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戦争

 こ、これが限界です。こんな発想しかありませんでした……すみません。

 これが戦略といってもいいのかどうかわかりません。というよりぜったい違う! こんなの戦略じゃない! と思う方……私もそうです。

 すっかり慣れてしまった軍馬に乗り、さらにオーダーメイドで作った黒い甲冑と黒い双剣を背中に装備した姿で俺たちは行軍を開始した。まず偵察部隊を使い戦場がどこが有利かを検討した。

 帝国はまっすぐに皇国を狙って進軍しているらしい。

 ここで言っておくとこの世界は地球で言うユーラシア大陸のような形になっていてロシアあたりが帝国、左下半分が皇国になっており右下半分に王国となっている。

 帝国は皇国と王国と戦争をしており皇国と王国はともに不可侵条約を結んでいる。

 不可侵であって共同戦線とはいかない。

 そこは古い頭の固い貴族どもが両方に存在しておりどうにもならなかったのだ。



「…………」



 頭を振って斥候からの情報を手に入れた。

 敵は約1万5千。20倍の差ってなんだよ……。

 まあいい。俺は見通しの悪い林道で決着をつけることにした。



 見通しのいい場所となるとどうしても数の有利が働いてしまう。

 それよりも狭い道で相手の人数を絞りながら戦うほうがいい。



 一月、俺はすべての準備を終わらせた後、少し仮眠を取り、夜が来るのを待った。



「ナナシ」



「どうした? アエリア。怖くなったか?」



 俺はふざけて冗談を言ってみたが顔色は悪い。



「そう……だな。怖いんだろうな。私はナナシが死ぬ可能性があるのが怖い。いくらナナシに自信があるとはいえ相手は20倍以上の戦力差を持つんだ……怖くないわけがない。兵たちの中には私たちと仲良くなったものもいる。みんな笑顔だった。ナナシ様ならやってくれると、ナナシ様なら安心だと。そういっているんだ。私もそう思っている、思っているけどもしものことを考えると……な。ナナシは怖くないのか?」



「怖いさ」



「ならなんで――」



「怖いからこそ進むんだ。目の前にある恐怖に屈したりしない。たぶん俺は勇気と蛮勇の意味を理解できない人間だ。どれだけの苦難が目の前に迫っていようと俺は乗り越えなくてはいけない。目的のためにはそれさえ踏みつぶさねばならない。屍は超えていくものだからな。だからもし、俺の屍があるのなら君たちはそれを乗り越えなくてはいけない。絶対に踏ませないけど」



 一拍おいて、



「俺はね、アエリア。今も怖くて怖くて仕方ない。目的を忘れてしまいそうで、われを忘れてしまいそうでね」



 アエリアはそこでナナシの目に暗い感情がともるのを見た。

 でもアエリアにはどうすることもできない。

 彼の感情をどうにかできるとは思えない。



「俺は守りたかった。でも、守れなかった。だからこそ、今度こそは守りたいお前たちも領民も、な。だからこそ俺は屍を築こう、その先にある未来のために」



 アエリアにとってナナシは希望だ。

 すべてをなげうってでも手に入れたい希望のしるしだ。

 それが平和への礎になることを信じて彼女も進む意思をその胸にともした。



「だからアエリア。僕とともについてきてくれ。その先にある未来を一緒に見よう」



 出した彼の手を握り、アエリアは微笑んだ。

 




 夜になった。

 みんなは配置についた。あとはタイミングだけだ。



 敵軍が見えたところで俺は手を上げた。

 そして光魔法を宿した魔石を敵真ん前に投げると同時に叫んだ。



「ってぇえええええええええええ!!」



 その瞬間目を焼かんばかりの光が発せられた。

 敵軍が光にさらされている間に弓を放つ。

 光魔法の遮光を付与エンチャントされたメガネ……俗に言うサングラスをしてるため私たちに光は届かない。

 敵軍は逃げ惑う……ことはできなかった。

 逃げた瞬間に道の周りの土は俺の土魔法によって何十メートルと底が深い沼と化していた。

 帝国軍は部分だけとはいえ鎧が重いためにどんどん沈んでいく。パニックになった敵軍はだんだんと沈んでいった。仲間に助けてもらおうとしたみたいだがその仲間も道づれにしていく。

 次に主力部隊の魔法使いの出番。

 俺が提案した【圧縮】という概念を使った高圧水流刃ウォーターカッターや風を【圧縮】した電雷風圧刃プラズマカッターなどで敵部隊の前方から撃ちまくる。

 俺は主力部隊には魔法を教えていた。この世界では貴族以外でも魔法は使えるのだから主力部隊は魔法と槍を主に使い魔法との連携も使わせた。たとえば今は使っていないが竜巻トルネード火炎弾ファイアボールを合成させて火炎竜巻ファイアストームとか。



 そして最後の仕掛けを施す。

 工兵部隊に作らせて、地面に隠しておいた鎖を片方を力自慢のやつらが持ち、もう片方を岩にくくりつけたものを使う。

 

  弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓弓

  ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

  沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼

 鎖――――――――鎖鎖―――――――――鎖

 |              |               |

 |↓ 敵敵敵敵敵敵 ↓ | ↓ 敵敵敵敵敵敵↓  |

 |沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼沼|

 兵              岩               兵

 こんな感じで鎖を複数にわけながら沼地に追いやった。

 もちろんあいても抵抗らしい抵抗はしたが無駄だった。沼地から逃げようとしたものから分解リザールヴを使い、殺していった。

 弓兵は木の上から撃つが流石に1万5千の大軍の長さにはかなわない、が敵の後続の間には開始直後に俺が大きな壁を土魔法で作っておいた。土魔法さまさまだな。これで五千名以上を殺した。そして一度撤退。



 こうして俺たちは700対1万5千は俺たちの大勝利で終わった。




 相手に五千以上の死者を出して。



 即座に林道の終わりに作っていた砦に帰り、けが人の手当てをする。それには捕虜も含まれている。

 けが人は相手の流れ矢に当たった程度の軽傷で済んでいたために死者はいなかった。

 早速王都に早馬を出して結果報告にいかせる。

 くっくっく貴族どもが驚く姿が目に浮かぶねぇ。

 捕虜の数をざっと見てみると30程度しかいなかった。

 捕虜を砦に作っておいた牢屋に入れておく。牢屋と言っても快適な牢屋だ。

 ベッドもあるし三食お風呂付だ。

 魔封じの手枷と足枷を人数分用意してあるので魔法は使えないし不便だが扱いはそれなりだ。

 拷問する気もないしな。



 さて次のことを考えなければいけない。

 相手は撤退するだろうか……?

 たぶん一時撤退だろうが悲観論で備え、楽観論で行動せよって何かの本で書いてあったな。

 この場合の悲観論として必要な備えは相手が反撃にすぐに出るとして対処すること。

 その場合は砦の周りの罠を使いながらの戦いになる。そうなると俺も出なければならんな……。

 まぁはっきり言って俺がいればほとんど討ち取れるんだがそれは甘えだ。



「よし、聞け! まだ戦は終わっていない!」



 その俺の叱咤で浮ついていた彼らはすぐにまじめな顔になった。



「相手を殲滅させる勢いで行くのだ! 終わったら宴だ! それまで誰も死ぬことは許さん!!」



『Sir.Yes、Sir!!』



 よし!



「では帝国兵殲滅作戦を開始する!!」

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