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友の食事を用意します

 みんな唖然としている。



 僕だってちょっとやりすぎではないかなぁ……とか思わないでもないんだけれど……。

 ちなみにフルムーンのステータスみたいなものはこんな風になっている。


ステータス

 名前:フルムーン

 レベル:1 吸魂数:3

 種族:神狼フェンリル【神獣種】

 年齢:1

 究極能力『牙狼神殺フェンリル

 特別能力『疾風怒濤しっぷうどとう


 となっている。ステータスは見えないけれど明らかにおかしいだろうと思うのは僕だけではないはずだ。神狼フェンリルって何? どう聞いても神を殺す牙をもつ神獣なんだけど? 常識的に考えようよ。そりゃファンタジーだしさ、神がいてもおかしくないよ? でもさ、僕が神を殺す可能性のある存在を作り出せるってどうなのさ!? 絶対に目立つ……ダメだ……僕は進化と言ってもさ、せいぜいが黒狼ブラックウルフになるんじゃないかなぁとか思っていたのに、なんだよ神狼フェンリルって!



 それにこれ……どう思うよ?

牙狼神殺フェンリル』爪と牙による攻撃は伝説の武器すら凌駕する。

疾風怒濤しっぷうどとう』STR、AGIに大きく補正。



 うん……色々と規格外です……。

 あと手に入れた称号は、


 『神狼の友』:神狼を召喚できる。

 『覚醒の施す者』:仲間に対し覚醒促進効果を及ぼす。

 『悪戯神ロキへの討伐資格を持つ者』:悪戯神ロキの眷属に対し各ステータス補正。


 何から言えばいいかわからない……。



「あるじっ」



「え?」



 誰かしゃべった?

 僕よりもつたない声で、



「あるじっ、あるじっ、あそんで!」



 はい、現実を認識します。どう考えても目の前のフルムーンです。



「えっと……フルム――」



「きゃぁあああああああ!!!??? かわいいっ! 格好いいっ! なにこのかわいい子!?」



 ティアさんはフルムーンの毛に顔を押しつけてモフモフしています……。



「ティアさん。フルムーンが困っているから少し離れてください」



 そこでやっとマルクさんとレギサ姉さまが我に返って僕に詰め寄った。



「す、スレイス。これは説明してもらわにゃならん」



「ど、どういうことだ……? なぜフォレストウルフが……?」



 僕は仕方ないと思いながら説明する。



「えっと……これは僕の特別技ユニークスキルの恩恵なんです……」



 それから『進化の種』や『進化の芽』などのことをぼかしてこれだけ言っておいた。

 ・魔物と信頼関係になると進化する。

 ・進化させるには魔力が必要であること。



「僕を信頼して進化したのですから僕たちに危害を与えることはありません」



「ふむ……まだ隠していることは多いだろうがひとまず納得しておいて……この子の種族名は?」



「……神狼フェンリルです」



「…………」



「…………」



 二人はあきれて沈黙してしまった。



「規格外すぎて何も言えん……」



「すみません」



 とりあえずフルムーンにご飯を用意するためにテントから出ようとして、



「……えっとレギサ姉さま、ついてきてもらってもよろしいでしょうか……?」



 レギサ姉さまは嬉しそうにうなずいた。

 森の中を歩いていく。

 森は鬱蒼と生い茂っており、月の光すら満足に届かない。こんなところで奇襲なんてかけられたら後手に回るだろうなぁ。暗くてよく見えないが目を細めて細部まで見られるように『魔力操作』により目に入る光の量を調節した。



練技スキル:『暗視』を取得しました】



 そこで僕はステータスを見ていなかったなと思い、『分散集中ディスレイション』を使いステータスを見ながら起動語トリガーを唱える。



索敵サーチ



 ステータス

 名前:スレイス

 レベル:6→8(BP:10→110)魂数:0→3→0

 種族:人間【下等平凡種】

 年齢:3

 HP 190→230

 MP 180→210

 STR 170→200

 VIT 170→190

 DEX 180→200

 AGI 170→195

 INT 180→200

 究極能力アルティメットアビリティ牙狼神殺フェンリル

 特別能力ユニークアビリティ疾風怒濤しっぷうどとう

 究極技アルティメットスキル:『昇堕天地プログラム

 特別技ユニークスキル:アイテムボックス、ステータス表示、進化の芽、ステータス偽装、魔力操作、心眼

 稀練技レアスキル:『心源呼吸エンブレスLv.8』『分散集中ディスレイションLv.10』

 練技スキル:『ダッシュLv.13』『痛覚耐性Lv.10』『身体能力上昇Lv.4』『怪力Lv.2』『熱耐性Lv.1』『打撃耐性Lv.10』『ステップLv.7』『見切りLv.6』『格闘技・柔Lv.4』『攻撃予測Lv.5』『受け流しLv.3』『狂化耐性Lv.1』『水魔法Lv2』『原子魔法Lv.2』『剣術Lv.5』『双剣術Lv.6』『思考加速Lv.1』『暗視Lv.1』

 限定スキル:子供の体

 独自技オリジナルスキル索敵サーチ

 称号:『異世界からの転生者』『御使いの恩人』『悪魔と呼ばれし子』『耐える者』『神狼の友』『覚醒の施す者』『悪戯神ロキへの討伐資格を持つ者』



 ああ、マルクさんが規格外なんて言葉吐いたのがよくわかるなぁ。

 まだほかの人のステータスを見たことはないけれど、たぶん3歳児にしては破格の強さだろう。



「レギサ姉さま。あちらに角兎ホーンラビットがいるみたいです。もう一匹が近くにいます。形状は猪でおそらく魔小猪スモールボアですね。どうしますか?」



「スレイス……もう私は驚かないけれどそんなに簡単に索敵をされると私の立つ瀬が――じゃなくて人前であまりしないようにな? それは本当に信頼できる人だけに教えるんだぞ」



「はい。わかりました」



「ではスレイス。私が角兎ホーンラビットを狩るから魔小猪スモールボアやほかに近づく存在がいたら声をかけてくれ」



「あの……魔小猪スモールボアがこちらに猛スピードで向かってきているんですが……」



「あ! そうだった……魔獣系は風上に立ってはいけないんだった……」



 レギサ姉さまがひきつった笑みを浮かべている。

 そうか魔獣系は風上に立ってはいけないのか……たぶん匂いのせいかな……?



「姉さま、あと三秒で来ます」



 僕は『双剣術』を使い、構える。

 左手の短木剣を逆手にして後ろ手に構え、右手の木剣は正眼の構えとする。

 腰を少し落とし、全身の力を弛緩させる。

 必要なのは命中インパクトの瞬間だけ。

 それ以外の力はいらない。速さに重きを置く。



 ドドドドドドドドッ!!!



 地響きが魔小猪スモールボアから聞こえる。

 


「スレイス! 避けることだけを考えろ! 魔小猪スモールボアは小回りがきかないから避けた後に攻撃するんだ!」



 魔小猪スモールボアは時速五十キロくらいの速さで突進してくる。

 狙いは……僕だ。

 『見切り』『攻撃予測』『心眼』を発動させ、『索敵サーチ』の密度を上げる。

 魔小猪スモールボアが半径5メートルに入った瞬間に『思考加速』を発動。

 ゆっくりと時間がゆっくりになる。

 僕は魔小猪スモールボアの直線状のぎりぎりまで横にずれた。

 低い体勢に構え『加速思考』により見えた魔小猪スモールボアの歩幅を演算する。

 一歩左足を踏み出して重心を前に、腰を入れて力を入れず、振るう。

 短木剣が魔小猪スモールボアの足をとらえる瞬間に力を入れた。



 ガギッ!



 っつぅ~!

 くそ、まだ力が足りない。

 命中インパクトした瞬間に力負けしてしまった……。

 刃挽きしていたらともかくただの木剣じゃ歯が立たない……。



練技スキル:『後の先』を取得しました】



 『後の先』後手からの反撃。

 一応カウンターは決まっていたみたいだ。

 魔小猪スモールボアは左前足から勢いよく転んだ。

 僕は『疾風怒濤しっぷうどとう』を発動して連撃に移る。

 左手はしびれているので、右手の木剣を頭に落とす……前にレギサ姉さまが持っていたロングソードで魔小猪スモールボアの首に突きを入れた。

 少しもがいていたがすぐに死んでしまった。

 今更のように思ったけれど生き物を殺すのに何も罪悪感がない……。ゴブリンは弱者をいたぶるクズを思い出して怒りと殺意で何も考えていなかったし、今回は人間っぽくないからって理由で……。

 そう、ここは命が軽く、弱肉強食の世界なのだから……。



「あいだっ!?」



 頭に衝撃が来たと思ったらレギサ姉さまがげんこつを落としたようだ。



「お前は何度言ったらわかるんだ! 危険な真似はするなと言っただろうが!」



「ご、ごめんなさい!」



 すっかり頭から抜け落ちてた……。



 魔小猪スモールボアの魂は光になって僕の中に吸収される。そしてその場にのこったのは毛皮と肉、そして逆さに生えていた牙だった。

 どうやら魂の光は僕にしか見えないらしい。

 それと魔小猪スモールボアの魂はゴブリン五体分になるみたいだ。



「はぁ……。スレイスは冒険者になるんだしなぁ……それだったら父様に武術を習ってみてはどうだ?」



「いいのですか!?」



 生きるための技術を磨くためなら努力は惜しまない。



「あ、ああ。だが父様の指導は易しくないぞ?」



 脅しをかけたつもりなのだろうが甘い!



「そうでなくては困ります! できるだけ強くなって、世界を回るんです!」



 その時の僕は夢見る子供のようだったとレギサ姉さまは苦笑していた。

 明日から楽しみだ。

 あれだけこの世界に絶望を抱いていたのに、今は希望にありふれている。

 あまりにうまくいきすぎて不安になってくる。

 でも、それでも、その不安ですらうれしく思えてしまう。

 やはり、うれしい。

 この世界では僕でいられるから。

 


「さてと、肉は手に入ったから戻ろうか」



「はい、レギサ姉さま」

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