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偽風のアトラ、☆スパイ☆になる。~風の国に逃げた極悪人3人を暗殺せよ!というスパイミッション!~  作者: ふるなゆ☆
風の国への潜入編/試験編

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13/15

13.女子寮

 二階にあるミニ広間のベンチでゆっくりと座る。そこに二人がやって来た。どこかヤツれている。目元はクマができている。

「寝れてないんだよね。本当に……大丈夫?」

 普通に心配になる。

「女子寮……ヤバい」と言った後の語彙力は「ヤバい」一択しかなくなっていた。

 そこにアンタレスがやって来た。

「うわっ、顔やべぇ」と言い放つと、二人から睨まれていた。

 さらにルグニテもやって来た。彼は俺とメイサに従者のカードを渡した。俺らは従者のカードを貰うために呼び出されたのだ。用事の終わった彼はそのまま帰ろうとした。

 その間際、アンタレスから指導下にいる二人が何故このような状況なのか聞かれていた。

「普通に寝不足だ。」

「そうか、寝不足か。毎日か楽しみすぎて徹夜してんのか。そりゃ自業自得だな」と笑いかけていた。

 ギラッ。

「楽しくてこうなってる訳じゃないし」といつもでは出すことのない口調に、彼もたじろいでいた。

「名案がある。女子寮に一緒に着いてきて貰わないか。もしかしたら何とかしてくれるかもしれない。」

「名案だね。ねぇ、女子寮に一緒に来て!」

 まさか女子寮に誘われてしまった。

「ルグは行かない。代わりにコイツが行くから、それで何とかして。」親指でアンタレスを指さしている。

「はぁ、何で俺が……。」

「安心しろ。今日はメリディアナは任務でこの二人しかいないから。」

「いや、そういう話か、これは。」

 兎や角、彼も女子寮に同行することになった。もちろん、俺も同行することになっていた。



 王宮の外へと出て、芝道を横切る。花が凛と咲き誇る花園を抜けて行くと、そこには新築一年目の女子寮が広がっている。新築ともあって外面はとても綺麗である。まさに凛としたくすみホワイトの色。窓はカラフルな紫をベースとした色を塗られていて、鮮やかさも存在している。まさに美しさ漂う建物だ。

 豪勢な扉を開ける。

 お邪魔します。そう言って、入っていくと、まだ艶の残った廊下がお出ましした。とても綺麗な内装だ。正直、何がヤバいのかが分からない。幽霊でも出るのだろうか。

 二階へと登った。

 未だに何がヤバいのかは分からない。

 カサコソコソ。

 コソコソ。

 物音がする。幽霊の音ではない。それだけは分かった。

 何かが近づいてくる。それを察知した二人は怯えて、二人同士で抱き合っていた。

「あ? ネズミじゃねぇか。こんなんにビビってたのか?」

 彼は近づいてきたソレを手掴みで取った。

 尻尾を掴まれ身動きできないソレはブランブランと揺れている。

 二人がジェスチャーで、窓の外に、出して、と必死に伝えている。「可哀想だろ」と拒否られかけたが、早くしてと急かされ仕方なく窓の外から放り投げていた。

「ヤバいのが……分かるだろ?」

「そうか?」彼には分からないようだった。

「やっぱり男子寮にもそういうのは出るもんなのか?」

 俺は「まだ一度も見てねぇな」と呟いた。

 そこに補足され「王宮と繋がっているから、防虫されているんだろうな。けど、俺様が昔住んでた家はこんなもんだったぜ」と。

「ずるい」と言うが「いや、この棟の方が新しくてずるい方だろ」と返されていた。普通に考えれば、こちらの方がデキが良い、はず。

 少し歩いて突き当たり。扉が少し開いている。

 そこの床からカサカサ、カサカサと何匹かの虫が廊下へと出ていった。すぐ近くから悲鳴が上がる。

 悲鳴の次は「駆除」という言葉が連呼される。また、その扉の向こうへと行く指示がなされていた。

 アンタレスが代表して扉の中に入る。

 彼は少ししか開いていない扉を大っぴらに開いた。

「こりゃあ虫が湧くわ」と宣う。

「虫は駄目なの。絶対に。何とかして。」

「いやぁ、難しいと思うぜ。これを見ろよ。」

 虫が出てきてからそれを直視しないようにしていた二人が恐る恐る前を見た。

「この部屋で虫を買ってんだもん。勝手に駆除できんだろ。」

 大きな虫かごの中に蠢く虫共。カゴは何種類もあって、それぞれ別の虫が育てられていた。

「何で? 何で虫なんか育てられてるの?」喚く。

「いや、知らねぇよ。」その通りだ。

 よく見ると、一部のカゴからは虫が脱出していた。多分、それが原因で虫が出てきていたのだろう。

「毎日、毎晩、虫が出るせいで眠れないんだから。何とかしてよ。」

「んなもん、言われても。」

 あのアンタレスが困り果てている。

「しっかしまー、てめぇら虫が駄目なんだろ。虫じゃなければ大丈夫なのか?」

「種類による。」

「巻貝とかは大丈夫か。」

「巻貝? よく分からないが、巻貝ぐらいなら。」

 今は一体なんの話しをしているのだろう。

 ふと、彼はとあるカゴからその中に入っていたナニカを取り出して、ヒュイッと二人目掛けて山なりに投げた。二人の重なっていた腕にソレが乗る。

「なめくじだ。可愛いよな。」

「――(言葉にならない声)。」

 ソレは叩き落とされ、見えない攻撃で彼はボコボコにされた。

「次やったら殴るよ。」

「いや、殴ってんじゃん。」

 そんなやり取りがされていた。

 そんな時、ふと彼は彼女らの足元に何かがあるのに気づく。

「おっ、今度は虫じゃなくて哺乳類だぜ。」

 絶叫が響いた後に、アンタレスがボコボコにされた。

 彼は俺に「何で俺こんな目にあってんの」と聞かれた。仕方なく返事することにした。「知らねぇ。」

 扉を閉めた。

 ひとまず謎は解決できたが、対策は何一つなされていない。

 そのまま先へと進む。

 誰の部屋でもない部屋を開いた。そこには大きな壺だけが置いてあった。それを彼は開いて、少ししたら閉じた。

 彼は楽しげに話しかけてきた。「すげぇわ、ここ。"蠱毒"なんてもんを初めてみたわ。ワクワクするな。」

「えっ、何。孤独? 一人のこと? どういうこと?」

「知らねぇの? 一つの壺の中に毒を持つ生物を入れて、最後に生き残ったのが最強の毒生物となり、この世で一番の毒が誕生するって奴だ。具体的には蠍や蝮や蜂、蜘蛛とか百足とか――」「具体的に言わなくていい!」

 この時の彼は意気揚々としていた。

「俺の好きな生き物が蠍なんだ。それに"蠱毒"ってワクワクしねぇか?」

 少年のような無垢な眼差しを向けられたが一切賛同することはできなかった。

 誰も共感してくれない状況にため息を吐いていた。

「ったくよ。何でそんなに虫が嫌いなんだ。思い出して見ろよ。子どもの頃はもっと純粋に虫とか触ってたろ。いつ忘れたんだ。あの頃の輝きを。」

 ヤレヤレみたいな態度をしている。

 そしてドヤ顔で二人を見た。

「いいか。童心に帰ればいいんだ。いや、心を原始に帰すんだ。虫とかが嫌いじゃなくなるぞ。」

「そんなん、絶対無理だから!」即決で否定されていた。

 次の部屋を見ようとウキウキで歩いていくアンタレス。ふと冷静になって傍から見ると、女子寮をウキウキで捜索する男ということになる。「女子寮をウキウキで捜索する男ってヤバいな」と思わず口に出してしまったが、運が良いことに彼には聞こえていなかったみたいだ。

 次に見つけたドアを開いていた。彼は笑顔で中を覗いた。そして、すぐにバタンと閉じた。

「うん。見なかったことにしようぜ。」

 笑顔でそう言い切っていた。

 正直、何を言っているのか分からない。彼は役立たず判定を受け、今度は俺が見ることになった。恐る恐る扉を開く。

 暗い中に様々な物が置いてある。

 扉をもっと開くと光が入ってきてより中が見えやすくなる。中を見渡していく。

 ロープの先端側の方にラバー素材が施されたギロチン。ファラリスの牛。アイアン・メイデン。ユダの揺りかご、いや、三角木馬。トゲトゲマット。手枷足枷。トゲトゲの椅子。ご丁寧に他にも忌々しい器具が落ちている。

 思わずバタンと閉めた。

「これは見ない方がいいわ。」それしか出てこなかった。

 それを聞いて「役立たず」と言いかけながら開く二人はすぐに扉を閉めた。「そうね。これは見ない方が良かったわね。」

 みんなで「見なかったことにしようぜ」とお互い顔を合わせて笑っていた。



 机に置かれたのはビーフシチューだった。ゴロッとしたジャガイモやサクッとした人参が彩りを加える。そこに鶏肉と豚肉がアクセントになって味わいを引き立たせていく。マイルドな味わいに隠し味のリンゴとブラックペッパーがこの味を飽きさせない。ご飯が進む、進む。

 結局、理由は分かっても対策のしようがないため諦めて、今に至る。

 今日のことを忘れさせるかのような美味しさだ。

「噂で聞いたんだけどね、アンちゃんが女子寮に入っていくのを見たって……。本当なのかねぇ。」グリーゼは頬に手を当てていた。

 メイサはすかさず「女子寮の中をウキウキワクワクで回っていたな」と情報提供をし、隣で「女子寮ウキワクアンタレスだよ~」と話をまとめていた。

 ギラッ。しゃもじと共に視線が彼の方を向く。

「ちょっと待て。その言い方だと誤解を招く。」

「……女子寮に入ったのは本当だね?」

「いやぁ、その……。それは――」とゴニョゴニョ話している隙に「本当だよっ」と上書きされていた。

「アンタって子は。女子が気になるからって。」

「ちょ、ちょ、ちょ、誤解だって。」

 彼はグリーゼに追いかけ回されていた。

 それを見て、同じ空間にいた国兵達が笑っていた。


「あ、そうだ。少年。一つだけお願いがあるんだが、いいかな。」

 俺は耳を傾けた。

「カシェルとも話し合ったのだが、このままでは身が持たない。命が危ない。そこで君の部屋に従者のスペースが余っているだろ、そこを使わせて欲しいんだ。流石に命には変え難い。」

 二人から「お願い」と言い寄られ拒否する事など一切できない状況だった。そのまま受け入れることにした。

 夕食後、自室に二人がやって来た。流石に二人で従者のベッドはあまりにも狭すぎる。仕方ないので俺が従者のスペースに追いやられることにして、二人に大きめなベッドを貸し出した。

 二人はベットに入ると否やすぐに就寝してしまった。それ程までに寝れていなかったのだろう。俺はゆっくりと電気を消した。


 二人はここに居候することを決めたようだ。

 次の日の夜、すっかり元気になった二人はトランプを配り始め、ババ抜きをし始めた。もちろん、俺も強制参加だ。そして、オールナイトをしてしまい。……次の日、寝不足になり、ルグニテに嫌味を言われてしまった。

今日は【シェルタンからの一言】


そこのお前。お前にとっての当たり前は、その界隈の中での当たり前でしかないんだ。だから、偉そうにするんじゃなくて、感謝を忘れずにな。

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