人生初めての交渉です
色々な方に見てもらえているようでうれしいです。
では今回も楽しんでください!
僕が目をあけると、心配そうに女の子が僕を見ていた。
どうなっているのだろう?
たしか……最後に『進化の種』が発動して……進化した?
「言葉わかる?」
女の子……幼いが綺麗な薄い青の髪でどこか気品のようなものを感じる。その女の子が僕を見て聞いた。僕はうなずく。
敵か味方かはわからないからむやみに言葉を発することはできない。
「私はティア。君の名前は?」
「スレイス」
「君はなんでここにいたかわかる?」
「生きるため」
その答えは予想していなかったのかティアさんは困惑していたようだった。
◇
「生きるため」
スレイス君は極めて簡潔に言った。
どうやら私たちを信用していないみたいだ。
それにしてもなんて冷たい目をしているのかしら……。
光なんてない荒んだ目だ……。
こんな目はしらない……正直に言うと怖い。
でも今は状況把握に移るしかない。
◇
僕はどうしようか迷う。倒れていた僕を見つけたのだから助けてくれたのかな?
自分が嫌になる……こんな女の子に心配させて、それでもまだ信じられないなんて……。
「スレイス君。君の家は?」
「ない」
「えっと……両親は?」
「いるけどいない」
「……えと、詳しく教えてもらえない?」
「…………」
僕は無言で首を横に振った。
沈黙が下りる。ここで気づいたが周りに西洋鎧を着ている兵士たちがいた。
ふむ……この女の子は貴族のお嬢様かな。
僕がここにいても邪魔だろう。
最低限のことだけ聞こう。あとは自力でやる。
「ティア様」
その言葉に少し嫌そうな顔するが、構わない。
「ここ以外の村や街があれば方向だけ教えてもらえないでしょうか?」
「それを……聞いてどうするの?」
「向かいます」
絶句したようだった。周りの兵たちも騒がしい。
「……ここから歩いても三日はかかるわ。それも大人の足で」
「構いません」
「あなたが構わなくとも私たちが構うの!」
いきなりティア様は怒号を発した。
僕はそれでもティア様を見て。
「気になさらないでください」
「気にするわよ!」
う~ん平行線だなぁ……。
◇
一体この子は何を言っているの?
子供の身で大人が三日かかる道程を行くというの?
正気の沙汰とは思えない……。
だがこの子はいたって真面目だ。
私にはどうしてそこまでして私たちを拒むのかわからない……。
「姫様」
マルクが小声で私を呼んだ。
私は一度マルクの下に行った。
「どうしたの?」
「あの子はおそらく何も信じることができなくなっているのでしょう……あの子の目はそれを示しています。われら近衛兵でさえもあの子の目から目が離せません。まるで深淵をのぞいたかのように昏く、何もかもを吸い込むような闇を彷彿とさせる黒き眼……ここは信頼関係を築くのが先です」
そういわれても……どうすればいいのかわからない。
「大丈夫です。姫さまの思う通りに接してあげてください」
◇
僕は眼を閉じて『集中』で精神を鎮める。
脳裏にステータスを表示させた。
ステータス
名前:スレイス
レベル:5
種族:人間【下等平凡種】
年齢:3
HP 150
MP 150
STR 150
VIT 150
DEX 150
AGI 150
INT 150
ユニークスキル:アイテムボックス、ステータス表示、進化の種、ステータス偽装、魔力操作、心眼
スキル:『ダッシュLv.6』『呼吸法Lv.18』『痛覚耐性Lv.10』『身体能力上昇Lv.3』『怪力Lv.1』『熱耐性Lv.1』『打撃耐性Lv.10』『集中Lv.10』『並列思考Lv.5』『ステップLv.7』『見切りLv.5』『格闘技・柔Lv.1』『攻撃予測Lv.3』『受け流しLv.1』『狂化耐性Lv.1』『水魔法Lv2』『原子魔法Lv.2』
限定スキル:子供の体
称号:『異世界からの転生者』『御使いの恩人』『悪魔と呼ばれし子』『耐える者』
やはりあれは夢ではなかったのか……『進化の種』により【下等劣等種】から【下等平凡種】になった……そしてその恩恵は各ステータスがHPと同じ数値になる……もしくは一番高い数値に引き上げられる……かな。
ほかはとくに変わっていない。それと『ステータス偽装』により名前、年齢、種族に耐性系スキル以外は見えないようにしている。
このステータスは強い部類に入るのか……それとも弱いのかはわからないが今はあげられるだけ上げるべきだろう。
『呼吸法』と『集中』を使い無心になっていく。
【スキル:『精神統一』を取得しました】
『精神統一』:無心になり、雑念がなくなる。
うん……『集中』のスキルに似ているし二つを使えば相乗効果になるのだろうか……?
「スレイス君」
「はい」
今度は体格がいい190は超えているであろう身長のナイスガイが僕の名を呼んだ。短髪だけど綺麗な赤い髪をしているなぁ。
たぶんこの兵たちの中で一番偉いのではないだろうか?
僕のような見ず知らずの子供にまで優しい声をかけるものだから裏があるのではないかと疑ってしまう。
警戒していたのがばれたのか男の人は少し悲しそうな顔をした。
「そう警戒しないでほしい。私たちは君を害することはない。できるなら君の望みを最大限考慮したうえでこちらにも譲歩させてほしい」
「……わかりました。内容をお願いします」
「やはり君はただの子供じゃないね? こんな話は子供に理解できるはずがないんだが……」
「内容をお願いします」
しまった……今の自分は3歳の子供だった。
「ふむ……それで、だ。スレイス君は街に行きたい。そしておそらく冒険者にでもなるつもりなのだろうね。だから私たちにその方角を教えてほしい……そうだね?」
おっちゃんすごいなぁ。まったくもってその通りだよ。
村に冒険者ギルドなんてないし、街に行かなければないからなぁ……。
「ええ」
「では、私たちの要求だけど……」