プレゼント
こんにちは、にとろんと申します。
今回こそ私の病気 第三話です。今回は第一、第二と同じく紗希ちゃん主観のお話です。それではどうぞ。
絵里さんが休んでもう五日になった。今までこんなに連続して休むことはなかった、本当に何があったのだろうか。病室は変わらず静かなままだ。私が朝御飯を食べる音だけが部屋を埋めていた。
もしかして絵里さんは病気にかかってしまったのではないだろうか。はたまた何か事故に巻き込まれてしまっているのではないだろうか。そんな後ろ向きな想像ばかりが頭をよぎる。
カシャーン
考えごとをしながら食べていたせいなのか、食器を床に落としてしまった。プラスチック製だから落としたくらいでは割れないのだが一度ベッドから降りないといけないので少し面倒くさい。私が食器を拾っていると、病室に誰かが入ってきた。服部さんだ。
「わ、紗希ちゃん大丈夫?」
「あ、はい。食器を落としてしまっただけなので……。」
「そう、なら良かったわ。何かあったら遠慮なくナースコールを使ってね。」
「はい。」
こういう心配は素直に嬉しいものだ。私がベッドに戻ると、服部さんは笑顔でまた話をはじめた。
「そうだ、今日は紗希ちゃんにいいお知らせがあるのよ。」
「いいお知らせですか?」
「そう、実は今日の午後から中原さんが戻ってくるの。」
「本当ですか!」
思わず少し大きな声を出してしまった。絵里さんが戻ってくる。その知らせが私の心を弾ませる。
「うふふ、喜んでくれて嬉しいわ。」
「あの、それで、」
「ええ、今日の午後から紗希ちゃんの担当は中原さんに戻るわ。」
「はい、ありがとうございます。」
担当が服部さんなことに不満があるわけではないのだが、やっぱり最初から担当だった絵里さんが戻ってきてくれるのは嬉しい。
服部さんが病室を出ていったあと、私は残りの朝御飯を食べておぼんをさげた。
昼前に病室にお母さんがやってきた。今日はパートがないようだ。お母さんに絵里さんが戻ってくることを伝えると、どうやらお母さんも知っていたようでよかったわねと言ってくれた。
私がお母さんと話しているうちにお昼御飯の時間になった。病室のドアを開けておぼんを持ってきたのは絵里さんだ。
「絵里さん、お久しぶりです!」
「うん、紗希ちゃん久しぶり。お母さまもお久しぶりです。」
久しぶりに見た絵里さんは何も変わっておらず、私はとても安心した。お母さんと絵里さんが挨拶をはじめたので私はお昼御飯を食べることにした。すぐに絵里さんと話したかったが、これから担当は絵里さんなのだ、急がなくても話す機会なんていくらでもあるだろう。そう思って私はバターロールを口に運んだ。
私がお昼御飯を食べていると、絵里さんたちは挨拶を終えたらしく私に話しかけてきた。
「紗希ちゃん、実は今日は紗希ちゃんにプレゼントを持ってきたの。」
そう言って絵里さんはナース服のポケットから小さな袋を取り出した。マスキングテープで装飾された可愛い袋だ。私はそれを開けようとしたが、お母さんにお昼御飯を食べ終わってからにしなさいと言われてしまった。
「ありがとうございます。中身を聞いてもいいですか?」
「ええ、赤色のミサンガよ。私も持っているからお揃いよ。」
「わあ、大事に使います!」
「すみません、うちの紗希にプレゼントなんかしていただいて。」
「いえいえ、私がやりたくてしたことなので。」
絵里さんの手首を見ると赤色のミサンガが巻かれていた。おそらくあれと同じものなのだろう。私はこのプレゼントを絶対大事にしようと決めた。
お昼御飯を食べ終わると、絵里さんが私の左腕にミサンガを巻いてくれた。お揃いのミサンガ。なんだか姉妹にでもなったようで、すごく嬉しい。絵里さんは他にも仕事があるようで、お母さんと私に軽い挨拶をして病室を出ていった。
私はお母さんが帰るまでミサンガをずっと自慢していた。
私の病気 第三話、読んでいただいてありがとうございました。
もうそそろそろエンディングかな、と考えております。なんとか完結できそうでよかったです。もしよろしければまたお暇なときにでもお付き合いください。