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11.弟の為なら

 部屋を出るとメイドの一人が案内してくれるということで素直についていく。

 長い廊下を歩いているとヴェルが袖を引っ張ってくる。

 俺は目線だけヴェルに向け小声で尋ねる。


「どうした?」


「あのね、王様との話し合いが終わったら僕の魔法見て欲しいの!」


 俺が寝ている間にどれくらいヴェルが成長したかを見る為に陛下と話が終わった後に言おうと思っていたことを先に言われた。

 俺はヴェルを撫でながら言う。


「ああ、ヴェルの全力を見せてくれ」


「うん!」


 それからしばらく歩くと扉の横に騎士が見張りをしている部屋に着く。

 メイドがノックすると部屋から「入れ」と言う言葉が聞こえメイドは扉を開け俺が先に部屋に入った後にヴェルも続く。メイドは一礼してから部屋を出て行った。


「ハヤト殿、久しぶりじゃな」


 アレーシアと同じく黄金に煌めくブロンドヘアの男性ーークレアスト王国、現国王のガフェウスが尋ねる。


「陛下も元気そうで」


 俺がフランクに話しかけたせいか宰相がすっごい睨んでくる。ヴェルが怯えて俺の後ろに隠れるぐらい怖い。


「こらアレトリ。ヴェル殿が怯えているだろう」


「……申し訳ございません」


 ガフェウス陛下に注意され宰相は睨むのをやめる。

 俺はヴェルの頭を撫で落ち着かせてから椅子に座る。

 軽く談笑してからヴェルをアレーシアに任せガフェウス陛下は本題を切り出す。


「そなたが見つかった翌日、各国から大量の人が死んだと各国に派遣した者達から報告を受けてな。我が国でも何人か亡くなっていたのでな秘密裏に原因を調べたら全員呪殺との報告が上がった。関係性を調べてくうちに死んだ者達は違法奴隷商の者とそれと取引した者達だけだったのじゃ」


「……」


「ハヤト殿、あの日そなたの家で何をしたのじゃ?」


「……」


 俺が沈黙を保っていると痺れを切らしたアレトリ宰相が怒鳴りながら言う。


「いいかげんに答えないか! お主が何かをしたのはわかってるのだぞ!」


「アレトリ落ち着かんか?」


「し、しかし……」


「ハヤト殿が言いたくないなら構わん」


 二人の会話を聞いているとヴェルが心配そうにこっちをみてくる。俺はヴェルを呼び膝に座らせた。

 ヴェルの体重が以前よりも増えている事には嬉しさを感じる。

 俺はヴェルを後ろから抱きながらガフェウス陛下とアレトリ宰相とアレーシアに言う。


「あの日何をしたかは言わないし、言うつもりもない」


 あの闇系最上位魔法デススパイラルにはもう一つ守らなければならないのがある、どんな魔法かを誰にも言わない、発動中を見られてはならない、だ。

 これを破ると聞いた者見た者に死が訪れてしまう。


「ただ、言えることは……」


 俺はヴェルをぎゅっと抱きしめるながら言う。


「弟のためにした、それだけだ」


 ヴェルは見上げながら首を傾けている。


「……そうか。よほど弟の事が大事なんだな」


「ああ」


 この小さな弟の為なら世界を敵に回してもいいと俺は心中で誓う。




 ガフェウス陛下と話が終わり、俺とヴェルは騎士団の訓練場に着くと何故か先にアレーシアが待っていた。


「何故アレーシアがいるんだ?」


 と尋ねると。


「暇でしたから」


 と、口に手を当てながらオホホとアレーシアは答える。

 暇人かよ。


「アレーシアお姉ちゃんも見にきてくれたの?」


「えぇ、頑張ってくださいねヴェル君!」


「うん!」


 ヴェルが嬉しそうだしいいか。


 俺とヴェルとアレーシアは訓練が終わるのを談笑しながら待っていると見覚えのある人物ーーセゾンを見つける。


「なぁなんでセゾンが騎士団の訓練に混ざっているんだ?」


「僕の付き添いで来てくれたんだけど、騎士団長さんにここで訓練してけって言われたんだよ」


「あぁ、なるほど……」


 騎士団の訓練はかなりキツイはず。けど、セゾンは相手の動きをしっかり見切って反撃している。それに、体のブレもほとんどない。頑張ってんだな。

 そういえばセゾンに外壁から見せてくれたお礼してなかったな……。

 そんなことを考えていると指導役の騎士が集合をかけ、終了の号令をかける。

 騎士たちは訓練場を出て行く。セゾンも疲れいるのかトボトボと出て行くところを俺は呼んだ。


「セゾンー」


 セゾンはすごい勢いで振り向き俺と視線が合うと泣きながらこっちにくる。


「ハヤトさんー良かって気がついたんっすね! これで地獄の訓練とおさらば出来る!」


 本音ダダ漏れだな、よほどきつかったんだな……。



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