第2話 賞金首の相棒scene1
アリアナと別れた。
もう二度と会うことはない。
そう決意したジンは酒場でぬるくなった酒を間に管を巻いていた。
「…ろくなことがねえ」
独り言が重く落ちる。
1億Gの賞金首
悪役令嬢アリアナ。
伝説でも幻でもない。
実在していた。
しかも、ドラゴンまで。
(もう二度とかかわらねえ...)
命がいくつあっても足りない。
常識的に考えて絶対に距離をとるのが正しい。
そう思っていた。
「おひとりですの?」
その声に、ジンの思考は凍り付いた。
…振り向きたくはない。
しかし、聞き間違いである可能性もあるし、そう願ってもいる。
「ビールでもいかが?おごりますわよ」
ゆっくりと、恐る恐る振り返る。
そこにいたのは、黒髪の少女。
見覚えのある楽しそうにする笑顔・
「…いや、いい。高くつきそうだ」
精一杯の抵抗だった。
「そんなこと言わずに。
”仲間”なんですから」
カウンターに、一枚の紙が置かれる。
嫌な予感しかしない。
ジンは視線を落とし...固まった。
【悪役令嬢アリアナ
および その一味】
「…その一味?」
文字を追う。
賞金額 1億1ゴールド。
アリアナの肖像画の横。
申し訳程度に描かれた、小さな男。
(......俺だ)
「おい、これはどういうことだ」
声が低くなる。
「ふふ。
あなたも立派な賞金首ですわ)
「待て待て待て!
俺は何もしてねえ!
しかも1億が1億1ゴールド!?
俺の価値、たったの1ゴールドかよ!」
「そうなりますわね」
即答。
「ですが...」
アリアナは楽しそうに続ける。
「1ゴールドでも、命を狙われる側になったことに変わりはありませんわ」
言葉が胸に沈む。
「......最っ悪だ」
賞金首というのは、肩書きじゃない。
世界中から敵意を向けられる立場だ。
「ね?」
「ね?じゃねえよ」
アリアナは身を乗り出す。
「私と一緒にお宝を探しに行きたくなりましたでしょう?」
ジンは言葉に詰まった。
否定はしたい。
断りたい。
しかし現実は残酷で厳しい。
1人で動けば、賞金目当てに狙われる。
相手は冒険者だけとは限らない。
盗賊、傭兵、最悪...王国側。
(...一緒にいた方が、生き残れる確率は高いか...)
認めたくない事実だった。
「…で」
ジンは深いため息をついた。
「次はどこへ行く気だ?
言っておくが、王国騎士団はもう勘弁だからな」
「ご安心を」
アリアナは胸を張る。
「今回は大丈夫ですわ。たぶん」
「”たぶん”が一番信用できないんだよ...」
「さあ、行きましょう」
立ち上がるアリアナ。
ジンはしばらく天井を見つめる。
やがて諦めたように席を立った。
(やばいな...完全に人生の分岐点踏み外してるな...」
そう思いながらも、足は彼女の後を追っていた。
賞金首悪役令嬢と、その一味。
その”一味”として。




