度も死に戻りしてるってよ』

「ふんっ!」

『そう、怒るなよ。でも、そろそろ諦めたらどうだ?激ムズっていう話しなんだろ?』

「あぁ、そうだ。お前はどうしてこんな所にいるんだ?もうフォースへ向かった筈だろ?」

『第四の町、フォースにはさっき着いたばかりだ。全体アナウンス聞いてなかったのか?』

「知るか」


こいつは俺と同時期にこのゲームを始めたレッド。現在進行形でトッププレイヤーの内の1人だ。

見ての通り僧侶(回復職)だ。自分を守る前衛の回復、補助、蘇生等を担当しているパーティの生命線である。


「もう、キャラデータ消して別の職業になれよ?」

「嫌だ、俺はコレで行く」

「ベータテストの時もそうだったよな。まさか特殊種族にするなんてよ」

「あの時は滅多にでない職業だと聞いたからだ」

「で、どんな手品を使ったのか知らないが俺らの大陸までわざわざやって来ては大暴れしてからキャラデータ消したんだろ?」

「アレで限界だと思ったからだ。でもコレは可能性がある」

「昔からそうだよな。諦めないっつーか、意地っ張りつーか。ま、そんなお前は嫌いじゃねぇが」

「ふんっ」

「で、突破口は見つかったか?」

「全然だ。さっきも殺られたばかりだ」

「そうか。いっそのその糸で釣りでもした方が稼げるんじゃねぇか」

「釣りか・・・・・あ」

「どうした?」

「釣りの時、糸はどうやって遠くに飛ばしてるんだ?」

「リアルの話しなら、重しを糸の先に付けてるだろ?ルアー釣りだったらルアー自体が重りの代わりになるからな」

「それだ!なんで思いつかなかったんだ」


俺はその辺に転がっている石ころを麻の糸に括り付ける。


ピコーン


≪麻糸のリール(+2)は麻糸のリール(石付き)(+4)に変わりました≫


お!


装備品の名前が変化した。

攻撃力も少し上がったようだ。


こういったアイテムへの細工は本業である細工師が行うのだが、自分の武器や防具について少しなら細工が施せる。

もちろん細工師はそれ以上の範囲で細工ができる職業である。


「発射」


バシュッ


ノンターゲッティングした何もない所へ向けて攻撃モーションを行うと石は糸と共に発射された。


「おぉ!」


それを見ていたレッドが声を上げる。


「なんか見い出せたみたいだな」

「あぁ」

「じゃ、俺はこれで行くわ」


ザッ


「またな」

「あぁ」


レッドはファストの街へと帰っていった。


「さてと」


俺は新たな武器を持ちホーンラビットを狩りに向かう。


バシュッ


ピィ


ピヨピヨピヨ


一撃ではホーンラビットを倒せなかったが打撃系武器ならではの一定確立で発動する気絶が発生した。


シュルルルル


糸を巻き戻して2投射目を行う。


バリィイン


2回目の攻撃でホーンラビットが破砕音と共に消失しドロップアイテムを落としていった。


「っし!」


思わずガッツポーズをしドロップアイテムを回収する。


≪ホーンラビットの鋭角を入手しました≫


「コレも着けられそうだな」


糸に括り付けた小石を外して鋭角を巻き付けてみる。


≪麻糸のリール(石付き)(+4)は麻糸のリール(鋭角)(+6)に変わりました≫


やってみるもんだな。


俺は次の獲物へと向う。


ピィ


ブシュブシュッ


鋭角がホーンラビットに突き刺さり出血ダメージが入った。


通常ダメージの他に状態異常ダメージというのもある。出血ダメージは毒に比べてダメージ量は少ないが俺にとって好都合であった。


バリィイン


2回目の攻撃をするまでもなくホーラビットは出血死で消滅する。


≪糸使いのレベルが2に上がりました≫

≪スキル:糸拘束術一式を獲得しました≫



【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:1

 職業①:糸使い(Lv2)

 職業②:裁縫師(Lv1)

 SP:1

 体力:130/130

 魔力:55/55

 攻撃力:4(+6)

 防御力:4(+3)

 状態:健康

 称号:なし

 ランク:G-


【糸使い(Lv2)】

 ・糸拘束術一式 [魔力-1]


読んで字のごとくか?



・糸拘束術一式

 対象の足に絡みつき動きを阻害する。

 拘束時間2秒

 前提:糸使いレベル2

 消費魔力:1

 CT:5s


「ほぅほぅ」


消費魔力1に対して2秒の拘束ボーナスは嬉しい事だ。


このゲームでの体力や魔力の回復は主に3種類。

1つ目が体力回復ポーション、魔力回復ポーションによるもの。

2つ目が僧侶の回復魔法。

3つ目がその場に留まれば体力や魔力の自然回復量は立った時では10秒に1%で座った時は10秒に2%の回復量だ。


ただし、この状態になる条件として満腹値と渇きゲージがそれぞれ高くないと発動しない。

どちらとも時間経過と共に減るため一定時間ごとに飲食をする必要がある。


ベータテスターの時はアンデット系の特殊種族だったから全然気にしなかったがこの満腹値と渇きは厄介極まりない。

携帯食料や飲料水の携行はインベントリの圧迫するし村や町で摂る飲食より回復量は少ない。

初期インベントリはわずか10個しかない。生産系職業泣かせとも言われている。基本的に体力回復ポーション、魔力回復ポーション、携行食料、携行飲料水の4つで埋まる。

残りの6個がドロップ品等を入れておくスペースとなる。1つの枠で基本的に最大99個までストックし所持出来る。100個以上を手に入れようとすると別の枠を使う事となる。

ただし、インベントリには入れず荷車なんかで運ぶ場合は対象外となる。が、満腹ゲージ等が減るデメリットが発生する。

サードの街でようやく5スロット拡張するカバンが手に入るクエストがあるがソロの俺ではセカンドの街に行けるかどうかの話である。


・・・


・・・・


・・・・・


使えねぇ・・・


早速、糸拘束術一式を使ってみたが意味のない事に気がついた。


俺の攻撃手段はほかのプレイヤーと一緒で武器で1回の攻撃が限度だ。

スキルで斬撃からの切り上げという連撃コンボが存在するが俺は一度糸を射出すればそれまでで2秒の拘束時間があっても連続攻撃には至らない。

完全に2人以上のPT用スキルだ。

渋々と通常攻撃でラビット狩りをするだけとなった。



≪アオイのレベルが2に上がりました≫

≪SPが1増えます≫


【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:2

 職業①:糸使い(Lv2)

 職業②:裁縫師(Lv1)

 SP:2

 体力:140/140

 魔力:63/63

 攻撃力:7(+6)

 防御力:6(+3)

 状態:健康

 称号:なし


ラビットを十数体倒してレベル2に上がったが上がり幅はこんなものであった。


ある程度のラビット素材を手に入れる事が出来て一旦町へ戻る事にした。


早く麻の服装備を絹装備に変えたいし防御力も少しは上げたいが為だ。


『ホーンラビットの角が10、ホーンラビットの毛皮が8、ホーンラビットの肉が5つですね。合計で115Gとなります』

「たった、それだけなのか?」

『はい、ホーンラビットの素材ですと駆け出し冒険者でも普通に狩れる対象です。ここ数ヶ月はラビット素材は溢れかえるほど在庫を抱えており買い取り値段は落ちるばかりですね』

「そうか」


あれだけ苦労して狩ったのにデフレが発生しているようだ。


『このままやり続けても困りますので薬草採取等は如何ですか?』

「薬草か」

『併用してゴブリンの討伐も御座います。どちらとも常設クエストなので事後報告でも構いません』

「報酬額はどの位だ?」

『薬草の種類によりますがどの種類でも10枚で1クエスト達成になります。また品質次第で報酬上乗せもあります。対象の薬草はヨクナール草、シャッキリ草、カイドーク草、シビレナーイ草、フエール草の5種類です。全て草原を抜けた森に自生しています。また群生地を見つけたとしても根元からではなく葉の部分を切り取ってください。次回の時には元に戻っている事でしょう。基本的に1回達成毎に100Gとなります』


ラビット狩りより効率がよさそうだ。


「常設の理由は?」

『各種薬草が足りなくなっている事が主な原因ですね。冒険者の皆様が体力回復ポーション、魔力回復ポーション等の購入が想像以上に多いとの事です』

「なるほど」


俺達プレイヤーの出現によって街中で備蓄していたポーション関係が少なくなっている事が原因という事か。


『現在、各種ポーションの価格が高騰し続けており規制する事も視野に入っておりますのでご注意を』

「そんなにか?」

『我が町ではなくセカンドの街、サードの街、フォースの街による合同会議で議題にあがりました』

「そうか」

『続きまして、ゴブリン討伐についてですが倒したゴブリンの耳を5匹分を納品していただければクエスト完了となります。1回達成毎に付き50Gとなります』

「こっちは安いんだな」

『ホーンラビットと一緒で駆け出し冒険者が狩れる対象です。また誰もゴブリンを狩らなくなると群集暴走スタンピードに発展するので定期的に狩って頂けると助かります』

「なるほど」

『なにか質問はありますか?』

「無い。とりあえず、この2つをやってみる」

『かしこまりました。お気をつけて』


ギルドを出てマップ画面を広げる。


このゲームのマップは踏破する事で詳しく広がる仕様である。俺はファストの街と草原地帯しか行っていないから周りは真っ暗状態である。


「確か草原の向こうに木々が生えている場所が見えたがソコか?」


森の位置が大雑把な説明だった為方角が分からなくなった。草原地帯はかなり広大だった。


『お、今回は死ななかったのか?』

『馬鹿、逃げ帰ってきただけだっつーの』

『早く、別の転生しちまいな』


相変わらず復活ポイント付近で冷かしプレイヤーが喫茶店で茶を飲んでいた。


「ゴブリンが出る森を知らないか?」

『あ?ゴブリンだぁ?』

『ヒャッヒャッヒャッ!止めておけ兎にすら負けてるお前が行ける場所じゃねぇよ』

『転生が先だろ』

『『『ヒャッヒャッヒャッ』』』


転生とはすなわちキャラの作り直しをするという事だ。


だが俺はしない。すれば後悔すると思うし逃げるのと同じだ。


「・・・」


男達の笑い声を背景に置き去りにして俺は草原を目指す。


ピィ


バリィン


基本ノンアクティブ(攻撃しないと反撃してこない中立モンスター)のラビットを狩りつつ森を目指す。


「ここが森か」


30分掛けて駄々広い草原地帯を踏破して急激に木々の生い茂る広大な森が広がった。


「ここで死んだらもう一度30分くらい掛けるのか」


ため息をしつつ俺は森の中へ入る。


・・・


・・・・


・・・・・


薬草ってどれだよ?


そこらに生えてある薬草を手に入れようとするがまったく分からない。等しく雑草にしか見えない。


「こんな時の掲示板だよな」


俺は掲示板を開き該当しそうなスレを見に行く。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【マジ】調薬師達による調薬師のための調薬術伝授【キツイぜ】その1

001:ルールは以下の通り

   ・次スレは>>950を踏んだ人が立てる事

   ・荒らしに触らない、NG推奨

   ・荒らしが自作自演する場合があるので、触ってる人もNG推奨


002:1乙

003:乙

004:いきなり難関にぶち当たったんだが?

005:俺も

006:俺もだ

007:どうやって薬草って見分けるの?

008:雑草にしか見えんww

009:草生やすなよ。雑草なだけにww

010:で、どうすりゃいいの?

011:さぁ?

012:俺達、サブ職業ミスったか?

013:調薬師って役立たず職業か?

014:お客様の中にテスター調薬師の方はおりませんか~

015:おまいら、スキル取得一覧を見たか?

016:ふぁっ!?

017:その中に観察つースキルあるだろ?ソレを取れ

018:ソッコーで取得したが変化ないんだが?

019:人の話を最後まで聞けよ

020:んで?

021:教えてやらんぞ

022:サーセン

023:漢字のまま観察してみろ、耐久値がうっすら見えるはずだ

024:18だが、○○/○○というのが見えた。これが何か?

025:コレだけでは意味がない。あとは熟練度を上げれば注視というスキルに発展する。以上。

026:ちょっww

027:それだけかww

028:俺のスキルポイントを返せ!!

029:>28生贄乙


そこから、避難スレが続きスクロールを繰り返す。


152:おい、観察スキルがレベル20になって注視スキルが派生して取ってみた。>25の意味がようやく分かったぞ。スキルの能力は物の効果を出してくれる。それで効果のある草を何十もインベントリにぶち込んだら重ならずにストレージ事に分かれやがった。観察スキルだけでは全部一つに重なっていたから驚いたぜ。雑草だけではなく様々な物にも対応している。木ならただの木、家なら○○の家なんて1文も見える。武器の名前も見えた。

153:それで?

154:そいつをギルドに納品してみたら受付嬢が次々に仕分けし始めてクエストクリアになった理由を聞いてみたら鑑定持ちでなんの草なのかわかるそうだ。ただ、ドクニナール草、マヒール草が混じってて怒られた。

155:結局わかんねぇよ

156:注視で仕分けた草の詳細は今の段階では分からん。がストレージ毎に分かれる以上、システム的に鑑定された様な物だ。それを無理やり調合してみたら何回かは初級体力回復ポーションが出来上がった。

157:それを早く言え!!

158:ちょっと取ってくるわ

159:俺からは以上だ。なにか別の事が分かったら教えてくれ。


注視スキル。注視する事で何かがわかるスキルという事か。


暫くスクロールして見てみる。


579:遂に次に繋がるスキルが見つかった。

580:なんだって!

581:鑑定だ

582:まんまやw

583:注視レベルMaxになったら派生して現れた。

584:よく育てたな

585:使ってみたら謎だった効果のある草が薬草名として鑑定された。これで調合が捗る。いままで失敗率がハンパ無かったもんな。お前等もレベルMaxを目指せ。

586:情報サンキュ

587:頑張るぞ


つまり調薬師たちが無駄に調合しまくっている為に街で作られるポーションの原材料が減り流出を止めている一因となりつつあるのか。


742:だぁぁあああ

743:どうした!

744:いつになったら調薬師レベル3になるんだ!

745:それは俺も思った。

746:同意見だ。レベル2は直ぐになれたんだがレベル3になれない。

747:おまいら、初心者体力回復ポーションばかり作ってるんじゃないのか?

748:そうだよ

749:当たり前だ。同じものを作り続けても熟練度は上がらない仕様だ。他のポーションかもう一段階上の回復ポーションかを作らないとな。俺もその壁にぶちあたってかなりの薬草を無駄にしたものだ。

750:それを早く言えよ!!

751:そんな当たり前の事を聞くな!俺もそうだったんだよ!!

752:今までの薬草が無駄に終わっちまったじゃねぇか。また森に採りに行くのかよ

753:地味に遠いんだよなぁ

754:実入りも少ないしよ。俺が見つけた穴場だった群生地根っこごと持っていく奴出てこいよ

755:マジか!マナーだと思って何株か残す物じゃないのか?

756:二度と生えない場所と化した

757:そんな奴見つけたら晒しておこうぜ。俺達調薬師の敵だ!

758:いくら、つまんねぇクエストだからといって根こそぎは酷でぇな

759:朗報と言えるかわからんが、鑑定をプレイヤーやモンスターにしてみたら名前と異常状態の有無が見えた。

760:マジか!?

761:フレンドリスト交換でしか分からなかったのに一方的に見れるのかよ!?

762:名前だけ見えても使いどころがわからんな

763:名前が分かれば晒せるだろ!

764:なるほど!!

765:スクショと名前で特定できるからな。

766:調薬師の敵撲滅運動に拍車がかかるな!



これ以上の情報は見込めないな・・・


ガッ


掲示板を見終わってウィンドウを閉じた時に右のコメカミに衝撃を感じ視界が大きくブレた。


なんとか右側を見るとブレる視界の中で子供位の人影が跳ねている所が見えた。


ギャギャギャギャッ


子供には似つかわしくない低いダミ声で喜ぶ声色だったからゴブリンだと予想がついた。


ザザッ


揺れる視界で何とか倒れないように踏ん張る。


ガンッ


後頭部に強打が入り俺の体は地面に叩きつけられた。


背後にゴブリンが忍び寄っていたようだ。


視界どころか意識も刈り取られたようで気がついた時は復活ポイント前だった。


≪デスペナルティが発生します。これより30分間は全ステータスが20%ダウンします≫


何時ものプレイヤー3人がゲラゲラ笑っている所を見ると死んだ事は確定でデスペナ状態という事だ。


認識が甘かった、モンスターの出る場所でのよそ見は今後注意しないといけないという事だ。


「はぁ」


ため息をついて残ったラビット素材を売る事にした。


≪スキル:観察をSP1消費して取得いたしますか?≫


YES


掲示板にあった観察スキルを取る。


鑑定スキルに派生すれば様々な事に使えそうだからだ。


デスペナ解除までの30分間はそこら辺に座って道行く人を観察する事にした。


・観察

 対象を観察することで状態が分かる。

 モンスターや人なら異常状態など

 物なら耐久値など

 前提:キャラクターレベル1 

 消費魔力:バシップ


と説明文で紹介されていた。


観察する事で人々の異常状態の有無が分かるらしい。


大体は健康体の人が行き交うだけである。


『クソッ!』

『早く、手当して貰おうぜ』

『こんな時にポーション切れとはついてねぇ』


前衛職の格好をした3人組パーティが通りかかった。その内1人が右腕を負傷しているのか血が流れているエフェクトが発生していた。


【流血(小)】


これが、観察の効果か。


男の頭に異常状態である症状が浮かび上がっているのを見て納得した。

異常状態の回復するには専用の回復ポーションか教会で治療してもらうしかない。

または回復職プレイヤーの回復魔法となる。

男達は街中にある教会へと足早に去っていった。


「そうか」


楽して観察の熟練度を挙げる方法を思いついた。


『痛てぇよ』

『よそ見するんじゃなかったぜ』


教会の出入り口から離れた所で腰掛けて遠目で俺は見続けていた。

プレイヤーや地元NPC等が教会へ向かっていくところを見て状態異常を観察


【流血(小)】

【骨折(小)】

【毒(小)】

【熱(小)】

【捻挫】

【めまい】

【頭痛】

【腰痛】


さすが教会前といった所なのか異常状態が手に取るようにわかる。

にしてもリアルに近いと謳われるだけあって状態異常だけで想像以上にある。


≪スキル:観察のレベルがMAXに達しました≫

≪SPが1増えます≫


どうやら、スキルのレベルがMAXになると消費したSP1が戻ってくるようだ。


≪スキル:注視が派生しました≫

≪スキル:注視をSP2消費して取得いたしますか?≫


SP2も使うのか・・・


今の俺には無理な話だ。


デスペナも治ったことだし行ってみるか。


再び草原でラビット狩りをしながら森へと向かう。


今度は周りにも気を配りながら入るか。



≪アオイのレベルが3に上がりました≫



【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:3

 職業①:糸使い(Lv2)

 職業②:裁縫師(Lv1)

 SP:2

 体力:150/150

 魔力:71/71

 攻撃力:10(+6)

 防御力:8(+3)

 状態:健康

 称号:なし


SPが2になり注視スキルを獲得した。


ラビット相手では糸使いの熟練度が上がらないのだろう。

ただ戦闘時の経験は入るようでキャラクターレベルが先に上がった。


SPスキルポイントは一定間隔で貰えるようだ。

そもそもスキル取得には4種類存在する。

1つ目は先天性スキル。最初から持っているスキルに加え関連するスキルは自動的に取得する。


2つ目は後天性スキル。SPを消費して持っていないスキルを取得する。またはNPCからスキルスクロールを購入して取得するが超々高額で手が届かない。


3つ目は継承スキル。特定の職人に弟子入りして取得する。長い期間の実施研修した後認められて手に入る。


4つ目は経験スキル。一定の条件の元経験する事で得られる。


俺は先天性スキルは未所持だから基本的に1つ目以外での取得となる。


ギギッ


木々の向こうに緑色の肌を持つ子供の背丈ほどモンスターが見えた。


ゴブリンだ。


距離にしてまだ30m以上離れているから気づいてすらいない。


シっ


背後から後頭部を狙って攻撃。


ギャギャァアア


パリィン


クリティカルヒットのエフェクトと共にゴブリンが絶叫する。

更に飛距離ボーナスとやらがついて一撃必殺となりゴブリンが霧散した。


これは?


周りにモンスターがいない事を確認しヘルプ画面から飛距離ボーナスを検索する。


・クリティカルヒット

 攻撃時に対象の弱点にヒットしたときにボーナスが付く。

 攻撃力×2.0のダメージ


・飛距離ボーナス

 攻撃時に対象との距離が離れている程ボーナスが付く。

 20mなら1.5倍。30mなら2倍。40mなら2.5倍。50mなら3倍。


30mからの攻撃で俺の攻撃力は2倍の威力をだしたようだ。

ただ目測だからボーナスが付くは今後は分からない。


ギギィ


どうやら視認できていないだけでゴブリンが隠れていたようだ。


ザッザッ


位置を変えるとゴブリンの姿が見える。


ヒュッ


ザクッ


ギャギャギャッ


あれ?


攻撃を放ったのだがゴブリンの足元に鋭角が突き刺さった。


ギャギャギャギャッ


ギュルルルルルッ


ゴブリンが騒いでいる内に巻き戻し再び攻撃をする。


ザクッ


が、当たらない。


まさか・・・


木々の影を利用しゴブリンの近くまでやってくる。


18m位まで近づきモンスターの視認範囲までやってくるとゴブリンにターゲットマークが表示される。


ヒュオッ


ザクッ


鋭角は未だに周囲を警戒していたゴブリンの後頭部に吸い込まれてクリティカルヒットエフェクトを出した。

飛距離ボーナスは出ていない。


やはり・・・


素早く巻き戻して二撃目を当てゴブリンを霧散させる。


ターゲットしていない場合、命中率は著しく落ちる事に気づいた。


俺のターゲット限界範囲は18m圏内のようだ。それ以上の距離から当てようとすればノンターゲッティングでの攻撃になる。


ゲームでのターゲットというのは後衛職にとって重要な役割を持つ。先ほどのように命中率が落ちるからである。

遠距離攻撃をなんの訓練もしていないプレイヤーが敵に当てることができるのはターゲットによるアシストのお陰である。

弓使いの矢は決められた軌道をなぞる様に敵へ向かっていく。魔法使いならばターゲットが少しズレた位でもホーミングを伴って飛んでいく。糸使いの糸も同じで真っ直ぐ飛ぶからターゲットによるアシストは欠


かせない。


また、課題ができてしまったようだ。


≪アオイのレベルが5に上がりました≫



【ステータス】

 名前:アオイ

 種族:ヒューマン

 レベル:5

 職業①:糸使い(Lv3)

 職業②:裁縫師(Lv1)

 SP:1

 体力:200/200

 魔力:92/92

 攻撃力:18(+6)

 防御力:14(+3)

 状態:健康

 称号:なし

 ランク:G-


幾度かの戦闘を終えてレベルが5に達する。


掲示板の通りに雑草か効果のある草なのかが分かり始め同時に薬草集めを並行して行っている。

順調に注視のレベルも上がっている。

だがこの森の中では草、木、ゴブリン程度しか無いから直ぐに上がらなくなった様だ。

ただ、注視スキルはゴブリンの挙動を予測でき感じることが出来るという事に気がついた。


注視:対象を注視することでより詳しく分かる。

   モンスターや人なら挙動があらかじめ感じられる。

   物なら状態や効能の簡易説明。


説明文にもそう書かれているからそうなのであろう。

思わぬ副産物と言った所だ。


『ゴブリンの耳が23個、ヨクナール草は10枚、シャッキリ草は2枚、カイドーク草は7枚、シビレナーイ草は11枚、フエール草は1枚の合計31枚。ゴブリン討伐は4回分と薬草類納品は3回分なので500Gとなります』

「此等は?」


カウンターに別に葉がよけられていた。


『ドクニナール草、マヒール草です。此等は毒草類なので対象外となります。今後は気をつけてください。ただの雑草を持ってこられるよりかはマシですが我々が求めているのは薬草類ですので』

「此等は売り物にならないのか?」

『只今、不足しておりませんので買取価格も低いですよ?』

「一応取っておくか」

『その方が良いと思います』

「ちなみにどれがどれなんだ?」

『こちらがヨクナール草です。こちらの薄緑色のがシャッキリ草です。紫色の線が2本入っているのがカイドーク草です。黄色い線が2本入っているのがシビレナーイ草になります。フエール草はヨクナール草と似ていますがギザギザが1つ多く入っています』


受付嬢は各種の薬草の特徴を言いながら丁寧に教えてくれた。


「この紫の3本線がドクニナール草で黄色い3本線がマヒール草という訳か」

『左様です。次からちゃんと注視なさってくださいね』

「あぁ」

『またのご利用お待ちしております』


まだまだ、金が足りないな。


往復1時間の道のりを歩き、500Gの稼ぎなのだ。

お疲れ様でした。

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