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大魔王の器の少女。三〇〇年後の世界で無双する  作者: 有原優


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第七話 封印地獄。――せっかく魔王倒したのに、地獄なんですけど……

  さて、レオニスさんと魔王ラベンヌが数撃やりあっている。

 中々互角の戦いのようだ。

 だが、それは形だけだろう。

 


 これはレオニスさんの方が不利だ。レオニスさんはラベンヌの攻撃をただ防いでいるだけ。ラベンヌは未だ余裕そうな雰囲気だ。


 やはり私が何とかして覚醒しないと。

 大魔王リスタル。

 どうしてコツがあると言って、そのコツを教えてくれないの。なんで、

 レオニスさんが戦っている姿をただぼうっと見つめてるだけでいいの?

 だめだ、このままじゃだめだ。


「うおおお!」


 私は思わず魔王に殴り掛かる。


「……この程度か?」

「なめるな!」


 私は拳に魔素を集中させる。


「おい、リスリィ」

「私がああああああああ」


 さあ、大魔王さん、これで覚醒しなかったら恨むから。


「馬鹿な、なんて愚かなんだ。貴様はあああ」


 くそ、圧倒的な魔力が私を覆う。


「くあああああああ」


 魔力の渦に巻き込まれて痛い。


「うぅ」


 体が割けるかのような痛みだ。この痛みはまずい。このまま居たら、私は体が8個に裂けて死んでしまうだろう。



 ああ、やっぱり、まだ余力があったのか。魔王ラベンヌは今もレオニスさんとやり合っている。

 ただ、レオニスさんだけにやらせてたらやっぱり負ける。ただ、体が痛い。無理に動かそうとすると、激痛に襲われる。


「げほっ」


 口から血がこぼれる。

 ああ、黙ってみているしかないの?

 いや、やっぱりレオニスさんを助けなきゃ、魔王を倒さなきゃ。


「私はああああああああ」

「邪魔だ」


 お腹を閃光が貫く。

 つぅ、もはやこんな片手間で処理されるほどに、ダメージを。

 今度こそ立てない。

 回復に専念しているけれど、回復しきったとして、あの二人の戦いに入り込めそうにもない。


 ああ、大魔王も大したことがない。

 所詮、魔王にも勝てないのか。

 戦闘はこの間にも過熱している。

 レオニスさんが押されてきている。

 魔王ラベンヌが段々と、押してきている。


「ぐは」


 レオニスさんが爪の直撃を受けた。


「英雄剣などと、それはお前にはふさわしくない。それは、勇者ラスカルしか力を発揮できないのだ。そろそろ飽きた。逝ね」


 このままでは本当にレオニスさんが死んでしまう。

 レオニスさんはいい人だ。私が大魔王の器と知りながら、一切嫌悪感を見せていなかった。

 私の話も真摯に聞いてくれた。

 そんな彼を見殺しにするわけには行かない。


「はあはあ、レオニスさんに……手を出すな」


 そう、私は息も絶え絶えに言う。


「生きていたが。だが、無駄な事ここから何ができるのか」

「レオニスさんに手を出すな」


 体が瘴気を吸収しない。いや、吸収はしている。だが、それ以上に体が直接瘴気を生み出しながら、そのまま利用している。

 これが、効率的な使い方か。


(いいぞ、それだ)


 私の体に力があふれる。これなら――!


「覚悟しろ魔王ラベンヌ。お前は私がここで倒す。絶対に!!!」

「ふざけるな。所詮は死にかけ、すぐに殺してくれる」

「いえ、」


 私はレオニスさんのもとに行く。


「貸してください」


 英雄剣をレオニスさんからとる。


「これで」

「はは、言ったであろうか。それは英雄にしか使えない。勇者ラスカルにしか力は発揮できん」

「本当にそうですか?」


 私はその剣に魔素をねじ込む。すると剣の形が変わる。

 やっぱり。大魔王の言ってたことに疑問符が沸いていた。

 だが、そう言う事なのだ。


「馬鹿な」

「大魔王の剣だったみたいですね。これ」


 その瞬間魔王ラベンヌの顔が青ざめる。


「そうか、それは英雄剣ではなく、大魔王の剣、ルクス・リスニア。そうだったのか、これを英雄剣と思い保管していたという事か。これで貴様は名実ともに、大魔王リスタルか。……あってはならない。大魔王の再来など、あってはならない。あの恐怖が再び訪れるのはあってはならない」

「私はリスタルじゃなくて、リスリィですけど」

「私は、あの時、大魔王にやられた屈辱を忘れてはいない。ずっと復活の時を待っていたのだ。ははははははは、今私の目の前にいるのは、あの大魔王リスたる。だからこそ、ここで、リスタルを殺す。そして私は大魔王に」


 その体から禍々しいほどの魔力が生じる。

 ここで決着をつけるつもりか。

明らかに、私が英雄剣改めリスニアを手にした時に目の色が変わった。

ただの大魔王の魔力を宿した少女から、大魔王そのものへと認識を改めたのだろう。

はた迷惑な話だ。私は大魔王ではないのに。

でも、私は勝たなければならない。過去の因縁ではなく、村のため、いや、世界の平和のために。


「望むところです。私は負けない」


 剣を持ち、そのままラベンヌの方へと剣を振りぬく。

 ラベンヌもその剣を爪でくいとめる。

 覚醒したらそのままボロ勝ちなんて言う奇跡は起きないか。


 私の傷も深い。

 だけど、勝機はある。ラベンヌもレオニスさんとの戦いで疲弊はしているはず。

 数撃。数撃、剣と詰めが交差する。

 中々体に触れさせてもらえない。


「ダークバレット!!」


 片手で剣を持ち、片手で至近距離から闇の魔弾を放つ。


「効くか」


 ラベンヌは飛び上がった。


「そこから私に勝てるとでも思っているのか?」


 上から大量の炎が振ってくる。

 なるほど。近距離じゃ勝つのは難しいと考え上からの攻撃に徹したか。確かにラベンヌとは違い、私は飛べない。


 でも、今の私なら地面をけることで、ラベンヌの元まで飛べる。


 闇の障壁を張り、ギリギリで炎を防ぎ、そのあままジャンプする。


 やはり数多くの炎球が降ってくる。ただ、剣で切れる。

 全てを剣で斬ることが出来る。


 この剣はすごい。この剣だけで凄まじい力を秘めている。

 今の私の力の七割は剣が引き出してくれているのだろう。


「化け物があ」


 ラベンヌがそう叫ぶ。

 魔王であるあなたまで、その名前で私を呼ばないでよ。

 私におびえないでよ。

 

「私は大魔王でも化け物でもない。ただのリスリィよ。……喰らえ」


 そして剣で魔王の腹を突き破る。


「だが、これでやれるとでも思ったか!!」


 魔王はしぶとく闇を腹に集中させ、防御を保つ。そして剣から逃れ、地面に落ちる。

 まだだ、まだ決め切れていない。

 でも、これは大丈夫だ。


「よくやった、リスリィ。後は俺に任せろ」


 ラベンヌの背中を剣が襲った。


「なぜそこにいる」

「相棒にだけやらせるわけには行かない。俺がとどめを刺す」

「うぬうううう、己ええええええ」


 だがラベンヌはしぶとく剣から逃れる。

 だが、見るからにぎりぎりだ。

 もう後一撃を喰らえば終わり、そう見える。


「お前だけでも道連れに殺してやる」


 私の方へと、極太光線が襲う。

 避ける体力なんてないが、この剣さえあれば。


「斬れる」


 剣でその光線を真っ二つにした。

 そのまま、剣でラベンヌを斬り込む。


「ふぬう」


 爪で防いでくる。が、その力はもう弱い。


「終わりだ」


 私はその抵抗を振り切り、心臓に一刺しした。

 私の剣がラベンヌを突き破ると、魔王は、


「ぬわああああああああああああ」



そんな断末魔を出し、腹からどんどんと消滅していく。

 これが命の最期なんだなと、思った。


「よくやった。リスリィ」


 そう言って私の頭をレオニスさんが撫でてくれる。


「え?」


 私の目はその瞬間彼のネックレスが怪しく光ったのを見逃さなかった。


「どういう事」

「悪いな、こういう事だ」


 そう言った瞬間、私の体はネックレスに吸い込まれていく。まるでそれ自体に重力があるかのように。


「悪いな。お前の存在は危険なんだ。封印させてもらう。俺はお前を封印するためにずっとついてきた、国からの使者だ」


 何で……?


「俺の過去は半分本当だ。だが、俺の本来の目的は剣の回収と、お前を封印して二人の魔王を消し去るという事だ。悪いな。このまま眠ってもらおう。

 正直な事を言う。俺はお前のことがずっと怖かった。

 お前の身に持つ、強大な闇の力を。

 村に戻れなくなったこと、すまないと思う。だが、仕方ない事なんだ。村の人が恐怖でおびえるのを見たくないだろ。サヨナラだ、リスリィ。もう会う事は無いだろう」


 そして彼の声が終わった後、私は暗い闇の中にいた。何もない、何も見えない、何も聞こえない。


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