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10.兄、目覚める

「ハヤト、放課後どうすんだ?」


「今日バイトあるから」


「そっか、じゃまた明日」


「じゃあな」


 俺は急いで階段を降り下駄箱に行く。すれ違うクラスメートに手を振り駐輪場に向かい愛用の青い自転車に跨り学校を後にする。


 どうにか間に合いそうだなぁ……あの角を曲がればもうすぐ――








「ん…………」


 重たい瞼を開けたら知らない天井が視界に映る。


「懐かしい記憶だな……」


 高二の頃、バイト行く際に交通事故に巻き込まれ、気が付いたときにこの世界に転生していた。

 もう見ることないと思っていたのだが……。

 そんなこと思っていると扉が開く。入ってきたのは花を両手で持ったメイドだ。メイドはベットの横にある花瓶に近づく。俺は横になりながら話しかける。


「メイドさん……」


「っ! ハヤト様お目覚めになられたのですね! すぐアレーシア様とヴェル様をお呼びいたします!」


 そう言いメイドはすぐ部屋を出る。

 俺はメイドの発言に疑問を思う。

 ここは王城だからアレーシアは分かるけど、何故ヴェルの名前が出てくるんだ?ヴェルはクルーレの街にいる、王都にヴェルの事を知っているのはアレーシアとヴェスナーだけのはずなんだが……。


 扉の向こう側から凄い勢いで足音が近づいてくる。バーンと扉が開く。


「ハヤト兄ちゃん!」


 最後にみた時より少し成長したようなヴェルが泣きながら駆け寄ってくる。


 俺は重たい身体を起こそうとするとヴェルが支えてくれた。


「ありがとな、ヴェル」


 支えている間にヴェルを改めて見るとちゃんと肉もつき、少し逞しくなっていることに俺は驚く。


「ヴェル、少し身長伸びた? それに体付きも……」


「何日経っていると思っているの?」


 ヴェルは語ってくれた。

 俺が重症で王都に発見され王城で治療を受けているということをヴェルは知り、ヴェスナー騎士団長に転移の魔法が封じられている結晶石を貰い王都に。

 そこから俺が寝ている間、俺が考えたメニューをアレーシアに頼み行っていたそうだ。

 ヴェルが考え実行してくれたのは嬉しかった。けど、その成長過程を見れなかったのは少し残念だと思う。


「ハヤト兄ちゃん聞いて! 僕風魔法使えるようになったんだよ!」


「お、そうか」


「それにね――」


 ヴェルは目をキラッキラにさせながら俺に話す。まるで、離れていた時間を埋めるように。

 その時息を切らしたアレーシアが部屋に入ってくる。


「ハヤト様!」


 カツカツと靴音をたて近づく。


「アレーシア久しぶりげ――」


 パチンとアレーシアは俺の頬を叩く音が部屋に響く。アレーシアは顔上げると涙目になっていた。


「私とヴェル君がどれだけ心配してたと思っているんですか……あの時無理にでも聞き出せていればと何度も後悔していたんですよ……」


 アレーシアの瞳からぽろぽろと大きい雨粒のような涙を落とす。


「心配かけてごめん……」


「本当ですよ!」


 アレーシアは泣きながら俺の胸の中に飛び込み受け止める。そして、アレーシアが泣き止むまで頭を撫でる。





「ハヤト様ごめんなさい。頬叩いてしまって……」


 泣き止んだアレーシアは頬に触れ心配する。


「大丈夫、平気だ」


 再びアレーシアの頭を撫でる。俺はあること思い出しアレーシアを呼ぶ。


「アレーシア」


「はい?」


 ――チュ


 俺はアレーシアの額にキスをする。何されたか理解したアレーシアは茹蛸のような顔をする。


「ななな、なんで、えええーー」


「そう言えば約束していたなーって思って、驚いた?」


「ずるいですよ! もう!」


 アレーシアはぷんぷんと怒っている。だけど、どこか嬉しそうだ。


「あ、ずるい! 僕にもして!」


 それを見ていたヴェルが要求する。仕方なく額にキスをした。


「えへへ」


 ヴェルは嬉しそうだ。


「ハヤト様、お腹空いていますか?」


「そうだな、頼む」


「分かりました、少しお待ちください」


 アレーシアは部屋を出ていく。

 よし、アレーシアが戻ってくる間にこの重たい身体をどうにかしないとな。


「ヴェル肩貸してくれる?」


「うん」


 俺はヴェルの肩に掴まりベットから下り部屋の中央に行く。

 【無限の収納】からヴェルの奴隷の紋章を消した時に使った杖を取り出す。


「ありがと、ヴェル少し離れてて」


「うん」


 ヴェルが離れたのを確認してから杖で床を叩くと魔法陣が浮かび上がる。


「光の司る神獣よ、我が声を聞き届けよ。

 地に縛られた肉体を、解き放て!」


 光が俺を包むと徐々に衰えていた身体が戻っていく。

 光が収まってから屈伸したりぴょんぴょんと飛び跳ねる。

 よし、身体も戻ったな。


「ハヤト兄ちゃん今の魔法なに!?」


 振り返るとヴェルは期待を込めた目で見てくる。このやり取り懐かしいな。


「今のは魔法じゃないけど……まぁ一応、魔法の一種なんだけど……」


 どうヴェルに伝えようか考えているとアレーシアが料理人を連れて戻ってきた。


「ハヤト様お待たせしました。あれ、もう身体大丈夫なんですか?」


「うん、大丈夫。

 魔法の事は後で話すよ、ヴェル一緒に食事しようぜ」


「うん!」


「アレーシアもどう?」


「ええ、喜んで!」


 俺とヴェルとアレーシアは談笑しながら食事をする。

 俺の身体を考えて胃に優し食べ物用意貰ったんだが、物足りなく追加した。

 ついでにデザートも追加。待っている間にアレーシアが言う。


「ハヤト様、お父様から伝言があります」


「伝言?」


「はい、体力が戻り次第お父様の所にとのことです」


「わかった。今から行っても平気か?」


「確認してみます」


 アレーシアは立ち上がり執事に伝える。しばらくすると執事が戻ってきた。


「今からでも大丈夫だそうです」


「わかった」


 食事を終えると先にアレーシアが陛下が待っている応接室へ行く。

 俺は【無限の収納】から洋服を出し着替えてからヴェルと共に向かうのだった。



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