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誕生

 お待たせしてごめんなさい!

 あと、この話で少しおかしくなりました……そこもごめんなさい……。

 これを読んでくださっている読者の皆様方を裏切ったかもしれませんが、なにとぞご容赦を!

 ここは……どこだ……?

 僕は問う。

 そして答えは返ってこなかった。



 何が……あった……?



 僕の今の状態を確かめる。

 満身創痍でもうどれだけ血を流したかわからない。

 記憶は容赦なくよみがえる。



 僕はフェリと一緒に転移しようとした。

 でも、転移した先が……下級邪神どもの罠のある場所だった。

 そいつらは万が一フェリが脱出しようとした場合にも備えていた。

 そしてそこには人間もいた。

 僕は何もできなかった。

 いきなり力を吸い取る鎖で縛られ、フェリと離され、



「フェ、リ……?」



 そこで、僕は、フェリが、何を、どうした?

 僕の心が、脳が、それを思い出すなと警告をなしている。

 でもここで思い出すのをやめるわけにはいかない。



 どうした?

 何があった?

 そのあと……僕は……?



「ぅあ……?」



 ア、レ?



「あ、ぁあ、あああ」



 思い出した。

 思い出してしまった。

 フェリが……壊れていたことを、

 フェリが、殺されたことを、

 目の前で、何もかもを、壊されたことを、



「あァ、あああアああアアアアああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」



【ERROR! ERROR! 心による魂の修理開始……失敗】



 コワレタ。

 ナニモカモ。

 コンナセカイ。

 コワレテシマエ。



「俺から奪うか!! どこまで奪えば、どこまで俺を壊せば、どうすれば、どうしたら!?」



 言葉が憎しみに染まる。

 かつてないほどに己の魂を真っ黒に染め上げていく。

 人間としての精神が壊れた今、何を受け皿にするか。

 ここは下級神の世界とはいえ神の世界の一部。

 ゆえに、



【進化の芽『発動』】



 ドクンッ!

 真っ黒な魂。

 穢れで染まり切ったその魂はただただ単純に純粋と言えるほどの魂を確立。

 魂が『魔霊王貴バアル・ゼブル』によりさらに穢れの純化。

 そこに今までのスレイスはいない。

 人間を憎み、神を憎み、己さえ憎んだ。



【称号:『御使いの恩人』が発動しました。転移されます】



 その眼を魂の色に染め上げたスレイスは目をあけた。

 そこにはソファがあった。

 どうやら応接間と同じ様式で、テーブルにはお菓子の入ったかごもある。



「……ここは」



 スレイスの魂は一度壊された。

 壊れた魂は修復不可能であり、その影響は心にも、身体にも現れる。

 結果、彼の声はおかしくなっていた。

 聞いたものを不快にするわけではない。

 ただ、認識できない。

 ただの人間に声すら聞こえなくするほど魂は純化され、穢れた。



『ここは狭間ですよ』



 目の前にはスーツを着た青年がソファに座っていた。

 なんの特徴もない……いや、ないと思わせている存在。

 明らかに神の1人だろう。



『僕は神の1柱、ゼルド。世界神と呼ばれているね』



「その神が、何用だ」



『今、君はとても危ない状況にいる。君の魂は憎しみに純化され、人間の身ではあるが神に至る道である『進化の種』を持つ者だ。しかしその『進化の種』は芽吹いてはいるがまだ芽でしかなくその状態で神に至れば……何があるか予想がつかない。そして、今の君はまぎれもなく善神でも邪神でもなくなる』



「どういう、ことだ」



『君は人間で言う2重人格だよ。つまり圧倒的な善の心とその逆である圧倒的な邪の心。突き詰めればここに問題がある。『神の如きルシファー』に並ぶ存在となる……が、それすらも予想はできても確定ではない。まだ君は人間である。そして神でもある。だが神人ではない。それが問題なんだよ』



「どう、でも、いい」



 僕の魂はもう餓えていない。

 もう、餓死してしまっていた。

 魂のよりどころであったフェリを失った今、魂は死んでいる。



『明確に言えば『神』とは種族を表すものではない。神は個であり全ではない。永遠はなく、必ず終わりはある。そして……『神』には何もない』



「…………」 



『神は生まれるものではない。生という概念すらなく何にも支配されぬ存在だ。体などない。力などない。心などない。感情などない。はっきり言って『無』の妄想の類と思ってくれればいい。そして、神は生ある者に神にないものを与えた。ないものを、すべて』



「…………」



『今、君の目の前にいる『何か』は僕であり、僕ではない。だから僕は君をここに招いた。僕が人間の定めた『世界神』である以上人間たちの世界を作り、人間たちの世界を見守らねばならない』



「つまりゼルドは、人間の定めた『神』であり、『無』の妄想である『神』ではない、と」



『そうだね。だから人間のような感情や、体、そして心もあるつもりだよ。そして正直君のことは見ていて痛々しかった。だから神様らしく仕事をするよ』



「な、にが! 何が!? 俺が! 俺が……僕が……」



 ゼルドは手を叩いた。

 それだけでスレイスの精神は正常に戻った。

 ただ……魂は戻らない。



「…………」



『まず、君のレベル、BP、魂の残量、ステータスや称号にスキルにアビリティをポイントに変える』



「…………」



『これだけで50000Pになる。だけど神狼フェンリルの魂のつながりだけはどうしようもない。まぁそれはいいとして、この50000Pで君にあるシステムを埋め込む。名前を付けるとしたら……『転生システム』かな?』



「僕、は、死んだ?」



『……そうだよ。それとレフェリアは再生できない。もう、魂がないんだ。そして今神界は大忙しでね、正直に言うと君に構っている暇がない。だからこの『転生システム』は君の活用次第で毒にも薬にもなる。最後に君に出会えてよかった。加護はあげられないけど『転生システム』は活用してくれ』



 そういって神は消えた。



「……『転生システム』起動」



 善P:1000 邪P:1000 



 そう、表示された。

 そして僕は、つぶやく。



「……記憶の、受け継ぎ」

 


 >記憶の引き継ぎ +5000P



「……プラス?」



 ああ、忌々しい記憶だから?

 何も、なしえなかった、何も、救えなかった記憶だから?

 ふざけるな!!

 俺は……絶対に……復讐してやる!!

 そのための憎しみは忘れてはならない!!

 そのための努力を忘れてはならない!!

 だから、



「取得」



 善P:1000 邪P:1000 P:5000



「……才能一覧」



 >武の才能Lv.1 -100P

 >知の才能Lv.1 -100P

 >魔の才能Lv.1 -100P



「取得」



 >武の才能Lv.2 -400P

 >知の才能Lv.2 -400P

 >魔の才能Lv.2 -400P



「取得」



 >武の才能Lv.3 -500P

 >知の才能Lv.3 -500P

 >魔の才能Lv.3 -500P



「取得」



 ……レベルは5で止まったこれが最高らしい。

 これで6000Pはなくなった。



「スキル一覧」



 >該当する一覧はありません



 ない……か。

 ということはアイテムボックスとかはないのかな。

 あれはスキルだったからどちにしろなくなったみたいだし。



「……おすすめ」



 >魂の祝福 500P

 >#&%'!&#$" 500P



「取得」



 >転生します



 俺の復讐の物語。



 壊れた人間の歪んだ物語でありながら、人間でありつづけた、ただただ愚直で純粋な物語へと変貌す。

 生を知り、死を知り、善を知り、邪を知り、そして魂を知り、心を知り、穢れを知った。

 穢れを嫌い、己は穢れに身を落とす。

 身の形は如何あれ、

 成長す。

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