慟哭しました……です
う~ん……忙しかったです……。
なんか最近暗いなぁ。
明るい話書きたいなぁ。
感想書いてくれる方いませんか~?
気合を一気に注入したいんです……!
それがなくても頑張りますけど……。
「君を保護させてほしい」
「は?」
このおっちゃんは何を言っているのだろうか?
それでは交渉なんてなっていない。
「そう不思議なことではな……あぁ、そうか。私たちのことは知らなかったね。私たちは見ての通り衛兵でね、君を保護する必要がある。そう国が定めているんだけど……あまりおおっぴらにはできない理由でその規律はもう意味をなさなくなっている。だから本来は孤児院へと送るんだけど、君はそれでは納得しないだろうし、私たちはよくも悪くも有名で君を利用させてもらいたい。その見返りとして君を王都の冒険者ギルドまでの護衛、そして私を後見人とする後ろ盾だ。後見人のことは君が一人立ちできるまで続ける。冒険者ギルドでは身元不明な怪しい子供を加入させることはたぶんないけど私が後見人としてならば加入できるだろうしね」
確かに筋が通っている。
僕としては今のところメリットが大きい。
利用……か。その方が信じられる僕はおかしいのだろうなぁ。
「わかりました。お願いします」
今は交渉に応じた方が賢明……かな。
よくも悪くも有名っていうところが少し気になるけれど悪いことしようものならかみついてやる。
「わかった、契約成立だ。今から私たちは君の仲間となるがすべてを信じなくともいい、だが敵ではないことだけ心においてほしい。私はマルク・ウェルネス。レディナイト王国第三王女ティア・レディナイト様の近衛兵隊長マルク・ウェルネスだ。君はいまからスレイス・ウェルネスと名乗ることになる。こちらにおられるのがレディナイト王国第三王女ティア・レディナイト様だ。こちらは私の娘のレギサだ。どちらとも仲良くしてやってくれるとうれしい」
そう言ってマルクさんは笑顔で僕の右手を握った。
この世界で初めての人の体温だった。
闇に一筋の光が差し込んだような思いだった。
だけど、復讐はする。
僕がそんなことをするのは望んでいないだろうけれど……そうでもしないと己を保てないんです。理由に使ってごめんなさい。母上……ごめんなさい。
「姫様、レギサ姉さま、一時の間よろしくお願いいたします」
そう言って僕は頭を下げる。
二人はあわてた様子で、
「ひ、姫様なんてやめてもらえない? じゃないとよろしくしない」
う~ん……ここまで譲歩してもらえたんだし、よろしくされないのは後々問題になる。
「わかった、ティアさん。これでいい?」
周りが騒然となった。
みんな嬉しそうだ。
ティアさん友達いないのかな……?
さて、レギサ姉さまの方は……
「え、あ、こ、こちらこそよろしく。スレイス?」
「ええ、呼び捨てでお願いします、レギサお姉さま」
「な、なんだかむず痒いな」
そう言って照れた様子だった。
マルクさんはほほえましくその光景を見ている。
「さて、昼食を食べよう。スレイスは胃に優しいものにして、食事係以外は周囲の警戒にあたれ」
そこで気づいた。僕はおなかがすいていたのだ。
少し恥ずかしくなった。
「手伝います」
「お、おう!」
僕は食事係のところに行き、食材を見る。
ふむ……塩とか胡椒はないか……。
どうやらスープを作ってそれをパンに浸して食べるのが一般的なようだ。そのパンもできがいいとは思えずとてもかたい。
どうやらこの食材ではあまりいいものは作れないようだ。
それに目立つから作れないし……。ナイフを貸してもらい、ジャガイモに似たものと人参に似たものの皮をむき、シチューを作る程度の大きさにして沸騰させた水に入れる。本当は先に炒めておくほうがいいのだが炒めるための料理器具は持っていないらしい……まぁ、当たり前ではあるが。
だしは近衛兵の一人が狩ってきた鶏の骨を使った。骨はあらかじめ血を取って沸騰した水に入れておいたし肉は流石に病原菌とかが怖いので『原子魔法』で周りの空気の分子運動を大きくさせて熱を作り、簡易電子レンジにより熱による殺菌をした。そして肉を一口サイズにして入れて浮かんでくる灰汁を取り、味見してみる……うむ、まぁ及第点くらいだろう。シチューに骨のだしってあまり合わないかとおもったけれどこの世界の骨はいいだしが取れるようだ。
骨は本来何十時間もかけてだしを取るのでアイテムボックスにストックしておく。
そして合計15人の飯ができた。
僕は昼食ができたことを伝えようと振り向いた瞬間……凍りついた。
僕は今何をしていた? 『原子魔法』にアイテムボックスを使った……よね?
見られた……よね?
や、やばいやばいやばい!!
なんとか言い訳しないと!?
「えと、みなさん……? 食事ができましたが……」
みんなは顔に驚愕の色を浮かべたまま顔を見合わせていた。
どうする? 嘘を言えば不信感が高まるし……
「き、君は……いや、やめよう。詮索はなしだ。みんな、まずは昼食だ」
マルクさんのその一言でみんなはおずおずと料理に手を付け始めた。
「う、うまいな……」
うん、やっぱりこんな方法では料理されていないようでした……詰んだ……。こりゃ問い詰められたら言い訳できない……。
でもみんなはおなかがすいていたようで僕の料理に舌鼓を打っていた。
うん……あれだ……僕の料理で笑顔になってくれるなら作った甲斐があったというものだ。
僕は比較的スローペースで食べていた。胃を驚かせないようにゆっくりと。
そして満足するとみんなが僕の方を向く。
マルクはその状況を何とかしようと思っているみたいだが手を出せずにいるようだ。
仕方ない。
「えっと……さっきのは……その……魔法……です」
だんだん言葉が尻すぼみになっていった。
さすがに怖がっていると思ったのかみんなが優しく声をかけてくれる。
「ご、ごめんな、催促したみたいで」
「俺たちは秘密は守るし、坊主のことはここにいるやつ以外には話さねえから安心しな!」
「そうだぞスレイス! 気にすることはない!」
優しいやつらだ。
僕が魔方陣や呪文を使って魔法を使っていないにも関わらずそのままでいてくれる。
『裏切り者!』
脳裏でよみがえった声。
僕が少し変わっただけで反応が変わってしまった彼女……。
彼女は救えないだろうか……?
この世界にいても僕は僕でいられる。
彼女を裏切ってしまった最低の僕が、僕でいられる。
なんとうれしいことか……。
彼女のことを救いたかった。
彼女のために僕は変わろうとした。
でも、
『聞いてくれ美紗!』
その言葉は……届かなかった。
ここならば届くだろうか?
僕の……望みは叶うだろうか?
僕には望みが何か自分でも把握できない。
それでも最大限の努力はする。
「――え?」
ティアが僕を抱きしめて泣いていた。
それに周りの人がものすごく驚いている。
「き、こえたの、あなたの、声、ものすごく悲しくて、ずっと泣いている……」
やめろ……
「お願い、雨に濡れないで……」
やめてくれ……
「あなたは、ここに――いるから」
その言葉に感情が爆発した。
ちくしょう……! なんでだよ! 俺が何したっていうんだよ! 彼女のこと大事にした! 愛していた! 彼女が幸せになるように努力した! 何が悪かったんだ……っ! なぁ、美紗……! 答えてくれよ……俺は……どうしたら……
どうしたらいい?
そんなこと……聞くのか?
己で……何の……成果もあげられず……。
僕はその場に崩れ落ちた。
今すぐ何もかもを壊したかった。
壊して、壊して、壊して……
気持ちの整理なんてつくはずがなかった。
ここならまだやり直せる、そう、心のどこかで思っていたんだ。
結局僕は彼女から逃れられないんだ。
一生心を彼女にとらわれたままなのだ。
そう思うと悔しくてたまらない。
あんな女、忘れてしまえ!
壊れてしまえ!
でも思い出す彼女の笑顔には陰りが一つもなくて……
僕は慟哭した。
途中、わけのわからない言葉を何度も吐いたと思う。
それでもティアさんは僕をずっと抱きしめていた。
ほかの兵士たちは何をするでもなく僕たちから背を向けて立っていた。
「お、ねがい。一人にならないで」
ああ、なぜ彼女は泣いてくれる?
最低な僕なんかのために泣いてくれる?
その涙が僕の肩を濡らしていた。
嗚咽も耳元で聞こえていた。
「ぼ、くは――」
僕の意識が零れ落ちた。