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乙女ゲームの世界に転生したけど、全然簡単じゃない!!  作者: 太陽の海


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第13章 悪役令嬢救出作戦(2)

ようやくアンジェラを見つけた時、彼女は虫の息だった。

呼吸は浅く、今にも途絶えそうだ。

俺は彼女を抱き起こし、持参したポーションをゆっくりと飲ませた。傷口が徐々に塞がっていくのを確認してから、その上から包帯を巻いて処置を施した。


「殿下……殿下……」


意識がない状態でも、彼女はうわ言のようにヘンリーの名を呼んでいた。

死の淵に立たされてなお、彼女の心はヘンリーでいっぱいなのだ。

アンジェラがどれほど彼を愛しているか、痛いほど伝わってくる。俺はただの傍観者だが、これまで彼を支え続けてきた彼女に対するヘンリーの仕打ちには、胸が締め付けられる思いだ。


「もしかしたら……君の方が、僕なんかよりずっと不幸なのかもしれないな」


俺は眠っている彼女の顔を見つめ、そう呟いた。

彼女を抱き上げ、洞窟を出る。捜索に来ている騎士たちが通りそうな場所の近くまで運び、木陰に寝かせた。

騎士たちが彼女を発見し、保護するのを見届けてから、俺は誰にも見つからないようにその場を去った。怪しまれる前に街へ戻らなければならない。


深夜、俺は人目を避けて学院の寮に戻った。

建物に入ろうとした時、アミリアが入り口で待ち構えていた。心配そうな顔で俺を見ている。


「まだ部屋に戻ってなかったのか……」


アミリアは何も言わず、俺に駆け寄ってくると、ナイフを受け止めた時に切った俺の手を掴んだ。


「怪我してるじゃないですか!」

「かすり傷だよ。これくらい何ともない」

「だめです……。もしばい菌が入ったらどうするんですか。今すぐ治しますから」


彼女は俺の手を両手で包み込み、傷口に意識を集中させた。すると、彼女の手のひらから温かな金色の光が溢れ出した。

傷は見る見るうちに塞がり、痕形もなく消え去った。彼女はホッとしたように息を吐いた。


「よかった……綺麗に治りました」

「あ、ああ……ありがとう。魔法か?」


俺は驚いたフリをした。


「はい……。小さい頃からこういうことに興味があって、母に教えてもらったんです」

「すごいな、君は……」


これは才能じゃない。彼女が努力して身につけた賜物だ。

アミリアは嬉しそうに微笑んだ。


「アランさんのお役に立てて、すごく嬉しいです……」


その鈴を転がすような声と、喜びにあふれた瞳。

こんな顔をされて、何も感じない男がいるだろうか。


俺は衝動的に、彼女の顎に手を添えた。彼女は驚いたように目を丸くしたが、拒絶しなかった。

俺はゆっくりと顔を近づけた。アミリアの頬が赤く染まり、長い睫毛が震えながら閉じられる。

真昼の日差しを浴びているかのように、周囲の空気が熱く感じられた。

唇が触れ合う距離で、彼女の甘い吐息を感じる。


「そこで何をしている!!」


見回りの兵士の怒鳴り声に、俺たちは弾かれたように離れた。


「なんだ、生徒か。こんな時間に出歩いてないで、さっさと部屋に戻りなさい」


兵士はそう言い捨てて去っていった。

残された俺たちは、気まずい沈黙に包まれた。アミリアは顔を真っ赤にして固まっている。


「し、失礼します……!」


彼女は逃げるように走り去っていった。

俺も心臓が早鐘を打っていた。人生でこんな経験をしたのは初めてだ。想像以上に恥ずかしい。

アミリアの魅力に流されて、あんなことをしてしまった。これが「恋」というやつなのか?


***


アンジェラが救助されてから数日が過ぎた。

彼女の権威は地に落ちていた。ヘンリーとの関係修復が絶望的だと悟ったのか、取り巻きたちは一人、また一人と離れていった。

一方で、アリスに対するいじめは激化の一途を辿っていた。王子たちとあまりにも親密になりすぎたせいで、多くの令嬢たちの反感を買ったのだ。


一年生の間で不穏な空気が漂い始めた頃、俺はシリア姉さんに呼び出された。


「アラン、今日呼んだのはちょっと聞きたいことがあってね。レダス公爵令嬢の件、何か知ってる?」


姉さんは試験勉強をしている俺の前に座り、単刀直入に聞いてきた。


「ああ……ヘンリー王子とアンジェラ様の関係ですよね。あれだけ大騒ぎになれば、嫌でも耳に入りますよ」

「じゃあ、あのアリスとかいう小娘については?」


姉さんの真剣な表情に、俺は本を置いて向き直った。


「王子と一緒にいるところをよく見かけますけど……」

「……王子だけじゃないわ。あの子、有力貴族の令息たちとベタベタしすぎなのよ。節操がないというか……。公爵家と王家の関係にヒビを入れるような真似をして、タダで済むと思ってるのかしら」


帝国は心臓、公爵家は背骨だ。両者が対立することは国家の危機を意味する。もし問題が起これば、最も価値のない部分が切り捨てられることになるだろう。


「でも、アンジェラ様も反撃に出たって聞きましたよ。アリスへのいじめが酷くなってるって」

「ありえないわ。公爵家は王家に次ぐ権力を持っているのよ。もしアンジェラが本気で排除しようと思えば、あんな小娘、とっくにこの世から消えてるわ」


俺も同感だ。アンジェラはプライドが高いが、陰湿な手段を嫌う。敵対するなら正面から堂々と叩き潰すタイプだ。


「僕もそう思います。多分、アンジェラ様の取り巻きが勝手にやったんでしょう」

「ええ……。でも、監督不行き届きの責任は免れないわね。王子もそのことは知ってるみたいだし。……時間の問題ね」


アンジェラにとっては最悪の展開だ。彼女は何も悪くないのに、状況は悪化する一方だ。


「あんたが連中と関わらなくて正解だったわ。来週、学期末のパーティーがあるけど、そこで『何か』が起こるはずよ。絶対に巻き込まれないようにね」


姉さんは深刻な顔で忠告し、部屋を出て行った。

俺も関わるつもりはない。

これから何が起こるか、分かっているからだ。

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