8.でも。
競技場にやってきた。
選ばれし20名が息巻いている。ふるいにかけられて残った強者同士の戦いだ。「緊張してきたね。」
俺らは競技場のスタジアムへと移動した。
スタジアムは真ん中に設置されており、控えとスタジアムはタラップで結ばれている。俺らはそこを通ってスタジアム内へと進んだ。20名が行き着く。
そこは六角形の足場が幾つもくっついている大きなフィールドであった。外側から下を覗くと、水で埋め尽くされている。落ちたら水の中だ。
空から誰かが降りてくる。
椅子の形をした影が段々と大きく写されていく。
空中に浮いている革でできた椅子。背の部分も立派に臙脂色で装飾されていた。その椅子に座っているのはリベルだった。片腕は曲げて肘当てに置き、手で頭を支えている。もう片腕は横に広げていた。
彼は浮いたまま話していった。「受験者諸君。俺は審査官を担う王直兵のリベルだ。今からこの試験について説明する。」
二次試験の説明が行われていく。
・スタジアムから離脱すると失格となる。離脱とはスタジアムの下、底にある水に落ちることである。
・残り5名になるまで試験は行われる。
・敷き詰められた六角形の板はそれぞれが別途の物であり、強烈なダメージを受けると壊れてしまう設計になっている。――つまり、激化した戦闘で、スタジアムに穴が空いていくということ。
・もちろん、注意事項については一時試験を継承している。
とのことだった。
リベルは肘を付いていた右腕を動かすと、椅子事観客席側へと進んでいった。彼が観客席に設置された特別席へと辿り着くと、タラップは外される。
そして、試合開始の音が鳴り響いた。
◆
「よぉ、一次試験じゃ世話になったなぁ」とナイヒを舐めている男が絡んできた。虹色モヒカンの男だ。
敵はナイフを振り回してくる。その勢いはバラバラなため避けにくく、さらに攻撃の機会を窺いにくい。
ニードルアームを拳にセットした。
風が荒れている。
《風玉の竜巻旋風》スタジアム中央から放たれる外側へも向かって放たれる渦を描く風。
渦の真ん中にいる青色髪の眼鏡をかけた青年――ルクバーはさらにそこに風玉を大量に放った。
風の玉が渦に乗って回っていき、適当なタイミングで落下して爆風を繰り広げていった。
良いか悪いかミルファクとの勝負は鮮烈な爆風が入り、一度お預けとなった。
一次試験と違って早く決着が着きそうだ。
後ろから殺気がする。
振られるバット。何とか避けることができた。バットは地面に衝突して、そこにあった六角形の小さな板を破壊した。スタジアムに穴が空いたのだ。
爆風で周りが埋め尽くされる。
そんな中で顔を現したのはバットを持って振り回す青色髪の筋肉質な男――ルクバトだった。
「派手にかっ飛ばすぜ!」
バットを構えて体を捻じる。片足を軽く上げて、さらに体を捻っている。「一本足打法!」
それをスイングするのは知っていた。だからこそ、空振りするように彼の横へと移動する。
が、彼はいつの間にか俺の斜め前にいた。
ガンッ。
振られたバットはお腹を狙ってくる。準備していたニードルで何とか防ぎ、軽く後ろへと後退するだけで済んだ。
「ほう。ファールだな。次こそ狙ってやるぜ。」
彼は再び構えた。
彼は右打ちのようだ。つまり、右打ちする場所は当然決まっている。荒れた風を走り、先程バットを縦に振られ破壊されたスタジアムの穴に誘導できる位置へと立った。
やはり、その陽動に乗ったみたいだ。彼は穴の所で構えている。そこで気付いた。彼は空中で浮いているのだ。
振られたバット。何とか直前でニードルによって守れたが、さっきよりかは吹き飛ばされた。もうちょっと吹き飛ばされていたら落下していた。危なかった、と少しだけ冷や汗が出そうだ。
「風で移動する能力……か。」
「少しだけ惜しい。俺は風に運ばれて移動できる能力。例え避けても、空中でも、俺の能力でどこでもバッターボックス!」ドヤ顔で言い放っていた。
彼の元へ風玉が放たれていた。
その玉をバットで撃ち抜くと、その玉が軌道を変えて俺の方へと向かってきた。
爆風で吹き飛ばされてしまった。
しまった――。このままじゃ落ちてしまう。
今やスタジアム外の空中。後は落ちるだけだ。負けを悟るしかない。
そんな時に、急に空中で止まった。そして、スタジアムに戻された。
「危なかったね、アトラ君。」カシェルだった。
「悪い。助かったよ。」
彼女はそのまま空に向かって飛んでいった。
翼が光を浴びている。
「空を飛ぶ能力の奴がいたのか。厄介だな。まずは先に仕留めないとな」と大きな独り言の後にさらに大きな声で「ルクバー」と叫ぶ。
竜巻が止んだ。
嵐の前の静けさ。
真ん中にいたルクバーが風の玉を彼目掛けて放っていく。厳密には彼のすぐ横を通るように放っている。
《連続フライ! でやっ!》
風の玉を打ち返して空へと高く上げる。それは彼女を狙った攻撃だ。一発に留まらず何発も打ち上げる。
一方、そんな攻撃を容易く躱していく。まるで鳥のように自由に優雅に空を舞い、玉なんぞ当たる気配をさせなかった。
穏やかになったスタジアムも束の間、打ち上げた玉が落下してスタジアムに衝突すると否や爆風を引き起こし、今度は大量の落下弾がスタジアムを掻き回していく。
「打ち方止め!」と叫んだ後に「風の能力じゃないのか。もしかして天使族か。絶滅したと思われていたが、生きてたんだな。そうじゃなきゃ避けきれん」と放ち、「だったら直接ぶっ叩くまで」と空へと浮いていった。
バットがカシェルを襲う。それを避けていくが、今度は真ん中から放たれた風の玉も襲ってくる。下から襲うだけではない。幾つかの玉はルクバトに放たれており、それを打ち返すことで真横からも風の玉が襲っていたのだ。
何とか避けられている状態だが、当たるのも時間の問題だろう。
「けど、こっちも攻撃のチャンスだ。」
ニードルアームを四つに分裂させる。まずは一つ目を空にいるアイツ目掛けて放つ。
残りの三つを放った場所から三方向、それぞれ進んだ場所に一斉に放つ。
彼は下から放たれた攻撃に気付いた。
そこでデタラメに避けることはしないだろう。なぜなら、すぐ後を追って一歩北、西、南の位置に放たれているのだ。東側の方向に避けなければ、このニードルアームは避けられない。
もちろん彼は東側の方向へと避けた。その場にいたら当たる棘を避け、追って放たれた棘は素通りしていく。
ただ、そこは棘じゃなく風の玉が襲う場所だ。例えるなら、俺の攻撃でボールが投げられるゾーンに誘導したのだ。
風の玉が直撃する。
彼は吹き飛ばされたがすぐに空中に留まった。まだまだ終わってくれないらしい。
「兄さん。くそっ、これでも喰らえ。」
真ん中に陣取るルクバーが彼女に向けて見るからに強そうな螺旋しながら進む風の玉を放った。
「ふっふーん。秘密兵器の出番だね。私の武器を見せたげる。」
彼女は容易く移動して軌道の横へと進み武器を取り出した。
いや、武器じゃない、あれは道具だ。
柄杓という水を組むための道具だ。
カーン。
彼女は柄杓をスイングした。先端の金属部分が玉にヒットして、ルクバトに向けて打ち返す。そのまま彼を襲って大きな爆風を繰り出した。
爆風に巻き込まれた彼はそのままスタジアム外へと落下して、下の水へと着水し、大きな水飛沫を上げた。
何とか一人を倒した。
後は――。
そこで終わりを報せる音が鳴り響いた。
風が止んでいく。
そこに立つ三人。俺と真ん中を陣取るルクバー。「勝っ、て、たー」と言っては、そのままうたた寝しながら立っている男の子。そこに一人カシェルが降り立った。これで四人だ。
残り一人は……と思ったら、スタジアムの崖から一人よじ登ってきた。虹色のモヒカンが目立つ男だった。
「ヒャッハハハッハー。崖にずっと掴まってれば勝てるって本当だったなぁ。みんな風の玉で吹き飛ばされちまって。俺様みたいに執念が無さすぎだぜぃ。」
変な奴が五人目として立っていた。
「おめでとう。貴方達五人は最終試験への切符を手に入れた。だが、油断は禁物。最終試験こそ難しいということを肝に銘じて下さい。では、最終試験は二週間後に行われるが、さらに詳しい日程等については受付で行う。」
高いところから見下ろしているリベルはそう言い残して去っていった。
◆
闘技場から出る。そこには八歳ぐらいの女の子が泣いていた。そこにルクバトがやって来て頭を撫でる。「おいおい、泣くな。父さんは負けたけど、辛くはないからな」なんて言って、その子を肩車した。
こちらに気付いた。
「二次試験突破おめでとう。試験で君たちと手合わせして、とても強いと思った。君たちなら最終試験も突破できると思うよ。」
しかし、少し貯めて強く「でも!」と言う。
「最後に笑うのは俺の弟さ」と清々しい表情を向けていた。
そこにメイサとプリマお婆さんがやってきた。すれ違いのように、先程の親子は行ってしまった。
「合格おめでとう。今日はゆっくりと休むといいのぅ。」優しく微笑んでくれた。
そこに隣で「あっ、そうだ。アトラ君にメイサちゃん。二人の家に泊まりに行ってもいい?」なんて吐かれた。それに対して「いいぞよ」と返されていた。
俺らは思わず「えっ」と吐いてしまった。
ここで一句【アケル・ナルからの一言】
『卑怯な手、合格後は猛暑、水無道』
正々堂々と挑まずに合格したところで、結局、同程度以上の困難が合格後にやってくるんだから、最初から正々堂々と挑みなさいよ!




