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12.弟の実力

「ハヤトさん、今日はどうしたんっすか……って王女様! 失礼しました!」


 俺の右隣にいるアレーシアの存在に気づき姿勢を正し敬礼するセゾン。

 アレーシアは微笑みながら手を振っている。

 ちなみに、ヴェルは左隣に座っている。


「セ・ゾ・ン?」


「は、はい!」


「先程の言葉アレス副団長に伝えておきますね?」


「そ、そんな……」


 さっき俺に言った事をアレーシアがアレス副団長に話したらより厳しい訓練にされてしまうと思ったセゾンはみるみる顔面蒼白になっていく。

 ……見てて可哀そうになってきたから助けるかな。


「アレーシア、あんまセゾンを揶揄うなよ」


「……え?」


 目を見開いたセゾンはアレーシアをみると可愛く舌を少し出していた。


「冗談です、ふふ」


「ひ、酷いですよー王女様……」


「セゾンを揶揄うは楽しいですから」


「えぇ……」


 王女であるアレーシアに結構砕けた喋り方しているセゾンを不思議そうに見ていたらセゾンが俺の視線に気づく。


「どうかしたっすか?」


「え、いやーなんか二人仲いいなって思って」


 俺が言うとアレーシアとセゾンは顔をお互いに見てから先にアレーシアが言う。


「ハヤト様! もしかして嫉妬――」


「してない」


 速攻で否定したらアレーシアは落ち込んでしまう。慌ててセゾンが慰めてに入り、隣に座っているヴェルが言う。

 

「ハヤト兄ちゃん! アレーシアお姉ちゃんに謝って!」


「え、でも俺……」


「いいから!」


「は、はい!」


 ヴェルが初めて俺に怒った……。

 俺はアレーシアの近くに行く。頭を掻いた後ヴェルを見るとまだ怒った表情だ。


「その、さっきは悪かった」


 俺が謝るとアレーシアは上目遣いで甘えているような表情で言う。


「じゃ……抱きしめてくれますか?」


「……」


 ヴェルに助けを求めてみるとやれって言う仕草で返される。セゾンはにやにやしている。

 ……仕方ないか。セゾンは後で覚えとけよ。

 俺はしゃがみアレーシアを抱きしめる。アレーシアは耳まで真っ赤だ。


「これでいいか?」


「……はい」


 俺が離れようとするとアレーシアは力を入れ離れない。


「お、おい」


「もう少しだけ!」


「なんでだよ!」


「だって! ハヤト様はもう動けるほどまで回復されました。て言うことはヴェル君を連れて旅に行かれるのでしょう?」


「……」


「だからもう少しだけこのままでお願いします!」


 アレーシアは必死になって涙を流しながらお願いする。

 こんなアレーシアは初めて見る。

 俺はアレーシアの頭を優しく撫でながら言う。


「わかったよ……一旦、力を弱めてくれないか、少し痛い」


「あ、ごめんなさい」


 アレーシアが力を弱めると俺はひょいとお姫様抱っこする。おかげで、アレーシアの涙は引っ込み顔をより真っ赤にさせている。


「ヴェル、実力見たいからセゾンと練習試合な」


「はいー」


「えぇーなんで俺!?」


 文句を言うセゾンに満天の笑顔を向けて俺はあることを言う。


「断るならアレス副団長に――」


「喜んでやらせていただまっす!」


 邪魔にならない所までアレーシアをお姫様抱っこして移動。アレーシアは落ちないように俺の首に腕を回している。

 移動している間にヴェルは短剣を腰につけて弓を装備。セゾンは訓練で使っている槍を手に持ち構えている。

 移動し終わるとアレーシアを膝に乗せ椅子に座ってから待機しているヴェルとセゾンに言う。


「よし、それじゃ……はじめ!」


「風よ、我に纏え! ウィンドアップ!」


 俺が開始宣言するとヴェルは体に風を纏わせて自身の俊敏性を上げる魔法を使う。

 セゾンは動かず穂先をヴェルに向けている。先手を譲るようだ。


「ソニックショット!」


 矢に風を纏わせ疾風の速さでヴェルは射る。しかし、セゾンはしっかり矢を見据えて矢を叩き落とす。

 

「トライショット!」


 ヴェルは次の手に一つの矢が三つに分身するし左右上からセゾンを襲う。


「我を守れ、クレイウォール!」


 セゾンは槍を地面に刺すと地面から土壁が現れ左右からはそれで防ぎ上からの攻撃は避ける。

 そして、セゾンはヴェルに向かって走り出す。


「っ! 風よ、彼の者を阻め! アドバースウィンド」


 アドバースウィンド。術者に近づけさせないために逆風を生み出す魔法。

 訓練場に強風が吹き荒れセゾンはクレイウォールを作り出し風よけにしている。


 そんな戦いを俺は感心しながら見ている。


「ヴェル君強くなりましたでしょう?」


「予想以上だ」


 ヴェルの成長過程が見れなかったのは本当に残念だ。


「ヴェル君は強くなるためにセゾンと一緒に騎士の訓練に参加しましたわ。でも、体力のないヴェル君は走り込みだけで力が尽きてしまい全く訓練が出来ませんでした」


 アレーシアは思い出しながら話を続ける。


「ですが、ヴェル君は文句や弱音などを一切言わず毎日訓練を取り組んでいましたわ。

 なんでそこまでするのって尋ねたんです、そしたらヴェル君は起きた時にハヤト様を驚かすんだって」


「ヴェルがそんなことを……」


「あ、これハヤト様に内緒だったわ! ……ハヤト様今のは聞かなかったことに」


「むり」


「ぐぬぬ……せ、せめてヴェル君には言わないでくださいね!」


「わかってるよ」


 そんな話をしていると体力が底をついたのかヴェルは大の字になって倒れている。セゾンは立ったままだが肩で呼吸している。

 俺はアレーシアから離れヴェルのもとに行く。


「お疲れヴェル」


 手を伸ばすとヴェルは手を掴み一気に起こす。立たせたはいいが足元ふらふらのヴェルは態勢を崩し俺に倒れ込む。


「大丈夫か?」


「う、うん……大丈夫……どう、だった?」


 息を切らしながらヴェルが聞いてきた。


「そうだな……」


 ヴェルが不安そうに見てくる。俺はヴェルの頭を優しく撫でながら言う。


「強くなったな」


「えへへ」


 ヴェルは嬉しそうだ。

 その時、ドスンと音が聞こえ振り向くとセゾンも疲れたのか地面に座る。


「セゾンも付き合ってくれてありがとな」


「は、はいっす……」


 【無限の収納】からスタミナポーションを取り出しセゾンに投げて渡す。


「スタミナポーションだ。体力回復しとけよ」


「はいっす」


 もう一本取り出しヴェルに渡す。


「ありがとうハヤト兄ちゃん」


 ヴェルとセゾンは地面に座って休憩。アレーシアはヴェルのさっきの戦いを褒めている。

 手が空いた俺はヴェルに確認する。


「ヴェルは風系上位魔法は使えるのか?」


「ううん。まだ使えないよ」


「そっかー……」


 さっきからヴェルが使っていた魔法はまだ中位魔法だ。まだ上位魔法を習っていないのかもしれない。なら、お手本見せるか!


「ヴェル、今から風系上位魔法見せるよ」


「いいの! みたいみたい!」


「よし、しっかりみとけよ! あの案山子を狙うぞ」


 【無限の収納】から翡翠色の弓を取り出し唱え始める。


「荒れ狂う風よ、大地を削り取る災厄の主よ! 彼の者に破壊を!」


「ハヤト様!その魔法はダメ――」


 アレーシアが止めに入るが俺は最後の台詞を唱えた。


「テンペスト!」


 立っていられない程の強風が発生してアレーシア、ヴェル、セゾンは床に伏せている。

 風は螺旋を描きながら空に向かい、訓練場の天井は全て壊れ、瓦礫と共に空に消えていった。勿論、狙いっていた案山子は姿かたちは一切残っていない。


「あちゃー耐えると思っていたけどなー」


 のんきなことを言っていたかなりお怒り気味のアレーシアが近づいてくる。よく見れば砂埃のせいで汚れている。


「あちゃー、じゃないですよハヤト様! なんで上位じゃなく最上位魔法を使ったんですか!」


「いやーヴェルの期待に答えようっと思って」


「もう! これだから!」


「ハヤトさん、さすがにやり過ぎっすよ……」


「ハヤト兄ちゃんかっこいい!」


 アレーシアは怒り、セゾンは呆れ、ヴェルは喜んでいる。


 その後騒ぎを聞きつけた騎士たちが来たあと、俺はアレーシアに耳を引っ張られながら王のもとに。そして、長時間アレーシアとガフェウス陛下、それとアレトリ宰相に怒られた。



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