食べられちゃいました
遅くなって申し訳ありません!
気が付くと僕はある場所にいた。
そこの地は白く地平線まで続いており、境界線から先……つまり空に当たる部分は赤黒くまるで血だまりみたいになっていた。
何もかもが反対の世界のようだった。
その風景の中に少女が立っていた。
懐かしい黒色の髪に日本人の特徴をとらえた顔。
あの女性に似ているが中身が全然違う。
「貴女は……?」
僕は何らこの世界のことに触れずに問う。
あの女性に似ていても違うとわかっているため、あの女性との記憶を思い出さずに済んでいるが、なぜか魂は喜んでいる。
あの餓えた魂の渇きは今のところはない。
「よくぞ妾を救ってくれた」
「救った……?」
なんのことだろう? 身に覚えがない……。
「妾はあの迷宮にとらわれておった神族が末席、レフェリアと申す者じゃ」
「あ、ご丁寧にどうも。僕はスレイスと申します」
つい条件反射で答えてしまったが迷宮……あぁ……あの古竜の……でもとらわれていたって……?
「人間どもと下級神が悪巧みしおってな、妾を消去して序列を上げようと思っていたようなのじゃよ。迷宮にとらわれ、魂を搾取され続けてのう……。あと500年遅かったら流石に消滅しておったわ」
……スケールが大きすぎて言葉が返せない。
「妾を救ってくれたおぬしに本来ならば加護なり褒美なり授けるべきなのじゃが……魂が搾取され続けすぎて何にも残っておらんのじゃ。おぬしが望むならば妾の体でもいいのじゃが……」
「……いえ、必要ありません」
僕だって男だしその提案に魅力がないわけじゃない。
でも今そんなことをすれば堕落するのは分かり切っていた。
僕には目的がある。
そのためには力を手に入れなければならない。
相手は腐っても貴族なのだ。
それ相応の立場を手に入れ、私怨を果たすまで堕落にふけるわけにはいかないのだ。
「……ふむ。おぬしには何か目的があるようじゃのう……。あいわかった。おぬしにはわしのすべてを授けよう」
「? しかし……何も残っていないのでは?」
「ああ、妾はこのまま神界に行っても消去されるだけじゃしの、それならば妾を救ってくれたおぬしに妾の存在を作り変え、おぬしの望む形となろう。武器でもよい、防具でもよい。生物にはなれんが成長する存在にはなれよう。ここはひとつ妾を助けると思って受け取ってはくれんかのう?」
なぜかはわからないがこのレフェリア様が神様だということはわかるし嘘を言っていないこともわかる。
僕の魂もそれを感じている。
でも……
「……あの」
「気に入らないかの?」
レフェリア様は不安そうに僕を見る。
「いえ、その申し出はありがたいのですが……その、レフェリア様が助かる道はないのですか?」
レフェリア様はキョトンとした後、
「ハハハハハ。心配されたことなどなかったから新鮮じゃのう。しかしいいのか?」
「なにがですか?」
「妾が助かる道はあるにはある。しかしそれはおぬしを巻き込むことになるし、それ相応の苦労もするであろう。それでもおぬしは妾を助けたいと申すか?」
「はい」
僕は何の躊躇もなく答えた。
僕はこんな誰かを救うような人間じゃない。
でも、レフェリア様があの女性と似ているだけあってどうしても助けたいと思ってしまうのだ。それに日本人のような人……神様だけど、そんな神様に会えたから。
僕は地球のことは考えないようにしてきた。
それはあの女性を思い出すからであり、どうしても郷愁の念に駆られるからでもある。
だから、初めて会った日本人のような容姿のレフェリア様を助けたいと思ったのだ。
「ありがとうスレイス。妾はおぬしに敬意の念を抱くぞ。では契約の儀とまいろうか」
レフェリア様は僕の前に立って、
「我、天上の神レフェリアが求む。スレイスよ、我が魂のよりどころとなりて我を求めよ」
「はい」
「契約はここになった。誓いの操を差し出せ」
「はい……はい?」
レフェリア様を見れば……真っ赤な顔して僕に近づいていらっしゃる。
「妾も恥ずかしいのじゃ。すぐに済ませるから横になるのじゃ」
「え……ちょ、待っ――」
「問答無用じゃ!」
食べられました……性的な意味で。
3歳児になにしてるのさ。体はもう大人だけど……前世も大人だけど……あれ? これってふつうじゃね?
いやいや、だめだろ。
それに1回でいいだろそれは。
なんで前世でもしたことがない体位とか……気持ちよかったんだけど。
ちなみに途中から理性が切れて僕の方から攻めました。
さらに言うと乱れるレフェリア様にとても興奮しました。
「れ、レフェリア様、大丈夫ですか?」
「て、手加減せんか、馬鹿者。……その……気持ちよかったか?」
腰を痛めて僕にすがりついているレフェリア様。
真っ赤な顔で上目使いで言うのやめてください!
また理性が切れそうです!
「は、はい。すいません、思った以上に気持ちがよく、レフェリア様が可愛らしかったので……」
その言葉にレフェリア様がさらに真っ赤になって、
「フェリでいいぞ。……あと、いつでもしてやる」
ああ、もうだめ!
今度はフェリを食べちゃいました。もちろん性的な意味で。
フェリは息も絶え絶えになり動けなくなってしまった。
僕? 僕は何ともないよ? 僕の身体って高スペックなんだよね……。スキルに『性技』とかなくてよかった。あったらなんだか白い眼で見られそうだから。
でも少し疲れたな。
「えっと……一応フェリとの儀式は済んだんだよね?」
「待っ……て……まだ……動け……ない」
「ご、ごめんね」
ううん……息も絶え絶えになっているフェリもかわいいなぁ……。
するといつの間にかフェリは眠ってしまっていた。
さすがに疲れていたようだ。
僕はフェリを抱き寄せて一緒に寝た。
どれだけ時間が経ったかわからないが僕が目をあけると真っ赤な顔をしたフェリが僕の胸に頭をすりつけていた。
なにこのかわいい生き物!?
「フェ、フェリ?」
名前を呼ばれたフェリはビクンッと身体が反応し、恐る恐る顔を僕に向けた。
「ち、違うぞ? 妾は決してスレイスに匂いを付けてマーキングしていたとか、匂いを嗅いで興奮していたとかじゃないぞ?」
「そ、そうなんだ」
起きてそうそうに理性が切れそうである。
フェリといつまでもこうしていたい気分になるけど僕は進まなきゃならないから本題に入る。
「えっと、儀式は済んだんだよね?」
「う、うむ。それでは帰るとするかのう。あと悪いが妾の力が足りぬのでな、帰る場所はランダムになってしまうのじゃ。構わんかのう?」
「ああ、いいよ。……あのさ、フェリ」
「なんじゃ?」
「フェリはいいけど……僕の服どうしよう?」
3歳児であった服は着られなくなったし……その上、白く汚れてしまった……し、仕方ないじゃないか! ここにはティッシュなんて便利なものはないしアイテムボックスは使えないから水も出せないし……服しかなかったんだよ!
「う、うむ、そうじゃな」
フェリは僕の息子を見てまた赤くなってしまっていた。
反応しているけれど無視!
少し痛いけど、無視!
「で、では人気のない場所限定にして転移する。妾がいれば安心じゃからの」
「ありがとう、フェリ」
自惚れじゃなかったらフェリは僕のことを好きだろう。
こんなに赤い顔をして熱っぽく僕を見てくれるのだから。
うぅ、理性が……。
僕はそっと口づけだけして微笑んだ。
きっと僕の顔は真っ赤であるだろう。
降ってわいたような幸せだけど、母様のようなあたたかさを感じたんだ。
だからこの気持ちは偽物じゃない。
餓えた魂は戻りはしない。
それでもそれを潤すことはできる。
もとに戻ることは2度とないだろうけれど、人なんてそんなものである。
1を築けば10が崩れ
10が崩れれば100が生まれ
100が生まれれば1000が変わり
1000が変われば10000が築かれる
これこそが千変万化となりし極意。
――全ては己が御心のままに――
――我が意思は成功への努力となり――
――我が身体は高みへと至る――
――その心は何に至る? ――




