転生です
来ていただきありがとうございます。拙作ではございますが楽しんでいただけたらうれしいです。処女作なのでご注意ください。
あぁ、私は……どうしたらいいのだろう?
目の前には『転生の間』と書かれた看板があるけれど……なんだかすごくボロい……そしてご老人が青い顔をして受付をしているのだ。とても胡散臭い。
今にも倒れそうな……いや倒れた。
私はこれでも善人のつもりである。たとえ胡散臭くても目の前の人を放っておけはしないのだ。
偽善者と言われたことが何度もあった。
私はそれでも目で見える範囲の人々を助け続けたのだ。だから、だから……
『なんで?』
可愛らしい笑顔で、でもその目は今まで見てきた中でとても冷たくて、
「やめろ……」
『あなたには関係ない』
関係なくない! お願いだ! 聞いてくれ!
でも彼女の顔から表情は消えて……たった一言……
『さようなら』
それからの私は周りから見れば滑稽に見えただろうな……彼女がいたはずの心の穴を埋めるように自分にとっての『善行』とやらを続けたのだから……
ある日友人が聞いた。
『お前さ、なんでそんなに頑張るの? そりゃお前のしていることはいいことだろうさ。でもさ、お前は何のために生きているの? 笑顔を見るため? 恩を売るためか? それってさ、なんか打算的じゃね? 自分を偽って生きているってかさ……『人のため』って人はいうけれどさ、それで助かった分だけ誰かが傷ついているし、全部助けるなんてできるはずがねえんだ。だからさ……無責任なことはしないほうがいいぜ』
私はそれでも続けた。彼の言うとおりさ。私は無責任な人間なんだ……笑顔を見たいわけでも恩を売りたいためでもないけれど……なんとかしなきゃって思うんだ……だから私は無責任だと言われようとも、目の前の老人を助けます!
「おじいさん! 大丈夫ですか!?」
私はカウンターを飛び越え、駆け寄った。
「おじいさん! 聞こえますか!?」
「はっ! 寝ておった」
私は安堵した。でも油断はできない頭を打ち付けた可能性もあるのだから。
「おじいさん、痛いところはありませんか? えっと……」
「ああ、大丈夫じゃよ。すまぬな。最近いやに転生者が多くてな……『ちーと』やら『特典』やらをもらえないとわかると暴れよる……わしは長いことここにおるが最近は特に忙しくてのう……眠られん時が続いておったのじゃ」
「そうでしたか。えっと……お手数かけて悪いのですが私はどうすればいいのでしょう?」
おじいさんには悪いのだが寝るのはもう少し待っていただけるだろうか……?
「ああ、おぬしには転生してもらおうと思うのじゃが……何か聞きたいことはあるかの?」
うん……いろいろあるけれどおじいさんのクマがすごいから必要なことだけ聞こう。
「では……記憶はどうなるのでしょう?」
「持ち越せるぞ。じゃがその世界が不利益になるような知恵やら記憶やらは消される。嫌な記憶などはこちらで消すことができるがどうする?」
おじいさんが目を細めた。圧迫感がすごい。
「……いえ、いいです」
「なぜか聞いてもいいかのう?」
確かに魅力的だ。でも、
「人は失敗して成長します。だから嫌な記憶だって成長の証なんです。私は失敗しても学ばないようですけれど……でも生かせるなら次の人生で役立てたいですから」
「ほっほっほ、わかったわい。若いのに感心じゃのう。じゃあほかに質問はないかのう?」
「ありません」
おじいさんの正体とかここはどこなのかとかいろいろ興味はあるけれどお手を煩わせるわけにはいかない。
「ではポイントの精算をしようかのう」
「?」
「ポイントとはおぬしがどれだけ善行やら悪行やらしてきたかで決まり、そのポイントで特典を決めるのじゃよ。まぁ、ポイントで買える最高のものを一つだけじゃがのう。それと疑問に思うのはわかるわい。こうした方がほかの転生者の不満が少ないのじゃよ……」
そうおじいさんは疲れた顔で言う。苦労しているんだなぁ。
「じゃあポイントを……はぁ!?」
「ど、どうしました?」
「おぬし……いったい何をしたのじゃ……?」
え……? そんなに悪かったのだろうか……やっぱり私の善行で傷ついた人が多かったのだろうか……
「…………」
私は何も言えずにいる。今でも耳にこびりついているのだ。
『裏切り者!』
『話しかけんな!』
『偽善者がっ!』
「……まぁよい。一応聞いておくがどういう特典がよかったのかのう?」
「……えっと、普通に暮らせるだけの能力を……」
「む?」
「すみません高望みしすぎましたごめんなさい私はごみですいえ石ですミジンコです……」
「いや、のう?」
「ごめんなさいすみません全部私が悪いんですわたしなんて死ねばいいんですいえ魂すら消去すればいいんです」
私はこの時、情緒不安定だったようです……。
「聞いておらんの……まぁ、よい」
私の前に何やらウィンドウが出てきました。
ステータス
名前:
種族:人間
年齢:0
HP 50
MP 30
STR 10
VIT 10
DEX 10
AGI 10
INT 10
ユニークスキル:アイテムボックス、ステータス表示、進化の種
スキル:なし
「こんなものかのう……あとは転生してからのお楽しみというやつじゃな」
「あ、ありがとうございました。自分のためにここまでしてもらって……」
「よいよい。こちらこそ感謝したい。残った時間を睡眠に使えるのでな。では達者でな」
私の意識は暗転しました。
あ! 名前、聞き忘れました……。
おじいさん:「ふむ……ポイントが高かったのはわしのせいだったり……そのせいで称号がついておるのう……。これはばれたらダメじゃからステータス偽装のスキルを渡しておくかのう」
なんだかおじいさん助けようとした善行でポイントがとても追加されたようです。おじいさんはこれでも神の御使いと同じなのでポイントがたくさん……。