14話「サード-アイアンゴーレム戦②」
一晩開けて俺は目を覚ます。
「夢じゃなかったか」
ピコンピコン
メール受信ボックスに一通のメールを受け取る。
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from:運営から
to:アオイ
件名:ゲームの住人達へ
内容:
拝啓
この度、リアルを捨てゲームの住人になって頂けた事を御礼申し上げます。昨日の離脱者は2,730名に登りました。
残った7千名強のプレイヤーで攻略していただきます。
本当の意味で【フリースタイルオンライン】が本番リリースされた日となります。
僭越ながら、一人暮らしのプレイヤーの方などは国の介入により近くの医療機関へと搬送いたしましたので体の心配は無用となります。
昨日、重大な発表があった為、下記のリンクから飛べますので確認をよろしくお願いします。
URL http://**********.**********.****.co.jp/**/*********_*********/**********
幾つか変更点もあります。
ゲームの進行度などについては現実世界に定期的に配信されています。
多大な貢献されたプレイヤーはMVPにも選ばれますので切磋琢磨してください。
それでは、新しい人生をお楽しみ下さい。
敬具
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なにが、新しい人生だ・・・選択肢があった所で半強制的だろ。
ガチャッ
昨日までと違い宿での宿泊がログアウトだったが、ただ寝たに過ぎなかった。
「おはよ」
「あぁ」
あの時、こっちに残ると言ったイロハが目を擦りながら挨拶を交わす。
「・・・誰?」
「ん?」
「アオイ?」
「そうだが?」
「全然違う」
「何がだ?」
「顔」
「顔?」
「お腹空いた」
空腹ゲージが少なくなっている事で空腹を感じる。
イロハが何を言いたかったのか分からなかったが食堂に移動する。
「薄い」
「あぁ」
あまり気にしていなかった食事が此処に来て不味く感じる。
スープの塩ッ気は薄く、パンは固く感じる。
「料理人を探すか・・・」
「うん」
宿を出て、今後について話し合う。
「お前はコレからどうする?攻略に専念するか?」
「私の力は調薬しかない、ポーション作りに専念する」
「わかった」
「あらぁ♥アナタ達も残ったのねぇ。やっぱりイケメンだったわぁ」
「誰だ?」
声色からしてミカの様だが、全然知らない顔をした男が立っていた。
「あら、イケずねぇ。アタシよミカよぉ」
「ダンディ」
「んふふ。びっくりしたかしらぁ?」
ダンディな髭を生やした紳士風の初老が気持ち悪くクネクネしている。
「ミカ・・・なのか?」
「そうよぉ。リアルキャラ化によって全プレイヤーのリアル顔がキャラに反映されたのよ。困っちゃったわぁ」
おう、そりゃ困るだろ。ダンディな髭を生やした紳士風で初老の男が同じ動きしているんだから。
「っと、言うことは隣の人は」
「悪かったわね」
声からしてミモザである。格好もそうだが、長い髪を前に垂らして顔の殆どを隠している。
「まさか、リアル顔まで似せてくるなんて思わなかったわ。死にたい気分よ」
「んふふ。それでもいいじゃなぁい」
「髪色とかは変わらないんだな」
「顔と髪型はリアルに戻るのよ」
「という事は俺もか?」
「んふふ、イケメンねぇ」
「ん!」
「それには同意するわ」
「そうか」
「その余裕ぶりが更に際立たせるわね」
「あまり弄ってないからな」
「イラっとくるわねぇ」
「イロハもだろ?」
「面倒だったから」
「アンタ達だけよねぇ。さほど変わらないのって」
『ぎゃぁああ』
『リアルキャラ化ってなんだよ』
『ふざけんなし!』
『マジかよ!』
『くそっ』
周りのプレイヤーから悲痛の声が届いてくる。
「まぁいい。これ以上理由は聞かないことにする」
「リアルについて詮索禁止よぉ」
「他の連中はどうしたのよ?」
「帰還したぞ」
「そっかー♥イロハちゃんは残ったのねぇ」
「ここしか居場所はない」
「そうなのねぇ。アタシが居場所を作ってあ・げ・る」
「気持ち悪いからやめろ」
「そんな事言わないでぇ」
ブブゥン
復活ポイント・・・いまは街と街をつなぐ転移石か。
転移石から見慣れた顔が現れた。
「おっ!ここに居たか。探す手間が省けたぜ」
『おい!』
『あぁ、トッププレイヤーPT「ノーチス」の凄腕プレイヤー赤き僧侶レッドだろ』
広場周辺が騒がしくなった。
「いやぁ、まいったぜ。フィフスの街を開放したらアレだぜ!でもお前が残ってくれた時は嬉しかったぜ」
「あぁ。お前も残ったんだな」
「親には迷惑かもしれんが、やらないよりマシだろ」
「どうせ・・・ならな?」
「アラァ、ノーチスのレッドちゃん。お久しぶりねぇ」
「ミカさん。久しぶりですね」
「そんな畏まらなくてもいいわぁ。それとも信用ないかしらぁ?」
「そんな事ないですよ。俺を含めて後衛職の装備はミカさんじゃないと作れませんから」
「あらあら、お世辞かしらァ」
「ハハハハッ」
「お前、そんな喋り方もできたのか?」
「ミカさん、怒らせると怖いんだよ。この前、調子に乗ったPTメンバーが吹っ飛ばされたの見たんだからな」
「あまり見たことないからな」
「っと、用件を忘れちまうところだった。お前、俺達のPTいやギルドに来ないか?」
ザワっ
周囲がいっそう騒がしくなる。
「ギルド」
「二次職開放と同時にギルドシステムが解放された。一定人数以上と指定されたレベル以上に加えて支度金さえあれば作れるようになったんだぜ。ギルドホームもフィフスの街に手頃のが売っていたから即買った訳よ。どうだ?」
「どうだって言われてもな」
イロハ達を見るとそんな気は起きない。
「たしかにお前に誘われるのは魅力的だが、分不相応だと思う」
「そっか。お前の力を攻略に役立てたかったんだが本人が嫌がっていたら俺も無理強いはしない」
「お前たちに追いついたら改めて考えさせてもらうよ」
「あぁ。何時までも待っているぜ」
「あ、待ってくれ。今、暇なんだよな?」
「一応用事はこの後控えているが?」
「何時まで付き合える?」
「1時間位だな」
「ミモザ、アイアンゴーレム戦はどの位時間が掛かった?」
「え?あ、アイアンゴーレムね。PT構成によるけれど30分位は最低でも掛かるわよ?」
ニィ
「アラァ、凄くいい顔ねぇ。アタシ達も混ぜてもらえるかしらぁ?」
「ここから、アイアンゴーレムがいる場所との距離と時間は?」
「PT内容によるけれど、早くても30分くらいかしら?」
「ギリギリって所か。後はお前たち次第なんだが1時間でフォースの街まで行きたいんだが手伝ってくれるか?」
「色々準備しないと駄目よ」
「魔法職が必須なのよぉ、どう見ても物理が多いわぁ」
「宝石はある。ミモザ頼めるか?」
「大丈夫だけど、アナタの武器も属性武器にしないと安定しないでしょ?」
「高品質の鉄鉱石も沢山ある、作り直してくれるか?」
「一杯あるわね。この前ので使い切ったんじゃないの?」
「昨日一緒に採掘していたメンバーからのプレゼントで貰った。使わないと損だろ?」
「私は別にいいわ。宝石使わせて貰うわね」
「構わない」
「俺も参加するか。参加料はその宝石の一部でいいか?PTの底上げに使える」
「あらん、仲間外れはダメよぉ。同じく宝石の一部をくれれば行ってあげるわよぉ」
「参加する」
こうして、レッド、ミカ、ミモザにクマ吉、イロハ、俺の6人混成PTが完成する。
この際、レベル制限での経験値は考えていない。
「すぐに準備するわ」
「あ、俺の武器にダイアモンドの宝石付けてくれないか?回復量が上がるんだ」
「アタシはぁ、鋼鉄のメリケンサックにサファイアを付けてもらいましょう」
「俺は高品質の装備にルビーをつけてくれ」
ミモザが各々の注文を受けて武器に宝石を埋め込んだりする為、工房へ走る。
そこは細工師じゃないのかと疑問に浮かんだが宝石と武器の合成は製作者なら誰でもできるそうだ。
俺は武器屋に向かって使い捨てにするワイヤーガントレットを買いに来た。
「オヤジ、まだ売っているか?」
『おぉ、お前さんか。作り置きしてあるぜ』
「あるだけ買おう」
『毎度、180,000Gになるぜ』
「わかった」
ミモザの方も直ぐに準備を整えてくれた。
・フレイム・ペンディラムワイヤーガントレット
【鉄のモーニングスター】が取り付けられた糸使い専用武器。
【ルビー】をあしらう事で火属性の追加ダメージ。
高品質の鉄を使うことにより攻撃力と耐久値がアップ。
これまでと違い限界距離が20mと短い。
切り離すことは出来ない。
糸は最大3本まで操作可能である。
火属性ダメージ:100
攻撃力:20(+10)
防御力:10
移動速度-5%
耐久値:300/300
装備可能職業:糸使い
ランク:マジック
品質:3
「攻撃力30台か」
「攻撃力30って低すぎじゃね?」
「これでも色んな物混ぜて高くなってるんだからな。とりあえず、ゴーレムの所まで案内してくれ」
「分かったわ」
「アンタ、調薬師だろ?魔力回復ポーションは持ってるか?」
「まだ余っている」
「回復は俺がするからポーションは半分くれ」
「ん」
「よく分からないノリで乗っちゃったけど早速行くわよ!」
「俺が先行する」
俺が鉱山入口まで先行して走り始める。
「おいおい、糸使いが先頭を走るなんて自殺行為だぞ」
「大丈夫」
「彼は別格よ」
「何が」
ズバンッ
シュワアアアア
「道中のロックゴーレムが消え去ったのは気のせいか?」
「気のせいじゃないわ。彼が一撃で倒したのよ」
「掲示板での出来事は本当だったってことねぇ」
「え?あ?あの騒ぎは誰かの釣りじゃねぇのかよ」
「ほら、また吹き飛ばしたわ」
「嘘だろ、ロックゴーレムの防御力や体力だって並外れた物じゃないだろ」
「糸使いの秘密に触れれば納得いく強さなのよ」
バキンッ
「デメリットもあって、高出力の攻撃に武器が耐えられずに粉々になるのよ」
買い込んだ装備を使い潰して俺達は鉱山入口に5分程で到着する。
「ここから、道案内頼む」
「分かったわ。今の私達ならクマ吉がいなくてもホブゴブリンを倒せそうね。ミカさんが前衛よろしく」
「いいわよぉ!」
ガチンッガチンッ
「ジュエリーライト、オン」
洞穴内を俺のライトで照らし出す。
ミカが両手の拳を合わせて火花を散らす。
「オラオラ!五月雨突き!!」
ギャっギャっギャギャギャっ
「糸拘束術二式」
ガガっ
ギッ
「はぁあああ!ショートピアッシング!」
「正拳突き!!」
ギャギャァアア
シャァアアア
「やっぱり属性追加ダメージは凄いわねぇ」
「えぇ」
普段と違い属性追加ダメージが入り2人は唸った。
「俺の出番は無しか?」
「回復役の出番は最後に取っておきましょうかしらぁ」
「えぇ。消耗はなるべく避けましょう」
俺達は怒涛の勢いでホブゴブリンを屠りながら突き進んでいった。
「ここが、エリアボスへの安置か」
「準備を整えてから行きましょう」
体力と魔力を回復してからエリアボスの空間へと入る。
ゴゴゴゴゴゴッ
カァン
中央に鎮座していたアイアンゴーレムが赤い双眸を光らせ立ち上がる。
「先手必勝よ!」
ミカが大柄な体格に似合わず俊敏な動きでアイアンゴーレムに急接近する。
「≪サモン(召喚)≫クマ吉!」
ボホンッ
ミモザがクマ吉を召喚してミカのあとに続く。
「グルァアアアア」
クマ吉が咆哮をあげて突っ込んでいく。
ギャァオオオオオオン
呼応してアイアンゴーレムが金属音の擦れる様な高音を発する。
「オラオラ!五月雨突き」
「クマ吉!乱れ引っ掻きよ」
「グルァアアアア」
某ポケットに入る怪物を思い出した。
「おっと、こうしてはいられねぇ」
クマ吉とミカの後ろへと距離を詰めながら相手の動きを観察する。
元々の防御力が高い為なのか、防御行動という物をする素振りすら見せない。
物理ダメージが全く入っていないのだろうがミカの属性ダメージは入っているだろう。
ギャァオオン
アイアンゴーレムが一鳴きして腕を振り回す。
「鈍いわね!」
ガガァン
「グルゥウウ」
ミカは軽く後退して、クマ吉は自らの防具で受けて耐える。
が、クマ吉の体力が1割削り取られた。クマ吉の防御力でもコレなのだから後衛職である俺達は一撃だろう。
「グレータヒール」
「ん」
クマ吉の体力が回復し、イロハがレッドに魔力回復ポーションを使い即魔力を回復させる。
「ちょっとぉ、支援ちょうだいよぉ」
「タイミングを掴まないと駄目なんだよ。糸拘束術二式!」
ガッ
次のモーションに入っていたアイアンゴーレムの右腕を2本のワイヤーで9秒拘束。
「オララララララララ」
「グルォオオオオオ」
前衛の2人が通常攻撃でできるだけ攻撃を重ねる。
属性ダメージが入っている証拠のエフェクトが乱れ飛ぶ。
ガッ
「2人共、どいて。トリプルファイアーボール!!」
後方から3つのファイアーボールが飛んできた。
魔法使いの中で最強に位置する炎属性の魔法がイロハから放たれた。
ドゴドガドゴォオオオン
拘束から放たれたアイアンゴーレムの胴体部分に着弾し轟音を響かせる。
ギャァアアアン
ドドォン
「転倒が入ったわ!今よ!!!」
アイアンゴーレムが後ろに倒れジタバタとするだけだ。
希にモンスターは転倒し一方的に攻撃出る瞬間ができる。
この隙を逃すまいとミカとクマ吉が近づく。
カッ!
「引き寄せ!」
グワンッ
「「!?」」
アイアンゴーレムの双眸が光ったのと同時にミカとクマ吉を引き寄せる。
「何するのよぅ!」
「グアアアアア」
「フェイクだ」
バンッ
アイアンゴーレムが両腕を地面に叩きつけて即座に立ち上がり、勢いに任せて両腕を地面に叩きつけるモーションに入っていた。
ドォオオオオオオン
グラグラグラ
10m以上離れていても振動が来たってことは直撃していればマズイ状況になっていたかもしれない。
「有難うねぇ」
「グルァ」
大技を炸裂した隙を今度こそ突いて2人は突っ込んでいく。
「魔力回復ポーションを掛けて」
イロハから魔力回復ポーションを受けてとる。
ミカとクマ吉の魔力が連続スキル発動で無くなりかけている事に気づいたようだ。
「わかった」
2本のワイヤーを使って2人に魔力回復ポーションを使う。
後衛職がノコノコと前線に行くことは危険だと察知したイロハの起点によるものだ。
巻き込まれたら一溜まりもないだろう。
キュピィンっ
「随分、早いだろ!」
「体力に関係なくアイアンゴーレムは怒るんだ!」
「糸防御術二式!」
ガッガッガッガッ
最初の4発はワイヤーで逸らすが5発目の攻撃はクマ吉にクリーンヒットする。
「グアァアアアアア」
ズドォオン
クマ吉の体力が4割減って、吹き飛ばされた。
「くっ、ハイヒール」
レッドがクマ吉に上級回復魔法を発動し、魔力が一気に減る代わりに体力が一気に回復した。
ギョロッ
クマ吉に向いていた赤い目が俺たちの方を向いた。
「タゲが移ったぞ!」
「クマ吉!立って!!」
ミモザがダウン中のクマ吉を立たせようとしたが気絶モーションが発生していた。
「こっちを向きなさいよぉ!!」
ミカが必死に攻撃を繰り返すがアイアンゴーレムはグングンと近寄ってきた。
「糸拘束術二式!」
アイアンゴーレムの足に2本のワイヤーを巻きつけても一瞬動作は止まるが直ぐに動き出してしまうのだ。
「トリプルファイアーボール」
ドガガガァアアアアン
グッ、グググっ
一直線にレッドへ向かっていたアイアンゴーレムのタゲがイロハに写って進行方向を変え始める。
「くそっ!糸拘束術二式!!」
ワイヤーを4本使ってもその動きは止まらない。
「くそっ!」
ズズズズズッ
俺まで引きづられる始末である。
「ミカ!俺をぶん殴れ!!」
「は?何を言って!!」
「良いから殴れ!!」
「えぇい!うぉら!!」
ドゴッ
「ゴハッ!」
ジュイッィイン
体力がミカの攻撃で3割も削れながら俺の体はアイアンゴーレムの進行方向とは逆に吹き飛ばされる。
ビィイン
ズルゥン
ドゴォン
俺が吹き飛ばされるスピード(引っ張られる力)がアイアンゴーレムの力強い足取りを引っ張り両膝を付かせた。
「ナイスよ!」
「グレーターヒール。無茶をしやがるな」
「ゴホッ。いつフレンドリィファイアが有効になったんだよ」
「昨日で様々な事が変わっちまったんだよ。フレンドリィファイアもその一つだ」
「確認不足って事か!」
「オラオラオラオラ!こっち向きなさいよぉ!!」
ミカが連続でダメージを稼ぐが、一撃が強いイロハの魔法ダメージの方が遥か上を行く。
ゴゴゴゴゴゴゴッ
ゆったりとした足取りで立ち上がる。
「ミモザ、スマン。お前の作品ダメにする」
「別にいいわよ!何時でも作ってあげるわ!!」
「魔力強化三段階、斬糸!」
キィイイイン
一段階よりも光り輝く右2本のワイヤー。
ヒュォッ
ザザンッ
2本のワイヤーがアイアンゴーレムの左腕付け根を通り過ぎる。
キィンンン
ズズゥウウン
ワイヤーが通り過ぎた後、ワンテンポ遅れて左腕ごと切断された。
「くそっ!ズレた」
「ちょっ!ズレて無かったらアタシが真っ二つよぉ!!」
左腕を切断したのはソコしか滑り込ませることが出来なったからだ。
「ロックゴーレムの時も思ったが、そりゃなんだ」
「斬属性だ」
「魔力強化ってぇのは」
「あとで話す。誰にも言うなよ!」
「おうよ!」
「悠長に話してないで次出しなさいよ!!」
未だにターゲットはイロハに向いていてアイアンゴーレムは歩きを止めない。
「魔力強化三段階、斬糸!」
ヒュオォォッ
「だっから、アタシを無視しないでよぉおお」
ミカが絶叫しながら斬糸を躱す。
さすが武道家だ、アレを避けるか。
ザザァン
横薙ぎに払われた、斬糸はアイアンゴーレムの右足つけ根を通り過ぎて止まる。
バキャァアン
バキィイイン
ドゴォオン
右のガントレットが破損したのと同時にアイアンゴーレムも右足を失い転倒する。
「クマ吉、目が覚めたのね!行きなさい!!」
ようやくクマ吉が気絶状態から回復しミカの隣へと戻っていく。
「くそっ、たった二撃で全損か」
「大ダメージを与えられたのと欠損ダメージ自体が有利に持っていけるわ!」
「イロハ、魔力回復ポーションをくれ」
「ん!」
今の二撃で魔力80以上の消費に加え細々とした魔力消費で俺の魔力が殆ど残っていない。
今しばらくはクマ吉とミカに耐えてもらうしかない。
キュポッ
ゴクゴクゴク
シュゥウウウ
魔力回復ポーションを飲み、イロハとミモザに連続で使ってもらい魔力は30%程回復する。
「糸拘束術二式、糸防御術二式」
残った2本のワイヤーで前衛をサポートする。
アイアンゴーレムも残った左足だけで立って、ミカとクマ吉に反撃している。
さすがフィールドボスである。
「足払い!」
ガンッ
「タックルよ!」
「グルァアアア」
ミカとクマ吉で残った左足を執拗に狙って転倒を狙う。
ギャォオオン
双眸が光り怒り状態に突入する。
「引き寄せ」
ババッ
グインッ
ミカとクマ吉が後退するのに合わせて引き寄せてアイアンゴーレムとの距離を稼ぐ。
グラァアア
ドスゥウウン
右足がないのを忘れて反撃しようとして自ら前のめりに倒れる。
「今よ!」
「トリプルファイアーボール!」
ドガガガガンツ
「耐えてくれ!魔力強化三段階、斬糸!」
左の2本を胴体に目掛けて振り下ろす。
ズダァアン
ファイアボールの煙幕で見えなくなり様子は分からない。
サァアアア
土煙と黒煙が消え去りアイアンゴーレムが見える。
ゴゴゴゴゴッゴッ
上半身と下半身が切断され、残った右腕を俺達に向けて掴もうとしている姿勢で固まっていた。
バキンッ
バキバキバキバキっ
アイアンゴーレムは粉々に砕け散った。
≪エリアボス:アイアンゴーレムの討伐に成功しました。フォースの街へ行ける様になりました≫
≪アオイはレベル32に上がりました≫
≪糸使いのレベルが30になりました≫
≪SPが1増えます≫
≪スキル:多重操糸術のレベルが5になりました≫
≪スキル:引き寄せのレベルがMaxになりました≫
≪SPが1増えます≫
≪アオイはアイアンゴーレムからアイアンコアを手に入れました≫
・アイアンコア
エリアボス:アイアンゴーレムのレアドロップ
ランク:ユニーク
品質:4
「三連続か」
「また、レアドロップ引いたのぉ?」
「運が強いわね。アリゲートの時もカウントすれば4連続じゃない」
「マジかよ。俺は鉄のインゴットだぜ」
「同じく」
「その代わり、2つもダメにしたがな」
「予備はあるのかしら?」
「一応、コレの前持っていた奴を使う」
ロック・ペンディラムワイヤーガントレットを装着する。
「で、あの斬属性っていうのは何なんだよ?」
「フォースの街で活性化してからでいいか?」
「OK。ギルドメンバーにゃ、少し遅れるって言っておくぜ」
「あぁ」
こうして俺達はギリギリとはいえ、アイアンゴーレム戦を終えてフォースへの街へと向かうこととなった。
「フォースの街周辺には何がいるんだ?」
「オーガだな」
「単体でも強かったと記憶しているが」
「強いぜ。前衛がいないとマトモにフィールドに出れねぇ」
「オーガの皮は後衛職として使えるのか?」
「使えねぇよ。前衛職よりだ」
「後衛職は何装備したらいいんだよ?」
「ここからはミカさんの支援がないとダメだ」
「つか、何を用意すりゃいいんだよ?」
「うーん。服なんだから糸を用意してちょうだい」
「タラテクトの糸はダメなのか?」
「アレはベタベタしていて無理よ」
「フォースフィールドのモブ素材か」
「フォースから様々な選択肢があるんだぜ、着いてからのお楽しみとっておけ」
「さてと、気合入れて行くぜ」
「あぁ」
グルァアアアア
オーガとエンカウントして俺達は衝突しあう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
≪フォースの転移ポイントが活性化されました≫
やはり復活はないって事か・・・
「よし、祝賀会だ。つか早く教えろ」
「俺はコイツに話すことがあるが、お前達はどうするんだ?」
「解散でいいでしょ?」
「うん」
「アタシは2人について行くわ。一応トップの一人としてね?」
「わかった」
俺とレッドにミカが喫茶店へと入る。
「一応いうが、喫茶店の防音効果も消えているぞ?」
「は?」
「当たり前だろ、こんな板切れで音が遮られる訳ねぇだろ」
「リアルに近づけすぎだろ」
「それだけじゃねぇ、冒険中に起きなかったのが幸いしたが排泄欲求もあるんだぜ」
「嘘だろ!?」
「あらっ、ここは食事する場所よ?移動したほうがいいんじゃないかしら?」
ミカに強制的に連れられて人気の居ない場所へ連行される。
「人に聞かれたくなければ人気のいない場所よ」
「全然、変更点を見ていないが変わりすぎだろ」
「よりリアルに近づける事が目的らしいぜ。手洗いに行きたいと思ったらリアルでもそういう事だ」
「仮想にも影響が来るのか」
「あぁ。集中力が掛けて魔法職はより辛くなるそうだ」
「異常状態も増えたのか?」
「これから増えるかもしれないが、今までどおりだ。って俺が説明する番じゃねぇだろが」
「あぁ、斬属性の話だな。そのまんまだ」
「糸を切れるようにしたのがソレって事はなんとなくわかる。だが、あの威力のアレはなんだ?」
「魔力強化する事によって攻撃力が変動するんだ。魔力40使って175(総攻撃力)×4.5(魔力強化スキル)×1.5(一段階欠損)大体の2,363の攻撃力になる」
「4桁の攻撃力だと!?まて一段階欠損と言ったな?」
「あくまで一段階欠損でのダメージだ。右腕の欠損でダメージが変動する。175(総攻撃力)×4.5(魔力強化スキル)×2.0(二段階欠損)で属性攻撃力3,150だ」
「攻撃力3,150だと!?」
「最後の一撃は違うのよねぇ?」
「最後のは三段階欠損だ。175(総攻撃力)×4.5(魔力強化スキル)×3(三段階欠損)で4,725のトドメとなった」
「4,700たぁ、頭が付いていけねぇ」
「うふふぅ、アタシもよぉ★」
「その代わり、装備が修理不可能になるデメリットがある」
「不可能だと?」
「文字通り、装備自体が砕け散って直せない状態だ」
「じゃぁ」
「貴重なマジックアイテムを2つ失う結果になった」
「宝石があったとはいえ、たった一回の冒険の為に装備を失ったっていうのか!?」
「そういう事だ」
「そんな簡単に捨てられる物なのか?」
「真のデスゲームでは無いにしてもプレイヤーの死亡は俺達のクリアが遠ざかるんだ。道具の1つや2つは惜しくない」
「あぁ、お前はそういう奴だったよ。やっぱお前、俺ん所入れ」
「だが断る!」
「そういうと思ったぜ」
「この事は誰にも話すなよ」
「あぁ。だが、俺たちが詰まった時は容赦なく引っ張り出すからな」
ビシッと指差してレッドは指を指してから去っていく。
「ミカも頼むぞ」
「あらぁ、お客様の情報は売らない主義よぉ。信じられないかしらぁ」
「そんなに近づくな、暑苦しい」
「んまぁ、乙女になんていい草かしらぁ」
「俺は早く、公開された情報を見たいんだ」
「そうねぇ。これからが大変になるわよぉ」
「またな」
「何時でも呼んで頂戴ねぇ」
お疲れ様でした。




