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第3章 新しい出会い~開放病棟へ~

※この連載に書いてある文章はすべてノンフィクション(実話)です。

突如として1階の開放病棟に移動になり、しかもお部屋が2人部屋で「どんな患者さんと同じなんだろう」と大きな不安に襲われました。しかし、それは杞憂(きゆう)でした。部屋が同じになった女性のYさんはとても優しく運動熱心な人でした。

「もっと早く退院したかったんだけどね、もう3か月も入院してるの。息子がそろそろ沖縄に修学旅行に行くからその準備も一緒にしてあげないといけないし、もう退院する日が決まってるんだよね。ようやくだよ。」

私はせっかくいい人なのに退院しちゃうのかと少し悲しい気持ちを持ちながらも、「そうなんですね、おめでとうございます。」と微笑みました。

Yさんと一緒にいたAさんとも仲良くなった。Aさんはもう5年間も入院生活を過ごしている女性だった。大ホール(名前が長机の端に貼られてみんなで食事を食べる場所)でどこの椅子が空いているのかもAさんがちゃんと把握していて、空いている椅子を看護師さんに教えて私の席を決めてくれました。その席の隣のおばあちゃん(Rさん)は食事の時はテレビの横にあるポットからコップに温かいお茶を注ぐことを教えてくれたが、少し自慢話が多かった気がします笑。

ある日、夕食前に私の父が仕事帰りに面会に来てくれました。いろいろ話をした後に、席に戻るとRさんが突然私に小さな紙切れを渡してきました。表情からしていいものではないように思えました。私は恐る恐る紙切れを見ると、そこには「夕飯時はみんな座っているから面会するのは辞めた方がいい。みんな見てるんだよ。」と書いてありました。私は何も言えませんでしたが、父が仕事帰りにわざわざ面会に来てくれたことを否定されたのがショックでした。夕食を食べ終わった後に私はその紙切れのことを一緒にトランプをして仲良くなったSさんという男性に泣きながら話した。

「父は私の遺書を見つけ、私が階段から落ちようとしたのを見つけた人なんです。それで今日もわざわざ仕事帰りに来てくれて、面会の時間も守っているのにこんなこと言われて、なんか私すごく悲しくて。もう隣に座りたくないって思っちゃった。」

Sさんは包容力のあるとても優しい人で私の愚痴のような話を真摯に聞いてくれた。

「それは嫌だよね。せっかくお父さんが顔見に来てくれたのにさ。面会のことは患者さんがとやかく口出すことじゃないからね。看護師さんに相談してみたほうがいいと思う。」

私はSさんのアドバイスに従うことにしました。看護師さんに相談すると、「ごめんね。Rさんいつもはこんなこという人じゃないんだけど、みんな気持ちに波があるから今は興奮状態なんだよね。」と言われ、近々私の席を変えてもらえることになりました。私は心からホッとしました。

Sさんとはそれ以降とても仲良くなったのですが、Kさんと同じくすぐに退院することになっていると知って悲しくなりました笑。

彼の入院理由は私と同じでした。しかし、彼の家庭環境は大変でした。母子家庭で三人兄弟の長男。母は男遊びが好きな人で夜遅くまで帰ってこなかったみたい。彼は幼い頃から不思議で、包丁を研いだあとに紙を切って切れ味を確かめるのが趣味だったらしい。彼は自分が(うつ)になって13年間引きこもるようになって、家族に見放されてしまい、退院しても帰る場所はグループホームだと話していました。

「俺は鬱と広域性発達障害なんだよね。本当はまだ退院したくないんだけど、もうさすがに自立しないといけないからさ。母のことは元々信じてなかったけれど、兄弟のことは信じていたから、見放されたときはすごくショックだったな。」

ハロウィンパーティーでは看護師さん2人がギターの弾き語りで歌を歌ってくれた。患者さんたちも看護師さん手作りの猫のカチューシャをつけていました(もちろん私もです笑)。Sさんはつけていなかったので、私はふざけて自分のカチューシャを頭に乗せました。そのあと、彼は恥ずかしがりながら看護師さんにカチューシャをもらっていました笑。


ーハロウィンパーティーのときにみんなで美空ひばりさんの名曲「川の流れのように」を合唱したんです。看護師さん手作りの歌詞カードを見ながら。私はその時、号泣しました。

KさんとSさんとの別れが悲しかったのもありましたが、何より歌詞が心に刺さって涙が止まりませんでした。

”雨に降られてぬかるんだ道でも いつかはまた晴れる日がくるから”


閉鎖病棟のあとに長く過ごした開放病棟の生活について書きました。いろいろな患者さんに支えられていた当時のことを思い出して執筆しながら涙ぐみましたね。あの時に支えてくださった方々すべての人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。あの時のみなさまたち、お元気かしら。きっとどこかで自分らしく過ごしていらっしゃることを心から祈っています。

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