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一件落着?

 遅くなって申し訳ありません!

 スランプってどれだけ長いのだろう……そんなことを思う毎日です。

【ERROR!! ERROR!! 強制進化します!】

【『中等平凡種』→『中等非凡種』】

【『心人マインディアー』→『半心半天ハーフエンジェルエレメンタリティ』】



 バサッと俺の背中から真っ黒な天使の羽が出てくる。

 『堕天の翼(フォールウィング)

 復讐の道に入った俺はさしずめ堕天使……か。

 それでもいいさ。俺の力なんだから。

 力は暴力だ。



両翼の羽撃(アタック・フェザー)



 俺の肩甲骨あたりから生えた両翼から勢いよくナイフ並みに鋭さを持った羽が敵軍に殺到した。

 俺の意思を反映して翼は動く。

 翼を硬化と鋭さを持たせて相手を薙いだ。

 相手が盾を構えようが関係なく周りにある家ごと一刀両断にした。



「ば、化け物!」

「そうだよ。俺は化け物さ」



 俺は敵を軒並みに殺し敵将の前に降り立った。

 コルパニオン侯爵は恐怖で腰が砕けているようだ。



「やぁ、コルパニオン侯爵殿。貴殿は今殺さないよ」



 俺は翼を消す。

 魔法と思わせることができるかだがたぶん問題はないだろう。

 こんなこと人にできるわけがないとか思っていそうだしな。

 〝今〟殺さないと言ったのにのんきに安心しているようだ。



「そ、そうだ。お前がこちらにつけば勝てるではないか!! こちらにつけば何でもくれてやる! だから私に味方しろ」



「くは、くははは、くははははははははははははははははははは!!!」



 おかしいなぁ、おかしいなぁ?

 俺の願いをかなえるだと?

 俺のほしいものを与えるだと?

 どこまで上から目線なんだ? オマエ。



「ふざけんな」

「は?」

「ふざけんなっていってんだよ」


 

 そう、俺の世界を彩っているのは復讐の二文字。

 灰色でどちらにも属さなくて、辛くて、苦しくて、寂しくて、悲しくて、それでも貫くって決めたんだ。



「俺の、俺の願いはお前に叶えられるほど安いもんじゃねえんだよ!!」



 バゴンッ!!



 俺の右手が相手の左頬を打ち抜き、空気が振動した。

 コルパニオン侯爵はそのまま家の壁にたたきつけられた。



「そこで俺を敵に回したことを後悔してろ」



 反乱が終わり、連動しようとしていた帝国兵たちをけん制したりと結構忙しかったがそんな騒動も一月もすれば終わり、今、俺は書類仕事に追われている。

 侯爵に陞爵されて領地も増えたために書類がいくらやっても終わらない。

 残りのポイントを使って『速読』『速記』『理解力上昇』などなどを取って対応していたがそれでも終わらないのは……?

 まずこの国には学がない。

 そこで陛下にあることを申してみた。



 それで理由などを全部話してみたら『やってみるがいい』と言われたが、まずは何に手を付けるべきかがわからない。

 そこで宰相殿に相談してみたら、



「学校……ですか」



「はい。まずは平民向けに学び舎を作ります。それが上手くいったら貴族専用の学び舎を大体的に、学ぶところであり、出会いの場であり、全体の学の向上にもつながるという目的で作ります。そこで魔法についても教えれば連携などもしやすくなり戦力の向上にもなります。またそれとは別に軍隊に入れるために鍛えることを目的とした士官学校などでもいいですね。そちらは武官、文官ともに平民やら貴族やらを分け隔てなく入れることになりますが……」



「そうですね……それをナナシ侯爵の領地で試験的に作ってみてはどうでしょう? それが上手くいってからでも遅くないのでは?」



「そうですね。今回のことで帝国は大きく消耗したはずですから早々に戦争を仕掛けることはできないでしょうね。今回で失った人材だけでも結構な年数が必要ですし……一応聞いておきますがほかの国の情勢はどうでしょう?」



「大丈夫ですよ。今のところサリエス皇国に仕掛けてくるような輩はおりません。あなたの存在が大きいのでしょう」



 そう、今回の戦争で俺のことがいい意味でも悪い意味でも有名になってしまった。

 まぁ、平和なのはいいことなんだけど……俺の目的は復讐だが遅々として進まない。

 むしろ手がかりが少ない。

 スレイスト家はこれでも貴族で手を出すのは今のところはばかられる。

 もやもやしたどす黒い感情を俺は今も忘れていない。

 


「どうした? ナナシ侯爵」

 


 いきなり笑みを浮かべた俺を怪訝に思って宰相が話しかけてきた。



「いえいえ、なんでもないですよ。それではそのように進めますね」



 俺は笑みを手で押さえ、なんとか黒い感情が出るのを防いでいる。

 


「ナナシ君!」



「ミル!?」



 ミルが走ってきて、俺の胸に飛び込んできた。



「ナナシ君、陞爵おめでとう!」



 ミルは少し恥ずかしげに頬を染めながらまぶしいほどの笑顔で言った。



「あ、ああ、ありがとう」



 俺も少し恥ずかしい……。



「これで……結婚……できるね」



「あ、ああ、そうだね。だが俺たちはまだ9歳だしそんなに急ぐ必要はないと――」



「私じゃ……いや?」



 ぐぅっ!

 涙目の上目使いはやめてくれ!



「そんなことはない。ただ急ぐことはないと言いたいだけだよ」



「じゃあ約束守ってね」



 約束……ああ、一度領地に戻る前に遊ぶと約束したな。



「ああ、今からか?」



「うん!!」


 

 それから王都で食べ歩きなどをしていて、ミルと談笑したり、お互いに真っ赤になりながらあ~んをしたりして周りから生暖かい視線にさらされながら夕暮れまで楽しんだ。

 後日、サボったつけとして書類の束に挑み続ける9歳児がいたとか……



 久方ぶりにハウンメナスに帰る。



「「「おかえりなさい」」」

「ああ、ただいま」



 ネスア、アエリア、セリルの迎えに俺は顔をほころばせて答えた。

 そしてセバスに学校を作ることを伝えたが少し渋る



「学校を作るのはいいのですが……大事な働き手を領民は手放すでしょうか? それに学校と言ってもナナシ様の領地は広大ですから一つでは少ないですし何かメリットを提示しませんと領民は動きませんよ?」



「ああ、学校に入学する人に関しては税を四割に落とすと言えばいいし、学校に入った後に関しての職の斡旋を主とすればなんとかなると思う……というよりも問題は……先生がいないことだが」



「はい、そちらに関しては私どもにお任せしていただければ――」



「ナナシ、それは私たちでもできないだろうか?」



 いきなりアエリアが話に参入してきた。



「アエリアたちが?」



「ああ、私たちはここに来てから何にもしていないからな。何かナナシの役に立ちたいんだ」



「そうだよね、ボクたちにも何か手伝わせてほしいけどナナシ君はほとんど一人でもできるから私たち手持無沙汰だし、アエリアも言った通りナナシ君の役に立ちたいの。それにボクたちだって文字の読み書きはできるし、魔術や武芸も教えられるよ」



「……ぅむ」



 ネスアも可愛らしく両手で小さくガッツポーズをしてやる気ありますといった感じだ。



「そりゃ、俺としても楽だけど……いいの?」



「ああ、その代り……婚約者とやらのこと、聞かせてもらおうか?」



 っ!?



「あらら? ナナシ君は話を逸らせたと思ったのかしらぁ?」



「……折檻……だね」



「ま、待て、話をしようじゃないか! これにはわけが――」



「「「問答無用!!」」」



 それから折檻という名のいちゃいちゃが始まり、セバスは砂糖を吐きだしたとか……。

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