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第4章 ”周りの優しさ”が辛い時期

※この連載に書いてある文章はすべてノンフィクション(実話)です。

開放病棟に来たての頃の私は「もう大学に戻れない。戻りたくない。中退しよう。」と思っていました。小学生の頃から教師を目指していましたが、他の仕事に就こうかといろいろ調べて考えていました。それに、家族や旧友が面会に来てくれて励まされたときもそれがとても辛かったんです。

例えばこんな感じ…。

「大丈夫だよ、悩むときは一緒に悩んで喜ぶときは一緒に喜ぼうよ。」

「今を乗り越えればまた立ち直れるよ。ポジティブに考えていこうよ。」

当時はこれらの言葉がすごくすごくしんどかったんです。私は自分の犯したことを考えたら家族からも旧友からも見放されて仕方がないと思っていました。

「何が大丈夫なんだよ。私は生きることを自分で辞めようとした人間なのに、もう喜ぶことなんてできないよ。何かに喜ぶことすら罪に感じるんだから。」

「乗り越えられそうにないんだよ。こんな状況でポジティブに考えられるわけないじゃない。私の人生、お先真っ暗なんだから。」

心の中ではこんなことを叫んでいましたが、せっかくご足労をかけて面会に来てくれた家族や旧友には言えませんでした。

だからある日、旧友が面会に来て帰った直後に看護師さんに泣き叫んだことがありました。

「すみません、あの、とんぷく(不安を和らげる薬)…下さい!とんぷく下さい!」

そして涙が止まらなくなって、看護師さんに背中をさすられながらベッドに座って深呼吸しました。薬を飲んで、落ち着いてから看護師さんにようやく話ができました。

「何だかよく分からないんですけど、周りの人からの優しさが辛いんです。励ましてくれるのはとてもありがたいんですけど、でもその励ましが辛いんです。周りに恵まれているからこその辛さみたいなのを最近感じるんです。」

看護師さんは私の話を傾聴してくれてからアドバイスをくれました。

「うんうん、辛い気持ちを話してくれてありがとう。優しさが辛いときもあるよね。相手の人たちも悪気は全くないし、むしろ応援しようって気持ちで話してくれてるんだけどね。そういう時は面会を断ってもいいんだよ。今は会うのがしんどいって伝えていいの。せっかく来てもらったのにと思うだろうけれど、自分の感情を優先して嫌なものは嫌だと言っていいの。だから、自分が辛いときに無理に会わなくても話さなくてもいいんだよ。また元気になったらきっとお話できるようになると思うから、今は無理しなくていいんだよ。」

この言葉が私の気持ちをどれだけ救ってくれたことか。感謝してもし切れないというのは、まさにこういうことだと思いました。

私はそれ以来、家族以外との面会は断りました。旧友だけでなく親戚も面会に行きたいと言ってくれたのですが、家族以外と話す勇気がまだ出なかったからです。

これも私の中の小さな、いや少しだけ大きな進歩だったと思います。


ーうーん。あの日泣き叫んだときの自分にかける言葉ならこれかな。

「優しさが辛いと感じてしまう自分自身にも負い目を感じてかなり自責してたと思うけど、でも本当にあの看護師さんに出会えてよかったよね。入院してなかったら出会えてなかったからね。これからも人との出会いに感謝していこう。そして無理しないで自分の気持ちを優先しよう。自分勝手なんかじゃないよ。だって人生は誰のためでもない、”自分のために”あるものだから。」


自分の感情を優先していいと知ることができたとき、それを認めることができたとき、人は大きく前進することができ、生きることが少しずつ明るいものに思えてくるものだと私は感じます。自分のための人生なんだからと考えられると本当に息をしやすくなりますよ。みなさまにもぜひそう思ってほしいと強く願います。

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