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偽風のアトラ、スパイ譚  作者: ふるなる
風の国への潜入編/試験編

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5.ニードルナックル

「よく来てくれた。武器だよなぁ、絶対気にいると思うぜ。」

 店主のアンゲ・テナルはニコッと笑って台の上に武器を広げた。「これぞお前さん専用武器のニードルナックル――四連型(仮)(かっこかり)だ!」手のひらよりも大きいサイズの棘が四つ置かれた。

 直角三角形型の円錐がある。その大きさはどれも手のひらよりも大きめだ。そして、直角部分にあたる弧を描く部分が刈り取られており窪みができている。

 直角三角形型の円錐における高さ、底、辺。底の高さと交わる角に窪みが付けられている。手のひらの半分が入るぐらい抉られている。そして、高さの部分は平らになっているため、他の三つのくっつけることができる。これで四つの棘が集まって一つの大きな棘に変わった。上から見ると完全なる円錐だ。

「手も入れてみてくれや」と言われる。その四つの棘それぞれに窪みがあることで、大きな一つの棘になった時に、真ん中に大きな穴ができている。その中は拳が一つ入る程度の大きさだ。入れてみるとピッタリと拳が中に入った。

「ナックルモードだ。メリケンサックのグローブみたいなもんだな。その大きな棘がパンチ時の威力を高めてくれる。」

 付けると意気揚々と勇気が湧いてくる。

「それを四つに分解すれば、ニードルモードだ。弓矢の(やじり)みたいなもんだな。それを飛ばして遠距離攻撃も可能だ。チャンスも四つある。」

 他にも、二つずつを拳とくっつかせて、カッタークロウ――鉤爪型のカッターにもできそうだ。妄想が捗る。

「そして攻撃する時は「ニードルパーンチ」って言うんだ。かっこいいだろ。」

 いや、ダサい。それを言うのは絶対に止めとこうと思った。

 しかし、持った感じ、どこか軽い。

「まっ、それが(仮)なのは分かるだろ。先端は少し丸めて殺傷能力を下げてるし、中は空洞だ。まっ、そうしないと国の法に引っかかるんでな。そうさせて貰った。」

 少しだけ残念には思うが、そこまで楽単はしていなかった。

「本物は王直兵になってからだな。王直兵か国兵、A級以上の冒険者しか、危険武器は所持できねぇからな。」

 元々の目標についでの目標ができた。それも気負うような事じゃないから荷が軽くて心は踊る。

「おーい、ミア。こっちの説明は終わったぞ」と声がかけられ、俺は服屋の方へと連れて行かれた。

「その武器の窪みに、さらに窪みがあるのに気づきました?」

 よくよく見ると、さらに掘られていて窪みがあった。「そこに紐を結べるようにお願いしたんです。早速着替えませんか」と、俺は試着室もとい更衣室で新たな服に着替えた。

 アウトドア風のシャツ。小さなアクセントとして弓矢のシルエットがワンポイントが印象的だった。ニードルのイメージから弓矢が想像させられたらしい。そこに柔らかいカラーのジャケットを羽織った。

 そして、濃いめの色のダメージジーンズパンツのベルト部分において、背中側、背面側に四つのカナビナ型の紐みたいな物がそれぞれ付いていた。そこにそれぞれニードルをつける。腰の臀部付近にそれぞれ右から左にかけてニードルが飾られた。

「いいですね。まさにワイルドな感じがカッコイイです。野性味溢れる感じが味を出してます。」

 その姿見を絶賛された。悪い気はしなかった。

 また、メイサの方も着替えたようだ。ニュアンシーなツートーンコーデ。パリッと着こなした感じが大人のカッコ良さを感じさせる。また、ベルト部分からはみ出している三つの小さな鉄の玉に装飾が施され、赤い色の炎模様、青い色の地球模様、緑色の森模様の玉がいい感じのアクセントにもなって、鮮やかさを演出させている。

「準備は整ったな。後は試験を合格するだけだ。」身体に活力が湧いていくのが分かった。



 王都を囲む壁、そこにある南門から出た広めの一帯がフェンスで囲まれていた。フェンスの枠内は村一つか二つ分の大きさを誇っている。

 そして、そこが王直兵の入隊試験の第一次試験場となっていた。

 俺らは事前に貰った青色のベルトを身につけた。臍の位置には丸い塊がある。

「やっほー」と天使族の子がやって来た。試験のためみんなピリついているが、彼女についてはその反対のオーラすら出ている。

「そういや、自己紹介がまだだったね。私、カシェルって言うの。よろしくねっ。」「俺はアトラだ。」「あたしはメイサだ。よろしく。」

 彼女は俺らの腰の武器に気づいた。

「それがアトラ君の武器なんだ。かっこいいじゃん。」

 そんな事を言われて少しだけ心が浮きそうになった。へへん、とでも言いたい。

「君は武器はないのかい?」

「カシェルも~、武器を買ってきました!」

 そう言って、取り出したのは柄杓(ひしゃく)だった。どうしても武器には見えない。どう考えても水を掬うための道具だ。

「それが……武器なのかい?」俺ら二人で呆れ返っている。

「そうだよ。日用雑貨屋に行って、何か武器になるものはありますかって、聞いたら、これを勧められたんだ~。」

「いや、日用雑貨屋じゃなくて武器屋行けよ」と突っ込んだが、馬耳東風だった。

「見てるこっちが心配になるよ……」とため息が吐かれていた。その気持ちが痛いほど分かる。

 さて、そろそろ時間になった。太陽が頂点から降り始めた頃だった。

 運営の人がこの試験について説明していく。

 俺らはそれを聞いて理解していく。


 まずは試験内容だ。

・この格子の中をエリアとして日夜問わずに試験は続く。

・腰につけたベルトのコア――ベルトの臍の位置にある丸い塊――を壊されたら試験敗退となる。また、破壊されるとベルトが真っ青に光るらしい。

・残り20名となった時点で一時試験は合格になる。残り20名となるまで試験は続く。

・至る所に宝箱が置いてあり、そこには水や食料が入っている。水や食料はその宝箱から手に入れるか自然から調達するかしかない。

・自らリタイアすることは可能。機能上、このベルトはリタイアしやすい(自らで簡単に壊しやすい)設計になっているようだ。


「つまり、いつまで続くか分からないサバイバルって感じだな。」


 また、注意事項も存在していた。

・人を死亡させてはならない。また、故意に重症を負わせたり、強姦をしたりしてはならない。

・リタイア者を攻撃してはならない。――つまり、青白く光っている人を攻撃してはならない。また、リタイア者は攻撃や妨害をしてはならない。

・故意に窃盗してはならない。ただ、戦闘上必要な窃盗は認められる。その場合は試験後に持ち主に返さなければならない。


 これらのルールをしっかりと頭に入れた。

 説明が終わると参加者がバラバラに散っていく。俺らは三人で動くことにした。そっちの方が「安心できるしな。」



 試験が始まった――。



 エリアが広いため、敵とのエンカウント率は高すぎることはなさそうだ。だが、油断は禁物だ、と心に言いかけていく。

 これはサバイバルだ。いつどこから敵がやってくるか分からない。油断出来ない緊張感が心をほんの少しずつすり減らしてきていく。

 青く光る参加者達を通り過ぎていく。

 少し進むと宝箱があった。中には非常食の干し魚が三つ分入っていた。「干し魚、一日分って書いてあるね。まあ、あたしらは三人だから夕食分だけにしかならなそうだな。」

「じゃあ、これから俺が見張りするから二人で食べてくれ。その後、俺も食事を取る。」ゆっくりと心を安心させられる時間がどれだけ大事か。このサバイバルでは、とっても重要なことだと思った。俺も後でゆっくりと食べよう。

 周りに耳を傾ける。

 揺らめく風と木々の音。

 ゆらりと動く怪しい影――。

 後ろから音もなく飛びつかれた。

 

「ばあっ。びっくりした?」


 カシェルだった。「食べ終わったよぉ」と健気に教えてくれた。本当にもっと違う方法で教えてくれ。

「とりあえず敵は来なかった。」

「うん。知ってるよ。」

 ん?

 どういう意味か分からなかった。改めて聞いてみると、「私達の周りに羽を置いて敵が来たらすぐ分かるようにしてたんだ~」と種明かしをしてくれた。

 思わず「そんな事ができたのか」と驚いてしまった。彼女の能力の高さには驚かされる。

「少年もゆっくり食べて気を休めたらいい。」

「ありがとう」と言いながら、干し魚をムシャリと口に頬張った。塩の味付けが濃くて美味しい。おかわりしたいところだが、残念ながらもうソレはなくなっていた。

「意外と他の受験者と遭遇しないもんだな。数十人ぐらいと戦うんだと思って身構えていたよ。」

「それぐらいは遭遇したよ?」何気ない笑顔だった。正直、その真意は分からないので、聞いてみた。

「試験開始から最初の時間は敵も多かったしねぇ。だから、こっちに来る前に羽で倒しといたの!」

 軽々しく言える彼女に衝撃を受ける。戦闘実力の高さに思わず、おお~、と漏らしてしまいそうだ。

 

 今度は睡眠。これも三人で交代交代で見張りをしながら仮眠を取った。


 そうして二日目に突入した。

 夜中も敵は襲って来なかった……。いや「二人来たからボコっといた」と余裕の天使が何とかしてくれたみたいだ。

「ひとまず宝箱を探してご飯を食べよう。」

 ゆっくりと柔らかい土の上を進んでいく。

 相変わらず青く光る受験者しか遭遇しない。その度に横でドヤ顔している表情を見て全てを察した。

「うわぁ。宝箱、取られてるぅ。」

 空となった宝箱を発見した。はぁ、とため息が出てくる。何やかんやで朝食は食べられずに昼になりかけていた。

「そろそろ終わってもいいんじゃないか」とメイサは少しイラついた表情で放っていた。

 まあ、いつ終わるかも分からない常に気を張るサバイバルなんだ。イラつくのも仕方ないよな。そんな俺がイラつかなかったのは、カシェルが変わらず元気だったからだ。「馬鹿と一緒って良いよな、元気になれる」口から零れてしまった。それを聞いて「馬鹿って言った酷ぉ~い」と言われ、さらに「これは良くないな。少年」と複数精神的攻撃を受けてしまった。

 本当にすまなかった。

 気を取り直して先へと進む。

「ごめん。ちょっとこれはまずいかも。強敵かもね。」

 彼女のその言葉が俺らを身構えさせる。

 きっと強敵がやってくるに違いない。

 そこに一人の男の子がふらふらしながらやってきた。外ハネショートのライトブラウンの男の子で、とっても眠そうだ。目は開いているのか閉じてるのか分からない。

 そんな彼を見てカシェルが狼狽えている。

「こいつが強敵か?」

 それの返事はなく、「え? え?」と驚き続けていた。そして「カシェルの羽センサーに引っかからなかった……。さっき言ってた強敵よりも、もっと――」そして重い表情で「ヤバいかも。」

 腰のニードルを外す。

 いち早く駆け抜け、右側正面側にある木に向かって進み、その木を蹴って敵の懐へと入り、ニードルアームを装備した拳で殴りかか――


《四本指――風刀(かぜかたな)

 

 おぞましい気配。本能が体を動かして無理やり仰け反らせる。

 親指を中に曲げ、真っ直ぐと伸ばした四本指。それが斜めに振られた。俺は本能が、直感が体を仰け反らせていたので当たらなかったが、彼が振りかざした手刀が後ろにあった木を斬り倒した。

 ヤバい。本能がそう言っている。

 攻撃どころじゃない。後ろに向かって跳んで少し距離を取った。

「まーちーがーえーたー。」

 眠そうな声でゆっくりゆっくりと話す少年。それとは裏腹に有り余る攻撃に身震いさえしそうだ。

「つーよーすーぎーたー。」

 一見、隙だらけなのに、隙がないようにさえ見える。

「ちょっとびっくりだよ。私の羽すらもまとめて見抜かれてたっぽいもん。」

 今度は頭上から大きな風の玉が落ちてきた。

 地面に衝突すると否や、周りに爆風が走った。

 この少年の攻撃か……。と思ったが彼は「んーぬー」と呟きながら、少し後ろに飛ばされていた。

 そこに眼鏡をかけた青髪の青年が近付いてきた。手には空気を圧縮してできた玉を持っている。

 その青年が手を振りかざすと、空気の玉が幾つも現れ、彼の周りを回り出す。そして、空高くへと放たれては、ある地点まで行くと落下して、俺らの付近の地面に衝突した。

 辺り一面が爆風に包まれた。

 砂煙で何も見えない。

 背後から気配がする。砂煙で何も見えないが、確かに誰かがいる気がする。それも殺気を顕にしている人物。

 木のバットが俺に向かって垂直に振られた。

 やっぱり。

 予めその気配を察知して横に避けたから何とかなったものの、状況的には非常にまずい。

 というか、メイサとカシェルは大丈夫だろうか。

 砂煙の影からバットが振られていく。それを何とか避けたり、ニードルアームで受け流したりしていく。

 まずは自分の方を何とかしないといけないようだ。

「喰らえっ」と男の声が聞こえた。

 そこに向かって蹴りを入れると、バットを持った人物が後ろに飛ばされた。

 また背後に人影がある。しかし、それは安心できそうな人影だった。

「ねえ、メイサちゃんとはぐれちゃった」とカシェルが背中越しに教えてくれた。

「けど、それどころじゃねぇよな。とりあえず、この状況から何とか脱さなきゃ、何にもできなそうだよな。」

「まあ、そうだよね。ひとまず別れよっか。」

「だな。ひとまず乗り越えて、また、合流しよう。」

 風の玉が変わらず降ってくる。その度に爆風と砂煙が舞う。

 安全地帯を求めて、ひたすら走った。

 とりあえず、走って走って走ったら、風の玉はもう来ることはなく、砂煙からも脱出することができた。さらに、敵が追いかけてくる様子もない。

 一人になってしまったが仕方ない。

 他の二人が気掛かりではあるが、まずは俺が生き残っていかなきゃならない。気を引き締めなきゃな。

 俺は一人で密かな森を歩いていった。

 もうそろそろ日が暮れそうだ。

差し込み【シェルタンの言葉】


必殺技はいいぞ。分かりやすい。バトル風作風でメディア化を目指すなら必須だよな。だから言えよ、ニードルパンチって!

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