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40話「鉱山迷宮①」

「看破」


ダンジョン名:鉱山迷宮

   全階層:75層

   難易度:★★★★

  コメント:75層の連なる迷宮を突破するには食糧問題を解決する術が必須である。


やっぱり看破は迷宮自体にも通用した。


「情報が少ないだろう・・・・ダンジョンに始めて挑むのが75層クラスか」


迷宮の地下1階層の時点では看破スキルを使わなかったが、改めて見ると酷い内容だ。


「とにかく、様子見で進んでみるか・・・」


地下1階層の殆どは記憶しているからサクサクと2階層へと進む。


ここからが初見という訳である・・・


・・・


・・・・・・


ギャァアアア


「うーむ、代わり映えがしない」


地下5階層までなんの苦労もなく進めた。

出現するモンスターもゴブリンかホブゴブリン程度の雑魚だけである。


もしかしたら、10階層までゴブリン系ばっかりなのかもしれないな・・・


・・・・・・・


ギャアアアアア


シュォオオオ


「マジかよ」


地下10階層は迷宮というより、ボス部屋のみの構成だった。


出てきたのはゴブリンキングだった。

扉に入って出現したゴブリンキングの頭部を狙ってミスリルの尖杭を速射し、一撃で葬ったばかりだ。


ドロップしたのはゴブリンキングの魔石のみで宝箱等も出てこない。

代わりに地下11階層へと続く階段だけだ。


ここまでの考察でわかった限り、1階~10階はゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンリーダー。ゴブリンファイター、ゴブリンランサー、ゴブリンレンジャー、ハイゴブリン、ゴブリンジェネラルとゴブリン種で構成されていた。



10階層を境目に1種族で分かれているのかも知れない・・・


グルルルゥ


出てきたのはグランドウルフ、広い草原や荒野なんかでよく見かけるモンスターだ。


今度はウルフ系で固められた構成か?


・・・


・・・・・・


ギャウゥウウンン


シュォオオオオ


20階層のボスはワーウルフだった。


先方も出現と同時に頭を粉砕して一撃死で決着をつけるというつまらない結果。


ウルフ系は敏捷性が高く回避力もある。


ウィンドウルフという風属性に特化したウルフは俺の攻撃を度々避けて少し苦戦をした。

案外レベル差があっても侮れなかった。


にも関わらずボスは避けることもせず倒れていった。


これ如何に?


ゴゴゴゴゴッ


地下21階層への階段が現れる。


グゥウウ


「飯でも食って寝るか」


1日で20階層を突破して腹の具合からして夜だと判断し夕食を摂り寝る事にした。


「魔石はしょっぱいな」


インベントリに収まっているのは、これまでに倒したゴブリンとウルフのボス2種の魔石だけだ。

ボスからドロップした魔石は魔石(中)と書かれている。


というより、魔法金属の出現ポイントすら超えてしまった事に今更ながら気づいた。


この先に出てくる事を願おう・・・


俺はボス部屋で一晩過ごすことにする。


ボス自体のリポップ条件は誰も中に居ないという事らしいと10階の時に判明させた。


つまり、俺がここにいる限りモンスターに襲われずに済むという事だ。


時間経過で下の階層か部屋の外に無理やり運ばれることもない。


逆に、俺がいる限り他の冒険者がボスに挑めないのだが、オーガストの情報からしてランクB以上の冒険者が来る事は稀だろう・・・


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


ゴンゴンゴッ


眠りについて数時間経過した頃・・・ボス部屋に入る扉から叩く音が聞こえ始めて意識が浮上してきた。


「なんだ?」


『中の奴!死んでんのか生きてるのか返事しやがれ!!俺達が入れねぇじゃねぇか!!!』


分厚い扉で声の大半は抑えられてしまっているが怒鳴っている様だ。


「死んでいたら返事できねぇよ」

『あ、誰かいますね』


別の誰かの声が聞こえた。

声色からして女性か、変声期を迎えていない少年の様だ。


『あぁ!?居るのかよ!!だったら早く下に降りやがれ!!!』

『すみませ~ん。そこに誰か居れば早く下に降りてください。僕達が入れませ~ん』


随分と対局的な2人組・・・3人組だな。


扉の向こうの気配からして無口な人物が居るようだ。


ガンガンガンッ


ボス部屋は一方通行、俺が降りない限り入口である扉は開かない。


戻るときはどうするかって?


ボス部屋から1階層降りて、すぐに2階層上がる階段があって戻れる。

もちろんコッチ側も一方通行で上の階層から降りてこれない。


ガンガンガンガンッ


『誰だかわからねぇが!ぜって~許さねぇぞ。俺達を3時間も待たせやがって』


俺が寝ている間、待っていてくれたようだ・・・


ここは関わらないでおこう・・・


タッタッタッタ


ゴゴゴゴゴゴゴッ


ボス部屋から出たら戻れないように降りてきた階段は自動的に収納されていく。

その代わり戻る様の階段が出現する。


さっきの連中がどれくらいでワーウルフを倒して下りてくるか分からないがとっとと下に潜ろう。


グルルルゥ


「今度はコボルトかよ」


21階層からはコボルト種のようだ・・・



・・・


『おらぁ、出てこぉい』


遠くの方から怒鳴り声が聞こえ始めた。


手早く22階層に降りてきたのだが、追いついてきたようだ。


『マナー違反の冒険者ぁあああああ!!』


ここまで聞こえてくるという事は案外近い場所なのかもしれない。


坑道のような迷路で自分がどこに居るのか迷いやすいように入り組んでいる。


微妙に坂になって下っていたり、登っていたり、緩やかに曲がっていたりして方向感覚を徐々に無くして行く感じだ。


もしかしたら壁一枚向こうに居るのかもしれない・・・


・・・


『どこまで、逃げやがるんだよぉおおおお!!』


怒鳴り声は遂には25階層まで追ってきた。


ここからはコボルトの進化系が現れて数頭単位で連携して襲いかかってくるレベルだ。


後ろの冒険者グループでも苦戦を強いられるが着実に追いかけてきている。


俺の場合は素の攻撃力が高いお陰で耐久値350のアイアンタラテクトの縦糸でもコボルト種との戦闘には支障はなく順調に進んでいる。


・・・


地下29階、出現するコボルト種のモンスターはロードクラスが指揮をして10の部隊を俺にぶつけてくるという戦術に切り替わった。


1部隊編成内容はコボルトソルジャー(兵士)×2、コボルトアーチャー(弓使い)×3、コボルトメイジ(魔術師)×1、コボルトファランクス(重装歩兵)×3、コボルトコマンダー(指揮官)×1の10頭。


それぞれの役割を持って防御、攻撃、牽制、魔法、指揮を駆使して俺に肉薄してくる。


1部隊のダメージが大きくなると後ろに控えている別部隊と交代し回復し始めるという厄介さである。


当然追いかけてきている連中もこの29階で足止めを食らっているだろう。


ヒュンヒュンヒュンッ


9本の魔法糸と1本のアイアンタラテクトの糸で俺の周囲を舞ってコボルト共の接近を許さない状態にする。


シッ


尖杭で一撃必殺の貫通攻撃を狙うもファランクスの持つ盾に弾かれる。


攻撃力やスピードが乗っている筈だが貫通にすら至らない。


グルルルゥウ


盾の影からコボルトファランクスが顔を覗かせてニヤリと口角を上げる。


「これじゃ、決定打が足りないな」


幾ら強力な攻撃力を持っていても数、技能を持つ集団の前では通用しづらいと分かった。


これじゃあ、どっちがモンスター側か分かったもんじゃねぇな。


「自律型魔導人形《NALL》、サンよ出てこい」


カッ


俺の隣で閃光が走り、久しぶりにサンを外に出す。


グルァアア


最奥に控えているコボルトロードが吠え、周囲のコボルト共の雰囲気が変わった。


「マスター、お久しぶりです。用件はどの様な?」


相変わらず感情の篭っていない機械的な声だ。


魔力糸の1本とサンが瞬時に繋がる。


「眼前の敵を殲滅せよ」

「畏まりました。では、行ってまいります」


グッ


「ロングピアッシング」


細剣スキル:ロングピアッシングは一瞬にして相手との距離を縮めて突き刺す技だ。


バンッ


サンの踏み込んだ床に亀裂が入り、サン自身が俺の隣から掻き消えた。


ドガァアン


ギャゥウウウン


サンの攻撃力250に加え、スピードの乗った攻撃は目の前で盾を構えていたコボルトファランクス3頭が吹き飛び消滅していく。


「テンズフィーブ」


細剣スキル:速度重視の10連突刺。


残った7頭にコボルト達に突き刺さり、消滅していった。


「圧倒的ではないか、我がPTは」


おっと、何かしらのフラグが立ってしまったかもしれないな・・・


ブォオン


サンは自身の姿が霞むスピードで俺が悪戦苦闘していたコボルトロードの部隊を各個撃破していく。


時間経過と共にどんどんと数を減らす一方だ。


・・・


カラァン


最奥のコボルトロードも含め全て殲滅してサンは俺の元へと戻ってくる。


周囲には魔石が地面に転がっているだけで静けさが周囲を包み込む。


「任務完遂致しました」

「ご苦労。結構減らしたな」

「申し訳ございません。安全を優先する前にスピード重視かと判断いたしました」


現在の俺の魔力は4,440あったが、今の戦いで3,700位にまで落ち込んだ。


コボルトロード部隊は総勢で100頭編成であり、数的有利は当然アチラ側が持っていた。

が、サンが細剣スキルを連発する事で見事に戦力差を埋めきってみせた。

その代償として、細剣スキル発動時の魔力は俺が供給する事になっている。

サン自身は魔導人形故に自身が動くだけの魔力しか作り出せないからだ。


「次からは魔力は温存だ」

「畏まりました。前衛は任せてください」

「頼んだぞ」


・・・


地下30階ボス部屋はボスだけではなく、コボルトキングがコボルトロードの2部隊を従えて200頭以上が襲いかかってきた。


その分、部屋というよりドームのような広さを持った場所だった。


俺とサンの2に対して203頭が広さを生かしぶつかって来る。


ファランクスの壁がズラッと横に並び、アーチャー、メイジの遠距離攻撃が数十と飛来してくる。

接近戦に持ち込まれたら周囲がソルジャーに嬲られる事が容易に想像が出来る。


「マスター、作戦は?」

「全力で崩して来い。躊躇すらするな」

「畏まりました」


グンッ


ヒュオッ


サンが単独で突っ込み、ファランクスの壁にぶつかり合う。


流石に一撃では吹き飛ぶことなく耐える。


盾持ちのスキル鉄壁が発動したようだ。


ガキィンガカンッ


細剣を振り突破を試みるが勢いの無い攻撃に盾が突破できかねている。


『『『『『ファイアーボール』』』』』

『『『『『ロングショット』』』』』


シャシャシャシャシャッ


魔法と弓の射程に入り、上空からファイアーボールと矢の雨が俺に向かって降って来る。



「多重操糸術、誘導!」


バシバシバシバシバシッ


ドガァアアアン

ドォオン


残った8本の魔力糸で矢を悉く打ち落とし、サンの居ない所にファイアーボールを集中的に跳ね返してファランクスの数頭を吹き飛ばす。


ガシャンガシャァンッ


穴の開いたところを即座に埋めて壁が元に戻る。


「流石に手ぬるくないか」

「ヘビィストライク!」


細剣スキル:ヘビィストライク、パワー重視の10連撃

それがファランクスの盾を揺るがす。


「誘導!」


更に8本の糸をファランクス達の盾にまき付けてあらぬ方向にズラす。


「ツインピアッシング、スピンストライク」


2連刺突で無理やり壁の内側に潜り込み、中で待機していたファイター数頭をなぎ倒した。


壁の内側に入ってしまえばサンの実力が発揮される。


コボルト達で見えなくなってしまったが、魔力がグングンと削られ反比例するようにコボルト達の集団が数を減らしていった。


「よそ見、してる暇あるのか?斬糸!」


8本の魔力糸に斬属性を乗せて放つ。


盾をサンに向けることによって今まで隠れていた体がコチラ側に見えた所を狙う。


ギャゥウウン


8本の斬糸が無防備の背中を切りつけ残っていた体力を全損させ消滅していく。


内側のサン、外側の俺に気を取られどちらを向いていいのかファランクスの壁が右往左往し始めた。


「パイルドライバ!!」


ドシュンッ


今まで温存していたミスリルの尖杭を発射。


高速で飛来する杭は盾に防がれることなく真っ直ぐに数十というコボルトを貫通し素の攻撃力で一撃死に追い込むことが可能となる。


「マスター、これ以上は危険かと」

「そうだな」


俺とサンでコボルトの3分の2を潰した所で俺の魔力が尽きかけてきた。


アーチャー系とメイジ系のコボルトが殆ど残っている状態で魔力切れは致命的な状態だ。


魔力回復方法は自然回復の他にマナポーションとなるが値段が高くて消耗品としては使えない代物だ。


「仕方がない。サン、これ等を取り込め」

「よろしいので?」

「背に腹は変えられない」

「分かりました。いただきます」


ガシャッ


サンは普段見えない兜の口元のバイザーを開く。


ザァアアア


俺はインベントリに入っている魔石を地面に落としていく。


「んぐ、んぐ」


サンは地面に落ちた魔石を次々に口元に持っていき自らの体に取り込んでいく。


「マナチャージ」


一定数の魔石を取り込み魔石から魔力を取り出して術者に送るというチートじみた能力を発動させた。


グゥウウウウ


小さな魔石から多少の魔力が俺に流れ込む。


「もっと取り込め。奴らも待っちゃくれない」

「はい。もっとサイズの大きい物の方が効率が早いです」

「今回は大赤字じゃないか!」


インベントリから中サイズの魔石をどんどんサンに取り込ませていく。


魔力の変換効率は大きい魔石ほど多く俺に返ってくる。


大サイズの魔石数個を残して殆どがサンに取り込まれてしまった。


その代償と引き換えに俺の魔力は全回復した。


「全力を持って殲滅するぞ。ここで少しでも取り戻す」

「畏まりました」


こうして、再編成を整えたコボルト軍と再度衝突し全魔力を消費する勢いで倒しまくっていった。


ギャワアアアォオオン!!!


戦闘を始めて3時間が経過し、ようやくコボルトキングを倒し終えてドームに静粛が訪れた。


後に残ったのは中サイズ~大サイズの魔石が床一面に散らばりキラキラと光り輝いている。


魔石を全て回収し俺は寝る事にした。


今回の攻略はここで打ち切る事を決意し引き返す事にする。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・


ザワザワ


今日も冒険者ギルドは迷宮探索する冒険者達で賑わっている。


「お帰りなさいませ。アオイ様」

「魔石の買取をして欲しいのだが」

「魔石ですね。こちらのトレイに乗せてください」


縦15cm、横30cmのトレイがカウンターに置かれる。


「乗せきれないと思うぞ」

「・・・畏まりました」


受付嬢はチラッと後ろに視線を向けると別の受付嬢がカゴを持ってきた。


「査定をしてくれ」


ザラザラザラ


インベントリから魔石(小)×790個、魔石(中)×180個、魔石(大)×20個をカゴの中へと入れる。

更に帰り道掘ってきた銅鉱石×624個、銅鉱石(上質)×241個、鉄鉱石×572個、鉄鉱石(上質)×123個、銀鉱石×380個、銀鉱石(上質)×74個も入れる。


ゴクリッ


それを見ていた2人の受付嬢が唾を飲み込む。


「しばらくお待ちください。この量の査定には時間がかかります」

「分かった」


受付嬢達がカゴを2人がかりで奥へと運んでいく。


魔石といっても1つ1つの重量があって数が多くなれば嵩張るのが常だ。

俺のインベントリは個数制限があるが重量は関係ない。


ガタッ


近くの椅子に座って査定が終わる事を待つ。


「・・・お前も座ったらどうだ?」


今まで一言も喋らず、直立不動を保っているサン。


「いえ。私は自律型魔導人形です。疲れることもありません」

「それもそうだな」


だが、どう見ても女性型のサン。遠目から見ても自分は座って女性に見える冒険者を立たせているのは結構目立つらしく至るところから視線を感じる。


「そういえば、お前と同型は探知できたのか?」

「ハッキリとは分かりません。ですが僅かながら私と同じ微量な魔力の波動を検知しました」


やはり鍛冶神ガンジの遺産とは自律型魔導人形の事なのだろう。


『よぉ、姉ちゃん。自分だけ座ってお前さんを立たせているガキなんざ放っておいて俺達と飲もうぜ』


サンの背後に赤ら顔の冒険者が声を掛けてきた。


酒に酔って判断がつかないのか?


よく顔を見れば、俺が此処最近出入りしている時に見かけたことがなかった冒険者だ。


ギルド内に居る冒険者は鑑定で全員チェック済み。


つまり、俺と同じ流れの冒険者か迷宮に篭っていた実力者だろう。


【鑑定】

 名前:グルド

 レベル:32

 種族:ヒューマン

 体力:1,850/1,850

 魔力:646/646

 状態:酔(中)


簡易的に見てもこの中じゃ平均より少し上の実力のようだ。


「・・・」


話しかけられたサンは気にしていないのか無視している。

というより、主人である俺か仲間と認識されていないと会話はしない仕様なだけである。


「おい、聞こえているんだろう?」


どうやら空気も読めずグルドという冒険者はサンの右肩に手を置こうと動いた。


パシッ


グルンッ


ドタァン


「ぐぇつ」


目に止まらぬ速さでサンがグルドの左手を掴み捻り上げて床に叩きつけた。


スッ


また直立不動に戻る。


『おい、今の見えたか?』

『いや、何が起きたか分からん』

『気がついたらグルドの野郎が叩きつけられていた』

『だよな・・・』


周囲で様子を伺っていた冒険者達がヒソヒソと会話をする。


「そこの人たち、ギルド内での争い事は禁止ですよ」


受付嬢から注意の声が飛んでくる。


今回は剣を抜くなど明らかな戦闘行為ではなかったから忠告だけで済んだ。


「痛ってぇ。なにしやがる」


頭を床に打ったのか手で押さえながら起き上がってきた。


「グルドと言ったか?」


サンは会話する気ないようだし俺が代わりに会話するしかなかった。


「頭を打っちまったじゃねぇか。明日に響いたらどうしやがる」


とんだ言いがかりじゃねぇか。


「先に手を出してきたのはソッチだろう?」

「あ?俺はこの女の肩に手を置こうとしてだな」

「それが戦闘行為に判断されたんだよ」

「あ?」

「気づかないのか?こいつは魔導人形なんだよ。お前は人ですらない人形に話しかけてきただけだ」

「あ?え?・・・・・な!?」


グルドは数瞬呆けたが理解したんとたん顔が赤くなっていった。


ドワハハハハハハハハ


すぐに爆笑が周囲から巻き起こる。


『おいおい、人形と人の区別も付かねぇのかよ(俺も分からんかったわ)』

『お前、酔いすぎて判断が鈍ってるぜ(あぶねぇ、あぶねぇ)』

『今日は大人しく帰って寝ろよ(あと数秒遅かったら俺がアソコに立っていたな)』


周囲の冒険者達が爆笑しながらグルドに声をかけてる。


「くそぉ!」


グルドは顔を真っ赤にしてギルドを出るしかなかった。

それを追いかける仲間達であろう冒険者が数人出てった。


『採掘王!今日も楽しませてもらったぜ(魔導人形ってスゲェ高い魔道具って聞いたぜ)』

『だな。採掘王に乾杯!(維持費が半端じゃないって聞いたことがある)』

『採掘王の名は伊達じゃねぇ!!(そもそもどうやって動いているんだ?やっぱり魔石なのか??)』


俺と面識のある冒険者達が酒の入った杯を掲げる。


「アオイ様、お待たせしました。査定が終わりました」


受付嬢に呼ばれカウンターに大きめの麻袋が置かれる。


「魔石(小)はそこまで希少ではなかったので単価は低いです。が、数は多いので支払額も増えました。小で39,500枚、中で18,000枚、大で4,000枚、銅鉱石で3,120枚、銅鉱石(上質)で3,615枚、鉄鉱石で17,160枚、鉄鉱石(上質)で6,150枚、銀鉱石で28,500枚、銀鉱石(上質)7,400枚。合計で銅貨127,445枚になります。銀貨に換えますか?」

「換えてくれ」

「では、銀貨127枚、銅貨445枚になります」


ジャラッ


どうやら、銅貨だけと銀貨と銅貨の2種類を用意してくれたようだ。


「金貨には届かなかったか」

「アオイ様が異常なのですよ。一度の冒険で銀貨120枚以上は稼ぎ出せません。本当に羨ましいスキルですよ」

「このアドバンテージがあるからな」


インベントリの能力が他を寄せ付けない程圧倒的な利益に繋げている。


「因みにミスリルの鉱石だと単価はいくらなんだ?」

「ミスリルの鉱石は地下18階層以降でしか採掘できず、またポイントも極限られた場所にしかないという面を考えて1つ銅貨500枚と当ギルドで定めております」


地下25階~29階の場所で取れ放題だったぞ?


まぁ、通常はコボルトとの戦闘でそれ所じゃないのだろうが・・・


「今の攻略者は何処まで潜れるんだ?」

「Aランク冒険者ですと、23階付近ですね。コボルトの数が多い為にPTで挑んだとしても食糧問題等も考えてココラ辺が限界かと。最高でも最近29階まで潜った記録もありますがコボルトロードが率いる100頭のコボルト軍団を見て帰ってきました」


つまり、あの時追いかけてきた3人はAランクの中でトップの実力者なのだろう。


「なるほど」

「本来なら冒険者の方の詮索は致しませんが、アオイ様もソコまで到達したのですよね?」

「何故だ?」

「魔石の数が異常だからです。アレほどの中サイズや大サイズの魔石は出現いたしません。ドロップも100%ではありませんし」


そう、中と上の魔石はドロップ率が存在していた。帰り道とあわせてあの数しか集まらなかったのだ。


「俺はC-冒険者だ。幾ら魔道人形が居たとしてもソコまでたどり着けるには数が必要だと思うんだがな」

「失礼致しました。ギルド職員として少し興味がありましたが出すぎた真似をお許し下さい」

「構わない」

「アオイ様は再び迷宮へ?」

「今日は休暇だ。準備も必要だからな」

「分かりました。またのご利用お待ちしております」

「あぁ」


踵を返してギルドを出る。

後ろにピッタリとサンが追随してくる。


・・・


「らっしゃい」

「今度は店番か」


オーガストの店にやってくると不貞腐れた態度のガンドルフがカウンターの奥で座っていた。


「お主、どこに行っていたのじゃ」

「迷宮だ」

「なぜ、ワシを連れて行かなかったんだ」

「オーガストは俺一人で向かえと行っただろう。一人でたどり着く事がガンジの試練なんだろうな」

「くっ。ワシはズッと槌を振るっている間に迷宮へ行っていたなんてな」

「それがお前の運命だ」

「親父の店に居ればよかったのぉ」

「くぉらぁ!サボってるんじゃないわい」

「ひぇ」


奥の扉からオーガストが顔を覗かせて怒鳴ってきた。


「おぉ!小僧じゃったか、迷宮には潜ったのか?」

「戻ってきた所だ」

「ワシの作品はどうじゃ?」

「申し分ない」

「そうじゃろうな。で、ここに来た理由はなんじゃ?」

「ガンダルフはドワーフの鍛冶師ならコレを作れると聞いた」


右手に装備されているワイヤーアンカーを叩く。


「ソレが作れる事が一人前の証じゃからな。こやつは作れないそうじゃがな」

「ワシは鍛冶師を目指しておらんからの」

「にしても鍛冶の腕は見張るもんがあるわい」

「ありがたい言葉じゃが戦斧を振っている方が性に合うんじゃ」

「勿体無いのぉ・・・っと話がそれてしまったの。で?」

「コレを新たに作り出して欲しい」

「親父の作り出した物が嫌だと?」


ガンドルフに凄まれる。


「そういう訳じゃないが、迷宮攻略には申し訳ないがコレだけでは役不足だと分かった」

「なんじゃと!?親父が丹精込めた武器が役不足じゃと申すか!?」

「まぁ、落ち着けい。小僧が役不足というには納得な理由があるんじゃろう?でなければ武器を新たに求める事はありはせんよ」

「納得いく理由がなければ問答無用で殴るからの!」


憤るガンドルフはドカっと椅子に座りなおす。


「地下29階と30階での戦いで糸一本では難しい事が分かった」

「ちょいと待て、29階や30階まで行ったのか!?」

「な、なんじゃい・・・」

「いいか、この街で地下29階や30階に行ける冒険者、ましてやPTを組んで行ける奴は今の時代おらんのじゃ。良くて23階止まりじゃ」

「う、うむ」

「一本の糸でそこまで行けるのが凄いと言えよう」

「説明不足がある。他に魔力で練った糸をあと9本出せる」


シュルルルルッ


両手から銀色に光る糸を8本を俺の周囲に出現させる。


「魔力を可視化できる事自体驚きじゃな」

「他の魔法も同じ原理だろ?」

「魔法は属性が付いて目に見える物に変換される」

「あぁ、確か聖属性でもあるんだったな」

「確か聖属性は回復魔法のみの属性だと聞いたが?」

「光だったか」

「それなら納得行くがそれでも足りないのか?」

「こいつ一本一本の耐久値は25だから直ぐに壊れるんだ。新たに魔力で練り直せば元通りなんだが防御力の高い連中相手だと分が悪い」

「そうか・・・作ってやれんでもないが、ワシはミスリル専門の職人じゃ。鉄や鋼鉄ならば別の職人に頼めばいいじゃろう」

「ミスリルの能力を見ればコッチがいい」

「流石に気づいておったか。しかしワシの所にはミスリル鉱石はほんの僅かしか残っておらん。金があっても用意はできんよ」

「それなら、問題ない」


ドドドドドドドドッ


俺はインベントリから発掘してきたミスリル鉱石を大量に店の床に落とす。


「これは、また」


その光景にガンドルフとオーガストが呆気に取られる。


「・・・何時まで吐き出し続けるんじゃ?」


吐き出し始めて1分は経過し店の床一面に鉱石は散蒔かれても尚鉱石はインベントリ出され続けた。


「あと少しだ」


ピタッ


インベントリからミスリル鉱石は無くなった。


「ミスリル鉱石1,732個だ。これだけ有れば足りるだろう」

「お釣りが来るわい。しかし、採掘王の二つ名は伊達じゃないの」

「不名誉なんだが」

「突如と現れた鉱石を掘り起こしまくる流れの冒険者。ワシ等の業界でも専らの有名じゃ。周辺の工房ではかなり潤ったと言っておる」

「それはどうも。作ってくれるか?」

「この仕事、引き受けたわい。オーガストの名に掛けて最高の一品を作り出してやろう」

「その前にコレが俺の所望する武器の図面なんだが作れるか?」


俺はインベントリから一枚の羊皮紙を取り出す。


ミモザに頼んで一枚だけあの時に使っていたペンデュラムガントレットの基礎設計図を作ってもらっていた。


「これは、なんて複雑な構造だ」

「ワシに解からんのぉ」


オーガストは図面を見てミモザの作品が複雑だと見破る。


「それに、この図面は何処で手に入れたのじゃ?」

「流石、にな」

「コレは、すまんの。職人としての血が騒いでしまったわい。コレを作り出せば良いんじゃな?」

「あぁ。糸は別の場所で取りに行けばいいだろう」

「モンスターの糸で良いんじゃったら、近くに迷いの森という場所がある。その奥地にコガネタラテクトと呼ばれる蜘蛛がおる。お主の持つアイアンタラテクトの上位種じゃ」

「特徴は?」

「金色じゃ。直ぐに見つかるじゃろうて。しかし、相手のランクはAじゃ」

「A・・・か」

「自信は無いのかの?ギルドに行けば仲間を見繕って貰えそうじゃが」

「この話は俺で何とかする。ソッチは任せた」

「任せておけ」

「それは左右で作って欲しい」

「分かっておるよ。余ったミスリルはどうするのじゃ?」

「それを制作費に当ててくれ」

「それでもお釣りが来るわ」

「なら、カンドルフの練習用に使ってくれ」

「げ!?」

「それも良いな。ワシの倅と共に鍛えてやろう」

「数日後に再び来る」

「腕が鳴るわい」


俺は迷いの森に向けて情報収集する為に再びギルドへと戻ることにする。

お疲れ様でした。


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