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愛した者、憎んだ相手、です

戦闘&シリアスとなっております!

精進あるのみ!

【ユニークスキル:『魔力操作』を取得しました】



 眼がちかちかする……。

 どうやら体に魔力が上手くなじんでいないようだ。



「くそっ!」



 クレイルにまた殴られる。

 くそ……ちかちかするから目は閉じる。

 すると音や風の動き、匂いがよくわかる。



 殴られる、殴られる、殴られる、殴られる。

 痛みがだんだん小さくなってくる。

 たぶん『痛覚耐性』や『打撃耐性』のレベルが上がっているのだろう。

 『並列思考』で音と風を別々に感じる。

 『集中』でそれらを強くする。

  さらに『魔力操作』で耳と皮膚に集中させ、さらに効果を高める。

 魔力量が少ないから耳はともかく皮膚に関しては全面にしか無理だ。

 それでも殴られる、いや疲れたのか蹴りも混ぜてきた。

 足の筋力は腕よりも大きいと聞いたことがあるからとても痛い。

 膝は震え、たぶん身体には内部出血がたくさんあるだろう。普通の3歳児ならば骨が折れているかもしれない。相手は4つも上なのだ。筋力にも差が出てくる。

 僕の身体から力が抜けた。

 だがそれは負けを認めるのではない。強張っていた筋肉を弛緩させるためだ。余計な力を入れない。必要な筋肉だけを動かす。

 わかる。

 クレイルの右足が僕の左大腿部に向かっていることを。

 わかる。

 クレイルの目線がどこに向いてるのかを。

 わかる。

 クレイルの筋肉の動きが。



【ユニークスキル:『心眼』を取得しました】

【スキル:『攻撃予測』を取得しました】



 『ステップ』で避ける。

 最小限の動きで紙一重で避ける……が、どうしても当たる軌道にこぶしがきた。

 とっさにそのこぶしに手を当て、受け流し、



【スキル:『受け流し』を取得しました】



 その勢いのままに背負い投げ!



【スキル:『格闘技』→『格闘技・柔』に進化しました】



 ドスン!

 七歳児とはいえ、超肥満体の豚だ。自分の重さに受け身も取れずに痛みで絶叫し泣いた。

 そして出て行った。



 眼を開ける。

 どうやら魔力は体になじんだらしい。目はよく見えるし魔力によって倍率もあげられる。



 パッパラ~

 喧嘩の最中にも何度も鳴っていたのをおぼろげながら記憶している。

 ステータスを見てみた。


ステータス

 名前:スレイス

 レベル:5

 種族:人間

 年齢:3

 HP 150

 MP 85 

 STR 85

 VIT 90

 DEX 70

 AGI 65

 INT 60

 ユニークスキル:アイテムボックス、ステータス表示、進化の種、ステータス偽装、魔力操作、心眼

 スキル:『ダッシュLv.6』『呼吸法Lv.13』『痛覚耐性Lv.10』『身体能力上昇Lv.3』『怪力Lv.1』『熱耐性Lv.1』『打撃耐性Lv.10』『集中Lv.9』『並列思考Lv.5』『ステップLv.7』『見切りLv.5』『格闘技・柔Lv.1』『攻撃予測Lv.3』『受け流しLv.1』

 限定スキル:子供の体

 称号:異世界からの転生者、御使いの恩人



 おおう……ど、どうしよう? 手加減なしに豚を投げたから痛いだろうなぁ……。

 とにかくこれからのこともわかっているので部屋にあるものすべてアイテムボックスに入れておく。

 壊れかけのベッドに、大きさの違う木剣、そして本だけだ。部屋の中は閑散としてしまった。



 目覚めてから一日と経っていないが記憶にある母との思い出の場所だ。

 母の顔は思い出せない。霞がかかったみたいに見えない。

 でも大好きだった。

 母が、母だけが僕の味方だった。

 透けるような美しい声、愛おしそうな視線、優しく僕の頭をなでる手……。

 どれも愛しい記憶だった。



「すみません母上。許してください」



 父と正妻がやってきた。



「出ていきなさい! この悪魔め!」



 父は黙ったままだ。だが視線はごみを見るかのように冷たい。

 僕はそれを見てわかった。わかってしまった。

 もう、父ではないことに。



「だからあの淫獣はもっと早く始末するべきだと言ったのよ! 子供を身ごもった時点で殺せばよかったのよ! うちの大事なクレイルちゃんを傷つけて何様のつもりかしら! お前の母は哀れだったわ! 毒ともわからずにお菓子を食ったのだからね! 一緒にお茶をしましょう? って誘ったら嬉しそうについてきたわ! 私に取り入ろうとしたのでしょうけれど残念だったわね? そんなの最初からわかっていたのよ! だから制裁よ! とぉっても苦しい毒を用意してやったわよぉ? 指の先からだんだん腐っていってとっても痛かったでしょうねぇ。臭かったけど最後まで見てやったのだから感謝しなさい。あぁ、すっごく面白かったわ、苦しい顔してずっとあなたの名前を呼んでいたわぁ。はん! 獣の子供は獣ねぇ? 理性も何もありゃしない!」


 は?

 殺された?

 誰が?

 誰に?

 どんな方法で?



 それを認識したとき僕は心にどす黒い感情が芽を出した。

 本物の殺意だった。

 目の前のクズどもはそんなことにも気づいていない。

 殺したかった。爪を剥がし、肉をすりつぶし、生きたまま内臓を取り出し、皮を剥ぎ、塩をぬりたくってもまだ足りない。でも自制した、いや、できた。

 こいつらには地獄を味あわせる。

 今は状況が悪い。流石に大人二人を相手にして勝てると思わないし絶対に護衛がどこかにいるはずだ。

 僕の握りしめたこぶしから、噛んだ唇から血が流れた。

 痛みでどす黒い感情を抑える。



 僕のぎらついた殺意の眼を見せればおびえる姿は見られるだろう。だろうがおびえたこいつらがどんな行動に出るかわからない。

 だからひたすら耐える。



【スキル:『狂化耐性』を取得しました】

【称号:『悪魔と呼ばれし子』を取得しました】

【称号:『耐える者』を取得しました】



「おい悪魔」



 ああ、心がちぎれそうだ。憎しみで破裂しそうだ。

 俺は、何だ?

 なぜ、母がそのような目にあわねばならぬ?

 殺したい、ころしたい、コロシタイ。

 憎しみに耐えるのがやっとだ。返事をしたら呪いの言葉を吐きそうだ。



「世間体があるのでな、これでどっかにいけ。今をもってお前と縁を切る」



 そう言ってクズの豚ははした金を僕に投げた。

 僕は足を引きずりながら歩き出した。

 憎しみにとらわれながら……。

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