俺の心の権化
うぅ……遅れてごめんなさい。
スランプがひどくて……。
続けるつもりはありますので見捨てないで~(泣)
俺は血だらけになっていた。
魂の渇きは、魂まだ渇望する。
同じ魂を、同族の魂を喰らいたいと思う。
【魂の祝福が発動しました】
【魂の最適化開始……概念破壊確認……進化しますか? Yes/No】
この渇きがイヤサレルならどうでもいい。
荒ぶる感情で、朦朧とした思考で、震える指でYesを押した。
瞬間
激痛
「がァああアアアアアあああアアああああアあアア!!」
魂の叫び。
文字通り魂の変革により、もたらされる激痛に魂が悲鳴を上げた。
それは魂の変質という神の所業にも等しいことを成し遂げた。
「こイ……来いコイコいこイィイイイ!! 魔神能力『魔霊王貴』ゥウウウウ!!」
スッと俺の魂の権化が戻ってきた。
俺が俺である証、奪い、喰らい、糧とする。
【進化……成功。【勇者】→【半心勇者】】
【種族進化……【(下等超越種)】→【中等劣等種】【仙人】→【半心半人】】
【魔神能力『魔霊王貴』を×××から取り戻しました】
【#&%'!&#$】→【盛者必衰栄華をこの手に《イア・ガ・バレアルア》】
【発動します……神能力『神竜緋王』を×××から取り戻しました】
【究極能力『牙狼神殺特別能力『疾風怒濤』究極技『昇堕天地』特別技『アイテムボックス』『ステータス表示』『進化の芽』『ステータス偽装』『魔力操作』『心眼』『悪魔召喚』稀練技『心源呼吸Lv.97』『分散集中Lv.62』『痛覚最大限無効』『酸無効』『狂化無効』『魔線』練技『身体能力上昇Lv.8』『剣術Lv.33』『跳躍Lv.1』『走駆Lv.5』『双剣術Lv.29』『複合魔法・水風』『怪力Lv.4』『暗視Lv.4』『解呪』『足さばきLv.7』『水流Lv.31』『見切りLv.12』『原子魔法Lv.8』『後の先Lv.5』『水魔法Lv5』『攻撃予測Lv.8』『風魔法Lv.2』『受け流しLv.3』『打撃耐性Lv.10』『思考加速Lv.10』『熱耐性Lv.1』『格闘技・柔Lv.4』『鑑定Lv.1』 限定スキル『子供の体』オリジナルスキル『索敵』『円堅』『円閃壱之型【独楽】』 称号『異世界からの転生者』『加護耐性大神の加護』『御使いの恩人』『狂神の加護』『悪魔と呼ばれし子』『耐性現人神』『耐える者』『殲滅者』『神狼の友』『覚醒の施す者』『悪戯神への討伐資格を持つ者』『マルクの弟子』『痛神の加護』『酸神の加護』を×××から取り戻しました】
「は、はははははは」
笑った。魂の渇きの大本たる『暴食』の大罪、それだけでなく今までの技術の結晶。
それが戻ってきた。
これで……これでまたイヤサレル。
「……ナナシ……大丈夫?」
ネスアが帰ってきた俺に対し心配そうに問いかける。
「ありがとう……大丈夫だよ」
不思議な気分だ。
魂の渇きはまだある。むしろ増加しているといってもいいだろう。
だが、【魔霊王貴】がある限り、魂の純化はされ続ける。魂さえ奪えば、まだイヤサレル。
「ネスア」
俺は魔物の血をすべてふき取った後、言った。
「君は、ネスアは僕から離れない?」
本心で話そう。
そう思ったから、そう願ったから。
「僕は、大切なんて作りたくない……でも、でもね僕はあまりにも弱いんだ」
だから、言おう。
僕の全部をかけて、
「だから、僕の大切になってくれる?」
その瞬間僕は抱きしめられていた。
ネスアに抱きしめられていた。
僕はそれを受け入れるしかできない。
願ったのは僕、すべてをほしいと思ったのは僕だから。
ネスアは僕の唇に唇をふれさせた。
僕はそっと目をつむった。
◇
「僕は、大切なんて作りたくない……でも、でもね僕はあまりにも弱いんだ」
うん、あなたがとっても弱くて脆いのを私たちは知っていたよ。
まだ短い付き合いだけど、あなたがおびえていたこと、知ってるよ?
ずっとずっと何かを渇望していたこと、知っているよ?
「だから、僕の大切になってくれる?」
私はその瞬間、彼を抱きしめていた。
八歳とは思えない思考をするこの弱くて脆くて世界におびえている彼を私は支えるのだ。
やっとさらしてくれた彼の本心を私はうれしくて、とてもうれしくて涙さえこぼしていた。
そして私は彼の唇を奪った。
愛おしくて、胸が苦しくて、でも満たされる。
彼がほしい。
きっと支えて見せるから。
◇
馬車が俺の治める領地、ハウンメナスについた。
さて、今やるべきことはなんなのか……治める人のいなかった領主の館は綺麗に掃除されていて今すぐにでも使えるようだった。
まずは情報だ。
ここの領地に住む人たちはどのような暮らしをしているのか、地質はどうだとか、おもな収入は何かとかいろいろ知る必要がある。
領地に足を向けてみる。
「なんだここは……」
人々に活気がない。
嫌な臭いもしている。これでは疫病が流行ってしまう……。
路地裏は暗く、犯罪の苗床となっているようだ。
貴族ってのはどこまで腐ってやがるんだ?
民あっての国なのだから民から搾取するようなことをしてどうする……ッ!
「変えてやる。俺が全部変えてやる」
人間は俺の復讐の対象だ。
だけど関係ない人間まで憎むことはできない。
小心者かもしれない。それでも俺は……
「まずはお金だ。陛下から頂いたお金を使ってこの町を再興させる」
俺は執務室に行き、まずは清掃業者の雇用から始めた。
「清掃業者……ですか?」
この屋敷の管理をしていた執事のセバスさんに公共事業に取り掛かることを告げて案を出した。
「ああ。まずこの町には活気がない。それは汚い上に職がないことが関係している。汚いと気分が悪くなるし疫病の原因にもなる。職を与え、街をきれいにして、さらに市場に金がまわりやすくする。そうすれば少しは活気が戻るだろう。あとは、産業だ。この町には特色と言えるほどの産業がない。そこで農業、養殖をまず作る。産業はどうしても時間がかかるものばかりだからな……金があればすぐにでもとりかかるのだがそうも言ってられない。まずは俺が未開拓地を農場に変える。そのために魔物も俺が殺しておく。一週間あれば2割くらいは開拓できるだろうから問題はない」
「大ありでございます。いいですか? まず領主が農場を作るなどと外聞が悪くあります。冒険者たちに魔物を、農民に農場を任せればいいではありませんか」
「まず金がないんだ。そのための金が少ない。前の領主が税率を7割もしていたくせに横領やらでほとんど残っていない。税率を下げるためにも俺がまず行う。外聞など知ったことか、それで領民が幸せになるならばいくらでも外聞をよくするさ。セバスも知っているだろうが俺は元平民だ。平民の気持ちはよくわかっている。だからこそ農場は俺の土魔法を使い、農場を作る。それからだ。もちろん開拓は俺がすべてやるつもりはない。6割。6割りは俺がやる。それからは魔物討伐は冒険者に任せ、農業開拓は土魔法使いを使う。いなければ……俺が出る」
セバスは何かを考えていたが神妙にうなずくと、
「申し訳ありません旦那様」
いきなり頭を下げた。
「何だいきなり?」
「私は旦那様を試していました。前回の主がひどいお方だったので……」
「……それで? 俺はセバスから見て合格か?」
「ええ。文句なしの合格です。領民を想う心に偽りなきお方でした。幼い故に理解されているかも不安だったのですが予想以上でした。特にこの清掃業者など誰も思いつきません」
「そうか……。もう遅い、そろそろ俺は寝るとする。明日から清掃業者を募ってくれ。賃金は銅貨五枚だ。あと、メイドとアエリア、セリル、ネスアたちに明日屋敷で炊き出しの準備をするからと言っておいてくれ。炊き出しを報酬に追加する。朝と夜の二回だ」
「かしこまりました」
明日から、明日からだ。
俺は一歩踏み出すんだ。
すべてをその手につかむまでは歩み続ける。
どれだけ小さくてもいい。
どれだけ遅くてもいい。
一歩踏み出すだけで世界は変わる。
一歩踏み出すだけで景色は変わる。
おれは進むのをやめない。
過去を振り返ることをやめない。
俺の罪を意識し、贖罪する。
俺は復讐者だ。




