第1話 賞金首アリアナ scene1
「なあ、仕事ってこの掲示板にあるだけか?」
ジンは掲示板を見ながらぼやいていた。
カウンターの奥からくたびれた親父が顔を出した。
「それだな」
「条件悪すぎるだろ。安すぎる。古すぎる。危険すぎる。
まともな仕事が一つもないじゃないか」
「そもそも冒険者なんて仕事がまともじゃないんだよ」
「そうだけどよ」
ジンは頭を抱えた。
仕事がない。
これは切実な問題だった。
「あれだ...あの1億ゴールドの賞金首悪役令嬢アリアナを捕まえて来いって奴ならずっとあるぜ」
「出来るわけねえだろ。あんなの俺が冒険者を始める前...10年以上前からずっとあるけど誰も捕まえられてねえ大物案件じゃねえかよ。やるわけがねえ。
このままじゃ本当に廃業しちまうよ」
「おう辞めろ辞めろ。お前もまだ若いんだ。
この際まっとうな職に就け。俺みたいになっちまうぞ」
「なんだか夢のない世界だな。俺がガキの頃見た冒険者はもっと華やかだったぞ」
「時代が違うんだ。諦めろ」
ジンはうなだれながらギルドを出た。
特に行く当てがあるわけではない。
「しょうがねえ酒場でも行ってみるか」
自然と足は酒場に向かっていた。
酒場はいつも通り賑わっていた。
「おう、ジンどうした?不景気な顔して」
「不景気なんだよ」
酔っぱらったおっさんに愛想悪く返しカウンターの席に座った。
出された水で喉を潤す。
「マスター、とりあえずビー...」
ドン!
不意に、目の前に並々と注がれたビールジョッキが置かれた。
「どうぞ、おごりますわ」
振り返ると、そこに立っていたのは小柄な少女。
黒い髪、黒い瞳。
この辺りでは珍しい。
整った顔立ちには品がある。
黒いマントに身を包んだその姿はすでに怪しかった。
「え?」
「仕事探してるんですよね。
元傭兵団隠密係...」
その言葉にジンが反応する。
「誰だおまえ!?」
「調べましたから、元傭兵団隠密係のジン
あなたは本当に仕事が無い人間、それとも仕事を選好みしている人間、
どちらかしら?」
「...俺は前者だな」
「そう、ならちょうどよろしいですわ」
少女はにっこりと微笑んだ。
「今からお宝を探す予定がありますの。ご一緒しませんか?」
「は?お宝?」
こんなご時世に、しかも話が早すぎる。
「ちょっと待て。名前も聞いてない」
「失礼しましたわ。ユリアと申します」
「ユリア...特に変な噂が立っている名前ではなさそうだが...で、そのお宝って?」
「ちょっとした財宝...と言ったところかしら」
「危険度は...?」
「低めですわよ」
(低め?その言い方...ちょっと引っかかるが)
「報酬は?」
「見つけた分だけですわ」
「大丈夫な案件か?地雷感あるぞ?」
とは言え断る理由が無かった。
他に仕事がない以上、選択肢はなかった。
「わかった。行こう」
「それでは決まりですね」
ユリアは嬉しそうに手を叩き、笑った。




