1.初まりの出会い
俺の名前はハヤト。SS冒険者だ。今はクレアスト王国遠郊で暴れているドラゴンを討伐に来たんだが……
「お、いたいた」
森の上空を駆けながら止まっているドラゴンを見つけた。だが突然ドラゴンは動き始めた。
近付くとドラゴンがいた近くに馬車が横転してた。
「なんであんなところに馬車が? まぁ考えてもわからないし、追いかけよ」
追いかけるとドラゴンは何かを追っている様子だ。ドラゴンを追い抜きその先にいたのは子供だった。
急いでドラゴンと子供の間に入りドラゴンの頭部に氷結を纏った拳を一撃放つ。
「はあああああ! アブソリュートインパクト」
するとドラゴンは頭から尻尾の先まで一瞬で凍って粉々に砕ける。
「 ふー、怪我とかないか?」
後ろを振り返り子供に声をかけたが喋らず、ただ頷いた。
「? 本当に怪我とかないのか?」
今度は力強く頷いている。頭のところにあるちょこんとのってる耳がピクピク動いてた。思わず撫でたくなった……可愛い。
「あっ、わるいつい……」
勝手に撫でた事を謝ったが、子供は頭を横に振って嬉しいそうにしてる。撫でられるのがすきなんだな。
「ん? お前の目……両目色違うんだなぁ〜」
少し赤い色の左目と少し青い右目。
「オッドアイか……珍しいな。
綺麗だな」
子供は声を出すことなく突然涙を流した。
「お、おい!? どうしたんだよ、急に。
やっぱどこか痛いのか?」
どうすればいいのか分からず、子供の周りを狼狽えながら回る。その時首元にある変な痣が目についた。
「これは……隷属の紋章か!」
隷属の紋章。
奴隷になった時に刻まれる紋章。奴隷には三種類ある。犯罪を犯して奴隷になった犯罪奴隷。お金がなく身体を担保にした借金奴隷。そして、闇ルートで売買される性奴隷。
小さいこの子が犯罪を犯すとは考えづらい、なら借金奴隷か性奴隷かのどっちかだ……
「えっと、あのさ確認した事があるんだけどいいかな」
子供は首を傾げてこっちを見てる。とりあえず撫でた。
「服の下見てもいいかい?」
すると子供は困りそうな顔になりながらもゆっくり服を上げた。そこには青痣や蚯蚓腫れ等痛々しい怪我をみてしばらく絶句した。
「見せてくれてありがとうな」
見せてくれたことにお礼をいいながら頭を優しく撫でる。
「今までよく頑張ったな。
もう心配するな! これからは痛い思いはさせないし俺が絶対に守ってやる」
俺はこの子の目をしっかり見て伝える。すると子供は両腕を首に回し泣いた。涙が枯れるまで。
それから数分後。
「落ち着いたか? とりあえず水飲め」
【無限の収納】から水を出して渡したが一向に飲まない。なんでだ?と 疑問に思っていると子供は隷属の紋章も指さした。
「もしかして、飲むことも制限されてるのか? それと喋らないのもそのせいなのか?」
さっきから喋らない訳も聞く。子供は一回頷いた。
「まじかよ……」
飲むことも、喋ることも、もしかしたら食べることにも制限されているかと思うと怒りが込み上げてくる。
「けんな……ふざけんなあああ! なんでこの子がそこまでされなきゃいけないんだ!」
そのまま近くにあった岩を一撃で粉砕。轟音とともに森中に響いた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
服を引っ張られるの感じて声を荒げて振り向く。俺の荒げた声に子供はびくついて涙目になってる。
「悪い……」
同じ目線になって謝った。俺の首に両腕を回して強くぎゅうっと抱きつかれた。
「ありがとな……」
子供の目をみながらこれからすることを伝えた。
「これから奴隷の紋章を消す。
本当は契約主を見つけて解いてもらうのがいいけど、どこにいるか分からないし時間もない。
だから強引的に消す。かなり痛いと思う……ごめんな、痛い思いさせないって言ったそばから……だからもう一回誓わせてくれ、君を絶対に守るよ」
子供は小指出してくる。ゆびきりかな? 俺も小指出して絡める。お互いに笑いあった。
「ありがとう……そういえばまだ名前を聞いてなかったな。
俺の名前はハヤトだ。消したら教えてくれよな」
子供は頭を激しく上下させて頷いた。俺は両腕の手甲を解除してから杖を出した。
「よし、始めるぞ」
杖を一回地面を叩くと足元に魔法陣が展開される。俺は手招きして子供を後ろから抱いた。右手を子供の顔に差し出した。
「痛かったら遠慮なく噛め」
子供は俺の顔と右手を交互にみて頭を横に振った。
「大丈夫だから、俺が全て受け止めるから」
親指の付き根も無理やり咥えさせた。ちゃんと噛んでるのを確認して呪文を唱えた。
「光を司る神獣よ、我が声を聞き届けよ。
彼の者を束縛する鎖を壊せ」
「……っ!?」
右手めっちゃ痛い!けどこの子が受けてきた痛みと比べたら!
右手からは血が流れる。パリンっと音と共に隷属の紋章が消えたと同時に子供は気絶した。続けて治癒魔法もかける。
「ふーう、隷属の紋章も解呪したし、怪我も治した。
疲れた……けどこれでようやくこの子は自由だ」
地面に敷物を敷いて寝かす。この子が起きてくるまで周囲を警戒しながら料理を作って時間を潰した。