五話「人間になるということ」
女王様に連れていかれたその場所は、洋館の中でも不思議な雰囲気がすごく強い部屋だった。
机の上にある水晶、机の横の魔法陣、薬を作っていそうな壺。いかにも魔女の住んでいそうな部屋に連れてこられた私は、女王様の指示に従って机の横の魔法陣の上に立った。すると女王様は、私のそばに立ち寄り、聞き取れない言葉を唱え始めた。私のおでこに指をあてて、何かを描くとそっと私のそばを離れた。
途端に私の体が光って、気が付けば私の体のサイズが大きくなっていた。
女王様は私の体が大きくなったのを見ると、大きくうなずいた。しばらくすると、さっき洋館の中にいたほかの人が、私たちのいる部屋に入ってきた。
「女王様?成功なの?」
雪歩は女王様に聞く。女王様はコクっとうなずいて雪歩の肩を叩いて部屋を出て行った。
「鏡を見てごらん。あなたは私たちと同じ、人間になったの。」
私はそれを見て呆然とした。けれど、いつもの人間とは違い、雪歩たちと同じところを見つけたところで私は安心した。人間にはマークがなかったけど、私と雪歩たちにはおでこにマークがついていた。そのマークの意味は、雪歩や猫歩にもわからないらしい。でも私はここに住む仲間の一員として一緒にいることができるんだと、安心するばかりだった。