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偽風のアトラ、スパイ譚  作者: ふるなる
風の国への潜入編/試験編

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4.孤独な天使

 槍を交差させて門を警備している兵隊に一枚のカードを見せるプリマお婆さん。すぐに「どうぞ」と言う掛け声と共に兵隊は人が通れる道を作った。

「あたしゃ、この都市に伝があるもんでのぅ」などと笑っていた。

 レンガを基軸とした家々が建ち並ぶ。赤茶色のレンガタイルを踏みしめて進む。

 路上販売の出店が野菜や肉を売っている。それを求めてやってくる女性。昼間からジョッキ片手に肩を組むおじさん。走ってはコケて擦りむけても痛くないと言い張ってまた走り出す男の子と、それを追いかける男の子。おんぶしてとわがままを言っている女の子。賑やかな喧騒が活気漲る場所ということを伝えていた。

 地図を度々見ながら宿に向かって進む。

 想像していたよりも広い。

 ようやくたどり着いた宿で荷物を置いた。

「わしゃ、疲れちまった。試験登録の場所は二人で行けるかい?」

 それ対して頷いた。それを見て安心したのかふんわりとしたベッドに腰掛けていた。

「それと武器屋服屋はそのカード一枚で買えるから遠慮なく使っておくれ。」

 固い素材で作られたカードだった。磁気とかは埋め込まれてはいないようだ。

「くれぐれも自分の正体を明かさぬようにな」と最後に付け加えられ、二人して返事をした。すぐにメイサが「えっ」という表情でこちらを見たが、何事もなく時間は過ぎ去った。

 二人で街へと出る。

 地図を広げて、試験登録会場である闘技場という場所へと向かうことにした。噴水が目の先にある、いい目印だ。隣で地図を回転させながら「ここを右だな、と言っていた」が「いや、まだ曲がらないよ」と訂正した。

 それだけでは終わらなかった。地図を右に傾けたり左に傾けたり、時には反対側にして進んでいるが、時々道を一本間違えたり、間違えた瞬間に左右逆に進もうとしたり、進む先が出鱈目だった。結局、俺が地図を持つことになった。

「思い出したよ。自分は方向音痴だったみたいだ。」

 それを聞いて「でしょうね」としか返せなかった。


 何とかたどり着いた競技場。王宮までとはいかないが、それなりの高さを誇っていた。白色と水色の波を打つような日向避け屋根がいい味を出していた。

 その中に入ると厳かな雰囲気漂う緊張が走る道を通ると受付がそこにはあった。出された紙に名前と出身の村を書く。それを見て「あの因習村出身の……リベル様に誘われた少年か」と興味を持たれた。深く話すことはなく「楽しみにしてる」とだけ言われた。

 隣ではメイサも試験登録が終わったみたいだ。

 俺らはここを後にして武器屋及び服屋へと向かう。そこはこの競技場と王宮の間の場所に存在していた。



 カラン。鈴の音が広がる。

 とても広い部屋には二つの店が置かれていた。一つは武器屋。鋭く輝く鉄の武器が飾られている。もう一つはブティック。荒々しい武器屋と打って変わってほのぼのとした雰囲気だ。すぐに「いらっしゃいませ」とツインテールの女性がやって来た。

 俺は借りているカードを見せた。それを見て、何かを察したようだ。

「話は伺っておりますわ、因習村から来られたアトラさんとメイサさんですね。それとプリマさんという方がいると聞いているのですが……」「プリマお婆さんは疲れて、宿で休んでます。」「そうでしたか。」彼女は頷いた。

 改めて彼女は「遠くからわざわざご苦労様です。店について説明してあげて欲しいと聞かれていますが、説明聞かれます?」と訪ねてきたので、お願いした。

「ここは服屋と武器屋を兼ね備える店になります。では、こちらへ」と服屋へと連れられる。「ここはわたくしミアプラが店構える服屋になります。服はオーダー制になっています。高い耐久性と物量ダメージや能力によるダメージを大幅に軽減する機能が着いています。王直兵の皆さんを初め、冒険者など戦いに関わる方々は皆さん、こちらで買われているのです。」

 幾つかサンプルが立てかけられている。マネキンにかけられた服は可愛さと美しさを両立していた。

 彼女は、それでは、と言うと武器屋の方にも連れて行った。そこには頭に布を巻いた裸の上からツナギを着た厳つい男性がいた。

「こちらは父が経営する武器屋です。」「初めまして。俺は鍛冶職人で武器屋のアンゲ・テナルだ。最高の武器を作ってやる。可能な限り、要望は聞くぜ。」

 彼の後ろに置かれた刀も様々な種類がある。細く長い刀身の刀やナタに似た刀、ギザギザした刀など多種多様だ。

「武器が欲しいのですが、いいですか。」

「おう、ドンと来い。で、どういう武器が欲しいのか、お前さんの能力は何なのか、教えてくれんか。」

「飛ばせる武器が欲しいです。ただ、近接戦もできる武器にもしたいですね。因みに、俺の能力は『風で物を直線上に動かす能力』です。」

「なるほどなぁ。もう少し詳しく聞く。近くに来てくれ。」彼は紙を用意して、そこにペンでメモを取り始めた。頭の中で思い浮かべた武器を二人で話し合いながら、武器の形を決めていくことになった。

「メリケンサックみたいに殴れる武器がいいな。それと、その武器を放って攻撃できるようにしたい。」「なるほどなぁ、放てる拳武器か。もしそうすると、一発放ったら隙ができてしまうなぁ。」段々と形を詰めていく。

 一方でメイサは服屋のカタログを見て一人楽しんだり、服屋店主及び店の看板娘のミアプラとの会話を楽しんだりしていた。

「よしっ、こういう感じだな。楽しみに待っていてくれよ。」

 武器の構想と注文が終わった。後は完成を待つだけだ。

「よし、そこの嬢ちゃんは武器に興味はないかい?」

 彼女は「実は戦ったことがなくて……」と言うと「まあ、そういう奴は何人もいる。じゃあ、能力はなんだ」と問われる。

 今度は「実は能力はないんだ」と言うと「なるほどなぁ。使えない能力の奴は幾らでもいるしなぁ」と答えた。そして「どうしたもんだが、そうなると、あれか、守りに徹する方がいい感じか」と聞かれた。

「そうだね。ただ、あまり重すぎると扱えない感じがするよ」と答え、試しに鉄でできた重しを持ったが、言った通りに重すぎると扱えないことが分かった。

「よしっ。じゃあこれを使いな」と何やら先端に小さな鉄の玉が着いた鎖型の武器を手渡した。ジャラジャラと音が鳴っている。

「これはなんですか。」

「それはボーラという投擲武器さ。扱い方は頭の上で回転させて、敵に向かった投げるのさ。軽めに作っているから扱い易いし、これに当たると鎖が体に絡まって動きにくくなる。大きい鉄球やモーニングスターと違って威力はねぇが邪魔ができる。その間に逃げちまうか、頭脳戦を繰り広げりゃいい。お前さんに打って付けな武器だろ。」

 いち早く武器を手に入れたみたいだ。

 腰に巻いてベルト代わりにした。右後ろの腰から出ていた小さな鉄の玉がアクセントになって、新たなファッションとして違和感がない。思わず「そういう腰にまくファッション、いいなぁ」と呟いていた。

「じゃあ、武器に似合う服を作りましょう。わたくし達は親子なので武器を組み合わせた服も作れるのですよ。」

 それを聞いて思わず「お願いします」と大きな声で言い放った。それを聞いて「そんなに大きな声を出さなくても、ちゃーんと作りますからご安心を」と返された。

「完成するのが楽しみだ。」

「あたしも新たな服を新調したんだ。受け取る日が楽しみだよ。」

 宿へと帰る道のりはとても足が軽かった。

 気分が高揚してる感じがする。



 今日は武器や服の受け取り日だ。

 二人で武器屋服屋に向かう。

 楽しみで武器を扱う自分の姿を思い浮かべ、どのように武器を運用していくか頭の中でシミュレーションしながら歩いていた。

 そんな空想に夢中で地図はメイサが持っていた。

 人通り多い道から離れて小道や裏路地を通っていく。それなりに進んだ後、このように言われた。「すまない。道に迷ったようだ」と。

 ……。

 浮かれていた自分も悪かった。とても反省している。まずはこの場所を把握することから。どこからでも目印になるのは真ん中にある王宮。続いて、王宮の次に大きい闘技場。その二つの位置関係を考えて大体の場所を確認した。

「ひとまず大通りに出れば何とかなるはず。とりあえず行こう。」

「本当に申し訳ない。助かる。」

 人の気配がない小道を進んでいく。

 そんな小道の路上で見慣れた光景に出会した。人の骨が浮かんでいるのだ。村を襲った景色が思い出される。さらに多くの骨が見える場所へと小走りで移動した。

 もしや、と思っていた。そのもしやが的中した。

 そこにいるのはアンタレスだった。その男がさらりとした黄緑よりの薄緑色の髪の毛の女の子にあくどく絡んでいるように見える。

 彼女の周りには骨が浮いている。

「お前、何してるんだ」と言いつけた。

 その発言で、俺らに気付いた彼がこちらを見る。「お前らは誰……そういや、因習村の奴か。隣の女も同郷か」と聞き、隣から「あ、はい」と返事が放たれた。

「女の子を虐めて何が楽しいんだ? それでも一応、王直兵なんだろ。恥ずかしいとは思わないのか。」正義感を混ぜ込んで強めの口調で言い放つ。

「お、おま、虐めてなんかねぇよ。」

「じゃあ、この状況を何と説明するんだ。」

「お前らも王直兵の試験を受けに来たんだろ。リベルから勧められていたし。で、コイツも王直兵の試験を受けようとしてたから、必死で止めてただけだ。」

 なるほど、つまり王直兵になるための試験を受けようとしているこの女の子の邪魔を必死でしていた訳だ。「世間はそれをイジメというんだぜ。」

「虐めじゃねぇ。いいか、コイツは王直兵になっちゃいけねぇ一族――天使族なんだよ。それを阻止して何が悪いんだ?」

 それを聞いて、思わず呆れ返ってしまった。「いや、悪いだろ。」

 彼がため息を吐いた。本当ならこちらがため息を吐きたい側なのに、何故か彼はため息を吐いた。

 取り残された彼女はキョトンとした顔をしていた。しかし、彼女に羽なんてないし、天使のイメージとは結び付かなかった。そのせいで、余計に何言っているんだ、という気持ちになった。

「全く。因習村の奴らはこうも常識に疎いから困る。いいか、コイツは天使族の生き残りだ。いいか、天使族ってのは風の国で大逆罪を犯した罪深き一族なんだ。この国で一番の大罪を犯した天使族の一人――ルシファーという男がいた。何をしたか、4年程前、天使族の同郷を皆殺しにし、側近にも関わらず前の王様を殺害した。いいか、つまり、天使族は裏切りの一族だ。王直兵となれば、また王が裏切られ殺されるんだ。」

「そのルシファーって奴と、そこの女の子は違うだろ。」

「同じ天使族なことには変わりねぇ。絶対ぇ、裏切る。」

 話が噛み合わない。

 このまま話していても拉致が明かないし、苛立つだけだ。その思いを言葉に乗せる。「俺とお前じゃ、話のベクトルが違うようだ。知能レベルが違うと話が噛み合わないと言うらしいが、本当みたいだ……。」

 彼は「何が言いてぇ?」と疑問する。

「お前の知能レベルが低すぎて話が噛み合わないんだよ。」


 彼が戦う姿勢を取っている。骨が不気味に漂い始めた。

 怒らせてしまった。見るからに怒りで顔が赤くなっている。見た所、怒り爆発寸前だ。

「あの時、まだ勝負は着いてなかったなぁ。やっぱ、痛い目見ねぇと立場ってもんを理解しないようだなぁ。」

 こうなってしまったら仕方がない。「また、戦うしかないのか。」


 こんな一触即発状態で、口を開ける状況じゃないはずなのに、羽がないけど何故か天使族だという女の子が口を開いた。


「ねぇ、何が起きてるの? 二人はどんな関係?」


 この雰囲気とは全く違った明るい口調。彼女の表情を見て、戸惑いを隠せない。だって、彼女、微笑んでるから。

 チラと前を見る。こちらは鬼の形相だ。

 ひとまず関係性だけでも手短に伝えることにした。

「コイツは俺の村を襲ってきたんだ。そこで俺と戦ったんだ。色々あって、コイツは帰り、俺はリベルって人に王直兵の試験の受験を勧められたんだ。で、受験のために都市にきたら、ここで再び顔合わせたって訳。」

「そんな自惚れに俺様が教育してやろうって訳だなぁ。」

 こんなにも緊迫した雰囲気なのに、「リベル……って、あの王直兵のリベルさんだよねっ。すごいじゃん。どうしてスカウトされたの。気になるっ!」という何とも言い難いふわふわした雰囲気が入ってきて、妙に集中出来ない。

 隣では「すごいな、あの子。空気が全く読めなさすぎて、場を荒らしまくってるぞ」と感嘆していた。

 逆に考えれば、こんなにもすぐ争いが始まりそうなのに、争わずに留まっているのは彼女の天然のお陰かも知れない。彼もまた調子を狂わされている。

 

「思いっきり殴って吹き飛ばしたら、勧められた。」

 隣から「語弊が起きそうな言い方だな」と小さく独り言を吐いていた。


「すっご~い。じゃあ、この人を吹き飛ばしたら、スカウトされるってこと?」


 隣から「本当に語弊が起きたな」と呆れられている。

「じゃあ、じゃあ、カシェルも王直兵になりたいから、この人吹き飛ばしたら王直兵になれる可能性が高くなるのかなっ。」

 目の前から「何言ってやがる。まさか知能レベルが違いすぎて話が噛み合わないのか……」と漏れていた。これに関しては同情した。

「アンタレスさん。いきますね。」

 どこか楽しそうな笑顔を浮かべている。

 次の瞬間、アンタレスが宙に浮かび、地面に叩きつけられた。そして、何が起きたのか、真横に吹き飛ばされてそこにあった家に壁を開けた。

 呆気にとられそうだ。

 そんな渦中の彼女がこちらへとやって来て「王直兵の試験を受けるんでしょ。一緒に頑張ろっ」と笑顔で微笑みかけてきた。

「横から失礼なんだけど、まだ受付できていないなら急いだ方がいい。受付の締切は今日までだから。」

 そのアドバイスを聞いて、急がなきゃと慌てている。と、突然、空中に浮いた。

 太陽の日差しと彼女の身体が重なる。

 そこでようやく浮いているんじゃないことがわかった。浮いているんじゃなくて、飛んでいるんだ。

 光によってチラリと見える透明な翼。彼女の羽は――透明だったんだ。

「じゃあ、また試験で会おうね~」なんて言いながら、空を自由に舞って、闘技場の方向へと飛んでいった。


 そこにアンタレスが出戻った。

 ポケットに手を突っ込んで、怒りを力に変えている感じがする。そして「ちっ、逃げられたか」と舌打ちをした。

 今度は壊れた家から元気そうなお婆さんが出てきた。「なんだい、この騒ぎは?」と状況を飲み込めない様子だ。

 ふと顔を彼の方に向けた「おや、久しいねぇ。アンタレス君じゃないかい。もしや昔みたいに悪さしたんじゃないだろうねぇ」とこの状況の原因だと疑っている。

「違ぇよ。俺はもう子どもじゃねぇんだ。悪さしねぇよ。」

 今度は俺らの方に顔を向け「あんた達は……、何か知ってるかい?」と聞いてきた。

「さっきその人が女の子をいじめてました。」

 それを聞いて驚いている様子だった。

「おいおいおい。語弊が生まれそうな言い方すんじゃねぇ。」

「なに、本当かい。あんたの母ちゃんに言いつけてやるんだからね。」

「待って、母ちゃんにだけは言わんでくれ。」

 とっても情けない姿だった。先程までのかかわり合いが馬鹿みたいな感じられてきた。段々と無心になってきている自分がいる。

「その女の子はどこだい?」

「女の子ならこの人と戦闘になった後、隙を見て逃げましたよ。」

 ジロッと顔を向かれている。それに対して、どこか困っている。

「いやいや、何が戦闘だよ。一方的だったじゃねぇか。」

「そうかい。一方的にいじめたんだね。」

「語弊だ!」

「とやかく言う前に、家の修理でもしたらどうだい!」

 二人だけでやり取りが完結しそうな気がする。

 思わず「違う道から行かないかい」と言われ、「そだね」と返した。

 

 違う道はこんなトラブルに巻き込まれることなく進むことができた。

「もうすぐで武器屋に着きそうだ。楽しみなんだよな。」

 もう地図に頼らなくても進める。安心して武器について思いをふけていく。

「新しい武器は、使い方が画期的なんだよな。正直、早く使いたいぜ!」スキップしながら残りの道を進んでいった。

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