偽りの世界
遅れました……ごめんなさい。
宴も終わり、長かった一日が終わった。
一日にしては密度が濃すぎて結構疲れているようだ。
ステータスを確認してみると、
レベル:31
名前:ナナシ(仮)
種族:勇者【限界突破】
年齢:8
HP 429→531
MP 518→627
STR 62→95
VIT 60→91
DEX 74→102
AGI 79→111
INT 124→154
片手剣術Lv.3(92/100) 投擲Lv.4(31/150) 成長補正(勇者限定)
短剣術Lv.4(24/150) 気配察知 ステータス偽装
大剣術Lv.3(51/100) 弱眼 【正常化】
双剣術Lv.4(0/100) 隠行 天歩
槍術Lv.4(3/100) 高速演算 捕食者
斧術Lv.3(35/100) 水魔法RANK.2 絶倫
棒術Lv.4(3/150) 土魔法RANK.3
弓術L.4(24/150) 風魔法RANK.3
打術Lv.3(60/100) 突進
闘術Lv.4(11/100) 盗む《スティール》
獲得P:43→348
技量やらなにやら結構強くなっていたようだ。
というか……最後【絶倫】って……?
俺は今、馬車の中で現実逃避を続けています。
実は……アエリア、セリル、ネスアに続いて俺をお風呂で清めていただいたメイド三人も俺の家で働くようになって……馬車の中で俺争奪戦が今現在行われており、俺は何をするでもなくただ座っています。
領地とともに屋敷も与えられて……
領地となったのはサリエスの未開拓地が半分を占めているハウンメナスという領地だ。
そこにいた貴族は諸事情により処分……されたので俺がその担当っと……皇王陛下殿……嫌がらせですか?
それはともかく一夜明けてからの出発となり、城にいたことは思い出さないようにしよう、うんそうしよう。
さて……いろいろあって俺はネスアの膝に抱かれている。
何があったというのだ……。
それは馬車が休憩に入るまで続き、今湖畔に来ている。
馬に水を与えている傍ら俺は湖を視界におさめた。
綺麗だと思う。
でも、それがなぜか偽りに思えて仕方ない。
俺の身に起こった【正常化】という魂の現象。
それのおかげだともわかっている。
偽りを愛し、偽りに生きる。
それが俺に課せられ、嵌められた罠であったと今更ながらに悲嘆にくれる。
あの時、偽りの神に俺は祝福され、魂による枷をつけられた。
頭に響くのだ。今、このときもささやいているのだ。
アイシテイル、ワタシハアナタヲアイシテイル。
ワタシダケガアナタヲ
響く、声が。
奏でる、悲鳴が。
囁く、悪魔が。
何度身をゆだねてしまえばいいかと思ったか、何度俺が俺を殺そうと思ったか。
この悲しみの果てには何があるのか、
この俺の運命に何があって俺がこうしているのか、
何をすればイヤサレル?
あァ、簡単ダ。俺ガ殺せばいいんダ。
何を?
すべてヲ、偽リに満ち、偽りヲ愛しタこの世界ヲ。
「……ナナシ?」
俺はいきなりかけられた声にハッとなり顔をゆがめた。
また、まただ。
意識の簒奪が始まろうとしている。
何かを殺さねばやっていられなくなる。
「ネスア。すまないけど少しだけ心を落ち着けてくるね」
「……うん」
何かがわかっているかのようにネスアはうなずいた。
その少し悲しそうな表情が俺には辛かった。
すべて吐き出してしまいたい。
でも、俺は、俺には無理だ。
独りはもう、いやなんだ。
俺は少し離れ、走り出した。
魔物を見つける。
殺した。
見つける。
殺す。
心は癒えてくれない。
足りないと促す。
まだ足りないと魂を枯渇させる。
殺しても、殺しても殺しても殺しても……
「なん、で?」
俺は、
「なんで俺は俺なんだ」
この世界が偽りだと気づき、【正常化】があるために自分は正常だと言える今の存在が許せなかった。
偽りだった。
だからこそ愛さねばならない。
愛しさゆえに殺さねばならない。
魂の渇きは愛しき魂の醜さにより救われる。
だからこそ、
「ごめんね」
偽善だ。偽りでありたいがための偽善だ。
「愛しているんだ」
これは愛だと、それこそが本当の正常の真実であると俺は気づいているから。
だから、
「殺されて」
醜く、嫌われ、恨まれ、妬まれ、偽ることが大好きなこの世界を俺はアイシテイル。
血を血で拭い、すべてを渇望し、
少年は偽ることを愛した。
「ありがとう」
マダタリナイ




