31話「王都-第一回武闘大会③」
4日目の午前にベスト4の戦いが始まる。
相手はあのお嬢様と初老の男のペア、ハイビスカスだった。
『本日、上級者ブロックの最初の戦いになります。チーム:ハイビスカス2人の入場となります』
司会の進行で大会は進んでいった。
ワァアアアアアアアアアア
『ホーッホッホホホッ!よく勝ち上がってこれましたわね!』
『対するは、一撃必殺と場外狙いで勝ち上がってきたチーム:マリオネット~』
ワァアアアアアアアアア
「それなりにな」
『しかーし!ワタクシ達がアナタ達を止めますわ!!数々の卑怯な手口は全て見させてもらいましたから勝ち目はありません事よ!』
口に手の甲を向けて空いた手は腰に付けて高笑いするお嬢様プレイヤー。
ここまでロールプレイに徹するのは中々の根性がないと出来ないだろう。
『では両者、位置について開始の合図を待ってください』
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・スタート!
まず、接近を開始するのは初老風の男プレイヤー。
速いな・・・
「糸拘束術一式」
『甘いですわ!そちらの射程が長くともパートーナーの射程が合ってませんもの』
初手で拘束した所で俺と初老風の男プレイヤーの距離は45m程、イロハの攻撃範囲外である。
『ワタクシはそんな事ありませんわ!!ファイアーボール!』
初級魔法のファイアーボール?
『タダのファイアーボールと思わないことですわね!ロックウォール!!』
ズドドドドドッ
俺達の間に岩の壁がせり上がってきた。
「進行方向に壁を出してどうする?」
ガガァアアン
ファイアーボールの進行方向に岩の壁が出現して激突、爆散する。
『ふっ』
ヒュォオオ
なっ!?
爆炎の中から岩の破片が高速のスピードで迫ってきていた。
「ウィンドウォール!」
イロハが俺たちの周りに風の壁を展開する。
『風でソレは防げませんことよ!!』
ビュバッ
風の障壁を突き抜けて岩の破片が突破してくる。
「斬糸!!」
ビュバガババババババ
6本のミスリルの糸を縦横無尽に走らせて岩の破片を切り飛ばす。
「アオイ!危ない!!」
後ろでイロハが危険を教えてくれる。
フッ
『油断大敵ですぞ、お若いの』
いつのまに!?
俺が岩の破片を対処している隙をついて、初老風の男が俺の懐へと入ってきていた。
『五月雨突き!』
バシシシシッ
5発の拳が俺にヒットする。
ズサァアアア
2発はガントレットで防いだが体力が一気に8割も削れてしまった。
5発の攻撃でチェインコンボが発動している。
第一段階のスキルだったからこそ生き残ったと言えよう。
『やはり、これでは倒れませぬか』
「アンタを先に倒すべきか?」
『ワタクシを忘れないで欲しいですわ』
お嬢様が既に魔法使いの戦闘領域へと近づいていた。
「格闘家と魔法使いか・・・」
『ワシのフットワークに着いてこれますかな?』
『前ばかり見ていてはダメですわよ』
格闘家の軽い足取りに重い打撃力を持つ初老風の男と遠距離攻撃が得意なお嬢様、この組み合わせが中々に厄介である。
「イロハ」
「ん、トリプルファイアー」
『遅いですわ、ウィンドカッター』
詠唱速度では最速を誇る風系の魔法でイロハの詠唱を邪魔しにかかる。
「斬糸!トリプルマジックキャスターって奴か!!」
風の刃を斬糸で相殺させる。
火・土・風の属性魔法を使いこなすお嬢様。
『ならば、ウォーターウォール』
「ボール」
バシュゥウウウン
イロハのトリプルファイアーボールが水の壁に飲み込まれて蒸発する。
「クワトロマジックキャスター・・・」
『エレメントマスターと呼んで欲しいですわ!』
「さすがに設定が細かいわ」
『いえ、お嬢様は真にエレメントマスターですよ』
グワッ
隙を伺っていた初老風の男が攻撃をしてきて間一髪で避ける。
『称号としてエレメントマスターがありますもの』
「イロハ、そうなのか?」
「知らない、誰も4つも取らないと思うし」
「普通は2大属性までだよな」
魔法使いの使う基本は火、森の延焼を避けるために魔法使い達は別の属性を身に付けるようになったのは最近の話だ。
『信じるか信じないかは貴方がた次第ですよ。動揺が隠せないようですな』
シュッシュッ
初老風の男は浅く攻撃を放つが深追いはしない。
背後のイロハを警戒しているようだ。
「ツインファイアーボール!」
イロハが2人の背後に飛ぶようにファイアーボールを放つ。
『それは読めてますわ!ツインファイアーボール』
ドドォオオン
お嬢様は背後に通り過ぎていったファイアーボールを同じ威力のファイアーボールで相殺する。
くっ!
『やりにくい様ですな』
「あまり、プレイヤー相手にやりたくなかったが・・・」
『おや、まだ奥の手が?』
「あぁ、名は体を現すって言うだろ?」
『ほ?』
「操糸!」
5本の糸が目の前の初老風の男の肢体に絡みつく。
『ワシの動きを封じたところで』
「封じるだけとは思わない事だな?」
ニヤッ
『なにを!?』
『セバスチャン!?』
どうやらこの男もロールプレイングをしているようだ。
グググッ
『体、が、勝手に!』
セバスチャンが動くよりも強い力で俺が動かす。
「マリオネット、傀儡師に恥じない動きをして貰うぜ!」
俺の魔力がガリガリ削れている中、セバスチャンをお嬢様に向けて歩かせる。
「イロハ!」
「ん!トリプルファイアーボール!」
ダガァアアン
お嬢様とセバスチャンを巻き込む魔法を叩き込む。
『ググググゥ!お嬢様、ワシから離れて下され!!』
『そんな、嫌ですわ!!』
『しかし、このままですと』
「セバスチャン、五月雨突きを放て!」
『んな!?ワシのスキルすら操るというのですか!!』
ガガガガガッ
セバスチャンの五月雨突きもどきがお嬢様にヒットする。
フレンドリファイアーが発動しお嬢様の体力が減る。
「くっ、イロハ!」
「もう一発、トリプルファイアーボール!!」
ダガァアアン
「セバスチャンの防御力が高けぇ」
「後、何秒?」
「あと10秒」
「次、間に合わない。風に切り替える。ソニックウェーブ!」
ブワァアアア
シュォオオオ
『キャアァアアア』
『お嬢様あぁああ』
ピィイイン
イロハの魔法でお嬢様は体力を全損し転送されている。
と、同時にセバスチャンの拘束が解かれる。
「ゼェハァゼェハァゼェハァ」
ぶっつけ本番だったが、ここまでの様だ。
俺の魔力は空っぽになった。
『お嬢様の敵ぃいいいい!!』
怒りを顕にしたセバスチャンはフラフラな俺に向かって迫り来るう。
「間に合わない・・・ゴメン」
『大正拳突きぃいいいい!!』
スピードの乗った正拳突きが俺の腹部にヒットし2割だった体力が消し飛び吹っ飛ばされる。
シュワァアアアア
吹っ飛ばされながら俺は転送が開始された。
ドガァアアアアン
視界が切り替わる前に大爆発だけを見て景色が入れ替わった。
『勝者!チーム:マリオネット~。イロハ選手の魔法によってセバスチャンの体力が全損しました~。まさかのプレイヤーを操るスキルがあるなんて聞いた事もありませんでした~』
コロシアムのロビーにて司会の声をアナウンス越しで聞いていた。
『負けましたわ。確かに名は体を表すと言った物ですわ』
俺の横から先に転送されたお嬢様が話しかけていた。
『ワシとてお嬢様を超えるスキルを持つものがおるとは思いもせんでしたぞ』
反対側からセバスチャンが話しかけて来た。
「あぁ、プレイヤーを操るスキルか・・・アレは無理やりアンタの体を動かしていただけに過ぎん」
『なんですって!?』
『なんと!?』
「五月雨突きもタダの無理やり動かした5連続攻撃。戦闘ログを見れば分かるだろう?」
『・・・確かにフレンドリーファイアが5回当たっただけですわ』
『ワシを操っていたのはスキルじゃないとな?』
「スキルといえばスキルだが、プレイヤーを操るスキルは出来ない。精々人形を操るまでが限界だ」
『くっ、騙されていたとは不覚』
『それに動揺してしまいましたわ!?』
お嬢様とセバスチャンは落ち込み始める。
シュンッ
ロビーにイロハが転送されてきた。
「ブイ!」
「よくやった。俺を犠牲にする代わりに最大威力の魔法を準備していたな」
「それしか、勝つ方法がなかった」
「結果、勝てば良いさ」
『まぁ、結果はどうであればアナタ達の勝利ですわ!紹介が遅れましたわ。ワタクシ、ミランダと申しますわ』
「まんま、お嬢様だな」
「本物と言ってくださらない?」
ミランダが縦ロールを振りながら胸を張る。
「ロールプレイなんだろ?」
「いえ、ワシとお嬢様は現実では本当に主従関係に御座います」
「なら、なんでこんなゲームをしているんだよ?」
「それは話せませんわ!」
「おい!」
「そうですわね。いつか、話す時が来たら話しますわ。行きますわよ、セバスチャン」
「ハッ!」
ミランダとセバスチャンはロビーから出て行った。
「なに、アレ?」
「分からん。なにか事情はありそうだが気にする事は無い。目の前の決勝戦に集中すればいい」
「ん・・・」
俺たちもコロシアムを出て行った。
・・・
『さぁ、とうとう上級者ブロックの決勝が始まります!ここまで、奇抜で異端な勝ち方をし続けてきたチーム:マリオネットの入場でぇす!』
ワァアアアアアアアアアアアア
ウゥウウウウウウウ
初戦と一緒で大歓声の中にブーイングが混じっていた。
ここに来て、賭けが大波乱を呼んだからである。
紙防御の遠距離攻撃が得意の後衛だけのPTだけだと懐に接近されれば終わってしまうのは明らかであった為、後衛ペアは殆ど賭けの対象にはなっていないが大きな原因となる。
俺達が予想以上に勝ち上がったことで負けたプレイヤー達が悲鳴をあげているという事だろう。
「師匠~ワイらの分まで頑張るやで~」
「頑張ってくださ~い!」
「糸使い最強説をたたき出してください!」
「お前ならやれると信じてるぜ!」
「優勝してくださいっす!」
「気合でごわす!」
「ここまで来たんだから勝ちなさいよぉ~」
上からラカン、ヤハン、ソニー、ゴウキ、シュバルツ、ロンド、ミカの声が聞こえてきた。
『対するはタンカーとアタッカーのペアでのし上がってきたチーム:カルボナーラです。おっと、カルボナーラからマイクパフォーマンスがあるようです』
細い棒状の物が渡される。
『おい!どんな裏ワザを使ったが知らねぇが優勝は俺達の物だぜぇ』
『お前ら見たいな後ろでコソコソ隠れて攻撃しかできねぇ職業の集まりには実力という物を教えてやるぜぇ』
『おお~っと、これは後衛職に対して挑戦状を叩きつけた様です。マリオネットから返答はありますか?』
マイク見たいな物が俺たちの方に浮かんで移動してくる。
「勝ってから吠えろ」
「負け犬」
『なんと、刺々しい言葉。さすが荊棘姫の言葉です』
俺のことは無視かよ。
『さて両者、位置について開始の合図を待ってください』
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・スタート!
5秒カウントダウンの後にSTARTと出て両者が動き出した。
「ツインファイアーボール」
開始の合図と共にイロハからファイアーボールが発動する。
『はっ!』
『間合いにすら入っていないだろ!』
互の開始位置は50mの距離がある。通常魔法使いの戦闘領域は20m以下が多い。
「誘導」
シュルル
ミスリルの糸に魔力を通してファイアーボールを絡め取る。
「操糸!」
更に糸を操って50m以内に入っている2人にファイアーボールを誘導する。
『んな!?』
『30mは飛んでくるぞ!!』
ゴォオオオオ
『よ、避けろ!!』
『いや、盾でガードしろ!』
『お、おう!!』
盾でガード体制に入り、アタッカーのもう一人が後ろに隠れる。
「糸防御術一式!」
ズルッ!
3本目の糸で相手の盾の構えを解かせる。
『んな!?』
『おい!』
ドガガァン!!
防御体制の入っていない2人に2つのファイアーボールは直撃する。
「トリプルファイアーボール」
ボボボンッ
更に3つのファイアーボールが発動し、残った3本で攻撃を受けて爆炎に隠れてしまった2人目掛けて攻撃を仕掛ける。
『『んな!?』』
ドガガガガァアアン
3つのファイアーボールの接近に気付かなかった2人は無防備にそれを受ける。
「体力は?」
「2割って所だ」
開始早々に2割削れた事は上々だ。
『くっ、調子に乗りやがって!』
『お、おい!無闇に行くな!』
「転倒」
シュルッ
ドタァアアン
俺たちに接近しようと駆け足になった所で2人の両足を拘束することで転倒させる。
「トリプルファイアーボール」
ドガガガガァアアン
間髪入れずイロハが魔法を叩き込む。
『ぐっ』
『接近しちまえばコッチの』
「マリオネット」
ブンッ
『ぐはっ!?』
盾持ちプレイヤーの右手だけ操ってアタッカープレイヤーにフレンドリファイアーを与える。
『てめっ!?』
『違う!右手が勝手に!!』
ブゥン
ブゥン
『言うこと聞かねぇ!!』
『んな、ガハッ』
「トリプルファイアーボール」
ドガガガガァアアン
タッタッタッタ
2人が困惑している隙を突いてイロハが20m圏内に入り、魔法を放って戻ってくる。
「ナイスだ」
「隙を作ってくれたから」
『ここで、チーム;マリオネットの本領発揮だぁあああ!!前の戦いでプレイヤーを操るスキルを発動させた模様!!!』
実況の声が此処まで轟くほどの音量が結界の中へと入ってくる。
『プレイヤーを操るスキルだと!!』
『反則じゃねぇか!!!』
それを聞いたカルボナーラの2人が動揺し始める。
≪スキル:マリオネットが会得されました≫
おいおい、本当にそんなスキルが手に入っただろう。
これは、条件が揃ったからだろうな。
・マリオネット
プレイヤーに対して糸を使い念じるだけで決まった動きをする。
攻撃する(1分)、逃走する(5分)、防御する(1度)等。
糸5本の専有
前提:人形使いレベル20
複数人以上の認知。
プレイヤーに対する操る行為を数度程行った
操ったプレイヤーで仲間を攻撃する行動を取らせた。
消費魔力:50
CT:1s
「消費魔力がデカイな・・・が、効力は大きいか。攻撃をしろ」
『な、なんだ!!』
『おい!』
先ほどと違いギコチナイ動きが滑らかになった。
ギュンッ
キッチリと魔力が50減る。
「イロハ、片方は1分間だけ相手を攻撃する」
「わかった」
イロハが再び距離を詰めて魔法を撃つ体勢に入る。
『おい、攻撃をやめろ』
『力を入れても抵抗出来ねぇ!!』
ガキィイン
タンクプレイヤーの攻撃を必死にアタッカープレイヤーが防いだりして意識がこっちに向いていない。
「トリプルファイアーボール!」
ドガガガガァアアン
「ツインファイアーボール」
ドガガァン
『くそっ!』
『はっ、体が動く!!』
『これ以上、やられて溜まるか』
『糸には気をつけろ』
『おうよ!』
「残り、3割」
「そろそろ、だな」
2人がダッシュして迫って来る。
「操糸!」
ヒュッ
糸を真上に投げる。
ヒュルルッ
糸は結界を抜けて天井付近にあるオブジェクトに巻きつく。
「武器が場外に出ても判定はされないよな」
ビィイン
「そっちを持っていてくれ」
「ん」
タッ
スタタタタタタッ
俺はペンディラムの1つをイロハに持っていて貰ってから、リングの周囲をダッシュする。
『何をするか知らねぇが』
『ダメージディーラーの魔法使いから倒させてもらうぜ』
俺が離れたことにより、2人のターゲットは火力が強いイロハに意識を向ける。
タッタッタッ!!
ヒュォオオオオオ
糸を張った事により、俺はぶら下がる事に成功し地面を滑るように動き出す。
もちろん2人の視界外故に俺の動きは分かっていない。
「引き寄せ!」
ギュルッ
イロハの持つ糸を引き寄せる。
軽いイロハも引っ張られるが空中に居る俺も引っ張られる事になる。
『なっ!?』
『にぃいい!!』
2人の間をすり抜けてイロハはリング中央へと引き寄せられる。
俺はイロハを引き寄せた勢いのままリング端にいる2人に向かって地面スレスレを滑りながら急速接近。
『ばっ、ぼ、防御だ!』
『それが狙いか!!』
パッ
ガイィイイイイン
戦闘用人形をインベントリから取り出した。戦闘人形自体は元から鋼鉄の大盾を構える形で収めており互の盾同士が衝突した。
『なんだ!?』
『何処から出した!!』
振子による運動エネルギーが盾に乗っかり2人の前衛を後方に押し出す。
『場外狙いかよ!』
『耐えろォオオおお』
ズズズッ
2人掛かりで衝突時の勢いを殺そうと踏ん張る。
フッ
勢いが2人の手によって殺されて、俺は中央へと戻されていく。
『ど、どうだ?』
『テメェらの作戦に?』
俺の攻撃を耐え切った所、目の前に迫る3つのファイアーボール。
「油断大敵」
ドッガガガン
『『ガッハアアア』』
爆風に呑まれて場外へと吹っ飛ばされていった。
俺の攻撃はあくまでもフェイク、イロハのトリプルファイアーボールを着弾させる為だった。
『上級者ブロックの優勝者はアオイとイロハのマリオネットだぁあああああ』
victoryの文字がリングの真ん中に現れて勝者コールが成り立つ。
ワァアアアアアアアアアア
ピィピー
バァアアンバァアアン
大歓声、大喝采、大拍手、口笛などがコロシアムを包み、盛大な花火が打ちあがった。
『続きまして、最上級者ブロックになりますので出場者は控えてください』
・・・
「優勝おめでとぉ。さすがワイの師匠や」
「おめでとうございます」
「優勝おめでとうございます」
「次は私達ですね」
「見ててくれよな!」
「やったっすね」
「あの作戦の数々は凄かったでごわすな」
「あらぁん、惚れちゃいそうよぉ」
最上級者ブロックの組み合わせが決まり次第俺たちは集まって「おめでとう」と祝われる。
「あぁ、俺達で二冠を飾ろう」
「急にハードルを上げないでください」
「この勢いのまま俺たちも優勝してしまおうぜ」
「残念ながら俺等っすは予選敗退っすからね」
「面目ないでごわす」
本選に出れたのはゴウキ達のペアだけで、シュバルツ達は予選で負けてしまった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『最上級者ブロックの優勝者はヤマトとクロベェのJaパンだぁあああああ』
奇しくもゴウキ達は決勝戦に勝ち上れたが、前衛ペア同士の猛攻にゴウキ一人では対処しきれずヒーラーのソニーが徐々に削られて退場しゴウキも間もなく敗退となった。
「くっそ~」
「まぁまぁ、相手の作戦勝ちですよ」
「悪りぃ、俺がもうちっと気をつけていれば」
「投石なんてスキルを持っていたのですから仕方がないですよ」
「投げナイフもな」
ヤマトとクロベェの2人はそれぞれ投擲スキルを取得していてソニーに少しずつダメージを与えていた。
それに気づいた頃にはソニーの体力は2割を切っていて、ヤマトの一撃で体力が全損するという自体に陥った。
そういう作戦だったようだ。
『各優勝チームは表彰式に出場してください。アルウルネ王国の国王陛下から景品が送られます』
「アルウルネ王国って名前だったのか?」
「知らなかったんですか?」
「NPCに聞けば普通に答えてくれるぞ」
「聞くとういう発想はなかったな」
「行く」
「あ、あぁ」
俺とイロハは表彰式のあるリングへと向かうことにした。
『ワシがアルウルネ王国、第23代目国王デール・フォン・アルウルネである。此度の武闘会は皆を楽しませ活気溢れる事が出来た。来訪者達には礼を言う』
THE王様という風貌の男が俺達優勝者の前に現れて言う。
『各ブロックの優勝者には商品として王国から送られる。呼ばれた者から前へ出よ』
『初心者ブロック優勝者チーム:ドルリア。前へ』
王様の横に居た文官っぽい人が羊皮紙らしき物を手に読み上げた。
「「はい!」」
ドルリアの2人が返事をして王様の前へと出る。
『力を付けたばかりの初心者同士の戦いに置いて良き戦いであった。受け取るが良い』
「「有難うございます!」」
王様から光る何かを2人が受け取り列に戻ってきた。
『中級者ブロック優勝者チーム:円卓の騎士。前へ』
「「はい!」」
円卓の騎士の2人が返事をして王様の前へと出る。
『騎士の名に恥じぬ戦い方は我が王国騎士と引けを取らぬ動きであった。受け取るが良い』
「「はっ!」」
光る何かを2人が受け取り列に戻ってくる。
『上級者ブロック優勝者チーム:マリオネット。前へ』
「はい」
「ん」
俺たちが前へと出る。
『ソチは糸を武器に使う選手だと聞いておる。チーム名の通り傀儡師に恥じぬ戦い方は素晴らしき物であった。また仲間のサポートも良きコンビネーションである。受け取るが良い』
「ありがとうございます」
「ありがとう」
≪デール・フォン・アルウルネからアイテムの授与がありました。受け取りますか?≫
YES
≪デール・フォン・アルウルネから駿馬を受け取りました≫
駿馬?
とりあえず、列に戻るか。
『最上級者ブロック優勝者チーム:Jaパン。前へ』
最後にJaパンの2人が返事をして王様の前へと出る。
『此度最大の目玉である戦いを繰り広げてくれた。負けたチームも誇っても良い程の善戦であった。受け取るが良い』
「「はっ!」」
光る何かを2人が受け取り列に戻ってくる。
『これにて、授与式は終りとする。皆の者、盛大に祝うが良い』
バサッ
王様は踵を翻して奥へと引っ込んでいた。
『優勝者のチームはお戻り下さい』
文官NPCに誘導されて俺たちはリングを降りていった。
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
≪これより武闘大会は終了となります。本日より転移門は使用不可状態へと戻ります。各プレイヤーの方がたは元の街へと転移されます≫
シュワアアアア
周囲のプレイヤー達の周囲に光りの粒が舞い始めて転移が始まった。
シュンッ
俺達も例外なくフィフスの中央広場へと転移された。
≪転移可能の街:なし≫
転移ポータルに触れても王都への転移が出来ない状態になった。
「駿馬の性能が凄い」
・駿馬、移動速度50%、スタミナ100(召喚獣)
「黒馬以上の移動速度にスタミナ茶馬以上かよ」
「召喚獣扱いらしい」
「召喚獣?俺達は召喚術師じゃないんだがな?」
「別枠?」
「ミモザに聞いてみるか」
「ん」
俺とイロハは召喚術師のミモザを尋ねることにした。
「それは別枠の召喚獣ね。魔力を必要としないものでしょ?」
ミモザ、曰く召喚獣は召喚術師の魔力を消費して出現するが、俺たちに与えられた馬はそういった説明は全くない。
「トッププレイヤーの何人かが黒馬を買い取ったレスが有ったはずよ・・・え~とコレね」
ミモザから馬が召喚獣だった事についてのレスを見せてもらう。
「つか、黒馬って買えたんだな」
「すごく高いらしいわね。他の馬も買えるらしいけど、召喚獣じゃなくて普通の馬で馬舎が必要になったりして大変みたいよ」
「黒馬と駿馬は召喚獣枠なのか」
「性能が全然違うけどね。他の優勝者達は何を貰ったのかしら?」
「さぁな?」
「レスが立っている。初心者クラスは鉄の武器か防具を選べて、中級者は鋼鉄の武器か防具を選べる。最上級者クラスはミスリルの武器か防具だって。今は上級者クラスの情報を待っているみたい」
「他が武器か防具なのに、俺達だけ馬ってのも変だろ」
「みんなガチっガチの前衛だから武器防具なのは仕方がないんじゃないかしら?むしろ後衛職コンビが優勝できたのが奇跡よ」
「つまり、俺達は武器や防具より馬の方が良いと思われていた?」
「組み合わせで何を渡すか決まっていたのかもね」
「上級者クラスの予想が何かしらの武器か防具だって理論が出来上がっている」
「ま、そうなるわな。そんな所に爆弾を落とすかよ。無視だ」
「わかった」
「じゃ、穏便にそれとなく噂は流しておくわ」
「助かる」
「といっても、直ぐにバレるわよ?馬の色も違うんでしょ?」
「真っ白だった」
「わお、白馬なのね」
「絶対即バレだろ。白馬に乗っていたらな」
「ま、こればかりは頑張りなさい」
「召喚獣について分かって助かった」
「いつでも来てよね。あ、魔力強化斬糸は控えてよね?」
「分かっているって」
アレは諸刃の剣だからな。
「さてと、攻略に戻るか」
「ん。私は生産に戻る。ポーションが欲しかったら言ってね?」
「今回は助かった。ありがとうな」
「楽しかったから良い」
「じゃあな」
「また」
イロハと別れて俺は本格的に二次職業を物にする為に動き出す。
お疲れ様です。




