出陣
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この3ヵ月で大分状況が変わったといってもいいだろう。
街並みは汚物など考えられないくらいに綺麗になり、定期的に掃除もしている。
あとは紙産業を始めたり、蚕を養殖したり、農業を徐々にノーフォーク農法に変えたりしていた。
紙産業は大体のことは知っていた。
まず植物など、この場合木を使っていたがそれを細かく砕き、山で採れた石灰石を加水して熟成させたものに入れて煮る。そしてそれを薄く掬い取れば完成。
言うは易しだがこれには本当に苦労した。
植物によって紙の出来が違うし石灰石が足りなくなって冒険者や商人から買い入れたり、試行錯誤が多かった……。
次に蚕だが、これは薬草に大量についているのを確認した。
絹というのはあまり出回っていないようだ。
うれしい誤算だったのが絹幼虫という存在に出会えたことだ。
彼奴らは絹を大量に吐くため急いで俺は冒険者たちに依頼して生け捕りにしてもらうように依頼した。
ふっふっふ……これで結構な稼ぎを得た。
最後にノーフォーク農法だが、これは大麦→クローバー→小麦→カブと四年周期で行う四輪作法だ。
これにより休耕地がなくなり全体的に見て収入は増える。
さらに税率を一度6割に落とす。目標としては3割だ。
これによりさらに街は活気づいてきた。
むろん問題がなかったわけではない。
お金が足りなくなって魔物を狩りまくったりしたので冒険者たちの需要が少ないとか不満の声が聞こえたのだ。その冒険者たちには石灰石などの依頼で我慢してもらった。
次に問題になったのは孤児たちだった。
この領地に孤児院などなかったのだ。
だから孤児たちは犯罪などに手を染める者もいたくらいだ。
俺は街中の瓦礫が集まった広場にて大がかりな土魔法の錬成を行った。
孤児院を膨大な魔力を使い作ったのだ。
これも苦労した。家のつくりなど知らないからはじめはほとんど張りぼて状態だったのだ。
支柱を増やしたりしてやっと孤児院として運営できるようになったのだ。
ベッドや椅子、机は職人さんたちに俺が材料を提供して作ってもらった。
孤児院の院長を募り一人一人を面接して決めた。
孤児たちの就職先は俺が斡旋することになったがまぁそれでいいだろう。
就職先としては領主(俺)の私兵、冒険者、農民、清掃業者、紙を作る業者に蚕の絹を取る業者。これらがおもな就職先となる。
「ふう……」
開拓は当初予定していた範囲に少し手を加え、孤児院よりも小さいが人が住めるようにした家を結構な数作った。
これは流民がいたためである。
流民はみなこの町の状況を聞き及んでいたらしい。ほかの貴族どもはやはり搾取し続けているらしいから……。早いところなんとかしなければ……。
俺の私兵の数もそれなりに多くなった700人程度集まった。
中には女や子供もいたが本人の要望と得意なことを聞き慎重に慎重を重ねて配属先を決めた。
俺の前世の知識を生かして主力部隊、弓兵部隊、工兵部隊、偵察部隊、諜報部隊、輜重兵部隊、厨房部隊などが主な部隊となり200:100:100:50:50:100:100の割合で人がいる。
主力部隊には槍を与え、連携の大切さを教え、陣形についても整頓された部隊となった。
弓兵部隊はまず山なりに打つことを覚えさせた。弓は大きければ大きいほどに射程距離があるが今すぐにそんなことをさせるには筋力が足りないのだ。まずは全員の弓を傾ける角度を覚えさせ、それを何段階かに分けてどのくらい飛ぶのかを自分たちでわかってもらう。そのあとで命中率を高めるのだ。今すぐ戦争は起こるかわからないが最近帝国との仲が芳しくないからな……。そうなると真っ先に先鋒を任されるのが俺だと思う。わずか八歳で貴族になったのだからあまり面白くないと思っている奴らが大半のはずだ。備えあれば憂いなし。
工兵部隊にはひたすら穴を掘らせたり、組み立ての柵を作らせる効率を上げたりとした。
偵察部隊と諜報部隊は情報の大切さを教えた。
輜重兵……おもに補給部隊ではあるが馬車の操作やクロスボウの扱いを教えたりした。クロスボウについては工兵部隊のドワーフに前世での形や使い方などを教えたりして完成させた。
厨房部隊はその名の通り兵士に料理をする部隊だ。
兵士は士気などがとても大事な要素なのだ。料理にも気を配らなければ士気が下がってしまうからな。
ああ、あとネスアやセリル、アエリアとは時々デートをしている。
一応三人には告白したからな!
まぁ、快諾してもらって婚約指輪をプレゼントして俺が15になったら結婚すると言っておいた。
成人は15からだしな……。
ギルド長のアルマとはそれなりに関係が深くなった。
友達以上親友未満といった感じだ。
酒は飲めないが一緒にのみに行ったり、俺がAランクになったことによる祝いにも彼を呼んだ。
ここ三か月であったことはそれくらい。
それで今は王から召喚状が来たので今向かっている最中だ。
「召喚した内容はなんだろうね」
アエリアが今回の召喚に疑問を持っているようだ。
「あれじゃないかな? ボクたちに戦争の先鋒をせよ……とか」
セリルは結構頭がいい。今のこの国の現状を分かっているのだ。
はっきり言って帝国との数の差は大きい。
10倍はあるとみてもいい。
戦争になったら俺の秘密兵器を出さねばならないだろう。
「……戦争……」
というよりも人間は戦争をしていてもいいのだろうか……?
勇者がいるってことは魔王がいるんだよね?
誰が魔王を倒すの?
そこらへんをアエリアに聞いてみると、
「ああ、魔王なんてとっくの昔に滅んでいるよ」
「え?」
「昔魔王を勇者が倒したから100年周期に勇者を呼びだして魔王を倒しに行くふりをするんだ。つまりパレードみたいなものだ。そのあとの勇者はこの世界で過ごすか元の世界に帰るかの二択を決めるんだ。ほとんどこの世界で過ごす勇者が多いみたいだけど。まぁ、そんなところさ」
ふむ……そういうことか……。
疑問を回収したところで俺たちは王城にたどり着いた。
すぐに会議の間に呼びだされた。
「足労かけてすまんなナナシ騎士爵殿。これで全員そろったな。今回火急の要件でおぬしたちを呼んだ」
「…………」
「帝国が宣戦布告をしてきた」
『っ!』
ざわざわと周りがうるさくなる。
パンパンと王は手を鳴らし、
「軍議を始める」
帝国との戦いが始まった。
やはり俺は先鋒を任されることとなった。
貴族どもは手柄を立てたいが私兵を失いたくないと思っているのだろう……まったく子供だからと言って見下しやがって。
まぁいい。数の力が知恵に負けるところを見せてやる。
俺は軍議が終わり次第、ハウンメナス領へと帰ってきた。
そして目の前には俺の私兵700名。
「敬礼!」
俺が叫ぶと同時に彼らは一斉に敬礼した。
「お前たちは知っているかもしれないが今から戦争が起こる!」
沈黙。顔色を悪くした者もいたが一様にまじめに俺を見ている。
「俺たちは先鋒を任されはしたがお前らを死なせるつもりは毛頭ない!! 私の声を聞き、各々がこれまでやってきた努力を生かせばどうということはないのだ! 恐怖はあるだろう。だが! それを乗り越えればお前たちは立派な兵士となる! 我に続け! 我とともにあれ!」
『Sir.Yes、Sir!』
「さぁ! 出陣だ!」




