遅い起床
はじめまして、にとろんと申します。今回はじめてこのサイトに小説を投稿させていただきます。初投稿、小説初心者ということもあり、至らぬ点、お見苦しい所も多々あるかと思いますが読んでいただけると嬉しいです。
内容としては入院中の少女、紗希ちゃん主観の物語となっております。一応おおまかな設定は考えておりますがまだエンディングが決まっていないので頑張って完結を目指していきたいです…。
目を覚ますと視界にはいつもと同じ天井があった。
「私また眠ってたんだ……。」
そう言いながら体を起こす。私のベッドの周りを囲う緑のカーテンも腕の点滴の針も色々な所から静かに聞こえる機械音もみんな同じだ。
私は、入院している。
「あら、紗希ちゃん起きてたのね。」
「あ、絵里さん。私今度はどれだけ眠っていたの?」
「………」
「絵里さん?」
「あら、ごめんなさい!だいたい半日くらいかしらねえ…?」
絵里さん。彼女は私の担当の看護師さんだ。年はたしか24だったと思う。曖昧なのは何度も聞くのも失礼かなと思っているからだ。まあ、こんな考え自体が失礼なのかもしれないのだけれど。
「そうだ、私点滴を代えにきたんだったわ。」
そう言うと絵里さんは私の腕につながっている点滴の袋を代えようと手を伸ばした。何気なくその様子を見ていると絵里さんのカーディガンの袖が少しめくれて、手首の辺りに強く引っ掛かれたような傷が見えた。彼女の手首にそんな傷なかったはずだ。不思議に思った私は絵里さんに声をかけた。
「あの、絵里さん、手首の怪我はどうしたの?」
「ああ、これは飼っている猫に引っ掻かれちゃったのよ。ウチの子はご飯あげないとすぐ怒るのよ。」
「そうなんですか、私、ペットを飼ったことがないからそういうの少しあこがれちゃうかも。」
「あらあら、引っ掻かれても痛いだけよ?」
絵里さんとそんな話をしながら彼女の傷が酷いものではないということに安心した。
そのうち、点滴も代え終わって絵里さんはナースステーションへと戻っていった。
私は部屋に一人になった。別に個室ではない、本来は六人部屋なのだが私が入院しはじめた時からこの部屋の患者は私一人だ。もともと一人は苦ではないしいいのだけれど。
窓から外を見ると遊んだ帰りなのか、夕焼けに照らされた数人の小学生、おそらく学年は私と同じか少し下かであろう子たちが走って行くのが見える。正直うらやましい。私だって本当なら今ごろはあんな風に過ごしていたのかも、なんて考えてしまう。
私はある病気にかかっている。
病院の先生が言うには突然眠くなって、少しの間眠ってしまうそうだ。非常に珍しい病気で治療にも時間がかかるんだとか。
私がはじめてこの病気で眠ったのは去年の話。小学校三年生だった私は突然学校で倒れるように眠ったらしい。らしい、というのは私にその時の記憶がなく、起きてから親に聞かされたからだ。クラスメイトたちとは特に仲が良かったということはないのだが、誰もお見舞いに来てくれないので、男子はもう半分は顔も名前も忘れてしまった。まあ、学校で突然ぶっ倒れたやつなんか怖くてお見舞いにこないか……。
そんな風に自分の状況を整理していると、誰かが病室に入ってきた。どうやらお母さんのようだ。お母さんはスーパーでパートがある日はいつもこのくらいの時間に私の病室に来てくれる。
「お母さん!」
「紗希、元気にしてた?先生や看護師さんにご迷惑はかけてないでしょうね?」
「もー、来たらいっつもそれ言うんだから!大丈夫だから。」
「そう、ならいいのよ。これ、紗希の好きなシュークリームよ。」
「わあ!ありがとうお母さん!」
「中原さんに預けておくから晩御飯のあとに渡してもらいなさいね。」
「はーい。」
中原さんというのは絵里さんのことだ。そのあとも晩御飯の時間になるまでお母さんとは色んな話をした。
読んでいただき、ありがとうございました。続きもできれば投稿したいと思っているのでよろしければお暇なときにでもお付き合いください。それでは。