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探求部の冒険者な日常  作者: シェイド
第一章 探求部ができるまで
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004 主席狙いのアーシェ

「・・・精錬術師リファイニスト?」


エルフの少女は息を整えながら俺に向かって問いかけてくる。


改めて容姿を確認してみると、まずしなやかに肩甲骨辺りまで伸びた金髪ブロンド。エメラルド、という例えが一番しっくりくる瞳。エルフ特有の横に尖った耳。


そして服装は魔導士よりも魔女に近い。太腿とか見えてるし、ローブというより緑色のマントを羽織っている。


そして、手には杖。それも只の木製ではなく、俺が東の樹海で見てきたような、魔力を秘めた樹を使っているようだ。


身長は俺より拳一つ低いくらい、か?ちなみに俺は152Cmな。チビとか言うな。12歳だぜ?これでも。


俺は、召喚獣特有の、霧散して消えてゆく屍骸デスベアーを尻目に答えた。


「あぁ。それが俺の職業クラスだ」

「聞いた事ないかも・・・」


彼女は杖を見る限り、魔法使い系の職業クラスだろうか?


俺の言ったことが飲み込めなかったのか、しばし考えるそぶりを見せていた彼女は、俺のほうを向いて言った。


「あ、あのさ、助けてくれてありがとう。私はアーシェ・クラルヴァインよ。」


頬を掻きながら視線を逸らしてそういう彼女。どうやら照れているらしい。


「俺はユーヤ・ミナモト。よろしく」


彼女にそう言って握手を求めると、顔を背けたまま応じてくれた。


さて、本題に移るか。


「なぁ、おかしいと思わないか?」


「・・・私も思ってた」


ふと、俺のほうを向くアーシェ。


おかしいというのは、こんな森に召喚獣が出たことだ。


召喚獣が出た以上、この近くに召喚士系の職業クラスが居ることになる。


「でも、私の結界の中には居ないみたい・・・」


「結界!?」


結界というのは、どんなものであろうと上級クラスでないと使えないはずだが・・・?


「アーシェ、キミ、職業は?」

「? 私の職業クラスはソーサラー。結界くらいならどうってこと無いわ」


彼女は肩にかかる髪を払いながらそう言う。


ソーサラー。それは通常魔法に関してはスペシャリストだ。攻撃魔法も回復魔法も扱え、MPとINT(知力)、WIS(精神)がかなり高値でないとなれない職業クラスだった気がする。


彼女は彼女で、何者? 俺も旅の途中は「何者だよお前」ってよく言われたものだが。


親父も俺も精錬術師だったから、他の職業クラスの人間に会うのは久しぶりだ。


「さて、そろそろ行かないか?」


俺が切り出すと、素直に頷いてくれた。


「そうね、早く寮に行きたいわ」


「寮? アーシェってさ、もしかして学園生?」


「今年からね。ユーヤもそうでしょ?」


良かった。寮とか言うからもう先輩かと思った。


人知れずほっと胸をなでおろす。


「あぁ。でも、もう寮に?」


「? そうよ。なに? まだ入学受付出してないの?」


初めてのものを見るような目で見られ、あまり気持ちの良いものではない。


「まぁな。とりあえず、学園に行くのが最優先かな」


「? 私もそろそろ疲れたし、一緒に行くわ」


どうやらもう出口付近だったらしく、すぐに出ることができた。


アーシェはレベル上げのため、このフィールドに出向いていたらしい。


そして、森を抜けた俺の目の前には、巨大な城塞が広がっているように見えた。


岩を積み上げて作られたような外壁に、厳かながらも、俺の二倍くらいの高さがあろうかという門。


私立インクアイリ学園の校門が、そこにはあった。


アーシェは小さなカードを取り出し、門の中央にある台座にかざした。


すると、重く寂れた音を立てつつ、学園の門は開く。


そしてその向こうにあったのは・・・


「んだこりゃ・・・フィールド?」


「バカね、これが学園。私立インクアイリ学園よ」


悠久の自然の一つに入りそうな雰囲気だった。


門の向こうに見えたのは、真っ直ぐ続く街道、中央にある噴水の広場。


周りは草原。ベンチがところどころに置いてあり、木々もそう、いろんなところに生えていた。


あそこで昼寝をするのは気持ち良さそうだ。


俺はアーシェの先導で学園内を進む。もっともまだ、ここが学園だとは思えないが。


噴水広場は交差点の役割も果たしているらしく、こちらから進めば右手に建物、左手に建物、正面にも建物・・・あり?


「なぁ、なんで同じ建物ばかり?」


「ユーヤは知らなかったわね。ここは学生寮のある東エリア。東門から入ってきたからね」


当然のように、歩きながら振り向いて答えてくるアーシェの言葉に、正直驚いた。


こんだけの広さがあって、まだ東エリアのみ?


つまり、この建物全部が学生寮ってことか?


少なく見積もっても、一つの建物には10階以上の高さがあるだろう。


窓の数が横一列だけで20以上あることから、10部屋は優にあるはずだ。


ってぇと・・・オイオイ、一つの建物に確実に100人は収容か。いや、1部屋何人かも分からねぇし・・・。


「なぁに考え事してるのよ、ほら、行くわよ」


「ちょっと待って。俺とりあえず紹介状出さなきゃいけないんだけど」


「紹介状・・・?」


俺が懐から出した封筒をピラピラ振ると、アーシェは訝しげに元来た道を戻り俺のところまで帰ってきた。


そして俺がその紹介状を手渡すと、表と裏を交互に眺め、頷いて俺に返す。


「受付どころか手続きもまだなわけね。じゃあ職員棟に行きましょう。それにしても、学園長に紹介状なんてね・・・」


アーシェ曰く、普通は入学試験を受けてかつリラ森林を抜けてこないと入学はできないらしい。


大丈夫なのか? この紹介状で・・・。


右も左も分からないので、とりあえず着いていく。


噴水広場を真っ直ぐ抜け、真ん中にあった寮の横を通る。


ふいに、アーシェが俺の横に並んで歩き出した。


「後はここを真っ直ぐ行くだけだから。・・・あのさ、私もそこそこ冒険の場数は積んできたつもりだけど、精錬術師リファイニストなんて聞いた事ないんだよね」


「あぁ、そのことか。それならアーシェの年でソーサラーってのもすごいと思うけど」


職業クラスは基本、実力とともにランクアップしていく。


ランクアップするには神殿の力が必要にはなるが、それは本人の実力が伴って、ということだ。


そのランクアップは別称、転職クラスチェンジとも呼ばれ、その職業クラスになるための基本パラメータを満たしていなければならない。


ちなみに職業クラスは最大5段階あり、ソーサラーは魔法使い系の4段階目。


普通は学園に通うような人間が・・・エルフか。エルフが取れるような職業クラスではない。


凄まじい量のINT(知力)とWIS(精神)、MPが必要になるため、正直娑婆シャバにもざらにはいない。


それはそうと、アーシェは人差し指を立てて俺に言ってきた。


「私はね、この学園で主席を取ろうと思ってきたのよ。だからこのくらいは当たり前。それより、精錬術師リファイニストって職業クラスについて教えてよ」


少し影が感じられたが、気にしないことにした。誰だって知られたくないことはあるさ。


精錬術師リファイニストの特徴としてはまず、ランクは存在しない」


「! それって転職クラスチェンジしないってこと?」


「そう。んで精錬術師リファイニストについて詳しく説明すると、まず素材がないと何も出来ない」


「さっき使ってたドラゴンルビーと鉄鉱石みたいな?」


首を傾げるアーシェに頷いてから、俺は続けた。


精錬術師リファイニストは、その素材をまず“精製リファイン”する。するとそれは球体状の純物質となる。これが第一段階」


「あぁ~、さっきやってたやつか。結構綺麗な色だったね。」


「それはどうも。続いて第二段階だ。その物質を一つそのまま作り変えることも出来れば、複数の物質を合成することもできる。それを“練成クラフティング”と呼ぶ」


「さっき手を合わせてた、あれか」


手をポン、と叩いて納得するアーシェ。


「そして最後に、精錬された新たな物体を創り出す。それが精錬術師リファイニストだ」


「なるほどね~・・・失敗とかしないの?」


恐る恐るといった具合で聞いてくるアーシェの上目遣いが結構カワイイ。


「するよ」


「!?」


目を見開く彼女に、そのまま説明を施す。


「MPとINT(知力)、それからAGI(敏捷性)が低い奴はよく失敗するらしい。・・・もっとも精錬術師リファイニスト職業クラスになれる人間はそこまで酷くはないけれども」


人間ヒューマン?」


「そう人間ヒューマン。っていうか、これね」


「?」


俺が、自分の瞳と髪を指差すけれど、アーシェは意味が分からなかったようだ。


人間といったときに疑問が浮かんだらしい。


「この職業クラス、この黒髪と黒瞳を持つ人間ヒューマンしかなることが出来ないんだ」


「そっか。だから私も知らなかったのね・・・あ、そういえばさっきの武器、どうしたの?」


「あぁアレ? 精錬武器は魔法と一緒。一定時間・・・というか一度の戦闘で霧散するんだ」


「ふ~ん・・・え!? じゃああのドラゴンルビーは!?」


「霧散した」


「えええええ!? ナニソレ超もったいないじゃん!!」


俺がこともなげに言うとアーシェは酷く驚いたようだった。


まぁ仕方のないことかも知れない。ドラゴンルビーは、貴金属。しかもかなりの高級品だ。


「だから言ったろ? 精錬術師リファイニストは素材が命だって。幸い俺はたくさんのフィールドを旅してきた。だから素材もいろいろなところから取ってきて、ほとんどの素材が腐るほど余ってる。だからそこまで問題はないんだけどね。行ったことないのは・・・迷宮くらいだ」


「!!?? め、迷宮って・・・いやまぁサスガにそうだろうけど。他は全部行ったんだ? 凄いわねユーヤ・・・」


迷宮。親父が行くと言った場所。


未だ解明されていない、別名“神の試練”。親父はそこをめぐると言っていた。


・・・でもま、あの親父ならやり遂げちまいそうな気がしないでもないんだよな。


「なに笑ってんのよ」


「いや、親父を思い出してな」


「親父・・・・? あ、着いたわよ」


ズオオオオオ、とバックに現われそうなくらいの威容。


なんだコレ、迷宮ですか?


アーシェの案内で辿りついた職員棟とやらは、職員棟というより職員塔と言ったほうが正しいような代物だった。


アーシェの職業クラス詳細


回復魔法・通常攻撃魔法に優れた、万能魔法職業クラス

物理的には攻守ともに弱いが、魔法に関してはスペシャリスト。


魔法使い

ウィザード

ウォーザード

ソーサラー←今ココ!

???

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