王都……?
よ、ようやくお話をかけました!
お待たせしてごめんなさい!
明日は何もない予定なのでなんとか2話くらい、できれば3話頑張ってみたいと思います!
僕たちが王都に近づくほどに道が整備されているのに気がついた。
僕は今、馬車で揺られている。
この一ヵ月で身体はそれなりに鍛え上げられた。
体力的には3㎞を6割の力で走破できるくらい。
『走駆Lv.5』は全力で50mを6秒台半ばくらいで走ることができる。6割だと7秒台後半くらい。
そりゃぁあれだけ走れば嫌でも上がるわな……。
朝起きて剣を使うのかと思ったら、まずは走り込みだった……。
ステータス上は問題ないとはいえ、子供の身だといろいろと不都合があり、その一因としてどれだけすれば身体が壊れるかわからないといった問題があった。
だとしたら基礎能力と剣術の基礎をまずは極めろ、とのことだった。
それだけでも一ヵ月では覚えきれなかった……。
「レイ? 何を考えているの?」
「おにいちゃん?」
ちなみにレイとは僕の愛称だ。
話しかけてきたのはティアと僕のことをおにいちゃんと呼ぶ幼女……もといルムことフルムーンの神狼。
ルムはなぜか人化できたのだ。
なぜかというと……ルムもこの一ヵ月、遊びと称しながら狩りを行ってきたのだ。
ゴブリンに角兎、それからたまに魔小猪などなど、ほかは小鳥などなどふつうの動物も……羨ましいなんて思っていないんだからね!
ルムの今のステータスは、
ステータス
名前:フルムーン
レベル:8 吸魂数:45
種族:神狼【神獣種】
年齢:1
究極能力『牙狼神殺』
特別能力『疾風怒濤』
となっている。魂の数が結構たまっているがどう使うのかは僕にもわからない。
譲渡はできるのだが僕とルナの間だけである。
おっと話がそれた。
そのレベルアップによって僕に見えないステータスが上がっているのだ。INT値だと思うがそれによってイメージをするとできたのだという。
つくづく規格外だと思ったのは僕の気のせいか?
「あ、ああ。なんでもないよ、ティア、ルム」
魔法については試す時間がなく、僕の魔法についての知識が浅いためか一度で大量の魔力を消費するのだ。むろんそんな大量に魔力を使っていれば魔力枯渇を起こす。魔力が枯渇すれば体のあらゆる機能が低下する。魔力で身体ができているというのが大げさじゃないくらいに信憑性のある体験をしたのだから……思い出させないでくれ。
王都の南門にある門を見上げる。
荘厳で堅実……そういった圧迫感にも似た、まるでラスボスを目の前にしているみたいだ。それはともかく大きい、門の中央にはレディナイト王国を表すレイピアが2本交差している絵が象られている。これを作った人はとてもすごい人なんだろうなぁ……とか思いながら僕は馬車にいるティアに声をかける。
「ティア。ついたぞ」
「や」
「や、って……ティア専用の王族の馬車があるんだから……」
僕はこうなっている原因がわかっている。
それは僕との別れがさみしいだとかじゃないのだ。
ただたんにルムと別れるのがいやなのだ。
現に今もルムに引っ付いて離れない。
「姫様、スレイスもルナも困っております。それに――」
レギサ姉さまはティアに何事か耳元でごにょごにょとした結果。
「じゃあ戻る!」
と満面の笑みでルナから離れたのだ。
怪しい……何かいやな予感がする……。
特に僕のことにかかわることだろう。
「レギサ姉さま。ティアに何を吹き込んだのですか?」
「ふふふ。スレイスが気にするようなことじゃないよ」
「そうですか~、じゃあ今夜は苦い食べ物用意いたしますね~」
レギサ姉さまの弱点その1。
苦いものが大の苦手!
レギサ姉さまは青ざめて、
「そ、それだけは勘弁してくれスレイス!」
「いくらレギサ姉さまでもそれは聞けませんねぇ~」
「よ、よし。じゃあ取引をしよう! 今度姫様と手をつなぐことを許してやるから、な?」
「ティアに失礼ですけれど興味ありませんね」
「じゃ、じゃあ私が一緒にお風呂に入ってあげよう!」
な!? そ、それは……!
「年頃の娘が男と一緒にお風呂に入ってはいけません!」
よ、よし! 理性が何とか勝った!
「だ、だっていつもスレイスが私の胸を見ていたから……」
ち、違う! そうだけど違う! 決していやらしい気持ちで見ていたとかそんなんじゃなくて……確認していただけなのだ! 僕は自分の息子が反応しないから不能なのではないかと……。
「わ、わかりました! 苦いものはやめますからそれ以上はやめて!」
マルクさんからの視線が凍てつくように鋭く、痛いのだ。
あ、やば!
マルクさんが腰の木剣に手をかけている。
「スレイス」
「は、はひ!」
怖いよ! まだ3歳の子供にどれだけ本気で怒っているんだ!
「覚悟!」
マルクさんは足運びの技『縮地』を行い、僕を逆袈裟に切り上げる。
当然僕はただでやられるつもりはないので木剣で円を描くように軌道をそらした。
もちろんマルクさんは途中で軌道を真横に変える。
このままでは顔に当たってしまうので頭をひねり避ける。
この円の動きは『格闘術・柔』の技を組み合わせたもので『円堅』と呼んでいる。
円の動きは相手の力を受け流し、受け流した力を応用して相手にダメージを与える。
頭をひねった勢いのまま、僕の木剣は受け流したまま僕のひねりによって僕の体を一周し、相手の腕を狙う。これが『円堅』からのつなぎ技『円閃・壱之型【独楽】』
だがなんと……悔しいことにマルクさんは同じく僕の型を模倣し同じ『円閃・壱之型【独楽】』を不完全ながら使い、僕の木剣ははじかれ、両手が上がりそうになるとともに木剣を離そうとしたけど判断が遅れ、胴に一太刀入れられた……。
僕はここ1ヵ月でそれなりに強くなったと自負してはいるが、マルクさんは全力の1割も力を出していない……強くなっていく度にマルクさんとの力量差がわかり、時々不安になってくるが、
「そう簡単に子供に超えられたら私の立つ瀬がない。スレイスはいずれ私すら超えるだろうから今は焦ることなく地盤だけを固めていけ。それができればスレイスはいまだ人のなしえぬ高みまで行けるだろう」
そう言ってくれる。
確かに僕はほかの人に比べたら成長が早く規格外と言ってもおかしくはない。
しかし、だ。僕は今【下等平凡種】だ。つまり成長補正があるとはいえ、普通の子供なみの成長の仕方だと思う。
できれば進化したいのだがはっきり言って魂の数が問題なのだ。
人の害になるような人間や、魔物を中心に狩る……だからあまりレベルはあげないほうがいいのだろう。
そして一つ実験したいことがある……
僕は痛む身体を引きずってマルクさんとルムと一緒に一般用の門から入った。
王侯貴族の方々は別の入口があり、転移魔方陣を使う。
むろん防犯などの対策はばっちりなので僕が転移魔方陣を使おうとしても使えない。
「ま、マルク近衛隊長!? ど、どうしてこんな一般用の門から……?」
「ああ、ビンスか。実はこの子たちを拾ってな……。私が後見人として引き取るためにこちらの門から入ろうと思っている。なにせ身分証がない。冒険者ギルドで発行してもらうために連れてきた。ああ、強さは私がじきじきに鍛えているから大丈夫だ」
「そう……ですか。一応規則なので名前をお願いします、あと一人当たり銅貨10枚です」
僕は名前を言った。
「ふるむーんだよ」
笑顔でルムは言う。うん、かわいい。
今更ながらに綺麗な銀色の長い髪に天使のように愛くるしい顔のつくり、そしてなによりその破壊力抜群の笑顔!
「……はい。では、ようこそ! 王都レディナイトへ!」
そう言って入った先には人、人、人。
人が通れるくらいには間はあるけれど初めての都で、この大人数なら驚かないほうがおかしい。
まぁいい。
よくはないけどいい。
「ルム……楽しみだね」
「うん!」
そして僕は、一歩踏み出した――
視界が暗転した。
――え?
『来てたもれ。妾の願いをかなえてたも』




