13話「サード-アイアンゴーレム戦①」
「よく集まってくれた」
本格的にフォースへ向かう為PTを集うことにした。
フォースへ行くためには今回ミカとミモザは誘っていない。
サードメンバーとしてガッキー、シズク、イロハ、ダイチ、スズの5人に声を掛けて集まってもらった。
「前提として攻略情報によると魔法使い3人は必須だと聞いた」
「1人しか居ないじゃない?」
スズが一番付き合いが浅く、集まってくれたメンバーに疑問になりズバズバと言ってくれる。
このPTでの魔法使いはイロハのみ。後は前衛2人、後衛4人の混成PTとなった。
「まず、事前情報によれば物理ダメージが通用しないという事だ」
「アイアンだからね」
「その反面属性ダメージが有効という事で魔法使い3人を入れないといけない理由となっている」
「えぇ」
「だったら俺たちの武器に属性武器にすれば攻略できるだろという見解になった」
「は?宝石がないと駄目なんでしょ?」
「宝石を手に入れる方法は知っている。既にガッキーの大剣はフレイム・ラージソード。シズクはウィンドウ・ロングソード。イロハはフレイム・ロッドというマジックウェポンを手にしている。俺もロック・ペンディラムワイヤーガントレット(改三)を所有している」
「え?みんな宝石を手に入れたの!?」
初耳のダイチが驚きを隠せないでいる。スズも呆気にとられている。
「スズとダイチも属性武器にすれば攻略は楽になるだろう」
「ちょっと待って!宝石って希に手に入るんじゃないのかしら?」
「考え方を変えれば、答えは簡単だった。あとは柔軟性だな」
「そうですね。あんな簡単な方法で手に入るのですからね」
「予想外だよねぇ」
「ん」
「とりあえず、鉱山に向かう」
ロックゴーレムを次々に倒して俺達はサクサクと進む。
属性武器の属性ダメージがロックゴーレムにも通用しているようだ。
「ライトボールはいる?」
「俺がここに潜った理由はコレを手に入れるためだ。ジュエリーライト」
「それは?」
「ライトボールの魔力消費10分の1で同じ光量を手に入れられるマジックアイテム。これで戦闘中、魔法使いが1人戦線に入れない事はない・・ま、狭い空間での魔法は自殺技になるからイロハはサブ回復職として専念していてくれ」
「わかった」
「アナタ、調薬師だそうね」
「ん、魔力回復ポーションとかも沢山持ってきたから、欲しいとき言って」
「それは助かるわ」
「問題は耐久値だよな」
「それなら心配いりませんよ。同じ武器を3本用意してます。防具はさすがに用意できませんのでサポートお願いします」
ガッキーとシズクがマジックアイテムを3つ持っているという。あの時の宝石を全部武器に費やしたようだ。
「わかった」
「僕は何すればいいのかな?」
「隙あらば攻撃だな」
「一応、僕にもポーションを下さい。緊急要員として前2人をサポートするよ」
「わかった」
「行くぞ」
俺の掛け声で2回目の採掘探索が始まった。
ホブゴブリンの層を抜けビックバットとの戦闘、今回から常時光量のあるジェリーライトで最初からモンスターの位置は把握できている。
「ワイヤーネット!」
ガガガガガガガガッ
キキィ
ビックバットがワイヤーに絡みガッキーとシズクが叩き突き進んでいく。
一度、攻略しているメンバーが多いだけあって探索速度は早い。
「やっぱり司祭がいるだけで安心して前に出れるね」
「そうね」
俺のサポートをくぐり抜けてきた攻撃は前衛2人のダメージとなるがスズの回復魔法で瞬時に回復し問題なく進む。
中層の上へと入ってタラテクトとの戦いとなる。
ペッ
「毒(中)になった」
「回復するわ!」
異常状態にする攻撃だけは俺のサポートでは防げない。
「ポイズンヒール」
パァアアア
「ヒール」
「これで、戦える」
中層の下へと入り、高品質の鉄鉱石が増え始めた頃、ソレは起こった。
カチッ!
俺の右足にスイッチらしき物体を踏み込んだ音だった。
ザアアアアアア
俺たちの背後から大量の水が押し寄せてきたのだ。
「罠があったのか!」
「結局こうなるんですか!!」
「また~」
ザバンッ
水は俺たちを飲み込み下層へと流れ込んでいく。
【酸欠:30秒に総体力の5%ダメージ】
直ぐにフィールド異常ステータスに発展し俺たちの体力がガリガリと削れていく。
「ゴボゴバゴボゴボ(ワイヤーネット!)」
ガガガガガガガガガガガッ
ドスドスドスッ
縦横無尽に張り巡らせたワイヤーの網に全員が引っかかった。
網目から水だけが通り過ぎていく。
「ゲホッ、ゴホッ。皆大丈夫か!」
「なんとかです」
「あと少しで死ぬところだったよ」
「ひえぇ~。こんな罠もあるんだね」
「慣れない」
「直ぐに回復するわ」
誰も死なずに体力を僅かに残して生き残った。
「グレーターヒール」
グンッ
スズが中位回復魔法で各自を回復していく。
「ん」
「ありがとう。少し休憩していいかしら?魔力がすっからかんよ」
「あぁ。水の通った後はモンスターも消滅しているからな。誰かレベルアップしなかったか?」
「あ、しました」
「俺も。なんでだろうね?」
シズクとガッキーの2人がレベルアップした様だ。
「俺の予測だが、あの水責めを発動させたプレイヤーの攻撃として認識されているのかもしれない。だから途中で水で倒されたモンスターの経験値は俺たちに入る」
「なるほど」
「おぉ~」
「アレで経験値になるなんて運営も抜けてますね」
「あのままだったら全員死亡していたわよ?」
「うん」
全員の回復も終わり探索を再開する。
「まずはここがどの階層からだな。ミモザが居れば鑑定でどこの階層か分かるんだけどな」
「あ、僕が鑑定持ってますよ」
「マジか」
「というか、鉱山に階層なんてあったんですね。初耳です」
「壁を鑑定してみれば分かるそうだ」
「鉱山下層の上と出ました。本当に鑑定できるんですね」
「一気に流されたな。ここから高品質の鉄鉱石が高確率でとれる。下層の下は宝石が取れ放題になる」
「そうなんですか!」
「なるほど」
俺達は直ぐに進み始める。水が流れ去った先が下層へ続く道だと信じて。
「あ」
直ぐに下層へ続く道が現れた。
「下層の上と下の境目だな」
「なるほど、これが地層という訳ですか」
「案外わかりやすいのね」
地層を確認しダイチにも鑑定して貰い確定する。
「ここからはポイズンタラテクトが出てくる。回復も忙しくなる。ダイチの弓が当てづらい敵だからサブ回復に徹してくれ」
「わかりました」
「渡しておく」
「2人とも前を頼んだぞ」
「任せてください」
「うん!」
「行くぞ」
俺達は下層へと降りて行く。
カサカサカサカサ
「ワイヤーロード」
「こっちに来なさい!シールドバッシュ!!」
「大地斬!!」
「キャッ!」
「毒(大)状態!異常状態回復と体力回復準備!!」
「はい!」
「グレーターヒール」
狭い空間内で忙しなく動きポイズンタラテクトとの戦闘になる。
カァンカァンカァン
「これでルビーは掘り終わったよ」
「こっちもエメラルドが終わりました」
極稀に1つの採掘ポイントで二種類の宝石が出たりもする。
「こんなザクザク出てくる物なのね」
「ニヤケが止まりませんね」
「ポインズンタラテクト対策がちゃんと取れていればの話だがな。毒(大)が続けば死ぬしな」
「ブイッ!」
イロハがブイサインでアピールする。
「お前のお陰でもあるからな」
「そうね、調薬師のポーションが私達の回復をサポートしてくれるからクールタイムを考えなくて済むわね」
クールタイム・・・スキルやアイテムを連続で使用させない為の冷却時間である。司祭の回復系魔法は全て連動している為にヒールをした後に異常回復魔法は使えない。その逆も同じだ。
そんな中、ポーションでの回復が役に立っている。
ポインズンタラテクトを倒し宝石を手に入れながら進む。
「ん?アレ?」
「どうした?」
ダイチが何かを発見して立ち止まった。
「ここ、壁が・・・」
フワッ
「うわっ!?」
ダイチが壁を触ろうとしたら手が飲み込まれて後ずさった。
「これ、壁じゃないですよ。偽装ですね」
「そんな物まであるのか」
ジュエリーライトを突っ込んでみると光すら遮断するようで俺達のいる空間が暗闇に変わった。
「入ってみるか」
俺が先行して入ってみるとジュエリーライトの光が満たされた空間に入ってきた。
「大丈夫」
音も遮断するのか・・・
「大丈夫だ。下り階段しかない」
「行きますか?」
「それとも、戻りますか?」
「折角だし下ってみるか」
「そう言うと思いました」
「ワクワクするね」
カチッ
「え!?」
「誰も触っていないよ!」
「スイッチなんて無かったです!!」
ガコンッ
階段だったものが変形して滑り台のようになった。
当然、俺達は尻を打ち付けて全員を巻き込んで滑ることとなった。
「「きゃああああああああ/うわあああああああああ」」
もの凄いスピードで螺旋を描き俺達は滑り落ちる。
ズサァアアア
滑り台は無情に終わりを告げて地面を滑り止まる。
「イテテ」
「体力は大丈夫?」
「少し減りましたね」
「なにがどうなっているんだ?」
ジュエリーライトを手放してしまい周りの様子が見えづらくなっている。
「あった」
地面に転がっているジュエリーライトを掴む。
パァアアアア
光が周囲へと広がり全貌を明らかにした。
「ここって」
「アソコだよね」
「隠しフィールドだな」
あの時は上から覗き見る程度だったが、同じ地に立つとその巨大な空間が際立つ。
「憤怒のインテリジェンス・タートルって・・・ここが隠しフィールドって事ですか」
「あぁ。俺たちも前回、ココを引き当てて運良く帰って来れたんだが」
チラリと背後を見ると滑り落ちてきた場所は出口を閉ざして帰してくれそうにもない。
「アソコまで登るしかないか」
転移ポータルのある入口になっている岩棚だ。
「一人ずつ、持ち上げる。装備は外してくれ」
ピピピッ
全員が装備を外し左のワイヤーを岩棚の底にペンディラムを2本刺す。
シュルルルルルッ
俺が岩棚の下で止まるように上がる。
「引き寄せ!」
バシュッ
グインッ
まずはイロハから引き寄せる。
自分にではなく操糸を併用して岩棚の上に投げ入れるように操作する。
タッ
「大丈夫か?」
「うん」
「ドンドン行くぞ」
残りのメンバーも岩棚に運ぶ。
バシュンッ
シュルルルル
壁に右のペンディラムを岩棚より上に刺して岩棚の上へと自身の体を持ち上げて作業は終了だ。
「糸使いってこんな事もできるんですね」
「映画のワイヤーアクションを見ている様な感じでした」
「スゲェよなぁ」
ピ~ンポ~ンパ~ンポ~ン
≪フィフスの街が解放されました。ただいまより、開発責任者から重大な発表がありますので全プレイヤーは最寄の街、復活ポータル広場に転移されます≫
「「「「「え?」」」」」
パアアアアアア
俺達は強制的に鉱山都市の広場に転移された。
シュワァン
シュワアァアン
次々にプレイヤー達が転移されてくる。
『お、おい。アレを見ろ!』
誰かが上空を指差して皆が視線を上げる。
キィイイイイン
上空の一部が真っ黒く染まり、その中から得体の知れない巨大モンスターが出現する。
青い肌をして下半身は獣の脚、上半身は筋肉隆々の男の物、頭は山羊の頭を模倣し作られ、紅い双眸を光らせる化け物。
その姿は悪魔と形容できよう。
≪プレイヤー諸君。始めまして、フリースタイルオンライン開発責任者の柊勤という≫
『マジで』
『このVRMMOゲームを作り出した人じゃん』
『重大イベントって事』
≪諸君には無事フィフスの街を開放してくれた事に感謝しよう。特典としてレベルキャップ開放及び二次職が選択できるように大幅アップデートを施す事となった≫
『マジで!』
『おぉおお!二次職キター!』
≪詳細は追って発表する事とする。さて、既に気づいたプレイヤーは幾人か居ると思うが既にログアウトできない事に≫
は?
ピピピッ
ログアウトボタンが無くなっていた。
≪私の目的は既に達成されている。デスゲームという言葉はVRMMOゲームでは有名な話だと私は思っているのだ≫
デスゲーム・・・あらゆるライトノベル系で出てくるVRMMO作品の代名詞と言っても良い物だ。
≪しかし、安心してくれたまえ。このゲームをしている限り君達が死んだところで現実での死には至らない。ただし、君達の意志以外でヘッドギアを外した場合は高圧電磁波によって死をもたらす。残念ながらこの忠告を受け入れず、君達の親兄弟が無理やり外そうとして自らの子供を殺してしまったようだ。今ではあらゆるメディアが一連の騒動をニュースで呼びかけこれ以上の死亡者は限りなく少ない。さて、問題になってくるのは君達の体だが現在国を挙げて各医療施設に設備を構築してもらっている所である。もし、君達が現実に戻りたいのであればゲーム世界で死すれば良い。ただし二度とこのゲームをプレイする事はできない。だが、月額制での支払いはゲームがクリアするまで継続される。君達がプレイを諦めたとしても支払われる額は運営費として使われる事となる。その一部が君たちの入院費に含まれる≫
『ふざけるなよ!』
『そーだ!止めた所で金を払わすなんて詐欺もいい所だろ!』
『二度とプレイできなくなるなんてフザケルナ!』
周囲のプレイヤー達が騒ぎ始める。
プレイできないのに金を払わせ続ける方針に怒りを覚えているようだ。
≪文句があるならちゃんと規約を読むべきだと私は思う。クリアされるまで請求及び支払いは続行されるとちゃんと記載されている≫
ブンッ
このゲームをする前にプレイヤーは契約書を通してプレイヤーIDとパスワードが配布された。
その規約書の中にはちゃんと書かれていた。
≪君達がゲームを止めるのであれば誰も止めはしない。ただし、プレイ料金はサービス終了まで継続され続ける。誰かに迷惑を掛けたくなければゲームを継続し早く終わらせる事となる≫
月額5,000円のゲームを1年続けるとして1人当たり6万円の回収、それを1万人近くプレイしているんだぞ?
年間にして6億円・・・プレイを止めたとしても年間で無意味に6万円を支払わないといけない枷が出てくる。
≪今は君達または親の口座から支払いが発生しているが、もし払えなくなれば親族達へ請求が行く事となる。それでも払えない場合は国が負担する事となる。負担した分は個々人の借金になるため長引けば長引くほど大変な目に会う。止めて年間の6万円の支払いをするのも良し、続行して借金をするのも良し。全ては君達の手による。万が一全プレイヤーが全滅した場合は君達が死ぬまで支払いが続く事となる≫
『ふざけんなよ!』
『誰が支払うか!!』
『でも、契約書の通りなら』
『そんな物は契約破棄だ!!』
≪契約解除について、クリア以外ありえない。ベータテスター時代からこの事について問題になっていた事に気づいていなかった訳じゃないだろう?≫
たしかに、ベータテスター時代にやめたプレイヤー達が起訴を起こしていたとニュースに上がっていたな。
≪その時の判決を言い渡そう、起訴は無罪判決。我社への裁判は無意味になったという訳だ・・・いまでも辞めてしまったベータプレイヤー達は支払いを続けている≫
『だけど、契約破棄ができるって』
≪また、契約破棄はそちらが罪に問われる可能性がある、止めたまえ。私は君たちの命を取ろうと考えていないのさ。純粋に私の作ったゲームの世界を楽しんでもらいたい、現実のことなんか忘れて。さて、これにて正式チュートリアルを終了とする。プレイヤー諸君、健闘を祈る≫
ブシャアアアアア
「さて、重大な発表すぎるな」
「アオイさんは続ける気なんですか?」
「無意味に年間6万も支払い続けるんだぞ?」
「社会人はどうするんでしょうね?」
「ゲームを止めて、クリア待ちをしながら払い続けるんだろ」
「月々5,000円を支払い続けるのはストレスでしょうね」
「救済処置として借金をする代わりに続ける選択もあるな」
「それは救済処置と言うのでしょうか?」
「まぁ、微妙なラインだな。お前たちはどうする?」
「私は支払ってもリアルに戻るわ」
ズバッとスズが帰還の意思を示す。
「私だってプライベートとかあるし、いつ終わるか分からないゲームに付き合ってられないわ」
「5,000円程度なら問題ないって事か」
「確かに痛手でしょうけど、問題ないわ」
「私達も諦めます」
「そうだね~、学校を休んでまで続けるのは間違いかな」
「借金したとしても」
シズクとガッキーも戻る事を示す。
「ダイチとイロハは?」
「う~ん。続行か現実での生活かを天秤に掛けるのか~」
「私は残る。現実に私の居場所はない。ここが私の場所」
「そうか」
イロハは何か心に闇を持っているようだ。
「アオイさんは残る気で?」
「あぁ。親の遺産はまだ残っている。入院費なんかは国で支払ってくれるならクリアまで付き合うさ」
「ゴメンなさい」
「気にするな。親の遺産をゲームに注ぎ込むクズの言うことなんてさ」
「アオイ、元気出して」
「僕もリアルに戻ります。頑張って続けてください。応援しています」
「じゃ、アイテムは全部あげるわ。見舞金だと思って」
≪スズからトレードの申請がありました。受けますか?≫
YES
リアルに戻るメンバーからアイテムや装備を受けとる。
「じゃ、頑張って。私達は外で応援しているわ」
殆どインナー姿になったスズ達は街の外へ向けて歩いていく。
このゲームから唯一抜け出す方法、体力を全損して死ぬことでログアウトされる。
続々と鉱山都市にいたプレイヤーは外へ出ていき死にに向かう。
お疲れ様でした




